障害者雇用に応募する場合、履歴書にどのようなことを書けばよいか迷う方も多いでしょう。一般雇用との違いや障害に関して書くべきなのかなど、細かな疑問も出てくるかもしれません。
そんな悩みを解決するために、この記事では障害者雇用の際の履歴書の書き方のポイントや基本ルールについて具体的に詳しく解説します。志望動機や配慮事項の書き方のほか、履歴書の書き方を相談できる支援先も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
障害のある方が就職する際の選択肢
障害者雇用と一般雇用はどう違うのか、まずはそれぞれの特徴を見ていきましょう。まず、障害のある方は障害者雇用に応募できるほか、一般雇用へ応募することもできます。障害者雇用で働くとその後、一般雇用で働けないのではないかと心配する方もいますが、一般雇用へ転職することも可能です。
こうした障害者雇用と一般雇用の違いや、転職の難易度などを以下で詳しく解説していきます。
障害者雇用
障害者雇用とは原則、障害者手帳(身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳)を取得している方を対象としています。障害がある方でも自分に合った仕事に就き、生きがいを持って働けることを目的に創出された制度です。
本制度は障害者雇用促進法に基づいており、従業員数が一定数以上の民間企業では、法定雇用率2.5%が義務付けられています。例えば従業員40人以上の企業であれば、障害のある方を1人以上雇用しなければなりません。
障害者雇用は主に大企業で実施しているケースが多く、障害への理解や適切な配慮がなされやすい傾向にあります。ただし給与に関しては、大企業であるほど障害者雇用の給与テーブルが別途に設けられており、一般雇用より低い場合が多いです。
詳しくは以下で解説していますのでご覧ください。
障害をオープンにすると差別はある?障害者雇用と一般雇用の違いを【企業規模】【理解度】【賃金】などで比較検討
一般雇用
一般雇用に応募する場合は、障害がある方も一般応募者として扱われます。一般雇用は障害者雇用に比べ職種や求人数が多いため、数ある選択肢の中から候補を選べる点は大きなメリットでしょう。
しかし一般雇用は障害がある方を想定して募集を行っているわけではないため、採用された場合に障害への理解や配慮が十分になされない可能性はあり得ます。
障害者雇用と一般雇用では定着率に大きな差があるのは事実です。障害者職業総合センターの「障害者の就業状況等に関する調査研究」によると、障害者雇用の定着率が70.4%であるのに対し、一般雇用は障害を開示した場合で49.9%、障害非開示だと30.8%となっています。
発達障害など障害があることは履歴書に書くべき?
発達障害*などの障害がある場合、障害の有無や症状などを履歴書に書くべきか悩むかもしれません。実は障害の詳細を履歴書に記載することは原則必須ではありません。ただ、障害について事前に説明しておけば、企業と業務内容や合理的配慮について具体的な相談ができます。障害者雇用のように障害を開示して働くのであれば、可能な範囲で障害の詳細を伝えたほうがよいでしょう。
これは一般雇用でもいえることです。障害者差別解消法の改正により、2024年4月から一般雇用であっても障害のある方への合理的配慮の提供が義務化されました。現在では一般雇用でも障害をオープンにして働く方が増えてきています。
一般雇用で事前に障害について履歴書に記載すると、書類選考に落ちてしまう可能性は高まるかもしれません。しかし、診断名や特徴、配慮事項をセットで伝えることにより、理解や配慮を得られやすくなります。また前述の通り、一般雇用でクローズドで働くよりも、オープンにしているほうが定着率が高まるのもメリットといえるでしょう。
詳しくは以下で解説しているので、ぜひご覧ください。
【一般枠オープン】メリット・デメリットと障害を伝えるタイミング
履歴書を書く際のルールと注意点
ここからは履歴書の具体的な書き方を解説します。まずは障害者雇用と一般雇用に共通する、一般的な書き方のルールを押さえておきましょう。
一般的な書き方のルールは下記の通りです。
- 記入は指定がない限りパソコンを使う
- できるだけテンプレートを使用する
- 誤字脱字や日付をチェックする
- 履歴書の使い回しはせず、企業ごとに作成する
- 省略せず正式名称を記載する
これらの事項が守られているだけでも、ビジネスマナーがあると捉えられ、受け手の印象は良くなります。以下で詳しく見てみましょう。
記入は指定がない限りパソコンを使う
