就労移行支援を利用したものの、さまざまな不満を感じて途中で利用を止めてしまった人もいるでしょう。また、就労移行支援の利用を検討しているのに「ひどい」という声を耳にすると、不安を感じてしまいますよね。
この記事では、就労移行支援の仕組みと不満を感じてしまう理由、自分にあった就労移行支援事業所を選ぶためのポイントを紹介します。就労移行支援の利用を考えている人や、自分にあった事業所を探している人は、ぜひ参考にしてくださいね。
そもそも就労移行支援の仕組みとは?
就労移行支援とは、一般企業への就職を目指している障害を持つ方を支援する制度です。利用者は就労移行支援事業所に通所し、就職に必要なスキルを身につけたり就職活動のサポートを受けたりできます。
この制度は障害者総合支援法に基づいた障害福祉サービスのひとつで、事業所は主に「障害福祉サービス等報酬」という補助金によって運営されているのが特徴です。受給できる補助金の額は、利用者の人数や利用時間、就職した利用者の定着率などによって決まります。
利用者が支払う利用料も事業所の収入源のひとつですが、利用料は利用者本人や世帯の所得によって決まるため、無料で通所している利用者も少なくありません。
就労移行支援はひどい?不満を感じてしまう理由
利用中の就労移行支援事業所について、実際に不満を持っている人もいるかもしれません。「事業所に行きたくない」と感じる場合は、なにが原因なのか考えてみましょう。
ここでは、就労移行支援に対する不満の主な理由について詳しく解説します。現在、実際に不満を抱えている人は、自分に当てはまるものがないかチェックしてみてください。
サービスが期待したものではなかった
「プログラムの難易度が低すぎる」「プログラムの内容が難しくてついていけない」など、想定していたサービス内容と実際のプログラムにギャップがあると不満を感じやすくなります。
例えば訓練や作業が簡単すぎると、「本当に就職に役立つの?」と心配になりますよね。反対に、プログラムが難しすぎたり自分にはあっていないと感じたりすると、事業所に通うのが苦痛になることもあります。このようにサービス内容が期待と合わないと、不満を感じる人が多いでしょう。
また、中にはWebサイトなどに記載されている内容と実際のサービス内容が異なるケースも見られます。例えば、都市部では事業所の数が多いために競争が激しく、利用者を獲得するために広告やWebサイトの内容を誇張しているところもあるのです。
このような事業所を選んでしまうと、当然ながら期待するサービスを受けられず、不満を感じてしまいます。
利用期間内に就職ができなかった
就労移行支援制度には、2年間の利用期限があります。就職を目指して通所しているのにこの期限内に就職できないと、不満を感じる人が多いでしょう。また、利用期限が迫っているのに就職の目処が立たないと、焦りや不安を感じますよね。
特に「具体的なサポートやアドバイスをしてもらえない」と感じる場合には、強い不満を持ってしまうでしょう。就労移行支援事業所は就職を目標に活動する場所なので、本来の目的が達成されないと、当然ながら利用者の不満の原因になります。
作業をしても賃金をもらえなかった
「就労移行支援事業所で軽作業に取り組んだのに、賃金がもらえなかった」という不満の声も聞かれます。苦労して作業したのに賃金がもらえないと、がっかりしてしまう人も多いでしょう。
しかし、就労移行支援は労働ではなく訓練のため、そもそも賃金は発生しない点に注意してください。同じく障害福祉サービスである就労継続支援は賃金や工賃が支払われるため、就労移行支援も賃金がもらえると思っている人もいるかもしれませんが、そうではありません。
就労移行支援を利用する際は、賃金が支払われないことを事前に理解しておく必要があります。
アルバイトができなかった
就労移行支援事業所に通所している間は基本的にアルバイトは禁止されており、経済面の不安から、事業所への不満につながる場合もあります。就労移行支援の利用期間中にアルバイトが禁止されているのは、そもそも就労移行支援は就職が困難な人のための制度だからです。
現時点でアルバイトができる人は、就労移行支援制度の対象ではないことを理解しておきましょう。このようなルールを事前に理解していないと、不満を感じる原因になります。
就労移行支援を利用中のアルバイトについては、以下の記事で詳しく解説しています。収入が心配な人のための制度も紹介しているので、ぜひこちらもチェックしてみてください。
関連記事:就労移行支援はアルバイト禁止は本当?バレる理由と利用できる制度も紹介
スタッフと合わなかった
就労移行支援事業所に在籍しているスタッフと「相性が合わない」と感じることもあり、不満の原因になるケースも見られます。人間同士なので、担当スタッフとのちょっとしたやりとりに不快感や違和感を覚えることもあるでしょう。
しかし、中には障害に対する理解が十分でなかったり、必要以上に厳しく接したりするスタッフがいないとも限りません。スタッフとの信頼関係が築けないと訓練や支援に支障が出てしまい、最終目標である就職ができるかどうかを左右する原因にもなります。
加えて、残念ながらスタッフの質が全体的に低い事業所も存在するのが現状です。例えば、地方では利用者が少ないため事業所の数も限られており、数カ所の事業所がその地域の就労移行支援事業を支配する「寡占状態」に陥っているところがあります。
寡占状態は利用者の選択肢が限られるため、サービスやスタッフの質が低くても利用者を獲得できてしまうのです。このような状態では、スタッフと合わないと感じる人も多いでしょう。
他の利用者と合わなかった
スタッフとの相性だけでなく、他の利用者との関係も不満の原因となることがあります。グループワークのようにコミュニケーションが必要なプログラムもあるため、他の利用者と合わないと感じると通うのが苦痛になるでしょう。
例えば、「他の利用者と意見が合わないことが多い」「ケンカなどトラブルに発展してしまった」といった場合には、事業所に行きたくなくなってしまいますよね。人間関係によって事業所内で快適に過ごせるかどうかが変わってくるため、他の利用者との相性が良くないと不満を感じる人が多いでしょう。
自分にあった就労移行支援事業所を選ぶためのポイント
ここまで紹介してきたように、さまざまな事情から就労移行支援事業所が「合わない」と感じることもあります。なるべくこのような事態に陥らないように、自分にあった事業所を選ぶことが大切です。
ここでは、就労移行支援事業所を選ぶときに考慮しておくべきポイントを4つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
サービス内容が自分のニーズにあっているか
サービス内容が自分のニーズにあっていないと、不満の原因になります。事業所によってプログラムの内容が異なるため、自分に必要な訓練や支援が受けられる事業所を選ぶことが大切です。
例えばプログラミングなどITスキルを身につけたい場合は、その分野を得意とする事業所を選ぶのがおすすめです。事前にサービス内容を確認し、自分の目標やニーズにあった事業所を選ぶことで、楽しみながら通所できるでしょう。
スタッフや事務所の雰囲気があっているか
事業所選びでは、スタッフや他の利用者の雰囲気が自分とあっているかも重要なポイントです。例えば、「一人で静かに作業がしたい」という人と「他の人とコミュニケーションを取りながら訓練したい」という人では、あっている事業所の雰囲気が異なります。
見学や体験ができる就労移行支援事業所も多いため、実際の雰囲気を確かめてから通所するかどうかを決めるのがおすすめです。自分にあった環境なら、積極的に訓練に取り組めるでしょう。
経済面も含め無理なく通える場所にあるか
就労移行支援は事業所に通って訓練や支援を受けるため、経済面も含めて無理なく通える場所にあるかどうかも重要です。「通所にかかる交通費が高い」「自宅から遠く、乗り換えも複雑」といった事業所は、通所が負担になってしまう可能性が高いでしょう。
サービス内容や雰囲気に加えて、通いやすさも考慮して事業所を選ぶのがポイントです。最寄り駅からの送迎バスなど、利用者が快適に通所できるよう工夫している事業所もあるので、事業所ごとの通所方法についても調べてみてくださいね。
就職者数や定着率など実績は十分か
最終的な目標は一般企業への就職のため、就職者数や定着率などの実績も確認しておきましょう。十分な実績のある事業所なら、サービス内容が充実している可能性が高いです。
就職率も参考になる実績のひとつではありますが、計算方法が事業所ごとに違う点に注意してください。例えば、「たまたま就職率が高かった期間の実績だけを公表している」「途中で辞めてしまった人は就職率の計算に含めていない」といったケースも見られます。
事業所の実績を確認するときは、1年間の利用者数や就職者数、辞めてしまった人数など、変えられない数字をチェックするのがポイントです。
自分にあった事業所を見つけることが重要
就労移行支援を利用する場合、自分にあった事業所を見つけることが大切です。まずは自分の目標や学びたい内容を決めて、それにあう事業所をいくつかピックアップしてみましょう。その中から、実績や通いやすさなどを考慮して選んでみてください。事業所の雰囲気も大切なので、気になる事業所には見学や体験に行ってみるのがおすすめです。
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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます