障害者雇用の給料は低い?平均額や賃金が安い理由、収入をアップする方法を解説

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障害のある方の中には障害者雇用での就職、転職を考えている方もいるでしょう。しかし、障害者雇用の給料はどのくらいなのか、一般雇用で働くよりも低いのかなど、気になる点も多いはずです。

本記事では、障害者雇用の給与平均額や、障害者雇用の賃金が安いといわれる理由、収入を上げる方法などを詳しく解説します。障害者雇用を検討する際におすすめの支援機関も紹介するので、ぜひ最後までお読みください。

障害者雇用とは

障害者雇用とは、一定数の従業員を雇用する民間企業や自治体に定められた障害者を対象とする雇用枠のことです。障害の特性に応じた合理的配慮を得て、自身の希望や能力、適性を十分に活かして働き、活躍できる社会を目指す目的があります。

従業員数が40.0人以上の民間企業は障害者雇用率制度により、雇用する労働者の2.5%に当たる障害者の雇用が義務づけられています(2024年5月時点)。

厚生労働省が公表した「令和5年の障害者雇用状況」の集計結果によると、民間企業の雇用障害者数は約64.2万人、実雇用率は2.33%です。共に過去最高を更新しており、公的機関や独立行政法人においても対前年の障害者雇用率を上回る結果となっています。

参考:厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果

一般雇用との違い

障害のある方が対象となる障害者雇用に対し、一般雇用は企業の募集条件を満たす人すべてを対象とします。障害のある方は障害者雇用に加え、募集条件を満たしていれば一般雇用にも応募可能です。

ただし、一般雇用は障害者の採用を前提としていないため、職場によっては合理的配慮を十分に受けにくい場合があります。一方、障害者雇用では、障害者雇用促進法により雇用環境を整えるための助成金や制度などが手厚い傾向にあるため働きやすく、就職後の定着率も一般雇用より高いとされています。

もちろん、一般雇用でも合理的配慮が求められますが、障害者雇用のような手厚い配慮は受けられない可能性もあるため、このような点も踏まえて雇用形態を決める必要があるでしょう。

特例子会社の雇用との違い

特例子会社とは障害者雇用の1つの形態であり、障害がある方の雇用機会を増やすことを目的につくられた会社です。障害の種類や程度に左右されずに幅広く利用でき、働きやすい環境や支援制度が整えられているケースが多くあります。

特例子会社では、多くが障害の特性に合わせた配慮を受けられ、柔軟な働き方が認められています。一般雇用では雇用が難しかった方や、より自分にとって無理のない環境での雇用を希望する方にとって、特例子会社は障害者雇用の1つの選択肢といえるでしょう。

障害者雇用のメリット・デメリット

障害者雇用の大きなメリットは、障害の特性に応じた配慮が受けられることです。障害者雇用では障害者の雇用を前提としているため、障害に理解のある環境や支援制度が整えられ、柔軟な働き方が叶います。

また、5人以上の障害者を雇用する企業には障害者職業生活相談員が選任されています。障害者職業生活相談員のいる企業で働く場合は、業務での困りごとが生じた際などに相談しやすいのもメリットでしょう。

ただしデメリットとして、障害者雇用はそもそも求人数が少なく、希望に合う職種が見つからなかったり、応募条件に合わなかったりするケースが多いです。加えて、業務の内容によっては一般雇用よりも給料が安いこともあるため、これまで一般雇用で働いていた方が障害を理由に障害者雇用で転職を希望する場合には、給料が減る可能性も考えられます。

発達障害でも障害者雇用は可能?

障害者雇用の求人に応募するには、障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳)が必要です。発達障害*の方の場合、発達障害専用の手帳はありませんが、発達障害の診断を受けている方で知的に遅れのある方は療育手帳、知的に遅れのない方は精神障害者保健福祉手帳を取得できます。

ただし、発達障害の診断基準をすべて満たさず、発達障害と診断されていないグレーゾーンの方は障害者手帳の取得対象外となるため、障害者雇用には応募できません。

障害者雇用の給料が安い理由

障害があるからといって、他の社員より給料を低くすることは法律で禁じられています。

しかし、障害者雇用の方とそうでない方とでは、可能な業務内容や仕事の成果に違いが出るケースもあるでしょう。そのような場合に、給料を安く設定せざるを得ない理由が生じることは考えられます。具体的にどのような理由が挙げられるか見ていきましょう。

雇用形態

障害者雇用の給料が安くなりがちな理由として、そもそも正社員雇用の割合が少ないことが挙げられます。障害者雇用は全体的に離職率が高い傾向があり、採用時から正社員として雇用する企業は多くありません。契約社員から3~5年の雇用期間を経て正社員に登用する企業が多いです。

さらに障害の特性に応じて雇用時間や出勤日数が調整され、こうした配慮により全体的な雇用時間が短くなったり、出勤日数が少なくなったりすることも、給料が安くなる原因と言われています。

仕事内容に制限がある

障害者雇用の仕事内容は、主に「事務補助」「専門職」「軽作業」の3つに分けられます。3つのうち1つを行うケースもあれば、どれか2つ、3つの業務が組み合わさる場合もあります。

障害者雇用の場合、同じような業務をルーティンワークとして長期的に行うことを前提に、仕事内容が限定されていることが多いです。苦手な仕事を避けてもらえる配慮がなされていますが、一般雇用のような大きな昇給やキャリアアップは難しいかもしれません。

障害種別ごとの障害者雇用の平均給与

障害者雇用の平均給与は障害の種別によって異なります。厚生労働省の「平成30年度 障害者雇用実態調査結果」によると、身体障害者、知的障害者、精神障害者それぞれの障害者雇用の平均月給は以下の通りです。

  • 身体障害者:21.5万円
  • 知的障害者:11.7万円
  • 精神障害者:12.5万円

障害種別のなかで最も平均月給の高い身体障害者の職種は「事務的職業」が多数を占めています。知的障害者は「生産工程の職業」、精神障害者は「サービスの職業」が多い傾向でした。なお、障害種別ごとの勤務時間に大きな差は見られません。平均給与の差には職種や業務内容が関係すると考えられます。

参考:厚生労働省「平成30年度 障害者雇用実態調査結果

障害者雇用の職種別 給与平均と相場

Kaienが運営する障害者雇用求人サイト「マイナーリーグ」に掲載された首都圏を中心とする求人を基に、障害者雇用の平均給与月額と相場を職種別に紹介します。

まず、平均給与月額が20万円以上の職種は以下の5つです。

  • 一般事務:約21.7万円
  • 専門事務:約26.4万円
  • IT系:約26.0万円
  • クリエイティブ系:約22.7万円
  • その他専門職:約23.0万円

例えば上記の一般事務の場合、業種別の給与相場は以下のとおりです。

  • 総務・庶務:20.3万円
  • 一般事務:23.0万円
  • 営業事務:23.2万円
  • その他事務:20.3万円

次に、平均給与月額が15万円以上の職種は以下の2つです。

  • 軽作業:約16.4万円
  • 接客・販売など:約15.3万円

同じ障害者雇用でも約15~26万円と、職種によって平均給与月額には幅があります。

障害があっても給料をアップする方法

障害者雇用の給料は、障害の特性に応じた業務内容をはじめ、雇用時間や勤務日数の調整などがあることから、障害者雇用でない場合に比べ低くなるケースも少なくありません。

ただし、障害があっても給料アップを目指すことは可能です。ここでは具体的な方法を紹介します。

資格やスキルを習得する

障害者雇用では事務職、専門職、軽作業を主としたルーティンワークが多く、大幅な給料アップの機会は少ないといわれています。しかし、資格取得やスキルの習得によって専門的な業務が可能になると、給料アップにつながりやすいでしょう。

ただし、どのような資格やスキルを取るべきなのかわからない状態でやみくもに手を出すのはおすすめできません。まずはしっかりと実務能力や勤怠を安定させることを重視したうえで、業務にプラスになり自分の技量に合う資格やスキルを無理のないペースで取得するのが望ましいでしょう。

正社員登用制度を活用

障害者雇用は多くが契約社員からのスタートで、採用時から正社員として雇用する企業に出会えるのは稀なケースです。しかし、始めから正社員雇用は行っていなくても、入社後に数年の期間を経て正社員登用を行う企業は増えてきています。

正社員になれば給与アップや収入の安定が見込めるため、正社員登用制度がある企業かどうかも併せて就職先を選ぶとよいでしょう。なお、すべての企業が正社員登用制度を設けているとは限らないため、過去の正社員登用実績の有無も調べておくことをおすすめします。

キャリアアップの転職を検討

近年はキャリアアップのために障害者雇用での転職をする方も増えてきています。一般雇用よりも、障害者雇用は違う業種・職種へのキャリアチェンジがしやすいのが特徴です。

例えば、軽作業の職種に就いていた人が経験のない事務職に転職するのは、一般雇用ではなかなかハードルが高いでしょう。しかし、障害者雇用の場合は年齢や経験に関係なく、一般雇用よりは比較的容易に転職が可能とされています。

ただし、障害者雇用では実習を通した選考が多いため、面接のみで内定をもらうのは難しいかもしれません。在職者が転職活動をする際は、実習の時間を確保できない可能性がある点にも注意が必要です。

支援機関やサービスを利用する

障害者雇用での就職や、キャリアアップのための転職を希望する方は、以下の支援機関やサービスを利用するのもよい方法です。

地域障害者職業センター

障害の特性やニーズに応じて、専門的な職業リハビリテーションを行う機関です。ハローワークと連携しながら、さまざまな支援を実施しています。

障害者就業・生活支援センター

障害のある利用者に対し、就業面・生活面のそれぞれに支援担当者がつき、職業や生活の自立、安定を目指した支援を行います。

ハローワーク

障害の有無に関わらず、求職者と人材を募集する企業との間にたち、仕事の紹介や入職のサポートなどさまざまな支援を行う機関です。障害者専用の窓口を設置しているところもあり、専門知識を持つスタッフの手厚いサポートが受けられます。

就労移行支援

職業訓練や就活支援、就職後の定着まで就労に関するトータルサポートが受けられる福祉サービスです。障害のある方を対象に一般企業への就職を目指し、特性やこれまでの経験などを踏まえ一人ひとりに合った支援を行います。

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就職や転職を検討している方はKaienにご相談ください

障害者雇用を理由に安い給与で雇用するのは法律で禁止されています。しかし、障害の特性に応じた雇用形態や雇用時間、勤務日数の調整などにより、給与設定が低くならざるを得ないケースはあります。

Kaienなら就職活動から定着支援までのトータルサポートをはじめ、給料アップを目指すための資格取得やスキルの向上まで手厚い支援が可能です。障害者雇用を希望して自身の特性や強みを活かせる仕事に就きたい方、キャリアアップなどの転職を考えている方は、ぜひKaienにご相談ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます