障害者雇用の給料はいくら?平均値と給料をアップさせる方法を紹介

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障害者雇用に対して「給料が低い」というイメージを持っている人も多いかもしれません。また、実際に障害者雇用で働いていて、「もっと給料をアップさせたい」と感じている人もいるでしょう。

実際のところ、障害者雇用の給料はどのくらいなのでしょうか。この記事では厚生労働省が公表する調査データから、障害者雇用の給料の平均値を紹介します。給料をアップさせる方法や障害者雇用に関する相談先なども紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

障害者雇用とは?

障害を持つ人の就職活動では、障害者雇用と一般雇用の2つの選択肢があります。障害者雇用と一般雇用には異なる特徴があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。自分に合った選択ができるように、違いを十分に理解したうえで就職活動を進めましょう。

以下で障害者雇用と一般雇用の違いやメリット・デメリットを紹介するので、ぜひ参考にしてください。

障害者雇用と一般雇用との違い

障害者雇用とは、障害者手帳を持つ人を対象とした雇用枠のことです。障害者雇用促進法では、従業員が40人以上の事業主は障害者を1人以上雇用しなければならないと定めています。そのため、多くの企業が障害者雇用枠を設けています。

障害者雇用と一般雇用の大きな違いは、対象者です。障害者雇用が障害者手帳を持つ人を対象としているのに対し、一般雇用は障害の有無に関係なく誰でも応募できます。そのため、障害を持つ人は、障害者雇用と一般雇用のどちらを利用するかを自分で選ぶことが可能です。

参考:厚生労働省「事業主の方へ」

障害者雇用のメリット・デメリット

障害者雇用のメリットは、障害についてオープンにすることで、職場からの配慮やサポートを受けやすい点です。症状や特性を事前に職場に伝えておけるので、働くうえでの負担がなるべく少なくなるよう調整してもらえます。例えば、時差出勤や短時間勤務などを希望する場合でも、相談しやすいでしょう。

一方デメリットは、一般雇用に比べて職種や求人数に限りがあることです。希望に合う仕事が見つからず、就職活動が難航するケースもあります。

また、一般雇用と比べて給料が低い傾向にある点にも注意が必要です。障害者雇用の給料が低くなりやすい理由については後ほど詳しく解説しますが、収入面でのデメリットがあることも把握しておきましょう。

障害者雇用の給料の平均値

障害者雇用は給料が低い傾向にあるとお伝えしましたが、実際にどのくらいの収入が得られるのか気になる人も多いでしょう。ここでは、障害の種類別に障害者雇用の給料の平均値を紹介するので、参考にしてみてください。

なお、ここで紹介する給料のデータは、いずれも厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」に基づいています。

発達障害者

発達障害*を持つ人の1ヶ月の平均賃金は、13万円でした。週の労働時間別の平均賃金については、次のようになっています。

週の労働時間1ヶ月あたりの平均賃金
30時間以上15万5,000円
20時間以上30時間未満10万7,000円
10時間以上20時間未満6万6,000円
10時間未満2万1,000円

また、発達障害の人を対象とした就労移行支援を行う株式会社Kaienでは、2022年度に「発達障害のある方の就業実態調査」を実施しました。こちらの調査では平均年収が291万3,600円という結果が出ていて、1ヶ月あたりに換算すると24万2,800円です。

厚生労働省とKaienの調査結果を比較すると、1ヶ月の平均賃金に10万円ほどの差があることがわかります。どのくらいの給与がもらえるかは職場や仕事内容、勤務時間などによって大きく変わるため、今回紹介するデータはあくまで「平均」であることを意識しておきましょう。

精神障害者

精神障害を持つ人の1ヶ月の平均賃金は、14万9,000円でした。週の労働時間別の平均賃金については、次のようになっています。

週の労働時間1ヶ月あたりの平均賃金
30時間以上19万3,000円
20時間以上30時間未満12万1,000円
10時間以上20時間未満7万1,000円
10時間未満1万6,000円

身体障害者

身体障害を持つ人の1ヶ月の平均賃金は、23万5,000円でした。週の労働時間別の平均賃金については、次のようになっています。

週の労働時間1ヶ月あたりの平均賃金
30時間以上26万8,000円
20時間以上30時間未満16万2,000円
10時間以上20時間未満10万7,000円
10時間未満6万7,000円

知的障害者

知的障害を持つ人の1ヶ月の平均賃金は、13万7,000円でした。週の労働時間別の平均賃金については、次のようになっています。

週の労働時間1ヶ月あたりの平均賃金
30時間以上15万7,000円
20時間以上30時間未満11万1,000円
10時間以上20時間未満7万9,000円
10時間未満4万3,000円

障害者雇用の給料が低い傾向にある理由とは?

