適応障害になりやすい人の特徴は?再発の兆候や防止策、支援制度を解説

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適応障害(適応反応症)を発症した方の中には、一時的に回復してもまた再発することを不安に思う方も多いでしょう。自分の力だけで対応しきれないケースが多いことも悩みの種ですよね。しかし、正しい知識を得ればこうした不安を減らすことはできます。

この記事では、適応障害の原因となりやすい人の特徴、再発の防止策や適応障害の方向けの就労サポート制度などを解説します。

適応障害(適応反応症)とは

適応障害(適応反応症)とは、周辺環境や生活の変化など特定のストレス因子から過度なストレスを受けることで心身に不調をきたし、日常生活や社会生活に支障が生じた状態のことです。支障を及ぼす程度は人によりますが、場合によっては仕事の継続や人とのコミュニケーションが難しくなるケースもあります。

また、最近では適応障害という病名に対し、障害と訳すのは誤解を生む表現だと日本精神神経学会が「適応反応症」とする案を示し、診断名が適応反応症へと変わりつつあります。

適応障害の原因と症状

適応障害の原因は、特定のストレス因子によってもたらされる過度なストレスです。適応障害の定義においては原因が明確で、それに対し過剰な反応が起こっている状態を指します。

誰しも日常生活や社会生活の中でストレスを受けるものです。しかし、適応障害になる方はストレス因子に対する反応が過敏で、日常生活に支障をきたすレベルで心身に影響を及ぼしてしまいます。

適応障害の主な症状は、抑うつや自尊心の低下、頭痛、不眠など人によりさまざまです。治療するにはストレスの原因から離れることが重要ですが、ときには薬物療法が必要となる場合もあります。

適応障害になりやすい人の特徴

前提として、適応障害を発症するか否かは気質や性格といった個人の特性に左右されるところが大きいです。ただ、一般的な傾向として下記のような特徴に当てはまる方は適応障害になりやすいと言われています。

  • 真面目で責任感が強い
  • コミュニケーションが苦手
  • 繊細で環境の変化に敏感
  • 完璧主義

ただしこれらの特徴に当てはまっても、個人のストレス耐性の度合いやストレスとの付き合い方によっては適応障害にならない場合もあります。

一方で、これらの特徴に当てはまらなくても、耐えられない過度なストレスを受けると適応障害を発症する場合もあるのです。

適応障害と関連が深い精神疾患

適応障害と関連が深い精神疾患として挙げられるのが、うつ病や発達障害*です。うつ病は適応障害と症状が似ていること、発達障害は適応障害の根本に発達障害が隠れている可能性があることから、それぞれ覚えておく必要があります。

これらの精神疾患は症状によっては適応障害と混同される場合があるので、適応障害との違いを知るために、それぞれの特徴や関連性を知っておきましょう。

うつ病

うつ病は適応障害との判断が難しい精神疾患です。症状が似ているだけでなく、うつ病も適応障害も人によって症状が異なるため、はっきり断言するのは難しい部分があります。

うつ病の代表的な症状には、適応障害と同じく抑うつや自尊心の低下などが挙げられます。悲しく憂鬱な気分が一日中続く、好きなことに興味がわかないなど、無気力で憂うつな状態が2週間以上続いたら医療機関を受診する目安です。

ちなみに、うつ病と適応障害を自己判断するのは難しいので、必ず医療機関を受診して医師の診断による判断をしてもらいましょう。

発達障害

発達障害の特性による生きづらさやストレスが、適応障害を引き起こす要因になることがあります。このように先天的な特性が原因となり、適応障害などの精神疾患を発症することを「二次障害」と呼びます。

発達障害は脳機能の発達に関する障害の総称で、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)などが含まれます。集中力が続かなかったり、コミュニケーションが苦手だったりと社会生活を送るうえで不利になりやすい特性があるので、通常よりもストレスが強く出やすい傾向にあります。

ちなみに発達障害の特性も適応障害と似ている部分があり、両者は医師でも診断が難しいです。適応障害が長期に渡ってくり返す場合は、発達障害の可能性も考えましょう。

適応障害は再発しやすい?

適応障害の再発のしやすさは、ストレス因子の状態や周辺環境などからくるストレスの度合いなどで変わります。ストレス因子が残っている場合やストレスが多い環境に身を置いている場合は、再発しやすいといえるでしょう。

適応障害を再発しやすいとされる仕事におけるストレス例としては、仕事が原因で適応障害を発症した方が復職後も以前と同じ仕事量を任されたり、人間関係のトラブルが起こった部署のまま配置換えがなかったりすることなどが挙げられます。

適応障害の症状が改善したとしても環境が変わらないと再発する恐れがあるので、職場復帰を考える場合は復職を急がずに、再発しやすい環境に身を置く恐れがないか確認するところからはじめましょう。

気をつけたい適応障害の再発兆候

適応障害の再発兆候を察するために、症状が出るタイミングや再発兆候のサインを知っておきましょう。適応障害はストレスを受けてから症状があらわれるまでが早く、以下のような症状がよく見られます。

  • 抑うつ気分
  • 不安
  • 違法行為(他者に危害を加える行為、嘘をつく、人の持ち物を盗むなど)

具体的な診断基準としては、ストレス因子にさらされてから3ヶ月以内に以下のような症状がある場合が該当します。

  • ストレス因子に対し不釣り合いに強い苦痛がある
  • 症状により社会的、職業的機能が大きく損なわれている

なおストレス因子が消失した場合、適応障害の症状がその後6ヶ月を超えて続くことはありません。

適応障害の再発を防止する方法

適応障害の再発を防止する方法は大きく2つあります。1つは環境面を変えること、もう1つはストレスとの付き合い方を学ぶことです。代表的な予防策として以下のような方法があります。

環境面を整備して予防する方法

  • 仕事のペース配分に気をつける
  • ストレス因子に触れる時間や頻度を下げる
  • ストレス因子から離れられる環境を整える

ストレスとの付き合い方で予防する方法

  • ストレスを溜めすぎない
  • リラックスできる方法を身につける
  • ストレスを感じたら専門機関に相談、受診をする
  • 職場復帰を焦らない

注意すべきは、ストレスとの付き合い方には個人差があるということです。強すぎるストレスには対応できない場合がありますので、予防法で対策が難しいと感じたら無理せず環境面の対策をしましょう。

また、これらの対策は症状が十分改善してから実践するものです。まずは自分の心身を第一に考えしっかりと休養をとり、無理のないペースで取り組みましょう。

適応障害の方の就労をサポートする支援制度

環境面に不安が残る場合は、適応障害などの障害がある方を対象とした就労支援制度を利用するのも1つの手です。適応障害がある前提で対応してもらえますし、専門のプログラムが充実しているので、より望ましい環境で働ける可能性があります。

ここでは代表的な3つの支援制度を紹介します。

リワークプログラム

リワークプログラムとは、適応障害など心の健康問題がある休職者を対象に職場復帰を支援する制度です。さまざまな作業訓練やプログラムを通じて、ストレスとの向き合い方や対人スキルの習得、体調や気分の自己管理などを目指します。

リワークプログラムの実施機関には、医療機関・就労移行支援事業所・地域障害者職業センターなどが挙げられます。実施機関ごとの目的や費用は以下のとおりです。

医療機関就労移行支援事業所地域障害者職業センター
主な目的病状の安定・回復及び再休職の予防復職・転職または再就職の支援職場への適応に向けた支援
費用健康保険適用(3割負担/医療費の助成あり)世帯収入に応じて算出(無料~月額最大37,200円)無料


リハビリ出勤

リハビリ出勤とは、本格的に復職する前に実際の職場に慣れるための試し出勤制度です。法律上定められた制度ではないので内容は会社によって異なりますが、一般的には簡単な作業などから少しずつ実際の仕事に近づけていきます。

例えば最初は自宅と職場の往復から始め、次に自席で時間を過ごしてみたり、短時間だけ業務をしてみたりといった感じです。制度の有無や内容については、会社の人事に確認しましょう。また、リハビリ出勤が可能かは医師に相談することも忘れないでください。

就労支援サービスの利用

就労移行支援事業所やハローワーク、精神保健福祉センターなどでは、適応障害の方が利用できる就労支援サービスを提供しています。各サービスの内容や費用は以下のとおりです。

就労移行支援事業所ハローワーク精神保健福祉センター
サービスの内容就労移行支援の実施(職業訓練、就活支援、定着支援など)ケースワーク方式による一貫した就業支援(就活支援、生活支援、職場定着支援など)デイケアプログラムの実施、社会復帰相談など
費用世帯収入に応じて算出(無料~月額最大37,200円)無料無料

就労移行支援事業所が実施する就労移行支援とは、障害がある方を対象に一般就労を目指す障害福祉サービスです。利用できるのは18歳以上65歳未満の身体障害・知的障害・精神障害・難病がある方のうち、一般就労を目指している方が対象となります。世帯収入に応じて変動しますが、多くの場合無料で利用可能です。

Kaienの就労移行支援

Kaienでは適応障害や発達障害などの精神疾患がある方を対象に就労移行支援を実施しています。専門知識と経験があるスタッフのサポートのもとで、あなたに適した職種や職場を探すことができます。また、専門プログラムにより障害との付き合い方や苦手への対処法などを学ぶことも可能です。

Kaienの就職実績は過去10年間で約2,000人、就職率86%、就職1年後の離職率は9%と高い実績を誇っています。求人はコンサルやサービス、不動産、公的機関、運輸など幅広く、給与額は3人に1人が20万円以上と高い水準にあります。

また、Kaienではリワークプログラムも実施しています。就労に向けたトレーニングや就職後のフォローなどが必要な方はご相談ください。

ちなみに利用料は約9割の方が自己負担額0円で訓練を受けています。ご利用相談は事業所に直接来ていただいても、オンラインでも大丈夫なので、ぜひお気軽にお問い合せください。

Kaienの自立訓練(生活訓練)

適応障害の再発を予防するためには生活リズムを整え、ストレスの少ない環境で過ごすことが大切です。

Kaienの自立訓練(生活訓練)では、生活の基礎をつくるためのソーシャルスキルを習得することができます。カリキュラムには食事や睡眠のバランスを整える生活スキルや、リラックスの方法を身につける講座などがあり、自立生活をアシストしてくれます。

まずは生活習慣を改善したい、再発が怖く働く自信が持てないという方はKaienの自立訓練(生活訓練)の利用をご検討ください。

適応障害は再発に気をつけて無理のない就労を

適応障害はストレス因子を取り除いたり、ストレス因子から距離を取ったりすることである程度コントロールできます。ただ、ストレスに対して強い反応が出るという特性があるので、無理のない範囲での就労を心がけましょう。

復職や転職、再就職を検討する場合は、就労移行支援やリワークプログラム、リハビリ出勤などを活用する選択肢もあります。適応障害は必要な支援さえあれば、職場復帰も十分可能です。まずは自分の状態や特性を知り、ゆっくりと自分に適した仕事を探しましょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

監修者コメント

適応障害は、メンタルヘルス疾患の中で因果関係が確立された疾患と言えます。すなわち、もともと健康だった方が、人間関係や環境変化などのストレスによって不安・不眠などの症状を呈するといった、原因と結果の時系列があります。ストレスとなる原因がはっきりしているため、これを取り除けば多くは症状が改善します。職場でのストレスであれば、休職や配置転換が解決法となるでしょう。

しかしながら、原因を取り除いて配置転換や転職をしても、また適応障害になることがあります。その場合、再び原因を取り除く必要がありますが、その人のコミュニケーション・スタイルや仕事への適性など様々な要因を検討することがより重要になります。診察や心理検査によって発達障害が明らかになることもあるでしょう。

適応障害が続いて半年以上になると、診断はうつ病に変更されます。このように適応障害はうつ病との区別が難しい疾患ですので、不眠や食欲低下などいつもと異なる症状が2週間以上続く場合は、メンタルクリニックの受診をご検討ください。

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。


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