履歴書は、特に企業側からの指定がない限り、パソコンを使って記入しましょう。
「手書きで書かないと失礼では?」と思う方もいるかもしれません。しかし、最近は履歴書をメールや応募フォームで送付するケースが多いため、失礼と捉えるケースは少なくなっています。企業から「直筆で」「手書きで」と指定されない限り、パソコンで作成しても問題はありません。
また、パソコンで作成することには、パソコンが使えることのアピールになるほか、情報の修正や追加がしやすくなるというメリットがあります。紙の履歴書で修正を行う場合、修正ペンや修正テープを使うことはマナー上NGとされているため、一部を書き直す場合でも改めて全て書き直さなければなりません。その点、パソコンで作成する場合は、簡単に書き直すことができます。
できるだけテンプレートを使用する
履歴書は企業の指定するテンプレートがあれば、それを利用します。企業が指定するテンプレートがない場合でも、一般的なテンプレートを利用することがおすすめです。履歴書に記載すべき基本項目が掲載されているため、基本項目の伝え漏れを防げます。
テンプレートは、手書き用の紙の履歴書の場合は文具店やコンビニエンスストアなどで販売されています。パソコンで作成する場合は、転職支援サイトなどが無料で提供しているテンプレートを利用するとよいでしょう。
また、厚生労働省のホームページでもテンプレートが公開されています。厚生労働省のテンプレートはそのまま入力することはできませんが、手書きに使えるほか、パソコンで作成する場合もどういった項目を記載すべきか参考にすることが可能です。
誤字脱字や日付をチェックする
履歴書を書く際には、誤字脱字をしないように注意しましょう。パソコンで作成する場合は、パソコンの誤字脱字チェックツールを使ってチェックすることも可能です。
また日付については、特に指示がない場合、和暦・西暦のどちらを使用しても構わないものの、どちらかに統一して書くのが基本です。和暦・西暦が混在していないかどうか、また日付自体に誤りがないかどうか確認しましょう。
履歴書の使い回しはせず、企業ごとに作成する
履歴書は使い回しをせずに、企業ごとに作成することが大切です。
使い回しをすると、記載されている情報が古かったり、企業研究がされていないとわかる志望動機やアピールポイントが書かれていたりして、企業に悪い印象を与えることもあります。
履歴書は氏名や住所、学歴などほとんど変更がないと思っていても、応募する時期が異なれば、情報も多少異なります。また、応募企業が異なれば、志望動機、アピールポイント、本人の希望記入欄に書く内容も異なってくるでしょう。
そのため、履歴書は企業ごとに作成するようにしましょう。
省略せず正式名称を記載する
履歴書に和暦や学校名、企業名などを記載する場合には、省略はせず、正式名称を記載するのが基本です。例えば、下記のような点に注意しましょう。
【住所・学校名・企業名の記載例】
住所 | 誤)「~X-Y-Z」 ⇒ 正)「~X丁目Y番Z号」 |
学校名 | 誤)「Y高校」⇒ 正)「X県立Y高等学校」 |
企業名 | 誤)「(株)X」 ⇒ 正)「X株式会社」 |
和暦 | 誤)「H20年」⇒ 正)「平成20年」誤)「R5年」⇒ 正)「令和5年」 |
履歴書の各項目の書き方
履歴書の各項目についての書き方も押さえておきましょう。押さえておくべきポイントは下記3つです。
- 基本情報の書き方
- 学歴・職歴の書き方
- 免許・資格欄の書き方
詳しくは次の通りです。
基本情報の書き方
日付や名前など、基本情報の書き方にも守るべきポイントがあります。
- 日付
履歴書を送付する日付を書く。指示が無い限りどちらでも構わないが、和暦か西暦かはどちらかに必ず統一する。
- 名前
戸籍に登録されている漢字で正確に書く。苗字と名前の間はスペースを空ける。
- 住所
都道府県から番地までを省略せず正確に書く。
- 電話番号
連絡が付きやすい番号をハイフンやカッコを用いて見やすく書く。最近は携帯電話でもマイナスイメージは抱かれない。
- メールアドレス
会社のメールアドレスは使わず、個人のメールアドレスを書く。スペルミスがないか要確認。
- 写真
3ヶ月以内に撮影したスーツ姿の写真を使う。なるべく写真館で撮影する。
以下の記事では基本情報の書き方をさらに詳しく解説しているので、併せてチェックしてみてください。
就労移行支援で就職対策!障害者雇用枠で採用される履歴書の書き方
学歴・職歴の書き方
学歴・職歴欄の書き方にも守るべきポイントがあります。
- 見出し
「学歴」と「職歴」の見出しをつくった上で、それぞれの情報を正式名称・時系列で記載する
- 学校名
学校名を正式名称で書き、学部・学科まで記載する。退学した場合はその旨、記載が必要。
- 会社名
会社名を正式名称で書き、部署や業務内容まで書く。退職した場合はその旨と理由を記載する。
- 現在の状況
職歴の最後は、現在も在職中であれば「現在に至る」と記載し、最後に「以上」と書く。
職歴は、正社員として在籍した会社名を書くのが基本ですが、職歴が少ない場合には、アルバイトやパートでも社会保険に加入していた場合は、その職歴も記載しましょう。
なお社会保険に加入していないアルバイトやパートの場合でも、職務上のアピールにつながる場合は書くのがおすすめです。派遣社員として働いていた場合は、登録した派遣会社名と派遣先の企業名・期間を書きます。
職歴が少ない場合には、学歴欄に専攻分野や卒業論文などを記載して学歴欄を拡充するのもよいでしょう。
反対に職歴が多い場合は、正社員の経歴をメインに記載し、アルバイトや派遣でアピールしたいことがあれば、別途、職務経歴書にまとめるようにしましょう。その際は、履歴書の職歴の末尾に「詳細は職務経歴書に記載」と記します。
免許・資格欄の書き方
免許・資格欄には選考に有利になるように、相手企業に関連したものを優先的に書きましょう。一見関係がなさそうな資格でも事業レベルで関係している場合があるので、企業リサーチをしっかり行うことが大切です。
また、勉強中の資格もアピールにつながります。この場合、企業はあなたの可能性を評価することになるので、採用後も資格取得に継続して取り組みましょう。
なお、自動車免許や語学の資格は求められる場合が多いです。特に語学の資格は年々需要が高まっています。
志望動機の書き方のポイント
志望動機で特に気を付けるべきポイントは以下の3点です。
- 自分の言葉で書く
- 読みやすさを意識する
- 具体的に書く
それぞれ詳しく解説します。
自分の言葉で書く
志望動機は、応募企業へ自分の思いを伝える項目であるため、マニュアルや就活本にある表現を流用するのでなく、自分の言葉で書くようにしましょう。
志望動機は、面接でさらに掘り下げて語る必要があるため、自分はこういう思いで志望しているということを、自分の経験やスキルを踏まえた上で、丁寧に書くことが大切です。マニュアルの志望動機を真似ると、書類選考で個性が見えにくくなるほか、面接で、自分の思いや特性とズレが生じて、うまく話せなくなるといった失敗を招きかねません。
履歴書は、自分ならではの思いを素直に丁寧に伝えるようにしましょう。
読みやすさを意識する
志望動機は、読みやすさを意識して書くことも大切です。いきなり書き始めずに、要素を揃えてから読みやすいように文章を構築することがおすすめです。
例えば、読みやすく納得感のある文章にするためにも、下記の流れに沿って書くとよいでしょう。
- 会社を志望した理由
- 知識や経験を活かせるアピールポイント(自己PR)
- 入社後のビジョンや目標
上記の順で志望動機の内容を整理してから、書くようにしましょう。
具体的に書く
志望動機は、具体的に書くことも大切です。例えば「事業に魅力を感じました」といった漠然とした表現でなく、どういった点についてなぜ、どのように魅力を感じたのか自分の言葉で具体的に説明するようにしましょう。
具体的に記載しないと、企業側に、あなたが何を理由に入社を希望して、具体的に何をやりたいのかが伝わらず、採用対象になりにくいといえます。
自分の個性や考え、志望動機の強さが企業によく伝わるように、抽象的な表現をできるだけ減らして具体的に書くようにしましょう。
障害の配慮事項の伝え方
履歴書に障害の詳細や配慮事項を記載する場合は、記載欄を設けた専用の履歴書テンプレートを用意しましょう。ワードやエクセルのテンプレートに自分で記入欄を設ける方法でも大丈夫です。
障害の詳細について必ず記載すべき項目は、障害の診断名と障害者手帳の種類や等級、障害者手帳の取得日です。具体的な症状や通院状況などについても記載しておきましょう。
配慮事項で記載すべきことは、仕事で困難な内容とそれに対する対応をセットにすると伝わりやすいです。例えば対人面で配慮が必要な場合は、不特定多数とのやり取りが少ない部署を希望したり、体調面で困難なことがあるときは、職場での仮眠を認めてもらうといった感じです。
なお、仕事で困難なことは、以下の6項目に分けて考えると整理しやすいでしょう。
- 対人面
- 体調面
- 指示の受け取り面
- 責任範囲・業務面
- 期待度のコントロール(仕事の習熟やパフォーマンスなど)
- 作業環境面
配慮の求め方の詳しい例を知りたい方は、以下も参照ください。
職務履歴書が必要な場合とは?
新卒でなく中途採用の転職活動をしている場合には、履歴書と同時に職務履歴書の提出が求められます。
職務経歴書とは、これまで経験した仕事の内容や実績、また、そうした業務を通じて培った知識やスキル、強みを伝えるための書類です。
職務経歴書は履歴書のように決まったフォーマットはないものの、主に下記のような内容を記載するようにしましょう。
- 日付・名前・住所・電話番号・メールアドレス
履歴書と同様に提出日と名前、住所などの個人の基本情報を記載する。
- 職務経歴の概要
過去の職歴・キャリアの概要を300字前後でまとめる。
- 職務経歴の詳細
過去に勤めた企業と携わった業務内容やプロジェクトの詳細を一覧でまとめる。
- 得意分野や活かせる経験、スキル
応募先企業で活かせる強みや経験、スキルのまとめる。
- 保有資格
保有資格を記載する。
- 自己PR
これまでの職歴や培ったスキルなどを活かしてどう活躍できるかをアピールする。
職務経歴書のボリュームは、通常はA4用紙に1~2枚程度です。応募先企業の求める人材や事業内容を事前によく把握し、それを踏まえて、活かせる経験やスキル、強みを伝えることが大切です。
履歴書の書き方に悩んだとき頼れる支援機関
以下の支援機関では、就活における履歴書の書き方を相談したい場合に利用できます。
- 障害者就業・生活支援センター
- ハローワーク
- 就労移行支援
基本的な書き方に加えて、アピールポイントの整理や添削なども対応可能です。ここではそれぞれの特徴や、受けられるサービス内容などを紹介します。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターとは、主に地域の障害がある方を対象とした、就業面と生活面の一体的な相談支援を提供する施設です。各都道府県に複数箇所設置されています。
主な就業面での相談支援内容は以下の通りです。
- 就職に向けた準備支援(職業準備訓練、 職場実習のあっせん)
- 障害者の特性、能力に合った職務の選定
- 就職活動の支援
- 職場定着に向けた支援
履歴書の書き方を気軽に相談しに行ってもいいですし、相談と同時に障害の理解や自分に合った仕事探しに取り組むのも良いでしょう。就職活動のヒントが得られるかもしれません。
ハローワーク
各都道府県に設置されたハローワークでは、履歴書の書き方を相談できるほか、職務経歴書の書き方をまとめた冊子や履歴書・職務経歴書サンプルなどの配布も行っています。
より詳しく相談したい場合は、応募書類の作り方や面接の受け方などのセミナー、個別相談会、書類の添削などに申し込みましょう。
また、ハローワークでは障害者雇用の求人も取り扱っています。障害について専門的な知識を持つ職員や相談員も在籍していますので、具体的な応募希望先と合わせて相談するのもよいでしょう。
就労移行支援
就労移行支援とは、障害のある方が一般企業への就職を目指すにあたって、スキルや知識の習得を含むトータルサポートを行う障害福祉サービスです。就労移行支援で受けられる主なサービスは以下のとおりです。
- 職業訓練(事業所内作業、講座、企業実習など)
- 就活支援(求人選定、選考フォローなど)
- 定着支援(職場訪問など)
これらを受ける過程で履歴書の書き方もフォローしてもらえます。スポットの相談だけでなく、一貫した対応を求める方には、特に心強い味方となってくれるでしょう。
なお、利用料は世帯収入に応じて算出されます(無料~月額最大37,200円)。ただし多くの場合、自己負担額0円で利用可能です。
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障害者雇用の履歴書の書き方に悩んだら就労移行支援へ
障害者雇用の履歴書を書くときは、基本的なルールやポイントを押さえたうえで、障害の詳細や配慮事項などがしっかり伝わるよう意識して作成しましょう。まずは記事を見返しながら実際に一度作ってみることをおすすめします。
自分だけでは履歴書の作成が難しい場合や、履歴書の内容に悩んだら就労移行支援を始めとした支援機関を頼るのも手です。特にKaienの就労移行支援なら、就活初心者にも安心の充実した就活講座で履歴書の作成から自己分析、スキルアップまでサポートいたします。さらに良い就業環境を得るためにも、ぜひ就労移行支援の利用をご検討ください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
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