障害者雇用で働く人の給料が低い傾向にあるのは、次のような理由が考えられます。

  • 勤務時間が短い
  • 非正規雇用の割合が多い
  • 仕事内容に制限がある場合がある

それぞれの理由について、以下で詳しく見ていきましょう。

勤務時間が短い

障害者雇用では、さまざまな事情により長時間の勤務が難しい人も多くいます。勤務時間が短くなると、その分給料も少なくなるため、障害者雇用で働く人の平均賃金は低くなりがちです。先ほど紹介した平均賃金のデータでも、週の労働時間が短いほど賃金が低くなっています。

令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」では、労働時間に関する調査も行っています。以下は、障害の種類別に週所定労働時間ごとの雇用者数の割合を示したものです。

障害種別通常(30時間以上)20時間以上30時間未満10時間以上20時間未満10時間未満
発達障害者60.7%30.0%4.8%3.9%
精神障害者56.2%29.3%8.4%2.7%
身体障害者75.1%15.6%7.2%1.2%
知的障害者64.2%29.6%3.2%2.1%

半数以上の人が週30時間以上働けている一方で、週の労働時間が30時間未満の人も少なくありません。

非正規雇用の割合が多い

非正規雇用は正規雇用と比較して給料が低くなりがちで、障害者雇用には非正規雇用の割合が多いという特徴があります。

令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」では、雇用形態に関する調査も行っていて、以下は障害の種類別の雇用形態の割合です。

障害種別無期契約の正社員有期契約の正社員無期契約の正社員以外有期契約の正社員以外
発達障害者35.3%1.3%23.8%37.2%
精神障害者29.5%3.2%22.8%40.6%
身体障害者53.2%6.1%15.6%24.6%
知的障害者17.3%3.0%38.9%40.7%

身体障害者以外は、正社員の割合が半分以下となっています。このような雇用形態の現状も、障害者雇用の平均賃金が低くなる理由のひとつです。

仕事内容に制限がある場合がある

障害者雇用は、一般雇用と比較して仕事内容に制限があるケースも少なくありません。例えば、障害が理由で顧客のもとに出向くのが難しいと、障害のない人よりも対応できる業務の範囲が狭まってしまいます。

仕事内容に制限があると、思うようにキャリアアップや昇給が進まない可能性があります。その結果、勤続年数を重ねても給料が上がりにくく、低い給料のまま働き続けることになりかねません。これも、障害者雇用で働く人の平均賃金が低くなりがちな理由のひとつです。

障害者雇用で給料をアップさせるための方法とは?

一般雇用と比べて障害者雇用の給料は低い傾向にありますが、対策次第で給料をアップさせることは可能です。具体的には、次の2点を意識してみてください。

  • 仕事に役立つ資格を取得する
  • 正社員登用制度で正社員を目指す

これら2つの方法について、以下で詳しく解説します。

仕事に役立つ資格を取得する

仕事に役立つ資格を取得することで、特別な手当が付いたり、昇給につながったりする可能性があります。手当の有無や必要な資格の種類は職場によって異なるため、上司や同僚に相談してみるとよいでしょう。

また、資格がないと担当できない業務もあるため、資格取得により担当できる業務の幅が広がれば、それが給料アップにつながることもあります。さらに、より給料の高い企業へ転職するチャンスもあるかもしれません。

このように、資格取得にはさまざまなメリットがあります。現在の仕事や、これから就職を目指す職種に必要な資格がないか、ぜひ調べてみてください。

正社員登用制度で正社員を目指す

現在、パートやアルバイトなど非正規雇用で働いている場合は、正社員になることで給料アップが期待できます。多くの企業では非正規雇用から正規雇用へ変更する「正社員登用制度」を設けているため、まずは現在の職場にこの制度があるかどうか確認してみましょう。

現在の職場で正社員になることができれば、給料アップだけでなくキャリアアップにもつながります。仕事の幅が広がり、やりがいや楽しさをより感じられるようになるかもしれません。

