在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。
今回のテーマは、会社で手が空いている時間をどう過ごすかについてです。
業務が少なく時間が余りすぎる
Aさん) 自分は実はもっと業務をこなせると思っているのですが、なかなか任せてもらえません。今の部署に入ってもう半年経ちます。ですが配属先では初めての障害者枠社員の受け入れだからか、業務が少なく時間が余りすぎます。
Bさん) 1日にどのくらい時間が空くのですか?
Aさん) 経理なので、時期によってだいぶ忙しさが異なります。月初と月末は忙しいのですが、月の真ん中は、ほとんど1日何もしてないという感じですね。
スタッフ) たしかに障害者雇用だと稼働率がどうしても低く、暇な時間が多いですね。実際、就職された方については「稼働率は何パーセントくらいですか?」とかなりの頻度で尋ねますから。理由としてはほとんどの会社が障害者雇用の人には残業させないので、業務をあふれさせられない。なので常に余裕のある量しかその人に渡さないというのがあります。
Cさん) 自分から仕事もらいにいくアクションは取っていないのですか?
Aさん) 上司や周りの人にもアピールしているつもりなんですよね。自分がどのくらいスキル持っているか、例えばExcelのマクロもこのぐらいだったら組めるとかは分かって頂けていると思うんです。それと週一回ミーティングで各自の進捗状況の報告がありまして、それぞれ各自の作業・状況は伝えていますし、聞いていただいているんですよね。
スタッフ) 障害者雇用では自分で仕事を取りに行くということは期待されず、割り当てられたものをこなせば良いという期待度の場合が圧倒的に多いです。「言われたことをすれば良いよ。頑張りすぎないで良いよ」という明に暗に言われている中で、「自分はこれが出来ます」というように社内営業的に声を上げるのはなかなか大変でしょうね。
Bさん) 冷たい言い方をしてしまうと、「障害者枠だからいてくれるだけで大丈夫」というような、あくまでその、人を集めるための枠という面もありますよね。
Cさん) 枠だって考えている程度の関心だから、実際に配慮するかというと「しない」ということですか?
Bさん) いや逆ですね。休まないように、辞めないように、すごく配慮しているわけじゃないでしょうか。ずっといてくれればいい、面倒を起こさなければいいと思っている会社もあると思うわけです。もちろん「障害者枠だけど戦力になってください、なにかあったらサポートするけど、後は一般枠も障害者枠も実はほとんど一緒です」という会社さんもあると思いますし。
「配慮」されて研修に参加させてもらえない!?
Dさん) 今度、私の職場で宿泊付きの現場研修があります。ですが、研修担当の人から「障害者枠の人はみんな体力がないから、参加させてあげるけど、日帰りプランになりそう」と言われています。差別はないはずですけれども、会社の人は本当に心配してくれているのか、それとも、何かあったら困るから、よくわかりません。
Bさん) 私は適度に配慮されるぐらいの方がいいかと思っています。実は私、今週会社で面談があったのです。「元気ですか」って確認程度だったのですけど、それぐらいの頻度で確認してもらったほうがいいとあとから思いました。でもちょうど良い配慮じゃないとお互い誤解も増えてしまいますよね。Dさんの現場研修は障害者枠の人は毎年同じような扱いをされるんですか?
Dさん) そこまでは聞いてないんですけど、研修担当の人によると、体力的にかなり厳しいと言う話で…。
Bさん) 会社の制度であれば、従わなければならないと思うんです。障害者枠では日帰りというルールなんだなと。一方でAさん個人次第で今回の判断が変わりそうなら、上司に相談する余地はあるかと思うんです。自分で言ったからには責任が発生するから、会社が負担する研修費用に見合う結果を出さなければいけないでしょうけれども。わからないのであれば、まずそこを確認すると良いでしょうね。
Dさん) 春にも研修あったんですけど、その時も「大丈夫?大丈夫?」と言われて…。本心では大丈夫じゃなかったんで、「寝られてない」と言ったら、今回の研修でのやり取りの際に言われました。飲み会の次の日に代休取らせてくださいと申し出たりしたことも過去にありました。そのことも含めて今回も大丈夫って言われているのですよね。
Bさん) 善意で言ってくれているんですか。なるほどね。善意で言ってその人が判断するなら偏見ではなく本音なのかな、といった気はします。
Cさん) 障害者枠ならメンターのような人に中に入ってもらうことは出来ないのですか? Dさんが直接交渉しなきゃいけないんですか。当事者同士だとなかなか…。第三者に入ってもらって、はじかれた理由を知れれば、いい方に向かう気がします。
Eさん) 通常は人事の方が第三者になるのでは?
Dさん) 今回は研修の部署も同じ人事部なので、どこまで理解してもらえるかという問題があります。
Aさん) 自分も研修会があれば例えば会計分野もそうですしIT分野でも積極的に参加するようにはしています。手が空いているときも経理業務のイロハとか、Webサイト等を見て勉強していますね。将来の投資だと思って。
Eさん) それはそれでいいんじゃないですか。逆に空いてる時間を使って専門知識を得て、資格取った方が経理の仕事として貢献できそうですものね。
Fさん) 僕の場合は興味のないことはできないんですよ。「勉強しろ」とか「資格取れ」とか言われてもやっぱり自分が勉強する気にならないとできないですよ。Aさんはどうですか?
