就職や転職における面接では、「緊張してうまく話せないのではないか」「何を話せば良いかわからない」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。特に発達障害*の方は特性も影響するため、面接に対しての不安が大きいかもしれません。
面接への不安は、事前の練習や対策により軽減できます。面接練習にはさまざまな方法があるため、この記事では効果的な面接練習のやり方について解説します。面接練習をサポートしてくれる支援機関も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
発達障害の方は面接練習が必要?
発達障害の有無に関わらず、就職や転職の面接には練習が必要です。面接では初対面の面接官と対面し、限られた時間内で志望動機や自分の長所・短所などを伝えなければなりません。特に、発達障害の方はコミュニケ―ションが苦手な場合があるので、準備をせずに面接に臨むと失敗のリスクが高まります。
面接で緊張をしないためにも、あらかじめ質問されそうなことや伝えるべきことを整理し、スムーズに受け答えできるように練習しておきましょう。
面接練習をするメリット
面接は段階を経て複数回実施される場合もありますが、基本は一回限りのチャンスです。なので、できるだけ準備をして臨むことが重要です。あらかじめ面接の練習をしておくことには主に次のようなメリットがあります。
- 面接に対する不安を解消できる
- 自己分析につながる
- 話し方や伝え方を改善できる
それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。
面接に対する不安を解消できる
面接にはさまざまな不安がつきものです。例えば、「自分の特性をどの程度伝えてよいのか」「就職にあたって心配なことがあるが質問してもよいのか」など、面接官に伝える内容について迷うこともあるでしょう。
また、「緊張せずにきちんと受け答えができるだろうか」「面接官に好感を持ってもらうために、どのようなことに気をつけるべきか」など、精神状態や面接中の振る舞いに関する不安もあるかもしれません。事前にしっかりと面接練習をして対策しておくことが、このような迷いや不安の解消につながります。
自己分析につながる
面接の練習を通じて質問への回答内容が整理されていき、自分を客観視できるようになります。すなわち、自分の障害特性や得意・不得意などの自己分析が進めば、希望する職場環境など就職に対するビジョンを明確に持てるようになるのです。
特に、自分の苦手なことに関する質問をされた際に落ち着いて受け答えできるようにするには、自己分析と自己理解が欠かせません。
話し方や伝え方を改善できる
面接の本番を想定して練習してみると、適切な声の大きさや話すスピード、話す長さなどがわかってきます。
実際に声に出して話してみると、頭の中で描くイメージとのギャップに気付くでしょう。例えば、「思っていたよりも自分の声が小さい」「早口または、しどろもどろになってしまう」「内容がまとまらず、だらだらと長く話してしまう」「はい、いいえなど、短い返事ばかりでしっかりと答えられていない」などです。それらを見直して改善につなげられることも面接を練習するメリットと言えるでしょう。
発達障害の方が面接練習前にすべきこと
効果的な面接練習をするためには、事前準備も大切です。まず、質問に対する答えや面接官に質問する内容を明確にしておかないと、面接の練習をしてもうまくいきません。
発達障害の方は、面接の練習をする前に次の準備を行いましょう。
- 自己理解
- 企業研究
- 回答内容を書き出す
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
自己理解
自己理解が不十分なままで面接に臨んだ場合、仕事への熱意や意欲をうまく伝えられず、面接官へのアピールが弱くなってしまいがちです。また、自分とミスマッチした企業を選んでしまうこともあります。それらが原因で採用に至らない例も少なくありません。
面接を成功させて自分に合う職場に就職するためには、十分な自己分析と自己理解が必要です。自身の障害特性や強みと弱み、得意不得意、仕事における将来のビジョンと価値観などをしっかりと自己分析し、就活の軸を作り上げることが大切です。
企業研究
「なぜこの会社に入社したいのか」「入社後、自分はどのような仕事をしたいのか」を示す志望動機は、面接官が入社意欲や入社後の貢献度を計る基準の1つです。面接を受ける企業の事業内容や実績などを調べ、自分に合った企業を選ぶことが、よりよい志望動機の作成につながります。
企業研究の具体的な方法は、コーポレートサイトで企業の歴史やビジョン、事業内容などをしっかりチェックすることです。また、就活サイトで企業の評判や実際に働いている社員の声などをチェックし、自分との相性を確認しましょう。
回答内容を書き出す
面接で聞かれそうな質問をピックアップし、それに対する回答を書き出すことも有効な方法です。書き出し作業を行うことによって、漠然としたイメージを整理し、言語化・可視化することができます。また、書き出した回答内容を見直して改善点を見つけたり、スムーズに回答できるように暗記したりすることも大切です。
回答内容を文章化する時は、実際に面接で答えるシーンを想定し、丁寧な話し言葉で書くほうが熱意が伝わりやすくなります。書き言葉で文章化した内容を暗記すると、実際の面接で答える時に感情がこもりにくく、不自然な印象を与えてしまう場合があるので注意しましょう。
一人でできる面接の練習方法
面接の練習は一人でも行えます。その場合の主な練習方法は次の4つです。
- スマホで面接練習を撮影
- 音声入力機能を活用する
- 面接動画を参考にする
- アプリなどでAIとやり取りする
それぞれの練習方法について、以下で詳しく見ていきましょう。
スマホで面接練習を撮影
一人でできる簡単な練習方法として、スマホでの撮影が挙げられます。面接練習中の自分の受け答え方を撮影し、チェックしてみましょう。動画を見返すと自分の良いところも悪いところも客観視でき、頭の中でイメージしていた時には気付かなかった改善点が見えてきます。チェックすべき主なポイントは次の通りです。
- 服装や髪形、メイクなどの身だしなみは適切か
- 背筋を伸ばしてまっすぐに座れているか
- 体を前後左右に揺すったり、手足を動かしたりしていないか
- 自然で場にふさわしい表情で話せているか
- 下や横を向かず視線は面接官に向いているか
- 声の大きさやスピードは面接の場に適しているか
- 一度に話す長さは適切か
一人でスマホ撮影が難しい場合は、鏡の前で面接練習をするのも有効です。
音声入力機能を活用する
スマホなどの音声入力機能を使うと、面接の回答内容のブラッシュアップができます。音声入力機能を使うと話した内容がそのまま文字化されるので、撮影した動画をチェックするだけでは気付きにくい話し方のクセや言い回しなど、改善点を見つけることが可能です。
やり方は簡単で、スマホのメモ帳アプリやドキュメントアプリ、メールアプリなどを開き、入力欄のマイクアイコンをタップして音声入力を有効にした状態で面接練習を行いましょう。入力が終わったら出力された文章を見直し、次の点をチェックします。
- 質問内容からずれた回答になっていないか
- 回答内容が支離滅裂だったり矛盾していたりしないか
- 自分や親しい人にしか意味が通じない用語を使っていないか
面接動画を参考にする
YouTubeや就活サイトなどでは、面接のハウツーをわかりやすく解説した動画が公開されています。お手本になる動画を見て面接のイメージトレーニングができる他、失敗例を見て参考にすることもできるでしょう。面接でよく聞かれる質問や、面接官に良くない印象を与える振る舞いなどを解説した面接動画もあるため、活用してみてください。
アプリなどでAIとやり取りする
面接の練習相手にAIを活用するのも1つの方法です。長期にわたる就活ノウハウのデータを搭載したAIが面接練習の相手となれば、よくある質問をピックアップして回答内容を録画・録音したり、結果を分析したりしてくれます。また、回答内容に応じた面接レベルチェックや改善点・課題などのフィードバック、回答内容の文字化なども自動で行うので、効率的に面接練習をすることができます。スマホアプリなどで利用できるので、自分に合うAIアプリを活用してみましょう。
発達障害の方が面接で伝えるべきポイント
面接ではポイントを絞って、面接官にわかりやすく伝えることが大切です。発達障害の方が面接で伝えるべきポイントとして次の2点が挙げられます。
- 自分の障害特性
- 希望する配慮事項
それぞれのポイントについて、以下で詳しく見ていきましょう。
自分の障害特性
面接官がチェックするのは「この応募者が入社したら、きちんと仕事をしてもらえるか」ということです。特に、障害を開示して求人に応募した場合は「自身の障害特性を理解・受容しており、必要に応じて周囲の人にサポートを求めることができるか」や「障害特性に対し、当社で合理的配慮が可能か」といった点をチェックされます。
そのため、自分の障害特性を客観的に理解した上で、過去の体験などを交えて具体的に伝えるようにしましょう。
希望する配慮事項
発達障害などの障害がある場合は、特性などがどう業務に影響するか採用側も確認しておきたいものです。そのため、自身の障害特性と一緒に、希望する配慮事項を具体的に伝えることが求められます。面接は履歴書の内容に基づいて質問されることも多いため、履歴書にも記載しておきましょう。
具体的には、「人目が気になると集中しづらくなるので、静かな環境で作業できる部署を希望したい」「60分休憩ではなく、40分と20分でこまめに分けて休憩をとりたい」など、配慮をしてもらえれば問題なく働けることを伝えます。ただし、合理的配慮は会社側の負担が大きくならない範囲で提供されるため、すべての希望が叶うとは限らない点には注意が必要です。
発達障害の方が面接練習する際の注意点
発達障害の方は、特性によりマナーや身だしなみ、話し方などが一般的なものから離れてしまう場合があります。そのため、自分だけでなく第三者の目線から面接練習を見直すことも大切です。発達障害の方が面接練習する際に注意すべき点として、次の2つが挙げられます。
- 面接の場で求められるマナーを確認する
- 自分以外の人に見てもらう
それぞれ気をつけたいポイントについて、以下で詳しく解説します。
面接の場で求められるマナーを確認する
発達障害の方は、自分の感覚と一般社会における基準がズレているケースが多いです。自分では問題ないと思っていても、姿勢が悪かったり奇抜な格好をしていたり、清潔感に欠けていたりと面接のマナーに反している場合があります。
面接の基本的なマナーができていないと、どんなに話している内容が良くても良い印象を与えることができません。あいさつの仕方やおじぎの角度など面接の基本マナー、服装や身だしなみ、面接官の話を聞く姿勢や言葉遣いなどを改めて見直して、正しいマナーを身につけることが重要です。
自分以外の人に見てもらう
面接練習は一人でもできますが、基本的な面接のマナーや話し方、話す内容などは自己判断だけで済ませておくには不十分です。客観的に自分を見てもらうことで、ミスや改善点などを見つけられるので、第三者と練習する機会を設けることをおすすめします。
例えば家族や友人、プロのキャリアアドバイザー、専門の支援機関など、自分以外の人に面接練習を見てもらい、改善点などのアドバイスをもらうことが大切です。発達障害などの障害がある方向けに、さまざまな就活支援機関が面接練習に対応しています。各機関の支援内容について、以下で詳しく見ていきましょう。
第三者と行う面接練習も有効
前述の通り、第三者と行う面接練習も有効な面接対策です。発達障害の方が面接練習に利用できる就活支援を行う専門機関として、主に次の3つがあります。
- ハローワーク
- 障害者就業・生活支援センター
- 就労移行支援
それぞれの支援機関で対応してくれる内容について以下で紹介します。
ハローワーク
ハローワークは仕事探し全般のサポートを行う公的機関で、障害の有無を問わず利用できます。求人検索・紹介や就職支援ナビゲーターによる相談対応、就職面接会・会社説明会や就活セミナーの開催、応募書類作成サポートや模擬面接などの利用が可能です。
また、専門家による心理カウンセリングや、コミュニケーションが苦手な方・障害がある方に向けた専門支援も行っています。模擬面接を受けるためには、所轄のハローワークへの求職登録と事前予約が必要です。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは各都道府県に複数配置されている公的支援機関として、地域の障害のある方を対象に、生活面・就業面における一体的な相談支援を行っています。職業準備訓練も実施しており、履歴書の書き方や基本的なビジネスマナー講習、面接練習などの支援も受けられます。また、職場実習のあっせんや定着支援を行っているのも特徴です。
就労移行支援
就労移行支援は、一般企業への就労を希望している障害のある方を対象とする支援機関です。就労移行支援事業所では職業訓練やビジネスマナーの習得など、就職に必要な基礎作りから就活支援、定着支援など総合的なサポートを行っています。
また、就活支援の一環として、応募書類の作成支援や模擬面接などへの対応も可能です。
Kaienの支援サービスで面接対策
Kaienは発達障害の方に特化した就労支援を実施する支援機関です。Kaienでは就活支援の一環として、講師やスタッフを相手に繰り返し面接練習ができたり、就活に役立つ講座の受講やグループワーク、発達障害の強みを生かせる求人紹介などを行っています。
Kaienの就労移行支援では、「公開面接練習」や「模擬面接会」なども行っています。「公開面接練習」ではKaienのスタッフが面接官役となり、何人もの訓練生の前で模擬面接を行った後、改善点などをフィードバックします。「模擬面接会」では面接会の流れを体験することが可能です。
また、学生の方を対象とした就活支援サービス「ガクプロ」では、他の発達障害の方やグレーゾーンの方と話し合えるグループワーク「しゃべり場」で就活の悩みを共有できます。Kaienが運営する求人サイト「マイナーリーグ」では、発達障害に理解のある企業の求人掲載やオンライン説明会、支援者との連携機能などが充実しているのも強みです。
無料で見学会や体験利用なども随時実施していますので、興味があるものにぜひご連絡ください。
面接練習で就職・転職の面接対策を!
自分に合った職場と出会うためには、あなたの強みと弱み、配慮をお願いしたい内容などを面接でしっかりと伝える必要があります。面接練習を十分に行って自分を客観視し、不十分な点を改善することが面接を成功させるポイントです。
面接練習はスマホアプリなどを使って一人でもできますが、第三者にチェックしてもらうとより安心できます。Kaienの就労支援サービスは面接練習にも対応しているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます