精神疾患(精神障害)のある方に向いている仕事は?就労移行支援のサポート事例

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日本における精神疾患を有する総患者数は2017年時点で約419.3万人にのぼり、生涯を通じて4人に1人がこころの病気にかかるといわれています。

精神疾患(精神障害)のある方の中には仕事を続けている人も多く、心身の不調に悩まされることも少なくありません。では、精神疾患の方が無理なく働き続けるためには、どんな仕事が向いてるのでしょうか。

本記事では、精神疾患の方に向いている仕事や、適職を見つけるための就労に関する支援サービスについて解説します。

精神疾患(精神障害)とは

精神疾患(精神障害)は心の風邪とも言われ、気分の落ち込みや不眠、妄想など、心身にさまざまな症状が現れる病気です。

代表的な精神疾患としては、以下が挙げられます。

  • うつ病
  • 双極性障害(躁うつ病)
  • 統合失調症
  • 発達障害*
  • 適応障害

精神疾患のほとんどは思春期以降に発症しますが、発達障害の場合は生まれつきの気質であり、幼少期から継続した傾向が見られます。また、発達障害の特性ゆえに他者から理解されなかったり社会適応がしづらかったりすることで、二次障害として精神疾患を発症するケースも多いです。こうした背景もあり、発達障害よりも精神疾患が先に見つかったという人も少なくありません。

精神疾患の方が働くうえでの困りごと

精神疾患の方は心身の症状や特性により、働くうえで多くの困りごとを抱えています。精神疾患の症状を抱えながら仕事を続けると、環境の変化や職場の人間関係、業務内容で困難に直面することもあるかもしれません。

精神疾患の種類や症状によって一概には言えませんが、多くの人に見られる困りごとを知ることで、適切な対処法をとりやすくなります。ここでは、精神疾患の方にありがちな仕事や業務についての困りごとを見ていきましょう。

環境の変化に対応しづらい

精神疾患のある方は、環境の変化にストレスを感じやすいのが特徴です。そのため人事異動による配置換えや、新しいプロジェクトの始動時などに体調を崩しやすい傾向があります。障害者職業総合センターが行った調査でも、就職から1年後の職場定着率は49.3%と半分は離職しているという結果が出ていることからも、環境の変化に苦しむ精神疾患の方は多いと言えるでしょう。

離職の主な原因は、仕事内容や職場環境、病気について会社から配慮を得られないといった、ミスマッチによるものです。長く働き続けたいのであれば、自分の特性や症状に合った仕事選びが重要になってきます。

体調が安定しない

精神疾患のある方は、ストレスなどの影響でメンタルに不調をきたすほか、不眠や疲れやすいといった身体的な症状が現れるなど、体調が安定しない人が多いです。日によって体調や気分にムラが生じると、仕事の質が低下したり急に気分が落ち込んで働けなくなったりする可能性も考えられます。とはいえ、仕事中は周囲に気を遣い、体調のことを打ち明けるのは難しいでしょう。

薬を服用している方は日頃から薬の飲み忘れに注意し、体調が悪くなりそうになったら早めに休憩したり、相談したりするなどの自己管理が大切です。

対人関係を築くのが難しい

精神疾患の影響で人間関係に悩む方も多くいらっしゃいます。精神疾患の症状の1つにネガティブ思考が挙げられ、周囲の反応に過敏になったり、マイナスに受け取ったりと他者とのコミュニケーションがストレスにつながりがちです。

対策としては、物事の捉え方を改めることが打開策となります。職場はただでさえ利害関係が絡む場所であり、互いに不平不満が生じてしまうものだと捉えましょう。自分の中で妥協点を見つけられれば、過度にストレスがかかる心配もありません。家族など職場以外の人に悩みを話す、趣味を見つけるなど、ストレス発散の方法をいくつか持っておくことも有効です。

業務上のミスが多い

集中力が持続しない、注意散漫になるといった症状や特性がある場合は、業務における抜けや漏れ、ケアレスミスが多い方も目立ちます。

口頭で指示を受けた時に抜けや漏れが多い場合は、指示を文章やメールでもらえるようにお願いしてみましょう。また、メモを取ったあとに指示の内容をまとめ直すことで全体の行程を理解しやすくなります。他にもこまめに休憩をとるなど、集中力を保つための工夫を取り入れてみましょう。

精神疾患の方に向いている仕事

精神疾患の方が仕事を続けるうえで大切なのは、自分に向いている仕事内容や職場環境であるかどうかです。具体的には、「自分のペースを保てる」「勤務形態が柔軟」「コミュニケーションが少なくて済む」といった仕事が望ましいでしょう。

例えば在宅ワークが可能であったり、フレックス制で裁量労働ができたりすると、体調の変化に合わせて働きやすくなります。職種で言えば、エンジニアや研究職などは、少ないコミュニケーションかつ自分のペースで仕事を進めやすいでしょう。

ただし向いている仕事というのは、障害の程度や種類、特性によって個人差がありますので、一概にこれらが当てはまるとは限りません。その時々の状況でも適職は変わってくるため、これらはあくまで参考程度にとどめ、自分が無理なく働ける業種や働き方を選ぶようにしましょう。

就職・転職・復職は就労支援サービスの利用がおすすめ

精神疾患がありながら、職場での困りごとを自力で解決して自分に合う就職先まで探すのは困難を極めます。そのため、困りごとへの対策や自分に合った仕事を探したいときは、就労支援サービスを頼ってみましょう。

精神疾患などの障害がある方を対象に、訓練や就活サポートを行ってくれるサービスに、就労移行支援が挙げられます。就労移行支援は、個別支援計画を基に就労経験やその人の特性に合わせた就労サポートをトータル的に行うのが特徴です。

就労移行支援は事業所によりさまざまな特色があり、通所型なので自分の好きなところに通うことができます。原則2年間の通所期間の中で、自分に向いている適職を見つけ、苦手分野への対処方法や必要なスキルを習得できるので、精神疾患により現在の職場環境や今後の働き方に悩んでいる方におすすめです。

就労移行支援のサポート事例

Kaienでは、発達障害の方に特化した就労移行支援を実施しています。発達障害の二次障害として精神疾患の症状が現れる方も多く、精神疾患の方ももちろん利用対象です。

Kaienの就労移行支援は、充実したプログラムや専門的な知識やスタッフの手厚いサポートにより、過去10年間で2,000人以上の就職実績を誇っています。就職先の業種も多岐に渡り、給与も3人に1人が20万円以上と高い水準を保っているのが強みです。

一人ひとりに担当スタッフが配置されるため、人には相談しづらい悩みも話しやすく、個々に合わせた支援で就職から職場定着までをサポートします。

職業訓練

Kaienの職業訓練では、100職種以上の体験ができます。豊富な職業訓練を通して自分に合う適職がわかるうえ、業務に関する実践的な内容を学ぶことが可能です。

Kaienで体験できる職種は以下のようなものがあります。

  • オフィス事務系:総務、人事、経理、企画、営業
  • 軽作業・伝統工芸系:出版業務(印刷、三つ折り、封入)、伝統工芸(箸づくり)
  • IT・デザイン系:システム開発系プロジェクト、動画編集、DTP(Desk Top Publishing)

個々の特性に合わせられるよう、一般的な職種からプログラミングなどの専門分野を極めるものまで、あらゆるコースを用意しています。いくつもの仕事を体験できるので、あなたの強みを活かせる仕事と働き方を見つけられるでしょう。

豊富なカリキュラム

豊富なカリキュラムで、就労に必要なあらゆるスキルの習得や困りごとへの対策を学べるのも、Kaienの魅力です。ビジネススキルのほか、どんな仕事にも不可欠なパソコンの基礎的なスキルとしてタイピングやMicrosoft Office(Word、Excel、PowerPoint)なども、希望者は学ぶことができます。

自己理解として自分の職業人生をデザインするための講座では、将来の不安を軽減し、未来を明るくする話し合いを行っています。さらには、自分と同じ課題や悩みを抱える人と同じ立場で語らうことで精神的負担を軽減できるカリキュラムもあります。

カリキュラムを通して自分に必要なスキルを習得することが、将来の働き方に対する不安の軽減にもつながるでしょう。

リワーク

リワークとは、精神疾患など心の健康問題を抱えて休職した方の職場復帰を支援する制度です。リワークは自己管理能力や基礎体力などを高め、就労に対するスキルの習得を促す目的で行われます。リワークの場合は仕事と同じように、決まった時間に決まった場所に通い、他の利用者と一緒にプログラムを受けます。そうすることで、生活リズムが整い、対人スキルも身についていきます。

リワークは医療機関でも利用できますが、就労移行支援でも利用可能です。就労移行支援では復職支援はもちろん、現在無職の方の職場復帰のサポートをメインとしています。またKaienでは、後天的な心の病気のほか、発達障害など生まれながらの障害も含め幅広い障害に対応しているのも利用のメリットと言えるでしょう。

求人紹介

Kaienでは精神疾患などに理解のある企業と提携し、独自求人を含む200社以上を紹介できる体制が整っています。職種や働き方もさまざまで、未経験でも応募できるプログラマー職や簡単なデータ入力、在宅勤務可能など、自分に合うものが選択可能です。幅広い求人を扱っているので、適職に出会えるチャンスが広がるでしょう。

また、就職にあたってはリハビリ出勤ができる職場を選ぶのも1つの手です。リハビリ出勤とは、本格的に職場復帰をする前にお試し出勤ができる制度を指します。具体的には「自宅と職場近くを往復する」「出勤してデスクで一定時間を過ごす」「まずは午前中だけ働く」など、徐々に職場で過ごす時間を延ばして仕事に慣らしていく方法があります。求人を探す際は、リハビリ出勤可としているかもチェックしてみましょう。

定着支援

仕事は就職率だけでなく、定着率にも着目しなければなりません。長く働き続けるために、Kaienでは手厚い定着支援を行っています。定着支援とは、就労移行支援を経て就職した後に利用できるサービスです。就職後6ヶ月間は就労移行支援で、7ヶ月目以降からは就労定着支援で、それぞれ定着支援が受けられます。

定着支援の主な内容は以下の通りです。

  • 相談(体の不調や仕事の悩みなど、さまざまな相談ができる)
  • 職場訪問(就労移行支援を行う事業所のスタッフが職場に赴き、困りごとがないかなどを見てくれる)
  • 勤務先との調整(勤務先に聞きづらいことや言い出しづらいことを代わりに伝えてくれる)
  • 地域移行(定着支援の修了後、地域の支援センターなどに紹介してもらえる)

精神疾患のある方の就活は就労移行支援の利用がおすすめ

精神疾患と診断されたとしても、今の時代は就労移行支援など、就労に関するサポート体制が整っています。

Kaienでは、一人ひとりの症状や特性に寄り添いながら、その人に合った職業を見つけるサポートを行っています。職業訓練や充実したカリキュラム、豊富な求人紹介などを通して、無理なく働き続けられる仕事を一緒に探しましょう。無料体験や見学会も随時無料で開催していますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。


監修者コメント

仕事は自己実現の一つと言われるくらい、人生から切っても切り離せないものです。日本の経済が長年スランプにあると言われていても、日本が先進国でいられるのは過去から現在までにわたる一人一人の仕事の結果だと言っても過言ではありません。

本コラムにありましたように、精神障害を抱える方にとって毎日同じ時間に出社して、さまざまな仕事をこなすというのは容易ではありません。とはいえ、診療の現場で患者さんを拝見していると、個性と才能に溢れた方々に多く出会います。企業がそのような障害者の方の雇用を促進している理由の一つとして個性ある従業員の参画を認めるようになってきたことがあげられます。最近はIT技術の発展で、必ずしも出社しなくて良い障害者雇用も出てきています。

なお、仕事以外にも障害者手帳による税金控除や、障害者年金の受給なども検討していただき、ライフプランに役立ててくださいね。


監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。