もし、現在の職場で正社員を目指すのが難しい場合や、これから就職活動を始めたいという人は、転職活動や就職活動で正規雇用を目指す方法があります。障害者の転職や就職について相談できる機関や利用できるサービスを次に紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

障害者雇用の求人に関する相談先や利用できるサービス

障害者雇用で就職や転職を考えている場合は、次のような機関やサービスの利用がおすすめです。

  • ハローワーク
  • 地域障害者職業センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 就労移行支援

これらの機関やサービスは、いずれも障害を持つ人の就労に関してノウハウや専門知識を持ったスタッフが対応してくれます。不安なことや困ったことがあれば、気軽に相談してみましょう。

それぞれの機関・サービスについて、以下で詳しく紹介します。

ハローワーク

全国のハローワークには、障害を持つ人専用の相談窓口が設けられています。障害者の就労に詳しいスタッフが在籍しているので、これまでの経歴や障害特性などを考慮して適切なサポートが受けられます。

まずは、「より給料の高い職場に転職したい」「正社員として働きたい」といった自身の希望を伝えてみましょう。ハローワークは企業と連携し、条件に合う求人を出してもらうよう事業主への働きかけも行っています。

加えて、公共職業訓練のあっせんやトライアル雇用といった各種支援策も活用しながら、障害者の就労支援を実施しています。また、後述する地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターとも連携していて、一人ひとりに合った選択肢を提示してもらえるのも特徴です。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、ハローワークなどの地域の就労支援機関と連携しつつ、障害を持つ人に対して専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。このセンターは全国の47都道府県に設置されているので、お住まいの自治体に設置されているセンターの場所を調べてみましょう。

具体的な支援内容としては、それぞれの能力をもとに必要な支援内容を検討する「職業評価」や、センター内で作業体験や訓練を行う「職業準備支援」などがあります。

さらに、就職先の企業にジョブコーチを派遣し、障害者と企業の双方をサポートする取り組みも行っています。これにより、就職後の定着支援を受けることができるのもメリットです。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害を持つ人が働きながら安定した日常生活を送れるように支援する機関です。利用者には就業支援担当と生活支援担当がそれぞれ付き、就業面と生活面について一体的な相談・支援を行います。

就業面の支援内容は、それぞれの能力に合った仕事選びや就職活動の支援、就職後の職場定着に向けた支援などです。一方、生活面については、生活習慣の形成や健康管理、金銭管理の助言など、日常生活や地域生活をスムーズに送るための支援を行います。

就業面ではハローワークや地域障害者職業センター、生活面では福祉事務所や医療機関など、さまざまな機関と連携しながら、一人ひとりに必要な支援を提供しています。

就労移行支援

就労移行支援は、障害を持つ人が就労を目指す際に利用できる障害福祉サービスです。利用者は就労移行支援事業所に通い、就労に必要なスキルや知識を身につけたり、就職活動のサポートを受けたりすることができます。

就労移行支援では、最初にそれぞれの障害特性や希望に合わせて就労プランを作成し、そのプランに基づいて就職活動を進められるのが特徴です。「すぐに転職活動を始めたい」「スキル習得からじっくり進めたい」など、希望を伝えてみましょう。

また、就労移行支援事業所は「発達障害の強みを活かせるカリキュラムがある」「プログラミングやWebデザインなどITに特化している」など、事業所ごとに特徴があります。自分に合った事業所を選べるよう、事前の相談や見学なども活用してみてください。

障害者雇用の給料の傾向について理解しておこう

障害者雇用は、一般雇用と比べて給料が低い傾向にあるのが現状です。その理由としては「勤務時間が短い」「非正規雇用の割合が多い」などが挙げられます。まずは、こうした給料の傾向と理由について理解したうえで、給料アップに必要な対策に取り組みましょう。

ハローワークや就労移行支援など、障害者雇用について相談できる機関や利用できるサービスは複数あります。就職活動や転職活動に不安がある人は、ぜひ積極的に活用してみてください。

就労移行支援の利用を検討している方は、ぜひKaienにご相談ください。Kaienでは発達障害の強みを活かした就労移行支援を実施していて、専門家が推奨する充実したプログラムが受けられます。見学・個別相談会も実施しているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます