友だちが少ないことで感じるネガティブな感情

発達障害の人の視点で議論してもらいました ~キスド会 2017年6月 開催報告~
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 在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。今回のテーマは「友だちが少ないことで感じるネガティブな感情」について議論しました。

友達の定義を教えてください

Aさん) 人は好きなんですけど、人といると疲れちゃうから友達がいない、みたいな。

Bさん) わかりますね、すごく。

Aさん) 「周りはこんな友達いるから自分もやらなきゃやらなきゃ」って思うとそれが負担になるので。自分の中では知り合いレベルだけど、心が通い合ったとか、ほんとに自分のことを思う言葉をかけてくれたしたら、自分の中で勝手に友達としてカウントしていいや、ぐらいな気持ちでいたほうが楽かなぁ。

Cさん) 人に会える自分にあった場を見つけていけば良いですよね。僕は友達がどうしても欲しいわけではない人なので、ここKaienでも、参加している時は真剣に聞くし、真剣に考えて答えますけど、名前覚えませんよ、次会ったとき誰でしたっけって言いますよって過ごしてます。

Bさん) ところでどこからが友達かってはっきりわからないです。よく話す人だったら結構いるんですけれども、大学時代の同期が果たして友達と呼べるのかって言うとわからなくて。自分が友達が多いのか少ないのかが全く分からないんですよね。明確な友達の定義を誰か教えてほしいな、なんて。

一同) (笑) 

Dさん) 私の定義は、自分の家に呼んでもいいなと思えたら友達って考えています。ここでは会えるけど「家に行きたいな」って言われた時に「ちょっと無理」って思ったら多分それは知り合いなんだなって。

Bさん) 難しいですね。どちらかって言うと部屋が結構汚いので、あんまり入れたくない。

一同) (笑) 

Dさん)そういうことではなくて、この人と例えばずっと話されたりとか自分がお風呂入りたいタイミングとか、相手がいることでずれたりとかしても「この人だったらまぁしょうがないかな」と思えるかどうかという感じです。

Bさん) どうですかね。よく分からないです。そういうこと。

Eさん) 僕は今深く付き合ってる人は2人くらいしかいないんですけど、やっぱりその人たちとはもう本心で喋れるっていうか、隠さない、思ってること素直に言えるんで気分的にすごい楽だったりするんで、そうやって深く、隠さず話せる人っていうのは友達なんだろうなと思います。

Cさん) そうですね。そういう人が1人いるとか、最近いないなぁとか別にそれだけの事ですよね。でも友人が多い少ないをマウンティングの道具にしようとしている風潮がとても嫌です。

Bさん) すごくわかりますね。自分はどちらかって言うと行動が回避的な所が多くて、仲良くなろうと思ってもやっぱり怖くなって近寄らないっていうのはけっこうあるんですよ。なので、近づきたい欲求と近づきたくない欲求ってのが2つあって、だから友達がたくさんいないのはおかしいんじゃないかっていう風潮はやっぱり自分も反発しちゃいます。

周囲の仲が良い職場・環境は居づらい

Eさん) ちょっと関係ないんですけど、自分は環境によって友達がいるかいないかで、辛いか辛くないかが変わってくるんじゃないかなって思っています。

Bさん) はい。

Eさん) 大学時代、研究室に配属されたんですけども、そうなってくると研究室にずっといることが多かったんです。同級生の10人ぐらい。自分以外の同級生同士が仲良く話したりだとかプライベートで会ったりだとかしているんですけど、あんまり自分はそこまで仲良くなくて。自分が友達いないのがすごい劣等というか、辛く感じていました。でも今は特例子会社(注:障害のある人を雇用するための会社)で働いてます。そちらだと周りの方も障害者の方が多いからかプライベートで会うっていう話があんまり出ないので、職場ではそんなに辛くはないんですよね。

Aさん) みんながそうだから。

Eさん) はい。そうですね。

Bさん) 誘われることはたまにありますけど、1対1で誘われることはまず無いです。自分からは怖くて誘えないですね。向こうがどう思ってるのかよくわからないですから。

Fさん) 仲良く出来た勢力が権力握ってるみたいな風潮があるので、そういうのが上手くできない自分に落ち込むんですけども、どうしても耳から聞いたことをすぐ理解できなかったりとか、流行り事とかニュースとか、皆の流行りの店とか聞いても全然興味が持てないっていうか、すぐ忘れちゃうというか、会話や雰囲気についていくのが難しくて…。

Aさん) でもそれでいいんじゃないですか。

ネガティブな世界に自分を追い込む必要はない

Dさん) ちょっとお話を聞いてて思ったのは、多分誰もシカトなんかしてないと思うんですね。自分の方が勝手に他人と比較をしてものすごい劣等感にさいなまれているんじゃないかなと思いました。障害あろうとなかろうと、話しやすいと思われる要因が多い人ほどそりゃ多くの人と仲良くできるし、そういう人であれば周りから「仕事をお願いしたい」とかって言われるのも当たり前だし、別にその人が権力を握っているとか、周りをコントロールしているっていうわけではないんじゃないでしょうか。「仲良くしなきゃいけない」というのが周囲の風潮・圧力という風に捉え始めると、逆に危険な気がするというか、自分で自分をものすごくネガティブな世界に追い込むことになるので、やめた方がいいんじゃないかなって思いました。

Bさん) 日々日々、確かにそういうことは思ってしまいますね。例えば友達が少ないだの、恋人がいないだの、そういったことを日々常々考えてぐるぐるはまってしまって、常に浮かない顔している気がします。人とうまく付き合えないっていうのも多分、自分自身の先入観がすごいんですよ。発達障害だから人とうまく付き合えないんだろうなっていう先入観が大きくあって、ネットで調べていると「発達障害の人とは付き合いたくない」とか「発達障害の人間のこういうところは困る」とか、そういったことがたくさん書かれてるじゃないですか。それに当てはめることで、本来の自己評価よりも過度に下げてしまって、まるで自己評価が低くなってしまって、日々浮かない顔になってしまったりっていると思いますね。

Dさん) 自分からそういうネガティブ情報のとこに突っ込んでいくみたいなことをするのは、誰のためになってるんだろう?そういう場所、例えばネットとかもそういう風に調べると出てくることは経験として分かってるのであれば、調べないようにするとか、そういう機会を減らすことができると思うんですよ。自分で突っ込んでいってそういう情報に暴露して周りのせいで落ち込んじゃったていうのは・・・。そこらへんは自分の生活から切り離して考えて行動選択をしてった方がいいんじゃないかな。

Aさん) そういうネガティブ依存っていうところもあるのかもしれないですね、やっぱり。

Bさん) ちょっとあります。逆にネガティブなコメント見るとすごい落ち込んじゃうんですけども、なぜか逆にネガティブコメントばっかり拾っちゃうっていうことが。

Eさん) 私も「そうだよね」っていう安心感を得るために、ネガティブ情報をあつめること結構あります。

ネガティブ依存は精神的な落ち着きの一面も!?

Aさん) セルフハンディキャッピングとかそういうのに近いかもしれないですね。もしかしたら言い方が強いかもしれないですけど、ニコチンは体に悪いと思っていながらずっと依存してしまうニコチン中毒者みたいなあれに近いのかもしれないですね。

一同) (笑) 

Fさん) 発達障害の人は2ちゃんねるには近づかない方がいいと思います、個人的に。

Eさん) ネガティブなコメントの掃きだめですしね。

Cさん) 健常者が自分より下の人を叩くために使ってるような場所って勝手に私は思ってるんで、あそこは行かない方がいいのかなと思っています。

Dさん) 2ちゃん使ってる人も精神系の障害がある人が多いんじゃないのかなと。そういう力関係の中に入らないのが一番。

Bさん) ヤフーのコメントとかでもこんなに盛り上がってるんだなっていうくらい罵り合ってますもんね。あれが逆に生きている証みたいなものなのかな。

スタッフ) 若干の自傷行為なんですかね。ネガティブな情報を見たいというのは。

Dさん) 自傷行為。

スタッフ) 自傷行為ってよく言うのは、物理的には髪の毛を抜いたりとか、リストカットしたりとかですよね。なんでそれするかっていうと、痛いっていうのが分かることによって、気がそれるというか、生きてる実感が沸くという人もいますものね。皆さんのお話を聞いていて、ネガティブ情報に突っ込むっていうのは、ある種の自傷行為なのかなって思いました。

Cさん) うん。メンタル的な自傷行為っていうのに近いのかもしれないですね。

Aさん) 「自分はこういう風にやられてるんだ」っていう

Dさん) マゾヒズム。

Aさん) かなぁ。

Dさん) 体調が悪くなったり精神的に落ち込みすぎるとマゾヒズム的な状態にはなるなぁ。「その虐げられてることの立場にいられる自分、安心」みたいな。「もう死にたい」と思ったけどそこにいられるなら「それでもいいかな」って立ち止まるために、ここにいるみたいな気持ちになるんじゃないでしょうか。

Bさん) 環境を変化させたくないみたいな気持ちになってるとこありますよね。本来だったら幸福になるべきなのに、あえてそういう方向にならずにマイナスの海に沈んでしまう、みたいな。客観的に見れば自分も確実に就労も出来てるし、幸せな方ではあるんでしょうけど、それでもやっぱり自分は不幸だ、みたいな思い込みに囚われてるとこがありますね

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※Kaienでは、自分の特徴・強みを生かして就職を目指す就労移行支援や、自立に向けた基礎力を上げる自立訓練(生活訓練)、また学生向けのガクプロというセッションを運営しています。それらの中で周囲とつながる方法や安心して参加できるコミュニティについても紹介していますので、支援者の伴走を活用することもご検討ください。


監修者コメント

周囲と仲良くできない自分が、周囲と仲良くしている人たちに対して「悪く思われているんじゃないか?」と思うことを投影と言います。自分のことを「悪く」思っていると、無意識的にその気持ちを相手に押し込み(自分もそのことを忘れ)、相手がさも「自分を悪く思っている」ように感じる、そういうメカニズムのことです。

世の中の人の感情は、投影がほとんど。相手は何も感じていないことの方が多いですよね。もちろん、相手も自分に投影をするわけで…(なら、相手は投影を用いて、こちらに関心があるじゃないか、何も感じていないというのは嘘じゃないか、といわれてしまいますが)。投影と投影が絡み合うから、こじれてしまい、人間関係とはかくも複雑なものになります。

人間関係の全体像を捉えるのは困難ですが、せめて自分の感情については、理解を深めていければと思います。


監修 : 益田 裕介 (医師)

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