発達障害の方が転職を成功させるポイントとは?利用できる支援機関やサービスを解説

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発達障害*の方は転職を繰り返すケースが多く見られます。自分の特性に合った働きやすい環境を見つけて転職を成功させるためには、発達障害の方に特化した支援機関のサービスを活用してしっかりと準備し、効率的な転職活動を行うことが重要です。

本記事では、発達障害の方が転職を繰り返す理由と転職を成功させるポイント、利用できる支援機関やサービス内容について紹介します。

大人の発達障害とは?

発達障害とは、生まれつき脳の機能発達がアンバランスなことによる不注意や落ち着きのなさ、コミュニケーションが不得意といった特性があり、日常生活や仕事などで困りごとを抱えている状態です。

大人の発達障害の特性は、子どもの頃は性格や個性と捉えられ、見過ごされるケースも珍しくありません。グレーゾーンと呼ばれる自閉の薄い方は、周囲に自分を無理に合わせようと過剰適応を起こし、特性が隠れる場合もあります。しかしその場合、大人になって社会生活における困りごとに直面し、発達障害に気付くことも多いのです。

例えば、就職して仕事を始めると人間関係や業務が複雑になりますが、それらにうまく対処できないことをきっかけに発達障害が発覚する場合があります。

特性により、仕事や人間関係がうまくいかず失敗を繰り返すことは、発達障害の方にとって大きなストレスになるでしょう。この生きづらさやストレスが、うつ病などの精神疾患を引き起こす二次障害につながる可能性もあります。二次障害の症状で医療機関を受診し、発達障害がわかるケースも少なくありません。

発達障害の方が転職を繰り返す理由

発達障害の方は人間関係の構築が苦手なことが多いため、職場で上司や同僚とうまくいかず居心地が悪く感じがちです。また、「指示からずれてしまう」「独特なこだわりがある」「音や光に過敏で気が散りやすい」といったASD(自閉スペクトラム症)の特性や、「優先順位をつけるのが苦手」「うっかりミスが多い」などのADHD(注意欠如多動症)の特性ゆえに、業務の遂行に支障をきたす場合もあります。

加えて、ADHDの方は衝動性によって突発的に退職してしまうこともあるため、転職を繰り返しがちです。

ただし、何度も転職するのは発達障害の方にとって悪いことではありません。発達障害の方の中には、「頑張りすぎて疲れてしまう」「職場環境の変化についていくことが難しい」などの理由により、就労から数年で適応が難しくなるタイプの方がいるのも事実です。その場合は必要に応じて退職したり休養をとったり、その時の自分に合う職場に転職したりすることも必要になります。

発達障害の方の転職の困りごと

発達障害の方は自分の考えや気持ちを言葉で伝えるのが苦手な傾向があるため、転職活動の際に面接でうまく自己アピールができない場合があります。

また、マルチタスクが苦手で計画を立てるのが困難な方は、段取りよく就職活動を進めるのが難しいかもしれません。衝動性の強い方だと思いつきで行動してしまうので、自分の特性と応募先の環境や業務内容がミスマッチするケースも多いです。

加えて、自分の苦手なことや得意なことを把握できておらず、履歴書に何を書いたらいいかわからないという方も少なくありません。

在職中の転職活動は難しい?

転職活動をするなら、一度退職して就職活動に専念できる時間を確保したほうが効率的です。

在職したままだと絶対に転職活動ができないというわけではありませんが、在職しながら転職活動をすると活動内容や時間が制約されてしまいます。特に障害者雇用に応募する場合は、数日間から数週間に及ぶ実習が選考に含まれているケースも多いため、実習に参加するには有給休暇を取得しなければなりません。

また、求人を募集している企業側からしても、就労移行支援事業所などで支援を受けている方のほうが安心して採用しやすいという意見もよく聞かれます。

発達障害の方が転職を成功させるポイント

発達障害の方が転職を成功させるためには、やみくもに動くのではなく、自分に合った職種・職場選びや支援サービスの活用といったポイントを押さえることが大切です。転職を成功させる主なポイントとして次の3つが挙げられます。

  • 障害理解(自己理解)
  • 働き方を決める
  • 利用できるサービスや支援機関を知る

以下で詳しく見ていきましょう。

障害理解(自己理解)

応募先や転職先とのミスマッチを避ける対策として、自分の得意・不得意を明確にしておくことが重要です。その上で応募先が自分の特性に合う職場環境や業務内容かを検討し、働きやすい職場を選ぶようにしましょう。

障害理解(自己理解)を深める際は、いままでの職場で「難しかったこと」や「やりやすかったこと」が何かを思い出し、書き出してみてください。以下に例を挙げます。

  • 口頭で指示されると覚えられないが、メールやメモなど書面にしてもらうとわかりやすかった
  • 人の話し声や生活音が気になると注意散漫になるが、静かな環境であれば集中できた

このように「不得意なことや苦手な理由」、「どうすれば苦手を解消できるか」に注目すると良いでしょう。

働き方を決める

発達障害の方は、障害者手帳を取得していれば一般雇用と障害者雇用のいずれかを選んで求人に応募できるため、どちらの働き方が自分に合うか選択しましょう。

従業員の人数が一定数を超える企業・自治体には一定割合以上の障害者(障害者手帳を持っている方)を雇用することが義務付けられており、これが障害者雇用に該当します。障害者雇用は障害や特性への理解と配慮を得やすいため、働きやすくなる点がメリットです。

一方、一般雇用は求人数や求人職種の多さから転職先の選択肢が多い点はメリットですが、障害や特性に対して十分な理解や配慮をしてもらいにくいというデメリットも存在します。どちらが良いかは一概には言えないため、環境や給与、仕事内容などを考慮して自分に合う企業を選びましょう。

利用できるサービスや支援機関を知る

発達障害の方が転職活動をする際には、支援機関によりさまざまなサポートを受けることができます。発達障害の方が利用できる主な支援機関は次の4つです。

  • 発達障害者支援センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • ハローワーク
  • 就労移行支援事業所

これらの支援機関をうまく活用することで障害理解(自己理解)が深まり、ミスマッチを回避しやすくなるなど、転職の成功につながります。それぞれのサービス内容については、次で詳しく紹介します。

発達障害の方が転職の際に利用できる支援機関

発達障害者支援センターは各都道府県に1つ以上設置されており、多くの支援機関の情報が集まるなど地域における発達障害者支援の中心的存在です。困った時に相談したり、必要な支援や支援機関を紹介してもらったりできます。

障害者就業・生活支援センター(通称ナカポツ)は、障害者就職支援センターと同様の役割を果たす支援機関です。主に就業に関係する生活面のサポートや就業前・就業中のサポートをしてくれます。

ハローワークは障害の有無を問わず、誰にでも仕事を紹介してくれる国の機関です。障害に理解のある専門のスタッフが配置されていることも多く、大規模な障害者雇用面接会なども実施しています。

就労移行支援事業所は、一般企業への就労を希望する障害のある方を対象とする支援機関です。職業訓練や就活サポート、定着支援などを行っています。就労移行支援事業所については次で詳しく解説します。

転職に活用できるKaienの支援サービス

Kaienでは、発達障害の方向けに2009年から特性や強みを活かした仕事探しのサポートや総合的な就労支援を行っています。直営事業所は関東・大阪に22カ所、パートナー事業所は北海道から鹿児島まで21カ所展開しています(2024年7月現在)。

Kaienが実施する主な就労支援サービスは次の4つです。

  • 就労移行支援
  • 自立訓練(生活訓練)
  • マイナーリーグ
  • 少人数制面接会

それぞれの支援内容について、以下で詳しく紹介します。

就労移行支援

Kaienでは、発達障害の方に特化した就労移行支援を実施しています。100種類以上にわたる職業訓練を介し、自分の特性を活かせる適職を見つけることが可能です。また、就労に必要なスキルの習得に役立つ主なカリキュラムを、一部紹介します。

  • ビジネススキル(優先順位付け・電話対応・メモの取り方など)
  • ソーシャルスキル(コミュニケーション・感情のコントロールなど)
  • 手や体を動かす仕事のスキル(軽作業など)
  • もの作りのスキル(伝統工芸など)
  • クリエイティブスキル(プログラミング・デザインなどの専門コース)

また、Kaienは障害理解(自己理解)や実際の転職活動に役立つライフスキル講座、スキルアップ講座、就活講座なども50講座以上あり、セッションを毎日実施しています。

転職活動においては担当カウンセラーがしっかりとサポートする他、就労定着支援が充実している点もKaienの強みです。さらに、Kaienは障害に理解のある企業200社以上と連携しているため、他事業所では扱いがない独自求人も紹介できます。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)とは、就労に欠かせない生活リズムの確立や生活習慣の改善、自分の障害や特性に合った職場選択、上司・同僚とのコミュニケーションの取り方など社会スキルの向上、周囲への合理的配慮の求め方などを習得するためのプログラムです。

Kaienでは休職・退職を経て生活リズムが乱れてしまった方や、転職活動に取り組む自信がまだない方などに向けた自立訓練(生活訓練)を実施しています。「じぶんを再定義し、みらいを再設計する場」をモットーとしており、発達障害の強みを活かせる訓練内容や自己理解に役立つ講座が特徴です。

ただし、就労移行支援と自立訓練(生活訓練)の併用は原則としてできません。自分にはどちらが合っているかわからない方はお気軽にご相談ください。

マイナーリーグ

Kaienが運営する就職・転職サイト「マイナーリーグ」は、発達障害の方の「とがり」を活かせる求人を多数掲載しています。障害特性を配慮して受け入れてくれる企業をKaienがセレクトして紹介しているため、安心して働ける職場に出会えます。

就労移行支援などでIT開発・デザインなどの専門スキルを身に付けた方のために、専門性を活かせる求人リストも用意しており、転職前の準備から転職活動までワンストップで行えることもKaienのマイナーリーグの強みです。

また、マイナーリーグの特許技術として、自分の苦手なことや配慮してほしいことを数回のクリックで企業に伝えられる仕組みもあります。加えて、支援者の「推薦文」を企業に送れる機能や、就活情報を支援者に共有できるメール転送機能もマイナーリーグだけのオリジナルです。

少人数制面接会

マイナーリーグでは精神疾患のある方や発達障害の方を対象に、少人数制の採用説明会をオンラインで実施しています。

マイナーリーグ採用説明会には発達障害の方や精神疾患のある方の雇用実績がある企業が集まるので、障害を理由に門前払いされる心配はありません。また、各企業の採用担当者が会社や業務内容、障害に対して具体的にどのような配慮ができるかなどを説明してくれるので、具体的な内容を知ってから応募するかどうか検討することができます。加えて、チャット機能を使って匿名で採用担当者に質問できるので、対面よりも気軽に質問が可能です。

発達障害の方の転職は支援サービスを活用しよう

発達障害の方が働きやすい職場に転職するためには、まず自身の障害理解(自己理解)を深めることが重要です。その上で、障害者雇用も視野に入れて働き方を決めましょう。就労移行支援事業所など、障害がある方の就職・転職を支援するサービスを活用することもおすすめです。

Kaienでは転職活動の準備から実際の転職活動、定着支援までワンストップで実施しています。無料の説明会や体験利用も行っているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます