「言葉がうまく出てこない」「何を聞かれているか分からない」など、面接に対して苦手意識を持つ方は少なくありません。特にコミュニケーションが苦手な方や、発達障害*や精神障害の特性上、面接に不安があるといった方は、面接をどう乗り切るかが内定獲得の重要なポイントとなるでしょう。
本記事では、就職や転職の面接に必要な準備と質問への回答例を解説します。また、一般的な就職支援では不安がある方に向けて、活用できる支援サービスを紹介します。
就活における面接に向けて必要な準備8選!やるべき理由も解説
面接が苦手な方でも、入念な準備をすれば、自信を持って面接に臨めます。また、回答に詰まったり、言いたい内容を上手く伝えられなかったりといった失敗も減らせるでしょう。
ここでは、面接で特に重要な準備を8つ解説します。
面接先の企業について研究する
応募企業の事業内容や求める人材像を理解するための準備は、就活で企業研究と呼ばれます。「なぜこの企業を選んだのか」「どのように貢献できるのか」などの質問に的確に答えるには、企業研究が欠かせません。
具体的には、以下のような内容を調べます。
- 企業の基本情報(企業の設立年、所在地、事業内容、従業員数など)
- 企業理念やビジョン、目指している方向性
- 企業が取り組んでいるプロジェクトや新規事業
- 採用ページに書かれている求める人物像や募集要項
- 企業文化や社風
これらの内容を企業の公式サイトや就活サイト、口コミサイトなどで調べると、回答に具体性が増し、志望度の高さを効果的に伝えられます。また、企業が求める人材像を理解しておけば、自分のスキルや経験がどのように活かせるか的確にアピールできるでしょう。
業界研究を振り返る
業界研究は、就職を希望する業界の動向や特徴を調べることです。業界研究は志望動機を具体的かつ説得力のあるものにするために必要です。主なリサーチ内容としては、以下が挙げられます。
- 業界全体の市場規模や成長性
- 業界でシェアが大きい企業や注目される企業
- 業界で働く人の働き方や求められるスキル
- 業界が直面している課題や話題
これらの業界研究を企業研究とともに行ってきた方もいるかもしれませんが、両者を混同していないか確認しておきましょう。業界研究は「業界全体の動向」について調べるものですが、企業研究は「特定の企業に絞った情報」を集めるものです。
業界研究と企業研究を混同してしまうと、例えば、企業の独自性を理解せずに「業界全体に当てはまる一般的な話」だけをしてしまい、企業に対する関心が薄いと思われる可能性があります。業界研究で得た知識を基に、応募企業の特徴やポジションを深掘りすると、情報を整理しやすくなります。
髪型や服装を整える
髪型や服装は面接官に良い第一印象を与えるために大切な要素です。清潔感を与える身だしなみによって、社会人としての適性をアピールできます。
主なチェックポイントとしては、一般的に以下が挙げられます。
【服装】
- シンプルで落ち着いた色のリクルートスーツを選ぶ
- ワイシャツはシワをしっかり取り、清潔なものを着る
- 靴下やストッキングはダークカラーを選び、穴や汚れがないか確認する
- 革靴を磨いておく。女性はヒールが低いパンプスが無難
【髪型】
- 短めの髪型に整え、前髪が目にかからないようにする(男性)
- 髪が長い場合は後ろでまとめ、清潔感を意識する(女性)
- 明るすぎる髪色は避ける
何度も面接で落ちてしまう場合、身だしなみの感覚が一般的な基準とズレている可能性があります。心配な方は、事前に知人や就活アドバイザーなどにチェックしてもらうとよいでしょう。
自己分析を行う
自己分析とは、自分の強みや弱み、価値観、性格的な特徴などを整理する作業です。自分の資質やスキルを深く理解すると、企業が求める人材像と自分の特性を結び付けられます。
自己分析する際は、以下の内容を紙に書き出してみるとよいでしょう。
- 自分の強み・弱み(得意・苦手な作業、持っているスキル、など)
- 過去の成功体験や失敗体験
- 価値観(仕事で何を最も重視するか、仕事のやりがい、など)
- キャリアビジョン(将来どのような働き方をしたいか、どのようにキャリアアップしたいか、など)
