適応障害で休職中の過ごし方!休職中に利用できる制度やサービスも解説

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適応障害で休職したあと、日中の過ごし方がわからずに戸惑っている人もいるでしょう。将来について考えて不安になってしまったり、仕事の不安が頭から離れず気が休まらなかったりする人もいるかもしれません。

適応障害での休職中は、心と体を休めるのが大切です。体調が落ち着いてきたら支援サービスなどを利用して、復職に向けて調子を整えていきましょう。この記事では、休職中に利用できる制度やサービスを解説します。

適応障害の休職中に回復していく流れ

適応障害とは、強いストレスにさらされて発症するストレス障害です。

適応障害になると、強い不安に襲われたり、わけもなく泣きたくなったり、様々な症状が現れて仕事や日常生活に支障をきたします。

一般的に、適応障害はストレスの原因から距離を取れば6ヶ月以内に改善するといわれており、回復の過程は次の3段階に分けられます。

  • 休養期
  • 回復期
  • 調整期

それぞれの段階を解説します。

参考:適応障害 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

心身の療養をする休養期

「休養期」は、適応障害で休職して間もないころをいいます。ストレスによって心と体がボロボロになっているので、まずはストレスの原因から距離を取り、心と体を十分に休ませましょう。

休養期は、眠りたいだけ眠って、食べたいものを食べ、やりたいことだけをやって過ごしてかまいません。

十分な休養が取れると、不安定だった体調も徐々に落ち着いてきます。

適応障害で休職した人は、休んでいると「怠けているなんて、自分はダメな人間だ」と自分を責めてしまったり、「休んでばかりいたら復職できなくなるのではないか」と不安になったりすることがあります。

しかし、これらの気持ちは、脳の中にある「偏桃体」という部分が活発に活動しすぎているから起こるものです。まずは医師の診察を受け、症状に応じた薬を服用する・カウンセリングを受けるなどして偏桃体の過活動を抑えていきましょう。

少しずつリハビリをしていく回復期

「回復期」は、少しずつ活動量を増やしていく時期です。「リハビリ期」とも呼ばれます。

体調が落ち着いたら、無理をしないように気をつけながら、散歩をしたり部屋の片づけをしたりして体を動かしてみましょう。大切なのは、頭であれこれ考えるのではなく、まずは短時間で構わないので、体を動かしてみることです。

しかし、回復期は復職に向けた焦りや不安が出やすい時期でもあります。「早く仕事に戻らなければ」「復職してまた体調を崩したらどうしよう」という気持ちが起きやすいので、無理は禁物です。

回復期は、できるだけ自分が楽しいと思えることを行いましょう。頑張らなくてもできる作業や時間を忘れて打ち込める趣味などを、楽しいと思う・気楽にできる範囲で行うのが回復期を過ごすポイントです。

復職に向けて動く調整期

「調整期」は、復職に向けて少しずつ身の回りを整えていくのがと呼ばれる時期です。体調の波が落ち着き、医師から復職の許可が下りたら、少しずつ復職に向けて動き出しましょう。

このとき、くれぐれも無理をしてはいけません。少しでもしんどいと感じたら、無理せず休んでください。

調整期では、上司や同僚と復職後に関するやり取りをしながら、復職計画を立ててみましょう。必要なサポートや、負担の少ない働き方などを話し合ってみてください。必要に応じて、医師に意見を求めるのも良いでしょう。

調整期は、適応障害を再発させないための考え方やものの見方を身につける時期でもあります。適応障害になった人は、物事の捉え方に柔軟性がなくなり、ひとつの考え方にこだわってしまう傾向があります。

再び適応障害にならないためにも、自分の抱える課題を見つめ、その乗り越え方を考えるのが重要です。

適応障害で休職中のおすすめの過ごし方

適応障害で休職中は、何もせずにただ漫然と日々を過ごすのに苦痛を感じることがあります。かといって、体調に波があり、気持ちも不安定な状態であれこれ行動を起こすのは、心と体に負担をかけるので避けるべきです。

適応障害で休職中は、回復段階に合わせた過ごし方をするのが大切です。

休養期はとにかく休む、回復期は適度に体を動かすなど、おすすめの過ごし方を解説します。

主治医の指示通り休養する

適応障害で休職してしばらくは、主治医の指示に従って休養するのがおすすめの過ごし方です。休職して間もないころは、ストレスによって心と体が疲れ切っています。不安や焦りから「早く仕事に復帰しなければ」「早く治さなければ」と思いがちですが、まずは心と体の不調を落ち着かせるのが復職の第一歩です。

医師に「しばらくは自宅でゆっくり休養してください」と言われたら、医師の治療方針・指示に従って家でゆったり過ごしましょう。

眠りたいときに眠って、食べたいものを食べ、のんびりと過ごしてください。焦りや不安は禁物です。休養中は体力も落ちているので、体に負担のかかる家事も控えましょう。

適応障害になりやすい人は、真面目で責任感が強いといわれています。そのため、休職すると自分を責めたり、自信をなくしたりする人も多く、そもそも休養や休息というものに対して罪悪感を感じている人もいます。

医師に「休養しましょう」と言われて「何をすればいいのかわからない」と戸惑う気持ちもあるでしょうが、自分の心と体を見つめ直し、心と体が必要としている・欲していることを行いましょう。

仕事を思い出すものは遠ざけて休む

休職してすぐは、ふいに仕事が気になって不安になったり、焦ったりしやすい時期です。この時期に仕事を忘れて心と体を休められないと、思うように回復せず、かえって適応障害が悪化するケースがあります。

休養するときは、パソコンや仕事の資料、通勤バッグなど仕事を思い出すものから距離を取りましょう。

適応障害は、特定のストレスが引き金となって発症するのが特徴です。発症の引き金になった物事を連想させるものから十分に距離を取って心と体を休ませましょう。

適度な運動をする

心と体の調子が落ち着いてきたら、近所の散歩に出かけたり、家の中でできる簡単なエクササイズをしたりして体を動かしてみましょう。体を動かすと、体力回復の助けになるだけでなく、気分転換にもなります。

運動が苦手な人は、部屋の片付けや掃除でもかまいません。「毎日続けよう」と意気込まず、気が向いた時に5分でもいいので、体を動かしてみてください。

頭であれこれ考えはじめると考え事に集中してしまうので、思い立ったらすぐに行動に移すのが無理なく体を動かすポイントです。

ただし、くれぐれも無理はしないでください。適応障害は、心と体が疲れ果ててしまった状態です。休養して体力も落ちているので、疲れるような激しい運動は避け、心地よいと感じるペース・強度で体を動かすのが肝心です。

調子が悪い時は早めに休息を取る

調子が悪い時は早めに休息を取る習慣を身につけるのは、適応障害の再発・悪化防止にとても重要です。休職中から早めに休息を取る習慣を身につけておきましょう。

疲れてくると、様々な症状が現れます。

どのような症状が現れるかは人それぞれですが、なかには嫌な出来事を思い出してしまったり、ある考えが頭から離れなくなったりする人もいます。

大切なのは、自分が疲れたとき、どのような症状が出るかを把握しておくことです。

  • 食事の量が増える・減る
  • 頭が痛くなる
  • 肩こりが悪化する
  • めまいがする
  • 不安感が強くなる
  • わけもなく泣きたくなる
  • 眠れなくなる
  • 嫌な出来事を思い出す
  • ひとつの考えが頭から離れなくなる
  • 集中力が落ちる

疲れた時に出る症状は十人十色です。普段から自分の体調の変化に気を配り、どういったサインが出るか知っておくと、休息を取るタイミングがつかみやすくなります。

辛い時に相談できる人を見つける

適応障害で休職している間に、悩みや不安を吐き出したり、辛い時に相談したりできる相手を見つけましょう。友人や家族には話しづらいなら、医師やカウンセラー、支援機関のスタッフなどでも問題ありません。

真面目で責任感が強い人は、人に迷惑をかけるのを嫌います。「こんな話をしたら迷惑なのではないか?」と考えて、誰にも相談せずにひとりで抱え込んでしまう人が少なくありません。

また、過去に人に裏切られた経験がある人なら、他人に心を開くのが怖いと感じている場合もあります。

悩みや不安を話す相手は、家族や親しい友人でなければならないという決まりはありません。家族には離せない悩み、友人には吐き出しづらい感情はあってあたりまえです。

そのような場合は、たくさんの人の悩みや不安を受け止めてきた医師やカウンセラー、専門知識を持つスタッフなどを頼るのも良いでしょう。たくさんの人の話を聞いてきたからこそ、驚いたり茶化したりせずに受け止めてくれます。身近な相手に相談しづらい場合は、無料で相談できる電話相談を利用するのも良い方法です。

参考:電話相談窓口|困った時の相談方法・窓口|まもろうよ こころ|厚生労働省

なお、休職中に利用できる支援機関については、後ほど詳しく解説します。

自己分析をしてストレスの要因を探す

医師の診察を受ける際に、適応障害になった原因などは話しているケースが多いものの、自分で「なぜストレスを感じたか」を分析している人は多くありません。休職中、体調が安定してきたら適応障害になった原因や、なぜ自分が強いストレスを感じたかを分析してみるのも良いでしょう。

自己分析をしておくと、心と体を休める方法が見つかったり、復職後にサポートを受けやすくなったりします。

自己分析する手段としては、下記などのものがあります。

  • WHY(なぜ?)による物事の深堀り
  • マインドマップの作成
  • WILL・CAN・MUSTフレームによる分析
  • 「ジョハリの窓」を使った分析
  • ジャーナリング(頭のなかに浮かんだことをそのまま紙に書き出す)
  • マインドフルネス(今の自分の状態や考え方をありのままに受け入れる)

ただし、自己分析を行う際は時期に注意しましょう。休職して間もない「休養期」など、早い段階で行うとかえって自分を責める気持ちが強くなったり、不安感が強くなったりします。

自己分析を行うときは、心と体の調子が落ち着いて、過去の嫌な出来事やストレスを思い出しても上手に気持ちが切り替えられるようになったタイミングで行いましょう。

適応障害での休職中に避けた方が良い過ごし方

ここからは、適応障害で休職中に避けたほうが良い過ごし方を解説します。

適応障害で休職中は、下記の行動は避けましょう。

  • ライフステージに関わる大きな決断をする
  • 主治医に嘘をついて早期の復職を目指す

それぞれ解説していきます。

ライフステージに関わる大きな決断

休職中は、ライフステージに関わる大きな決断をしないようにしましょう。

大きな決断には次のようなものがあります。

  • 転職
  • 退職
  • 結婚
  • 離婚
  • 引っ越し
  • 家・不動産の売買
  • 高額の買い物
  • 人間関係の見直し

休職直後は、復職できるか不安だったり、このまま適応障害が一生治らないのではないかという考えに取りつかれたりしやすいものです。「退職したほうが良いのではないか」「家族に迷惑をかけるなら離婚したほうが良いのではないか」といった考えに陥るのは無理もありません。

しかし、心身ともに弱っている状態で冷静な判断をするのは無理があります。

転職や退職といった仕事に関する事柄、結婚や離婚、人間関係の見直しなど自分だけでなく家族や友人も巻き込む事柄、家や車など高額な物の売り買いは、心と体の調子が戻るまで保留にしておきましょう。

今すぐに決断しなければならない事柄はほとんどないはずです。

「あんな選択をするんじゃなかった」と後悔しないためにも、心と体の調子が戻るまでは大きな決断は先延ばしにしましょう。

主治医に嘘をついて早期の復職を目指す

主治医に嘘をついて早期の復職を目指すのも避けましょう。復職を焦るあまり「調子が良くなった」「早寝早起きして、規則正しい生活ができている」といった嘘をつくのはいけません。

医師は、患者であるあなたの話を元に治療方針を決めたり、復職のタイミングを判断したりします。あなたが嘘をつくと、正しく診断できなくなるため、かえって症状が悪化したり、復職してもすぐに再休職したりするケースがあるため、体調については正直に伝えましょう。

