発達障害の方が報連相できないのはなぜ?苦手な理由や対処法、訓練できる支援先を紹介

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報連相とは「報告・連絡・相談」のことで、身につけておきたいビジネススキルの1つと言われています。報連相は仕事を進める上で必要なコミュニケーションとされていますが、発達障害*¹の方は報連相を苦手としているケースがよくあり、そのせいで仕事に支障が出る場合もあるのではないでしょうか。

この記事では、発達障害の方が報連相できない理由や対処法、報連相の訓練ができる支援先を紹介します。報連相が苦手な方はぜひ参考にしてみてください。

大人の発達障害とは

発達障害とは生まれつきの脳機能の発達のかたよりから、コミュニケーションが苦手だったり不注意や衝動性があったりと、日常生活に支障が出る障害のことを言います。

大学生以上の年齢の方の発達障害を「大人の発達障害」と呼び、社会人となって働き始めてから発達障害が判明するケースも珍しくありません。

発達障害は主に次の3種類があります。

自閉スペクトラム症(ASD)

こだわりが強くて融通が利かない、空気が読めないことが多くコミュニケーションが苦手などの特徴が見られます。

関連記事:大人のASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害など)

注意欠如多動症(ADHD)

不注意、多動・衝動性があり、集中力や注意力が不足しているといった特徴があります。

関連記事:大人のADHD(注意欠如多動症)

学習障害*²(LD)

「読む」「書く」「計算する」などの課題学習のうち、いずれかが極端に苦手なのが特徴です。

関連記事:大人のLD(学習障害)

発達障害の方が報連相できない理由

発達障害の方が報連相できない理由として、認知や判断に関する特性が挙げられます。特性により仕事にトラブルが生じるケースがあるのは、主に次のような理由によるものです。

  • 複数の情報をまとめて全体を把握する能力である中枢性統合が弱い
  • 目標のために計画を立て、見通しを持ちながら取り組む実行機能の弱さがある
  • 他者の気持ちを類推し、理解する能力である心の理論に欠けている
  • 言語理解の低さ
  • 見聞きしたことを短時間記憶したり、記憶を元に考えたりするワーキングメモリの弱さ
  • 時間の見積もりや感覚に乏しい

このような発達障害の特性が行動として現れた結果、報連相が苦手という印象を職場の上司や同僚に持たれることも少なくありません。

それでは、報連相を苦手と感じている場合、どう対処すればよいのでしょうか。次で具体的な対処法を見ていきましょう。

報連相が苦手な場合の対処法

報連相が苦手な場合、苦手な理由や特性に合わせた対処法をとることが大切です。主な対処法として、いくつか例を紹介します。

自己理解

報連相ができない理由として、自分が何を苦手としているか自己分析することが大切です。自分の特性や不得意なことを整理することで、場面に合わせた対処を知ることができます。

上司や同僚に相談する

自己判断だけでは難しい部分もあるので、まずは報連相が苦手なことを上司や同僚に相談した上で、自分に何が不足しているのかアドバイスをもらいましょう。特性に理解が得られれば、フォロー体制を整えてもらえる可能性もあります。

報連相スキルを養う

自分だけで改善できない場合には、報連相のスキルを身につけるための訓練を受けるという方法もあります。

これらの対処法を自分1人で実行するのは難しい場合も多いため、報連相のスキルをはじめとしたあらゆるビジネススキルが習得できる就労移行支援の利用をおすすめします。就労移行支援については、次で詳しく見ていきましょう。

報連相のスキルが身につく就労移行支援

就労移行支援とは、一般就業を希望する障害のある方を対象とした福祉サービスです。就労移行支援では、一人ひとりに合わせた支援計画に基づき、就労に必要なスキルの習得や就活相談ができます。発達障害の特性による困りごとの1つである報連相についても、対策スキルを身につけることが可能です。

就労移行支援を利用するには、次の条件をすべて満たしている必要があります。

  • 18歳以上65歳未満の方
  • なんらかの障害があると診断されている
  • 失業(休職)している
  • 一般企業への就職を希望している

なお就労移行支援は通所型のサービスのため、通いたい事業所を選ぶ必要があります。

発達障害の方に特化したKaienの就労移行支援

Kaienは発達障害の方を専門とした就労移行支援や生活訓練を提供しており、全国に事業所を展開しています。また、過去10年間の就職者数は約2,000人、就職率86%、定着率91%と、高い就職実績がKaienの強みです。Kaienが行っている就労移行支援の内容については、次で詳しく解説します。

実践的な100職種以上の職業訓練

Kaienでは、経理や人事、総務、企画、データ分析、営業などオフィス事務のスキルから、伝統工芸などものづくりスキルや軽作業などの手や体を使う仕事まで、100種類以上の職種の体験を通し実践的な職業訓練の機会を提供しています。これらの幅広い職業訓練の中から、あなたの特性を活かせる適職を見つけることが可能です。

また、プログラミングやデザイン、動画編集などIT系スキルを習得して仕事に活かしたいと考えている方向けに、専門コース(クリエイティブコース)も開設しています。

自己理解と対策に役立つ豊富なスキル講座

自己理解やスキルアップなど、就職準備から就活や実際の業務まで役立つKaien独自のカリキュラムは、50講座以上の用意があります。毎日セッションを実施しているので、幅広いスキルを効率的に習得することが可能です。

特にビジネススキルについては、Kaienオリジナルの教材で発達障害の方が苦手とする優先順位付けへの対処法や、上司への進捗報告の仕方など報連相に関する対策スキルも習得できます。

ほかにも職場の人間関係を円滑にするためのコミュニケーション総論や、自分の職業人生を設計するキャリア・プランニングなど、スキルアップが叶う講座が豊富です。

強みを活かせる求人紹介

Kaienでは発達障害に理解のある200社以上の企業と連携しているため、他事業所では扱っていない独自求人を紹介できます。また、担当カウンセラーがあなたの得意分野や特性の強みを活かせる求人を見つけるところから実際の就活までをしっかりとサポートするので、転職や再就職に不安を感じている方でも安心です。

就職後も安心の定着支援

Kaienでは、就職後の定着支援にも力を入れているのが特徴です。就職後、3年半にわたる就労定着支援や定着支援SNSなどを通じて、あなたが安定就労できるようにしっかりとサポートします。就労後に悩みやトラブルなどが生じた場合でも、担当スタッフが職場とあなたの橋渡しとなって困りごとの解決に努めます。

発達障害の特性を理解した働き方が大切

発達障害の方はコミュニケーションスキルや注意力が弱い傾向にあるため、報連相が苦手なことがよくあります。しかし、発達障害の特性を理解して対策を取れば、報連相の苦手をカバーしながら円滑に働くことも可能です。

スキルアップや自己理解を深めるKaienの就労移行支援を活用すれば、あなたの特性を活かせる働き方がきっと見つかります。ぜひお気軽にご連絡ください。

*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます


監修者コメント

報連相(ほうれんそう)は報告・連絡・相談をベースとした、組織の上下や左右にこだわらない意思伝達の標語として、昭和50年代後半に山種証券社長だった山崎富治氏が作りました(「ほうれんそうが会社を強くする」、ごま書房新社)。山崎氏は自社の社員が増える中で、社員の顔が見えにくくなってきたことを憂えて、上下関係なく「腹を割った相談」(山崎氏)ができるようにと考えたそうです。

そのように考えると、発達障害でコミュニケーションが不得手な人でも、気兼ねなく上司や同僚に相談できるように職場が対応しないといけないと思います。具体的には定期的に上司とワン・オン・ワンの面談時間を作ったり、チャット機能を使った情報共有システムを活用するなどです。例えば視覚能力の高い方が多いADHDでは、よりビジュアル化したツールで情報共有すると良いかもしれません。

現代では価値観の多様性が容認されるようになってきましたが、新しい技術を用いてコミュニケーションの多様性を認めることも、会社が進化するためのキーになるかもしれません。


監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。