「自分について自分が一番理解している」と思っていても、実は見方が偏っている場合も少なくありません。今一度、自己分析してみるとよいでしょう。
発達障害をお持ちの方は、脳機能の特性から認知に偏り(強いこだわりや狭い興味範囲など)が生じる場合があり、客観的な自己分析が難しい場合があります。このような際は、専門的な知見を持つ医師や心理士、支援機関のスタッフなどのサポートを受けて自己分析する方法が有効です。支援機関については、後ほど紹介します。
応募書類の内容を確認する
面接では応募書類を基に質問される場合が多いため、一貫性のある回答が求められます。履歴書やエントリーシートに記載した内容を見直し、面接で矛盾が生じないようにしましょう。
応募書類の内容が頭に入っていなければ、例えば、応募書類で英語のスキルをアピールしているのに、「海外事業には特に興味はない」と答えてしまうといった矛盾が生じます。また、応募書類に「私はチームワークを大切にしています」と書いているのに、面接で「なるべく個人で仕事をしたいです」といった答え方をしてしまうかもしれません。
発達障害などの障害特性をお持ちの方は、応募書類に希望する配慮を記入すべきか検討するとよいでしょう。例えば、「静かな環境を希望する」「1時間休憩ではなく、30分ずつに分けて休憩をとりたい」といった内容です。特性が業務にどう影響するかは面接官も確認したい内容ですので、応募書類に記載しておくと面接が円滑になる場合があります。
面接におけるマナーを覚えておく
面接におけるノックの回数や挨拶など、社会人として基本のマナーができているかどうかも面接で注目されるポイントです。マナーが良いと、相手に好印象を与え、回答内容にも信頼性が出ます。
代表的なマナー例を挙げます。
- 入室時はドアを3回ノックし、面接官の「どうぞ」という声を聞いてから入室します
- 自己紹介では、椅子の横に立ち、「〇〇大学〇〇学部の〇〇と申します。本日はよろしくお願いいたします」などと挨拶します
- 退室時はドアの前で「失礼いたします」と一礼し、静かにドアを閉めます
マナーを知識として知っているだけでは、行動が伴わない場合もあります。できれば、就職支援機関などで実施される模擬面接で練習するとよいでしょう。
正しい言葉遣いや敬語を練習する
面接においては、基本のマナーだけではなく、面接中の言葉遣いや敬語の使い方も注目されています。学生の方や就業経験の少ない方の場合、敬語を使う場面が少なかったかもしれません。緊張する面接の場で敬語を使いこなすのは難しいため、練習しておきましょう。
まずは、敬語に関する本やオンライン動画を活用して知識を深める必要があります。面接でよくある間違いの一例をまとめました。
間違った言い方 | 正しい言い方 | 間違いの理由 |
---|---|---|
了解しました | 承知しました | 目上の人には「承知」を使います |
おっしゃられました | おっしゃいました | 二重敬語です |
貴社を志望した理由は~ | 御社を志望した理由は~ | 面接では「御社」、応募書類では「貴社」です |
すみません | 申し訳ございません | ややカジュアルな言い方です |
よろしかったでしょうか? | よろしいでしょうか? | 不自然な言い方です |
一人でできる方法としては、声に出して練習する方法が効果的です。この際、スマホで録音・撮影して、自分の話し方を確認するなど工夫するとよいでしょう。
面接でよく聞かれる質問の回答を用意しておく
面接では、志望動機や自己PR、強み・弱みなど、よく聞かれる質問に対して事前に答えを用意しておくのが重要です。これらの回答に詰まると、準備不足ひいては熱意が足りないと捉えられる恐れがあります。
想定問答集を用意しておけば、こうしたリスクを減らせます。想定問答集を作る流れは、以下のとおりです。
- よくある質問をリストアップ
「なぜこの会社を志望したのですか?」「あなたの一番の強みを教えてください」など、よくある質問を網羅しましょう。 - 質問ごとに回答を作成
自分の経験や志向を基に、明確で応募書類と矛盾しない回答を作ります。 - キーワードを決めて回答を覚える
回答を丸暗記すると、機械的な話し方になったり、柔軟にアレンジできなかったりします。例えば「学生時代に力を入れたこと」であれば、「挑戦内容」「工夫」「結果」といったキーワードで覚えておくと、ポイントと流れを押さえて話せます。
このほか、面接官から「何か質問はありますか?」と聞かれる、いわゆる「逆質問」への準備も必要です。企業や業務内容についてなど質問を考えておきましょう。
面接でよく聞かれる質問の回答を準備しよう!質問例を紹介
前述したように、採用の可能性を高めるためには、志望理由や自己PRなど、面接でよく聞かれる質問の回答を準備しておくのが重要です。面接では、さまざまな質問に柔軟に回答できる必要はありますが、よくある質問への備えがあれば、心に余裕を持ちやすくなります。
とはいえ、どのような回答を準備すればよいのかイメージできない方もいるのではないでしょうか。そこで3つの代表的な質問を取り上げ、回答例文を紹介します。
志望動機を教えてください。
志望動機の質問は、ほぼ必ず出されます。この質問への回答のポイントは次の2つです。
- 応募書類と矛盾がない
- なぜその企業を志望したのかわかる理由を書く
【回答例】
私は□□(アルバイトや活動名)で△△(取り組み内容)に挑戦し、結果として○○(成果)を出すことができました。その際に培った視点や考え方が、御社の社長がおっしゃる「××という理念」と一致すると感じ、志望いたしました。
こうした回答に対しては、通常、追加質問があります。例えば、「△△(取り組み内容)では、どのような役割を果たしましたか?」などの質問です。これらについての回答も考えておきましょう。
自己PRをしてください。
面接官は、応募者が自分の強みを理解し、それをどのように活かそうとしているかを知りたいと考えています。また、応募者の強みや人柄が企業の求める人材像と合致しているかを確認する目的もあります。
自己PRの回答のポイントは以下のとおりです。
- 応募書類の自己PRと企業が求める人物像に矛盾がないようにする
- 具体的なエピソードを選ぶ
- 中長期的な取り組みを選ぶ
【回答例】
私は、規則性を大切にして一貫した作業を進めることが得意です。アルバイトでは、毎日の在庫管理業務を担当していましたが、商品の動きを細かく記録し、一定期間ごとの需要傾向を予測して在庫の無駄を減らすことに貢献しました。この経験を活かし、御社での業務効率化に貢献したいと考えています。
この回答例のように、エピソードが具体的になるほど説得力が増します。ただし、短期的な取り組みは信頼性が低いため、ある程度長い期間の取り組みを選びましょう。
学生時代に力を入れたことは何ですか?
「学生時代に力を入れたことは何ですか?」という質問はいわゆる「ガクチカ」と言われ、新卒での就職面接でよく聞かれます。この質問への回答のポイントは以下のとおりです。
- 仕事に活かせる姿勢や能力に関する内容を選ぶ
- 学びや成長を伝える
【回答例】
私が学生時代に力を入れたのは、テニス部での活動です。最初は技術不足で試合に負け続けていましたが、原因を分析した結果、基本的なスキルの不足とメンタルの弱さが課題だと分かりました。そこで、毎日の自主練習とメンタルトレーニングに取り組み、最終的に地区大会で優勝できました。この経験から、課題を分析し計画的に行動する力を得られたと思います。
上記の例では、「課題を分析し計画的に行動する力」が仕事に役立つスキルです。こうしたスキルの獲得過程を述べると、ポテンシャルの高い人材だと思ってもらいやすくなります。
就職・転職における面接がうまくいくために活用できるサービスを紹介
発達障害や精神障害などの特性による課題を抱えている方は、一般的な就職支援サービスでは満足できない可能性があります。このような方が活用できるサービスとして、「大学生向け支援プログラム」「就労移行支援」「自立訓練(生活訓練)」を紹介します。
大学生向け支援プログラムを活用する
Kaienが提供する大学生向け支援プログラムは、発達障害やそのグレーゾーンの方を対象にした、就職や学生生活をサポートするプログラムです。コミュニケーションに不安がある大学生や専門学校生(大学院生や既卒、中退者も利用可能)を対象にした内容となっています。
主なプログラムは次のとおりです。
- 職業体験:職業体験(営業プレゼン、書類作成など)を通じて、自己理解を深め、適職を探します。
- 就職講座:ビジネススキルや自己分析、面接対策を実践的に学べます。
- ライフスキル講座:会話の仕方やストレス対処法を習得し、自己管理能力を高めます。
- カレッジ講座:履修登録やレポートの書き方など、学生生活を安定させるためのスキルを学べます。
- 仲間づくり:共通の趣味やテーマで他の参加者とつながり、新しい視点を得る場を提供します。
大学生向け支援プログラムは、「就職活動での自己分析や面接対策に不安がある」「発達障害やその特性による対人関係の課題を抱えている」といった方におすすめです。専門的な知識を持ったスタッフによるサポートを受けながら、一般的な就活支援ではカバーしていない基礎的な準備からはじめられる点がメリットです。
Kaienでは、発達障害やグレーゾーンの学生に向けた就活準備支援サービス「ガクプロ」を提供しています。
就労移行支援を利用する
就労移行支援とは、障害を抱える方が一般就労を目指す際に利用できる障害者総合支援法に基づく福祉サービスです。Kaienでは、発達障害、不安障害・パニック障害・適応障害・うつ・双極性障害、境界知能を含む知的障害の方に特化した就労移行支援を実施しています。
就労移行支援は、事業所に通所しながら、職業訓練や就職支援サービスを受けます。主なサービスを以下に示します。
職業訓練
実際の業務に近い作業を体験し、自分に合った職種を探します。また、スキルや得意分野を伸ばすための専門訓練を行います。
就活サポート
自己分析や履歴書の書き方のアドバイスや講座、模擬面接の実施など、就職活動の実践的なサポートを受けられます。
職場定着支援
就職後に職場環境に適応し、長期的に働き続けられるように支援するサービスです。職場訪問や電話相談を通じた課題解決のサポートを受けられます。
就労移行支援は障害者手帳がなくても、利用できる可能性があります。また、学生の方も、地元の自治体から就労移行支援が必要であると認められれば利用可能です。
自立訓練(生活訓練)を利用する
自立訓練(生活訓練)は、障害を抱える方が日常生活を安定して送るスキルを身に付けるための福祉サービスです。感情のコントロールや対人コミュニケーション、生活リズムの改善など、基礎的な力を整えるのを目的としています。
Kaienの自立訓練(生活訓練)の主な利用者は、発達障害、精神障害、不安障害などを抱える方です。また、就労経験がない方、生活基盤を整えたい方、一人で生活する準備が必要な方にも向いている支援サービスです。障害者手帳がなくても、医師の診断書があれば、自立訓練を受けられます。
具体的なカリキュラムは以下のとおりです。
感情や対人スキルを向上させるための講座
ストレス対処法や感情のコントロール、適切なコミュニケーション方法を学ぶ座学や実習を受けられます。
生活基盤の整備
食事、睡眠、金銭管理など生活習慣を整えるためのスキルを学びます。日々の家事や服装の整え方など、生活を安定させる基礎を身に付けられることが特徴です。
就職のための事前準備
自分に合った働き方や、将来の進路を探すためのサポートを受けられます。
自立訓練は、就活以前に困難を抱えている方におすすめです。自立訓練を受けた後、就労移行支援や大学生向け支援プログラムに移る方もいます。
自立訓練(生活訓練)とは?就労移行支援との違いや併用についても解説
面接を通過するには入念な事前準備が大切!サービスの活用も視野に入れてみて
面接を通過するには、企業研究や自己分析、質問の回答の準備など、入念な準備が大切です。特にコミュニケーションが苦手な方は、臨機応変に答える場面を減らせると失敗しにくくなり、採用の可能性を高めやすくなるでしょう。
Kaidenでは、コミュニケーションが苦手な大学生を対象とした「ガクプロ」、障害特性がある方が実践的な職業訓練と手厚い就活サポートを受けられる「就労移行支援」、生活基盤を築くスキルを身に付けられる「自立訓練(生活訓練)」の3つのサービスを提供しています。一人での就活に不安な方、一般的な支援では不十分に感じる方は、ぜひお気軽にご相談ください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。