医師によっては、あまりに早くから調子が良くなったと訴える患者は、かえって症状が悪化していると疑うケースもあります。

診察になると、自分の体調をどう伝えて良いかわからなくなるという人は、簡単にで構わないので自分の体調を記録しておくと受診の際に役立ちます。最近はスマートフォンのヘルスケアアプリでも体調が記録できるので、体調に波があるときは活用してみてください。

適応障害の休職中に利用できる制度や支援サービス

最後に、適応障害で休職中に利用できる制度や支援サービスをご紹介します。

利用できる制度やサービスには、次のようなものがあります。

  • リワーク
  • 就労移行支援
  • 自立訓練(生活訓練)

リワーク

リワークとは、適応障害などの病気で休職している人が利用できる復職サポート制度です。

  • 医療リワーク(医療機関が実施する)
  • 職リハリワーク(地域障害者職業センターが実施する)
  • 職場リワーク(企業内で実施する)
  • 民間リワーク(民間の支援機関が実施する)

の4種類があります。

リワークでは、様々な講座や各種作業ワークへの参加を通じて、次の支援を行います。

  • 生活リズムの構築
  • 体調の自己管理
  • 復職に必要なスキルや知識の習得
  • ストレス対処法の習得
  • コミュニケーションスキルの習得

リワークプログラムについては、次の記事でも詳しく解説していますので併せてごらんください。

リワークプログラムとは?内容や費用、メリットや効果などを解説

就労移行支援

就労移行支援は、就職を目指す人のための障害福祉サービスです。障害や病気への理解を深め、仕事に必要なスキルを身につけて、就職を目指します。

就職まではもちろん、就職後も一定期間、専門知識を持ったスタッフのサポートが受けられるので、就職後もその職場で働き続けられるか不安な人におすすめです。

Kaienでは、これまでの豊富な経験と実績に基づく就労移行支援カリキュラムを提供しています。

Kaienの就労移行支援では、下記のようなカリキュラムを通じて、一人ひとりの適性を引き出すのが特徴です。

  • ビジネススキル
  • 障害学・ソーシャルスキル
  • 就活講座
  • キャリア・プランニング
  • しゃべり場
  • スキルアップ講座
  • 実践型職業訓練

ビジネススキルでは、実際のビジネスで躓きやすいポイントを想定したオリジナル教材で対処法を学びます。

障害学・ソーシャルスキルは、コミュニケーションや心と体の管理の他、障害について深い知識を身につけるのが狙いです。

そのほか、履歴書の書き方や面接でのマナーを身につける「就活講座」や、業務に必要なパソコンスキルを身につける「スキルアップ講座」、ロールプレイングを通じて業務の流れや感覚をつかむ「実践型職業訓練」で、就職はもちろん就職後も役立つスキル・知識を身につけられます。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、自立を目指す人のための障害福祉サービスです。

就労移行支援が就職を目指すのに対し、自立訓練は親や周囲の人の手助けを受けずに健やかに暮らすのを目指します。

例えば、下記のような訓練を行います。

  • 金銭管理の方法を学ぶ
  • 生活リズムを整える
  • セルフケアの方法を知る
  • 障害について理解を深める
  • 生活を充実させる方法を学ぶ
  • 利用できる制度やサービスについて学ぶ

自立訓練(生活訓練)については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

あわせて参考にしてみてください。

自立訓練(生活訓練)とは?就労移行支援との違いや併用についても解説

適応障害での休職から復職するには専門家のサポートを活用しよう

適応障害で休職したら、しばらくは心と体を休めることに専念しましょう。体調の波が落ち着いて、復職に向けて意欲が出てきたら、リワークや就労移行支援、自立訓練(生活訓練)を利用しながら、復職に向けて準備を整えていくのがおすすめです。

休職から復職する際は、専門家のサポートを活用しましょう。

Kaienでは、これまでの豊富な経験と実績を踏まえた独自のカリキュラムで就労移行支援を実施しています。発達障害や精神障害に理解ある企業200社以上と連携しているため、他社にない独自求人のご紹介も可能です。

見学・相談は随時受け付けておりますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。