うつ病での転職・再就職は不利?就職活動のポイントや利用できる支援機関を解説

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うつ病は誰しもなる可能性がある病気で、状態によっては自分で考えたり判断したりすることが難しくなる場合があります。働いている中でうつ病になってしまうと、休職や転職といった選択肢の中からどれを選べばよいのか分からなくなる方もいるでしょう。

本記事では、うつ病の方が転職や再就職をスムーズに行うために必要な考え方や、事前に準備したいポイントについて解説します。また、うつ病の方が利用できる就労に関する支援機関も紹介しているので、参考にしてください。

うつ病で転職・再就職を考える前に

転職や再就職は人生の中でも大きな決断の1つです。決断するまでに今の会社のことだけでなく、新しい会社のことまで考える必要があり、相当なエネルギーを使います。

ここでは、うつ病になり転職や再就職を考えた場合に何を優先すべきか、考え方や注意点を解説します。安易に考えて行動しないように、一度自分の状態や状況を見つめ直してみましょう。

うつ病のときに大きな決断をしない

うつ病のときは、考える力や判断力が低下することが多いため、大きな決断をしないことが大切です。例えば転職を考えるときでも、うつ病の場合だと「何が最善かわからない」「自分の思いがまとまらない」といった状態に陥る可能性があります。

この状態で大きな決断をしてしまうと、失敗したときに自分を責めたり強い後悔をしたりした場合に、自殺につながるリスクが高まります。特に転職の場合は、今の会社への配慮や自分の希望、次の会社で何をやりたいかなどを総合的に考えなければなりません。

転職は決断するまでに考えることや判断することが多く、失敗したときのリスクも大きいため、焦らずに症状が安定するのを待ちましょう。

十分休養がとれているかチェック

うつ病の症状が強く出ているときは、ストレスや疲れが溜まりやすい傾向にあります。転職や再就職などを考えるときは、まずしっかりと休養が取れているかをチェックしましょう。転職や再就職をするためには、大きなエネルギーが必要です。しっかりと自分の考えをまとめられるくらいに身体を休めることが、転職や再就職への第一歩となります。

しかし、中には休みを取りたいけれど「早く再就職や転職をしないと不利になるかも」といった考えから、休むこと自体がストレスになる場合もあります。その場合は一人で悩まずに、主治医や家族などに相談しながら解決策を見つけることが大切です。

うつ病の方は転職・再就職に不利?

うつ病のため転職や再就職をすることは必ずしも不利に働くとは限りません。一般雇用の場合はうつ病などの精神疾患のある方を採用対象としていないため、場合によっては避けられてしまうこともあるかもしれません。しかし、現在は障害者雇用や合理的配慮など多様な働き方を取り入れている企業も増えてきています。

うつ病の方の中には、治療と就活を同時に行うのは難しい人もいるかもしれません。うつ病の状態にもよりますが、治療と就活の並行が難しいようであれば、主治医と相談しながらまずは治療や休養を優先しましょう。

気をつけたいのが、うつ病が原因で転職を短期間でくり返すことです。早期に退職と再就職をくり返すと、入社してもうつ病を原因にすぐ辞めるかもしれないと判断される可能性があります。いずれにせよ、転職や再就職のための準備をしっかり行えば決して不利にはならないはずなので、体調を安定させ長期的に働ける職場や方法を見つけることが大切です。

うつ病の原因は発達障害の可能性も?

うつ病の治療をしてもなかなか改善しない、もしくは再発をくり返す場合は1つの可能性として発達障害*が隠れている場合があります。発達障害とは生まれつき脳機能にかたよりがあり、先天的な特性がある障害です。特性によるストレスや失敗体験などによって、うつ病などの精神疾患を発症することを二次障害といいます。

うつ病などの二次障害は発達障害の特性と見分けがつきにくいため、うつ病の治療だけしてもなかなか改善しないことも少なくありません。医師でも根本の原因である隠れた発達障害に気がつかないこともあるため、うつ病をくり返す場合は発達障害の可能性も視野に病院を受診してみましょう。

転職活動の前に準備したいポイント

うつ病の方が転職活動をする際には、事前準備が重要です。まずは体調面や制度、働き方など、押さえるべきポイントを理解しておく必要があります。以下の4つの内容をしっかりと把握し、転職活動に役立てましょう。

体調を整える

転職活動の前にしっかりと休養し、体調を整えることが大切です。うつ病の治療には薬物療法やカウンセリングだけでなく休養も含まれています。具体的な方法としては仕事の時間や量を減らす、休職する、リラックスできる方法を身につけるなどが有効です。

体調が良くなってくると、自己判断で服薬や通院をやめてしまう方も少なくありません。しかしうつ病は再発しやすく、適切な治療を続けないと悪化してしまう可能性があります。治療の継続は主治医とよく相談し、就活の進め方を決めていきましょう。

自己分析をする

転職や再就職を考えるときは、自己分析を忘れず行いましょう。うつ病になった経験を含めて、今後は何を重視して就職先を決めるかがポイントです。例えば、ストレスの要因を見極め自分に合う職場環境を探す、自分の強みを活かすなどが挙げられます。

困りごとや苦手なことが分かっている場合は、人との関わりの少ない在宅ワークや、ノルマの少ない企業を検討するなど、自分の特性に合った働き方を選択しましょう。また、自分がストレスを感じると起こる症状(イライラする、眠れなくなる、頭痛やめまいがするなど)を知っておくことも大切です。

経済的な支援制度を活用する

うつ病で休職すると、傷病手当金や自立支援医療制度などの支援制度が利用できます。傷病手当金はうつ病などで休職する方の生活を支援するために、休んだ日にち分だけ手当金が支給される制度です。条件を満たすと通算1年6ヶ月まで、給与の約3分の2程度の傷病手当金がもらえます。

自立支援医療制度は、うつ病などの精神疾患が原因で継続的な通院治療が必要な方が受けられるものです。手続きをすることで、医療費負担が3割から1割に軽減されます。金銭面に余裕ができると精神的にも楽になるため、使える制度は活用しましょう。

働き方を見直す

うつ病で働くことが難しくなったら、まずは職場に相談しましょう。職場によっては休職制度が利用でき、制度によっては手当を受けながら治療に専念できます。また、職場の雰囲気や業務内容が合わない場合は、部署の異動や在宅ワークが可能かを聞くのも1つの方法です。

うつ病になったからといって必ずしも転職を考えなければならないわけではありません。まずは今いる職場での働き方を見直し、それでも対応できない場合には転職を視野に入れ、働きやすい環境に身を置けるようにしましょう。

うつ病の方の雇用の選択肢

うつ病の方が転職や再就職をする場合の選択肢として、障害者雇用と一般雇用が挙げられます。どちらの雇用方法にもメリットとデメリットがあるので、しっかりと理解しておくことが大切です。特に障害者雇用は誰でも応募できるわけではありません。

ここからは、障害者雇用と一般雇用の違いやメリットやデメリットを解説します。

障害者雇用

障害者雇用は障害のある方を対象とした雇用枠で、障害者手帳を持っている方が応募できます。

障害者雇用のメリットは勤務時間や業務内容、職場環境などへの理解やサポートが手厚いことです。障害の種類や程度に合わせて、時間や配慮事項などを変えてもらえるので、働きやすいと感じられるでしょう。

一方、デメリットは原則として障害者手帳が必須で、手帳がない方は取得が条件です。他にも、障害者雇用は求人数が少ないため、自分の思い描く仕事がなかなか見つからない可能性も考えられます。

一般雇用

一般雇用は企業が決めた条件を満たす方なら誰でも応募できます。一般雇用のメリットは障害者雇用に比べて求人数が多く、自分の希望に合った就職先を見つけやすいことです。また、障害者手帳なども必要ないため、精神疾患があることをどうしても周囲に伝えたくない場合には一般雇用を選ぶとよいかもしれません。

一方、デメリットは病気や障害に対してのサポートが少ない点です。うつ病がある場合でも、合理的配慮は受けられるものの、すべての企業が十分な配慮や理解を示してくれるわけではありません。就職後の働きやすさも考慮しながら雇用方法を選択しましょう。

うつ病の方が転職・再就職に利用できる支援機関

うつ病の治療を行いながら就職・転職活動をするのは困難を極めます。1人で求人探しから履歴書の作成、面接対策などを行うのは労力もかかるので、専門の支援機関に頼るのも1つの手です。

うつ病の方が転職や再就職、復職に利用できる支援機関は以下の通りです。

  • 就労移行支援事業所
  • ハローワーク
  • 精神保健福祉センター
  • 地域障害者職業センター
  • 地域若者サポートステーション
  • リワークなど

上記の支援機関では、うつ病などの精神疾患に関する専門知識をもった支援員が多くいるため、自分に合った働き方や仕事選びのアドバイスを受けることが可能です。雇用数が少ないとされる障害者雇用の求人を多く紹介してくれる支援機関を活用すれば、再就職もスムーズにいくかもしれません。

まずは、各支援機関の特徴や支援内容を理解し、自分に合った相談先を決めていきましょう。詳細はこちらの記事を参照ください。

うつ病でも働ける場所はある?向いている仕事とは?利用できる制度や支援先についても紹介

うつ病の方の就活サポートは就労移行支援がおすすめ

就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの1つです。障害のある方の就労をトータルサポートするのが特徴で、主な支援内容は「職業訓練」「就活支援」「定着支援」などが挙げられます。

職業訓練ではスキルの習得や実務体験などを行い、就活支援では面接の練習や履歴書作成といった就活に関わるサポートが受けられます。定着支援では、企業へ入社した後に生じる様々な問題の相談に乗り、不安を和らげるなどのサポートを行うのが特徴です。

うつ病で休職中の方でも、以下の条件を満たせば就労移行支援が利用できるのもポイントです。

  • 休職中の方を雇用する企業、地域の就労支援機関、および医療機関が復職支援(リワーク支援等)ができない場合、または困難である場合
  • 休職中の方が復職を希望し、企業および主治医が支援による復職を適切と判断している場合
  • 休職中の方が就労移行支援などを利用することでより効率的かつ確実に復職につなげられると市区町村が判断した場合

参考:厚生労働省 「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A

Kaienの就労移行支援の支援内容

Kaienでも就労移行支援を行っています。就職実績は過去10年間で約2,000人、就職率が86%に対して就職から1年後の離職率は9%と低いのも強みです。

Kaienでは主に以下のような支援を実施しています。

  • 100職種以上の実践的な職業訓練
  • 独自のカリキュラムで多方面のスキル習得
  • 独自求人を含む豊富な求人を扱う就活サポート
  • 就職後も安心の定着支援

就活支援ではKaien独自の求人があり、発達障害やうつ病などの精神疾患に理解のある企業200社以上と連携し、あなたに合った求人を見つけるサポートを行います。働き方も様々で、3人に1人が給与20万円以上の企業へ就職できていることも強みです。

Kaienでは通所はもちろんのこと、在宅で支援が受けられるオンラインサービスも実施しています。興味を持たれた方は、無料で相談会や体験利用も実施していますので、お気軽にご相談ください。

Kaienの自立訓練(生活訓練)

うつ病で働く自信がまだない方や、生活習慣が乱れてしまっている方には、就労移行支援の前に自立訓練(生活訓練)の利用がおすすめです。Kaienではうつ病などの精神疾患がある方に対し、自立した生活を送れるよう、各種サポートを行っています。

食習慣や規則正しい睡眠、リラックスの方法といった生活スキルを習得できる講座や実践プロジェクト、カウンセリングなどを通し、あなたの自立をアシストします。就職までまだ気持ちが向いておらず、まずは自立した健やかな生活を送ることを目標としている方は、ぜひKaienの自立訓練(生活訓練)をご活用ください。

うつ病の方の転職・再就職は支援機関の活用を

うつ病になると自分一人で転職や再就職の判断をするのはリスクが大きいため、医療機関や支援機関に協力を求めましょう。また、傷病手当金や自立支援医療を活用すれば金銭面での援助も受けられます。

就労移行支援では、うつ病の方の復職や転職、再就職に向けて、あらゆる就労面でのサポートを行っています。条件を満たせば休職中での利用も可能です。Kaienでも一人ひとりの症状や特性に寄り添った就労支援を実施しておりますので、うつ病の方で仕事に対して悩みや相談がある場合は、ぜひお気軽にご連絡ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

監修者コメント

うつ病と不安は、自由が保障されればされるほど増えると言われると、逆説的に聞こえたり、皮肉に感じる方は多いでしょう。しかし、自由とは常に個人の主体的な意思決定を求められるもの(制度)なのです。誰からも拘束されることがない反面、自身の決定による結果は自分で負わなければならないのです。この「自業自得」状態を自覚することで人々は不安になったり、うつ状態になって意思決定を回避しようとしたりします。さらには、自由による不安から権威主義やファシズムに逃避する人間の姿をエーリッヒ・フロムは『自由からの逃走』で論じました。

うつ病の最中に転職を勧めないのは、この不安に縛られて本来の自分とは異なる意思決定をするリスクがあるからです。ところが、うつ病はその人特有の考え方に大きく依存するため、同じ職場に復職しても再発するリスクもまた、あります。

ベストセラーとなったマンガ『うつヌケ』作者の田中圭一さんは、気温と体調をエクセルで管理することによって、自身のうつ状態が気温差に左右されるというパターンを掴むことができました*1。「うつヌケ」の方法には個人差がありますが、ご自分の気分や客観的指標を記録することで、あなたらしいうつ病対策が見つかることでしょう。

*1: https://www.gqjapan.jp/life/grooming-health/20190522/utsu-nuke-interview-1

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。


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