統合失調症の方への接し方や支援のポイントを解説

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統合失調症は100人に1人の割合で発症するといわれており、決して珍しい病気ではありません。そのため、身近に統合失調症の方がいて、接し方が分からなくて戸惑うといったこともあるでしょう。

この記事では、統合失調症の方への接し方や支援のポイントについて解説します。統合失調症の方の治療を支援するポイントも紹介しますので、ぜひ最後まで目を通してみて下さい。

統合失調症とは

統合失調症とは、幻覚や妄想などさまざまな症状が現れる精神疾患の一つです。思考や行動のまとまりを欠いた状態になるため、行動や気分、人間関係などにさまざまな影響が出ます。

現状では、発症の正確な原因はわかっていません。遺伝だけの問題ではないとされ、親の育て方などは関係ないとされています。早めに治療するほど症状が重くなりにくいといわれており、早期発見と早期治療が大切です。

統合失調症の症状としては、大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」に分けられます。「陽性症状」は、統合失調症に特徴的な症状である幻覚、妄想などを指します。「陰性症状」は抑うつ、無気力、倦怠感などといった症状です。

認知機能障害としては、一つの物事に意識を集中できない、物事を覚えるのに支障があるといった症状が現れます。

統合失調症の方への接し方のポイント

統合失調症の方への接し方のポイントを紹介します。統合失調症の回復にはご家族などの周囲の方の協力が大きな助けとなるため、以下のポイントを踏まえて接するようにしてください。

症状が悪化する前兆を理解する

統合失調症の場合、症状が悪化する前兆が見られる場合があります。前兆にはさまざまな症状がありますが、理解して早めに対応ができるようにしておきましょう。

【症状が悪化する前兆の例】

  • 話の内容にまとまりがない、会話が支離滅裂
  • 身の回りのことや身だしなみに無頓着になった
  • 誰かに悪口を言われていると思い込んでいる
  • 眠れなくなる
  • 朝起きられなくなる
  • 感情表現が乏しくなり、顔や話し方に覇気がなくなる

なお症状は個人差があるため、自己判断はせずに早めに専門家に相談することが大切です。

統合失調症について理解を深める

統合失調症について理解を深め、生活のしづらさや再発のしやすさ、継続的な治療が必要であることなどについて把握しておきましょう。

統合失調症は生活をするのに必要不可欠な認知機能が低下し生活のしづらさを感じやすいといえます。認知機能とは、一つの物事に集中することや、物事を覚えること、理解の速さ、順序だてて考えるといったものが該当します。認知力の低下を理解し生活のしづらさをサポートすることが大切です。

また、統合失調症は再発しやすい病気といわれています。再発を繰り返すと社会機能も低下し、回復度合いも低くなるといわれているため、再発のサイン、症状の変化を見逃さないように気を付けるようにしましょう。

否定したり責めたりしない

統合失調症では、本人のことを否定したり責めたりしないことも大切です。

統合失調症では、本人が妄想や幻聴について語っている場合でも、本人にとってはそれは現実で恐怖や不安の対象となっています。それを周囲が否定すると本人の恐怖や不安が助長されてしまいます。否定せずに受け止めることが大切です。

また、統合失調症では病気のためにできないことが多くなります。それを、甘えやわがままととらえて批判したり、責めたりしないように気を付けましょう。

あくまで症状は病気のために生じているのであり、本人が悪いわけではありません。本人と病気とを分けて考え、本人を否定しないことが大切です。

苦しい気持ちに寄り添う

統合失調症では、本人の苦しい気持ちに寄り添う姿勢が大切です。

統合失調症の本人は、幻聴や妄想などの回復を妨げるさまざまな症状に悩み、苦しんでいます。それらのさまざまな症状に苦しむ本人の気持ちにまずは寄り添い、安心してもらうことが大切です。

それから苦しみを取り除く治療方法があることを、やさしく説明するようにしましょう。寄り添うことは、当人が治療に向き合う際の励みにもなります。

行動を制限しない

本人の行動を制限しないことも大切です。統合失調症の場合、周囲から見ると不可解な行動を取ることがあるため、行動を制限したくなることもあるかもしれません。

しかし、行動を制限して安心できるのは周囲だけであり、本人にとっては行動の制限がより強いストレスに感じられることが少なくありません。強いストレスを受けて症状が悪化してしまう可能性もあります。

症状を悪化させないためにも、よほど危険なケースでない限りは、行動を制限することなく、本人の意思を尊重し、ストレスなく自由に行動してもらうことが大切です。

本人ができる部分を認める

本人ができる部分を、周囲が認めることも重要といえるでしょう。統合失調症では、本人に対して批判的になりすぎず、過保護にもなりすぎないことが大切です。

調子の悪い部分だけでなく、健康な部分にも目を向け、今できること、今の目標、先の目標などと、本人のできることを明確にして接するようにしましょう。

本人は思うように行動できないと焦りや苛立ちを感じていることも少なくありません。できる部分に向けて取り組むように、励まし、達成できれば褒めるなどして、優しく見守ることが大切です。

本人の感情に振り回されすぎない

本人の感情に振り回されすぎないことも周囲の対応としては大切です。本人の感情に影響されて周囲もイライラしたり、感情が爆発しそうになったりすることもあるかもしれません。そうしたときは、少し本人から離れるなどして、冷静さを取り戻すようにしましょう。

自分自身の体調を崩さないためにも、極端な犠牲を払うといった無理をしすぎないことが重要といえます。余裕がなくなってきたら、相談窓口や周囲に話を聞いてもらうなどして、ストレスを溜めないようにしましょう。

統合失調症の方の治療を支援する際のポイント

統合失調症の方の治療を支援する際のポイントについて解説します。

継続的な治療をサポートする

統合失調症は、服薬や精神療法・リハビリテーションなどを組み合わせた適切な治療を継続的に受けることで回復が可能な疾患です。

継続的な治療が必要なため、継続的にサポートをすることが大切です。患者本人が安心して治療に専念できるような環境を作ったり、焦らず回復までの過程を見守ったりして支えるようにしましょう。

焦らずゆっくり見守る

治療が長引いても、焦らずゆっくり見守ることが大切です。

治療期間が長くなると、本人だけでなく、家族などの周りの人も、いつになったらよくなるのかと苛立ったり焦りを感じたりすることがあります。

周囲が焦って、本人を責めたりせかしたりすると、ただでさえプレッシャーを感じている本人の大きなストレスとなり、かえって症状が悪化することがあるため、注意しましょう。

また、焦って社会復帰をしても、ストレスで症状が再発することもあります。あせらずじっくりと治療を行うことが、再発防止にも役立ち、結果として早い回復につながるでしょう。

本人のやりたいことをサポートする

統合失調症の治療の支援では、本人のやりたいことをサポートすることも重要なポイントです。

統合失調症の場合、本人の気持ちが不安定になることも少なくありませんが、病気の治療においては本人の意思や希望を無視して勝手に進めることはできません。

本人と対話をして本人のやりたいことを確認しつつ、やりたいことができるようにサポートすることが大切です。

回復に向けたイメージを持つ

統合失調症の症状や正しい治療法を理解し、回復に向けたイメージを持つことも大切です。回復への道筋がイメージできることで、治療に取り組む本人も支える家族も、前向きになれる上、精神的なゆとりも生まれます。

焦りは禁物ですが、回復に向けた前向きなイメージを具体的に描くことは、安心して治療に取り組むことに役立つでしょう。

薬の副作用を理解する

統合失調症の治療に使う抗精神病薬の副作用を理解しておくことも重要です。例えば、抗精神病薬でよく見られる副作用には以下のようなものがあります。

【抗精神病薬に見られる副作用】

  • 体がだるくなる
  • 表情が乏しくなる
  • 手足がムズムズする
  • ろれつが回らない
  • 無意識に口や手足が動く
  • 体重が増加する

上記の副作用は統合失調症の症状と似ているものもあるため、薬の副作用かどうか見極めるのが難しいケースも少なくありません。本人がどの薬をどのタイミングで飲んでいるかなどの事情と併せて注意深く観察する必要があります。

症状が繰り返し出やすい病気であることを理解する

統合失調症は、症状が繰り返し出やすい病気であることを理解しておきましょう。統合失調症は、慢性疾患の一つで、再発しやすい病気です。再発を繰り返すと症状も重くなり回復も困難になるといわれています。

再発の兆候には個人差があるものの、よくあるパターンは下記のようなものです。

【再発の兆候】

  • 眠れなくなる
  • イライラする
  • 音に敏感になる
  • 注意力が散漫になる
  • 落ち着きがなくなる

こうしたサインが見られたら、再発の可能性を疑って、すぐに医療機関の受診を促すようにしましょう。家族や周りの気付きが再発防止に大きく役立ちます。

主治医と連携する

主治医と連携することも統合失調症の治療を支える際に重要なポイントといえます。なぜなら、家族が患者本人の様子を主治医に伝えることで、患者本人が適切な治療を受けられるからです。

患者本人に何か兆候が見られた際にすぐに相談できるような連携体制ができていると、治療が進めやすいといえるでしょう。また、家族も患者本人について心配な点があれば、主治医にすぐに相談できて安心できます。

家族や友人のサポートは治療への大きな助けになる

統合失調症の方への接し方について解説しました。統合失調症の回復には、家族や友人といった周囲の人のサポートが大きな助けになります。

特に治療のサポートについては、下記点を押さえた接し方が重要といえます。

  • 継続的な治療をサポートする
  • 焦らずゆっくり見守る
  • 本人のやりたいことをサポートする
  • 回復に向けたイメージを持つ
  • 薬の副作用を理解する
  • 症状が繰り返し出やすい病気であることを理解する
  • 主治医と連携する

特に、本人の症状の変化を、周囲が素早く察知して早めに対処することが、早期回復のためにも症状の悪化を回避することにも、役立つといえます。これらの情報が大切な家族や友人のサポートをする際のお役に立つと幸いです。

監修者コメント

統合失調症は、その疾患としての認識や治療の歴史がそのまま精神科の歴史と言える、代表的な精神疾患です。幻覚や妄想といった比較的周囲が認識しやすい陽性症状だけでなく、活動性が低下する陰性症状や認知機能の障害も出てくるため、生活全般に影響の大きい疾患でもあります。幻覚や妄想と言っても、特に初発時にはそれが現実として本人に認識されているため、治療導入に難しさもありますが、一旦しっかりと治療されると、最近の薬の効果が大きいこともあって、スムーズな療養生活を送れて回復することも多いです。そのため、早い治療導入が大事であり、また基本的には人生を通じて付き合っていく病気でもあるため、周囲の理解とサポートも不可欠です。統合失調症は、かつては精神分裂病と言われ、様々なイメージで語られてきた疾患でもあります。療養生活で迷うことがあったとき、今後の生活に不安があるときには、是非主治医や、信頼できるサポート機関の方に相談してください。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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