Aさん) 自分はその点は大丈夫です。けれどもやっぱり、会社には勉強しに来てるわけではありません。業務を通じてアウトプットを出していく場なので…。
Fさん) 肩身が狭い感じがする?
Aさん) 空いた時間に「何をしよう」と日々考えるのが苦痛ですし、周りの目線も色々と気になります。
迷惑をかけない範囲でまず一人で動いてみる
Gさん) 自分がしている対策を紹介しますね。僕の勤務先で忙しい時期は夏とお盆なんですよ。それ以外はあまりにも暇です。で、そういう時にすることは掃除。時間が余ったら掃除をするようにしています。例えば傘立てが乱れてたら傘立てを整えるとか、電子レンジの中をウエットティッシュで掃除したりとか。 帰り際にみんなの机の脇にあるゴミを捨てに行っただけでも周りの人もたぶん気持ちいいと思うんですよ。
Cさん) たしかに周囲も悪い気がしないでしょうね。へんにサボってるとかニートしてるとか、思われなくてすむ。
Gさん) 本当は掃除が目的なんじゃなくて次何をするのか探しながら考えるために掃除をしているんです。それと掃除してるっていうことは「僕が暇だ」っていうをみんなにも伝えることにもなります。なので、実は仕事くださいってアピールにもなりますからね。
Aさん) うちの会社だと基本的に掃除はアウトソーシングしているんですよね。でも、雑務というか、モノの整理とかドキュメントを整えるとか、そういったところを自分で探して動いてみるというのは良いかもしれないなと思いました。
Hさん) 空いた時間を有効活用するために、研修・勉強の制度化を会社に提案するのはどうですかね。
Bさん) おっしゃる通りだとは思うんですけど、制度化という話を上司にすると、大きな話になります。自分以外を巻き込んでいく形になりますよね。上司や周りの人を余計忙しくすることになりかねないので、そこは気を付けて発言したほうが良いでしょうね。
スタッフ) 細かくコミュニケーション取りすぎると逆にうざったいって怒られることもありますものね。
Aさん) 私の場合は空気が読めなかったりします。あんまり自分が暇だからってこうしましょうと提案しちゃうと、それが周りにとって「そんなことやってる暇ないよ」みたいな反応になるかもしれない。そのあたりを見極めるのは結構難しいと思うんですよね。そこは慎重にいきたいです。
Cさん) だからまず一人で動いてみるというのが良さそうですね。
合理的配慮 企業と本人がどう対話できるか?
スタッフ) 今回はテーマとしてはとてもありがたかった。今後絶対出てくる話題ですね。一人ひとりへの配慮の違い。発達障害の方はできる部分と出来ない部分の差が激しい。しかもそれが周囲からも実はご本人からも見えづらい。配慮のオーダーメイドが簡単にできるわけではないと思うのですよね。
Aさん) 障害があるから障害者枠の人の対応はみんな一緒としたら、やっぱり差別かなとどうしても思ってしまう。配慮してほしいということで自分も障害者枠を選んではいます。それでも過剰な配慮はやっぱり逆差別のように感じます。
Fさん) 要は配慮が多い少ないというよりも、質の問題かもしれないですね。
スタッフ) 人間なんて白黒、イチゼロにわかれるわけじゃなくて、みんなグレーともいえます。バチっと一般枠と障害者枠のどちらかを選ばなければいけない制度がそもそもいけないのかもしれないですね。障害者枠にいるからって急に100の配慮が必要になるわけでもなく、かといって一般枠並のナチュラルサポートだとごくごく一部は配慮が足りなかったり。そこがすごく難しくて、いろんな問題が起こってくるのだろうなと思っています。
Aさん) 過剰な配慮をしてもらって、「ああそうですか、分かりました」って低姿勢を貫いていると、例えば相手が善意で配慮してくれてもそれを素直にありがたいと受け取れなくなってしまう。主張するところはちゃんと主張したいなと私は思います。
監修者コメント
空き時間をどう使うのか、というのは障害の有無に限らず、とても大事なことだと思います。
素直に「時間に余裕があるので、何かお手伝いすることありますか?」「自宅でも(と、前置きをつけたほうが良いかも)空いた時間を利用して、将来に備えて自己研鑽に励みたいと思うのですが、こんなことを勉強しておいたら仕事に役立つよ、というものはありませんか?」など上司や同僚にアドバイスをもらうのがいいかもしれないですね。
必要とされていることをする、というのが人間関係の基本。発達障害の方で人間関係って何と悩まれている方は、まずは相手が必要だと言っていることをすることに努められると良いと思います。
監修 : 益田 裕介 (医師)
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニック 院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医 精神分析学会所属
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