適応障害から復職するには?復職の流れやポイントについて解説

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適応障害で休職中の場合、「復職に向けて準備しておくべきことはある?」「適応障害から復職する流れはどんな感じ?」など、復職に向けて気になることは少なくないでしょう。

そこでこの記事では、適応障害から復職するまでの流れや復職に利用できる制度、復職に際して気をつけたいポイントについて解説します。スムーズな職場復帰につなげるためにも、ぜひ最後まで目を通してみて下さい。

適応障害とは

適応障害とは、あるストレス要因によって、気分の落ち込みや意欲の低下、不眠など、日常生活に支障をきたすほどに心身に不調があることです。

適応障害には多くの症状があり、情緒面では、抑うつ、不安、怒り、焦りなどの症状や、行動面では、暴飲暴食、無断欠席、無謀な運転やけんかなどの症状が表れるとされています。1つの症状だけでなく複数の症状を示すこともあります。

適応障害を引き起こしているストレス要因は、転勤や長時間労働、パワハラなどの人間関係など、人によってさまざまです。しかし、その人が適応障害の原因となったストレスの特定は可能とされており、そのストレス要因から離れると、症状は次第に改善するとされています。

適応障害の休職期間の目安

適応障害の休職期間の目安は、一般的に3~6ヶ月といわれています。症状によっては6ヶ月より長くなるケースもあります。

休職については、法的な定めがないため休職制度がなかったり、休職可能な期間が決められていたりします。しかし、適応障害の場合、職場におけるストレスが影響していることが多いため、治療のためにも、仕事を休み、ストレスから離れることが大切です。

体調や心の回復に専念するためにも、一定期間の休職が必要といえるでしょう。休職期間が短く回復が不十分な状態で復職しても、思うように働けないほか、回復が遅れたり、症状が悪化したりする可能性もあります。

3~6ヶ月を目安に充分に治療および回復の期間を設けることが大切です。

休職から復職するまでの流れ

適応障害での休職から復職までの流れについては下記の通りとなります。

  • 主治医が復職可能と判断する
  • 人事・上長や産業医と面談する

順に詳しく解説します。

主治医が復職可能と判断する

復職するためには、まず主治医から復職可能と判断されることが大切です。

休職して体調がよくなってくると、自分で復職可能だと思えることもあるかもしれませんが、本人の意思だけで復職することはできません。

休職する際と同様に、復職する際にも会社から主治医の診断書の提出を求められることも少なくありません。そのため、必ず医師から「復職が可能」との診断書をもらう必要があります。

人事・上長や産業医と面談する

主治医から復職可能との診断を受けたら、会社の人事・上長や産業医との面談を行い、具体的な復職の時期などについて決めていきます。

産業医がいる場合は、まずは産業医の診断を受けた後に、人事・上長との面談といった流れになります。

人事・上長との面談では、職場復帰が可能かどうかや職場復帰の時期などの確認を行います。職場復帰の時期が決まれば、復帰までどのような支援が必要か、あるいは、復帰後どのような就業上の配慮が必要かなどの話し合いが行われます。

例えば、会社によっては、正式な職場復帰の前に、お試し出社・リハビリ出社のような徐々に業務に慣れるための支援やフォローが行われるケースもあります。

復職準備に活用される制度

適応障害から復職する際の準備として、活用できる制度があります。具体的には下記の2つです。

  • リワーク
  • リハビリ出社

詳しくは次の通りです。

リワーク

リワークとは、「return to work(復職)」の略語で、いわゆる和製英語です。うつ病や適応障害などの精神疾患で休職している労働者に対する職場復帰に向けた支援プログラムのことを指します。リワークは、復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムともいいます。

リワークプログラムには、体調・気分の自己管理のためのプログラムや、基礎体力・持久力の向上に向けたプログラム、ストレス対処法の習得のプログラムなど、さまざまなプログラムが用意されています。

リワークの支援プログラムは、医療機関や障害者職業センター、就労移行支援事業所などで受けることが可能です。また、企業によっては自社でリワークプログラムを実施していることもあります。

リハビリ出社

リハビリ出社とは、正式な復職の前に、問題なく勤務できるかどうか試験的に出社してみる制度です。休職していた社員が徐々に業務に慣れることを目的とした取り組みですが、法的な定めはないため、リハビリ出社が認められるか認められないかは企業によって異なります。

リハビリ出社の例としては、例えば、午前中だけ勤務するといったものや、最初は一定時間だけの勤務で徐々に勤務時間を伸ばすといったケースなどがあります。

適応障害から復職する際のポイント

適応障害で休職していると、復職に向けて何に気を付けて過ごせばいいのか不安になることもあるでしょう。そこで、以下では、適応障害から復職する際のポイントについて紹介します。

適応障害から復職する際の具体的なポイントは次の通りです。

  • 仕事の時間にあわせて生活リズムを整える
  • 働くための体力をつける
  • ストレスへの対処法を身につける

以下で詳しく解説していきます。

仕事の時間にあわせて生活リズムを整える

復職に向けて、仕事の時間に合わせて生活リズムを整えておくことが大切です。

休職中は決まった時間に決まった場所に通うといったことがなくなるため、生活のリズムが乱れやすくなります。夜ふかしや朝寝が習慣となってしまうと、復職後、決まった時間に出社して働くといったことができなかったり、ストレスを強く感じてしまったりするでしょう。

そのため、休職中も朝は決まった時間に起き、日中に軽い作業や運動などをし、夜も決まった時間に寝ることがおすすめです。

生活リズムを整えるのにリワークを活用するのもよいでしょう。リワークプログラムを活用することで、決まった時間に決まった場所に通い、日中に学習や運動などの活動ができ、生活にメリハリがつき、リズムを整えやすくなります。

働くための体力をつける

復職に向けて、働くための体力をつけることも大切です。

休職中は、体を休めることも大切であるものの、体を動かす機会が減って体力が低下する恐れがあります。

体力が低下したままでは、復職をしても疲れやすく、思うように働けないといったストレスをかかえかねません。そのため、ある程度状態が回復したら、日中に散歩やヨガなどの軽い運動をするなど、徐々に体力をつけていくようにしましょう。

リワークプログラムでもウォーキングやストレッチ、また、数人で体を動かすゲームなどのさまざまな運動プログラムが用意されているため、活用するとよいでしょう。

ストレスへの対処法を身につける

復職に向けて、ストレスへの対処法を身につけることも重要です。

適応障害は特定のストレスが原因で発症すると考えられていることから、ストレスを避けることが何よりも大切です。

とはいえ、職場など、いざ外に出るとストレスを完全にシャットアウトすることは難しいといえるでしょう。そのため、ストレスに面したときにストレスからの影響を最小限にするストレス対処法を身につけておくことが大切です。

例えば、ストレスにあった場合は、その原因から離れる、自分の好きなことで気分転換をする、人に相談するなどといった対処法があります。

また、リワークプログラムでは、専門家からストレス対処法を教えてもらったり、相談できたりするため、活用することがおすすめです。

復職は焦らず準備を整えてから行おう

適応障害による休職から職場復帰をする際には、焦らず充分に準備を整えてから行うことが大切です。

適応障害はストレスが原因で発症する心身の不調で、治療にはストレスの原因から離れることが重要とされています。準備が十分でない状態で職場復帰をすると、また同じようなストレスを受け、適応障害を発症させてしまうかもしれません。

少し体調がよくなっても決して焦らず、ストレスから離れ充分な休養を取り、ストレスへの対処法などを身につけた上で、職場に復帰するようにしましょう。

監修者コメント

適応障害は人間関係や仕事量の多さなど「原因」があって、抑うつ症状や不眠などの「結果」が生じる、因果関係が明確な疾患です。よって、「原因」が改善される、あるいは除去されることで症状が改善することが期待できます。
 しかしながら、日本の企業の多くは休職前に勤務した元の部署に戻ることが多く、再び心身を崩してしまうリスクがあります。このようなことにならないために、リワークプログラムに参加する方も多いのですが、もともと心理教育(患者さんに自分の病気を客観的に知って、養生のコツを学んでもらう取り組み)がベースになっていて内省的な内容のため、実践にあまり向かないという問題もあります。
 休職者を受け入れる企業側も、もう少しフレキシブルに休職者の資質に見合った部署に復職させるような取り組みをしていたければ、より良い人材育成ができるのではないでしょうか。

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。