大人の発達障害*の方の場合、就職先を一般雇用で探すか障害者雇用で探すか多くの方が迷われます。診断や特性について就職先に伝えないで就職する「一般雇用」と、障害・特性をオープンにする「障害者雇用」のどちらを選ぶかによって働きやすさが大きく違ってきます。また一般雇用の場合、大企業に勤めるのか、中小企業に勤めるのかでも状況は大きく変わります。
このページでは「大企業」「中小企業」「障害者雇用(大企業)」「その他」のメリット・デメリットを説明していきます。なお障害者雇用での就業には障害者手帳の取得が必須です。発達障害の方の場合、精神障害者保健福祉手帳がほぼ問題なく発行されていますし、知的障害がある場合は療育手帳も取得可能です。
4つの選択肢 メリット・デメリットを表でまとめる
4つの選択肢 | 金銭面 | 安定性 | 職種の多様さ | 仕事の大変さ | 入社しやすさ | |
a | 大企業 | ◎ | ◎ | ○ | × | × |
b | 中小企業 | △ | △ | ○ | △ | ○ |
c | 障害者雇用(大企業) | △ | 〇 | × | ○ | △ |
d | その他 | × | × | ○ | △ | ? |
一般雇用のメリット・デメリット(大企業と中小企業)
一般雇用のメリットは、なんといっても職種の幅が非常に広いことです。専門職もふんだんにあります。会社の規模も多様で、経験を積んでいけば大きな仕事を任されるという仕事のやりがいもあります。また、それにともなって給料も上がっていきます。
デメリットは、メリットの裏返しといえます。給料が増えれば、仕事の幅や責任も大きくなり急な無理な残業もあります。また昇格すればリーダーシップも求められ、職場内や周囲から特性を配慮してもらえることはないでしょう。
中小企業では大企業に比べると様々な仕事を任されるため、同時並行・マルチタスクの難しさがある発達障害の人には厳しい環境と言えます。お給料も低めですし、体調を崩したときに労働組合がないことが多いため休職をしたり異動を申し出るということが現実的に難しい場合もあります。就職がしやすいのが中小企業の一般雇用の特徴ではありますが、入社後は発達障害の人には厳しい環境が待っている可能性が高いと言えましょう。
中小零細は避け、数百人レベルの会社へ
特に働きづらさでは、小さな企業(中小零細)は避けたほうがいいでしょう。従業員数十人程度の会社では一人の社員が何役もこなすところが多く、仕事に対して臨機応変な対応が求められます。これは発達障害の方が苦手とする同時並行や臨機応変さ、即時対応が求められる環境であるからです。また中小零細は数年後の存続さえわからない企業や、成長過程で弱肉強食のベンチャー企業が多いですので、どちらの場合も発達障害の特性には合いにくい環境でしょう。
ただし大企業だからすべてが花丸というわけではありません。仕事は細分化されているかもしれませんが、優秀な人に囲まれ、何事もスピードが速く、求められるレベルも当然高くなります。そうしたスピードやレベルについていくためには、幅広い能力や行動力が求められます。専門職に就けたとしても、大企業では若いうちから外部の協力企業や部下を使いこなすことが求められます。これらの業務は発達障害の苦手さが表面化しやすいといえます。
お勧めは社員数が100人から数百人程度のアットホームな社風で堅実な、良い意味で目立たない業界の会社です。具体例としてはビルメンテナンスの会社を考えてみましょう。業務内容は、基本的に時代が変わっても大きくは変わりません。変わるとしてもゆっくりとした変化であれば発達障害の人も対応することができるでしょう。何よりも堅実でコツコツとした業種・社風は発達障害の特徴が存分活きる、つまり戦力になれる可能性が高まります。
障害者雇用のメリット・デメリット
障害者雇用はその逆です。就職は契約社員が多いのですが、勤め先は大企業やその系列会社が多く安定しています。仕事の契約を打ち切られることは稀で、数年後には正社員に登用されるケースが増えてきています。個人の特性を配慮してもらえ、残業も多くの場合ありません。
職種が軽作業か事務作業程度しかなく、専門職が少ないことはデメリットの一つでしょう。給料面も昇給はあまりしません。年数がたっても同じような仕事しかしないため、昇給がしにくいという点があります。これは責任が過大になる可能性が少ないという点からはメリットかもしれませんが、逆に能力を十分に発揮できない、あるいは育ててもらえないという点からはデメリットとなりえます。
とはいえ、最近の傾向はやや明るさが見えています。障害者雇用でも近年は専門職が急速に増えているようです。特に首都圏では求人が多い一方で働ける障害者の方が少ないというのが企業の実感であり、給与や職種が一般雇用に近づきつつあります。
雇われない働き方は可能か?
大企業での一般雇用、中小企業での一般雇用、そして大企業での障害者雇用という選択肢をご紹介しました。最後にあるのが「その他」。ここではフリーランスや起業など雇われない働き方を指します。
フリーランスや起業家は何よりも自分のペースで働けるというところがメリットになります。また職種の幅も広く、自分の特徴を出しやすいのは確かでしょう。多くの人にとってはオフィスにいる8時間、まったく言葉を発することなく働くことは辛いことですが、発達障害の一部の人にはそういった環境を望む方も確かにいらっしゃいます。
一方で苦手を突きつけられる場面も多いでしょう。営業もする必要があるかもしれないですし、細かな経理の帳票を作成する必要があるかもしれません。税や保険などこまかな届け出をする必要があるかもしれませんし、同業他社とのお付き合いもしないといけないかもしれません。
なによりフリーランスや起業を選んだ場合、稼ぎは自分の腕にかかっています。体調を崩しても守ってくれる法律・制度はほとんどありません。不安定ながら自分を自分で雇うような道を選ぶか、会社組織の中で自由勝手を許してもらうだけの周囲を黙らす専門性を身につけるか、あるいは仕事は仕事と諦め、嫌なことが起こらない程度で我慢して、仕事以外で人生を楽しむか。いずれがよいのかは周囲と相談するなどして、しっかり決めておくべきでしょう。
一般雇用・障害者雇用は途中で変更可能
留意すべき点を最後にお伝えします。
まず一つ目は、一般雇用と障害者雇用どちらかをずっと続ける必要があるわけではないということです。障害者手帳を持ちつつ、一般雇用を受けることも出来ます。一般雇用での就職が続かない場合、障害者雇用に切り替えることは、その逆より容易です。もし、どちらにするかまだ決めかねている場合、とりあえず一般雇用を目指し、もし一般雇用では無理なようだったら障害者雇用に移行していくという方法をお勧めします。
また、障害者雇用については、業種にはあまりこだわる必要はありません。制度上配慮してもらえることになっていますし、業種によって配慮の程度がそれほど差がないからです。実際、就労移行支援を修了して働く人の中で障害者雇用で働く人は本当に多種多様な業界で働いています。
「この企業は発達障害の人の受け入れ実績があるから、理解がある」と考えるのは禁物です。発達障害による特性は人によって千差万別です。そのため、過去に2、3人受け入れた経験があった企業であっても、あなたの発達障害の特徴への対応は経験がない可能性があります。
このため“発達障害者”ではなく“あなた自身”を理解してもらえるように、支援機関などを頼って選考活動に臨んでいきましょう。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
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