在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害*のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。今回のテーマは発達障害の人が中心になった職場はあり得るのかをお話しています。
発達障害の人が働きやすい職場では定型発達の人は働きにくい??
Aさん) 定型発達の人が企画立案したプロジェクトで発達障害の人を動かすのって難しいのではと思っています。逆に発達障害の人が考え出した器の中で他の人が働いた方が、私はお互いにとってやりやすいんじゃないかな、と思います。
スタッフ) Kaienや、当社が参考にしたSpecialisterne(デンマークの会社 ソフトウェアのテスターが8割を占めている)って、発達障害の人が働いても働きやすい職場っていうのを前提につくってきたんです。例えばコミュニケーションが超ダイレクトなんですね。その結果何が起こっているかっていうと、いわゆる定型発達の人がつらくなる部分があるのです。
Aさん) それはそうだと思います。
スタッフ) やっぱり、疲れちゃう人が出てくるのです。いちいち言語化しなきゃいけない。ルールを急に変えてはいけないとかですね。発達障害の傾向がない人・薄い人は、一緒に働く仲間と仲良くなりながら仕事をしていく感覚を得たいというのが一般的です。そういうのを求める人達が多い中で、サバサバしてタスクをカチカチ進める企業文化だと辛いようなんです。
Aさん) 私は不思議なのは、なぜ”定型発達”の人と”非定型発達”の人が一緒に働くという大前提があるのかが不思議なんですよ。定型の中に我々発達が入っても長く続きはしないということと、我々発達の中にいると定型がつらくて辞めちゃうっていうのであれば、そもそも共存が不可能ってことですよね。
会場) (笑)
人と人とのハブになる調整役が必要
スタッフ) 発達障害かどうかに関わらず、多様な文化で働く職場では、人や情報をつなぐ力を持っている人がより重要になってきますね。例えば発達障害の人を集めると、ブロックで例えると「T字型」の人が多すぎて、上手にプロジェクトの要素が全部埋まらないような感じです。能力が重なりすぎるといいますか。なのでそれを調整する人が必要です。
Aさん) でも結局その調整する人ってつらくなって辞めちゃうんですよね?
スタッフ) 確率が高いだけで、調整役になれる人が居ないわけじゃないと思っています。
Aさん) つまり発達障害の人が働きやすい企業文化に耐えられる人たちだけを、ふるいにかけていって。
スタッフ) そうですね。
Aさん) ウチに耐えられる人はがんばってねって感じ。
スタッフ) 調整役はすごく優秀で、かつ、愛がある人でないといけないと思うんですよ。
テトリスで例える つなげる役割の大切さ・大変さ
Aさん) 要は、発達障害のある人はスタンドプレイ選手ばかりで、みんな自分ではチームプレイしてるつもりなんだけど、実際はスタンドプレイをしているから。
スタッフ) そうです。
Aさん) チームの中で一緒に走って、おまえあっち行けよ、こっち行けよっていう人が必要だし。
スタッフ) 非常に高いコミュニケーションスキルが必要です。
Aさん) コーチが必要だってことですね。
スタッフ) はい。そうです(笑)。プロジェクトに必要な”色”が、発達障害の人を集めると全部揃うかっていうと、まあ揃わないだろうっていう感じですかね。
Bさん) テトリスみたいなもので、落ちてくるのがT字型のブロックしか無いから、積み上げて横一列に揃えるのがすごく難しくて、それを上手く組み立てるゲーマーがいないと、ゲームオーバーになる。
スタッフ) まさに(笑)。上手ですね、例えが(笑)。まさにそれです(笑)。
会場) (ウィットに富む的確な比喩に静かに沸く場内の参加者達)
Aさん) なるほど。
スタッフ) テトリスみたいに同じ棒しか下りてこないみたいな(笑)、困るのですね(笑)。なので発達障害の人に分かりやすい方法論で業務を進めるときも、プロジェクトメンバーの何割かをいわゆる定型発達の人にして、調整役として力を借りたほうが良いのです。とても大変な役回りにはなると思うのですが・・・。
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監修者コメント
これは面白い議論ですね。”定型発達”の人の集まりであっても、調整役というのは必要です。
難しいのは、調整役というのは「役職」ではなく、その人がいないとチームが成り立たないような「お母さん」みたいな人だ、ということです。議論でも「愛がある人でないといけない」と言われていたのは、まさにそうで「お母さんが子供を見守るように調整しなくてはいけない」ということなのだろう、と感じました。
目を凝らさないと見つからないのですが、そういう人って結構いて、しかし役職や給料では評価されないので、みな、無関心というか、スタンドプレーを続けているんですよね…。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
監修 : 益田 裕介 (医師)
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニック 院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医 精神分析学会所属
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