在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。今回は「診断が出た後に、一般枠で働き続ける場合の心構え」について議論しました。
障害者枠にすれば問題解決?収入はどうなる?
Aさん: 一般枠で働く時の心構えということで、自分がテーマとして挙げました。最近になって自分はASD(自閉スペクトラム症)とADHDだと発覚しました。仕事中に気を付けていることは、とにかく可視化をするということです。耳で聞いて判断したことは、だいたい可視化するようにしています。たとえその時自信を持っていたとしても必ずです。実は、今ちょっと転職活動をしていまして、次は障害者枠に行くことも考えたんですけれども、収入的なことも考えると次も一般枠で行こうと思ってます。なので、一般枠で働くときの心構えなどを、皆さんに聞かせていただけたら。
Bさん: はい。実は私もほぼ同じような状況です。私も一般枠で働いています。大学を卒業してから新卒で働きはじめて10年ぐらいです。昨年ASDとADHDがわかって、転職も考え始めているのですが、収入的な部分も考えると障害者枠で転職ていうのはなかなか現実的じゃあないなと…。実は、私は今現在、会社に障害をオープンにして働いています。だから、一般枠で診断があることを隠して働くって勇気がいることだし、もし会社にばれちゃったらどうしようとか、人に言えない悩みとかあるのかな、と思っています。
スタッフ: 他の方で一般枠で働く際に気を付けている点はありますか?
Cさん: 私の場合は、働き始めて5年くらいでアスペルガーの疑いが出て、さらにその5年後に専門の病院でアスペルガーと診断されました。その後、障害者枠で働き始めました。配慮はあって環境はいいのですが、収入面は一般枠の方がよいですね。それだけは一般枠がうらやましいです。
Dさん: 私は障害者枠なんですけれど、仕事内容はほぼ一般枠に近いです。正社員として雇ってもらっているからでしょうか。正社員で働く以上は色んな事が出来なければいけない。収入は他の一般枠の正社員と同じくらいだと思います。
スタッフ: 今Dさんがおっしゃってくださったことは、障害者枠だからといって、一律に仕事の幅が狭いとか、収入が低いとかっていうわけではないってことですね。待遇と求められる成果は比例していますよ、ということでしょうか。
Dさん: そうですね。だから、障害者枠に転職してもすぐに悩みが解消するってことでもないと思います。
職場に診断があることを言う?言わない?
スタッフ: 最初の話題に戻しますけれど、障害者枠に転職せず、一般枠で続けていく前提で考えてみましょうか。一般枠で働く上で気を付けている点ってどんな点ですか?
Eさん: 自分では大丈夫だと思っていても、相手を不快にさせたりとか怒らせたりとかは多いので、コミュニケーションに一番気をつけなければならないと思っています。
スタッフ: 自分のコミュニケーションの取り方の傾向を知って、対策を立てるっていうことですか?
Eさん: そうですね。一般枠だと、自分が若いっていうのもあるかもしれませんが、コミュニケーションがなってないとよく怒られるので…。まったく悪気はないのですが、気づくと相手を不快にさせてしまうことがあります。
Bさん: 私は、職場に診断があることを言ったうえで、一般枠で働いています。実は最近異動がありました。そこには自分の特性を知ってる人もいれば、知らない人もいます。なかなか複雑な環境なので、本当にコミュニケーションの取り方は気をつけないといけないなと思います。自分の特性としては、相手が説明してくれたことをスムーズに理解できないことがあります。だから質問しないといけないのですが、タイミングがとれないんです。続けざまにいっぱい聞こうとしたら相手も「え?」っていう感じになってしまう。そういう風になってるのが、自分もわかるとそこは辛いですね。同じような経験された方もいると思うんですけど…。
スタッフ: 踏み込んだことを聞きますけれど、診断があることを職場に伝えた結果、待遇が変わったり、給料が変わったりとかしましたか?
Bさん: それは私も気にしてたんですけれど、なかったですね。ただ、上司は、「俺が守ってやったんだぞ」みたいなことを嫌みっぽくいってきた部分もありましたけれど(笑)。どこまで本当かは私には分からないですけれど、結果的には降格になったということは無かったです。
スタッフ: 一般枠で働いている以上、診断があることを言うのは残念ながらリスクがあるので、積極的にはお勧めしないです。Bさんの場合は結果的に良かったなと思います。待遇が変わらなかったのは、成果も変わらずに出せていたということでしょうか。
Bさん: そうですね、私の会社というのは成果で評価される部分が大半です。年度の始めに目標値を決めて、それができたかどうかっていう所を最後に上司が評価するんですけども、上司のさじ加減っていう所もありまして。それで最初に決めたことは達成できたんですけれど。ただ少しはボーナスに影響が出たかもしれません。
スタッフ: 成果主義の風土が良かったということですね。逆に、職場には言わない方の方が多いと思うのですが、そういった方は何に気を付けていますか。
Aさん: そうですね。自分も会社には何も言っていません。ただ、はっきりとADHD、ASDというふうに言わずに、「ちょっとこういう傾向があるので…」、という曖昧な感じでは話しています。
Fさん: ちょっといいですか。あくまで僕の場合ですけど、一般枠のときに職場にカミングアウトしました。上司には「いやそんなの知らないよ。1年以内にそれ努力して治せ」っていう風に言われて。全く言った意味もないし、その後何も変わりませんでしたし、リスクというより、そもそもメリットがないと思っています。
スタッフ: そうですね。
Fさん: だから、職場で診断があることを言っても、それで何か良くなるかっていったら、僕もならないと思います。実際ならなかったし。そのままもし一般枠で就職されたいと考えているならば、言うべきではないと思います。言ってみればお給料取るかその環境を取るかの選択だと思うんで、もし一般枠でいくのであれば、それはもう一生抱え込んでいくしかないものかなと僕は思っていて、僕の場合は障害枠にいくっていう方の選択をしました。
Gさん: 私は入社1年目の時に上司に「発達障害なの?」って聞かれました。
スタッフ: それは何て答えたんですか?
Gさん: その時は肯定も否定もしてないですよ、ごまかしただけ。
自分にとって働きやすい環境は?
スタッフ: 診断があるということを言うとリスクがある。では、診断があるとは言わずに、自分がうまく働いていく環境をどうしたら作っていけるのでしょうか?
Cさん: 診断とか発達障害とか言わないものの、苦手さや特性は伝えることで先輩とか上司の方が少し気を遣ってくれ、その分助言をしてくれると思います。
スタッフ: そうですね。そして、そうなるには、普段の勤務姿勢、謙虚さとか一生懸命さとか、意欲が高いとか、そういう要素が必要な気がします。
Eさん: 今、転職を考えています。一つ考えているのは、次の仕事に関してはあまり「チームワークで働く」ってよりは、独立した枠で範囲で働くのが良いのかな、という考えが少しあるんです。みなさんはどう思いますか?
Aさん: 自分も同じく転職を考えてた身だったんですけど、やはりチームワーク最重視ってよりは、個人の成果が認められる環境の方がいいです。
スタッフ: そうですね。働く環境選びの際に、弱みの部分が出やすい環境は、避けた方がいいというのが鉄則です。どんな職場も最低限のコミュニケーションは取らないといけないのですが、それでも複雑なところは避ける、とか。空気読めないなら汲み取らないといけない古い体質の会社は避ける、とか。伝統的な大きな会社というよりは、成果で評価してくれる新しい会社の方がいいかもしれない、などですね。あとは皆さん、もし懇親会に来られるなら情報交換をしてみて下さい。
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監修者コメント
発達障害に関し、オープンにするかしないか、というのは相手次第だと思います。相手の顔を見ながら、言う内容を変える必要があります。
それって発達障害の人が一番苦手なことですよね?と返されそうですが。どういう人に頼るべきかは、色々な人の意見を参考にしながら、見極めていくことが大事です。
社会全体で、発達障害に関する理解が深まっていくよう、ぼくら治療者支援者側も頑張っていきたいと思います。
監修 : 益田 裕介 (医師)
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニック 院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医 精神分析学会所属
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