奇数週土曜日開催の在職者向けの当事者会「キスド会」では、様々なお悩みが寄せられており、そのお悩みにスタッフや参加者が知恵を寄せ合って答えていきます。発達障害の傾向があるからこそ生まれるお悩み。今回は「仕事へのモチベーションが持てない」というお悩みをお送りします。
「好き」と「仕事でできる」はイコールではない
相談者(以下Aさん) 研究職2年目です。仕事へのモチベーションが持てません。皆さんどういう方法でご自分の興味・関心を見つけて今のお仕事をされているんでしょうか?
Bさん) 好きなことと仕事でできること、というのは多分イコールではないと思っています。
Dさん) 確かにズレがありますね。でも面接や入社試験を通ってそこに就いているわけですから、ある程度の適性はあるし、採用した側もそう思っていると思います。
Cさん) 研究は関心がないとやりづらいかも知れません。事務職だったら自分の好きなことでなくても、何らかの妥協ができるような気がしますが。
Eさん) 本当は別に興味のあるテーマがあるけれど、会社の制約でそれができず、与えられたテーマには興味が持てない、ということですか?
Aさん) 今の研究は、こういうディスカッションから何か問題を見つけていくような作業なんです。そういった無から有を生むような作業自体が得意ではないようです。
Cさん) 学生のころはどうやってテーマを決めていたんですか?
Aさん) まねごとをして乗り切ってきたような。教授からテーマをもらったり、先輩の研究の考察をそのままコピーしたり…。
Dさん) 私も同じで院へ上がったものの2年生になってもテーマが決まらないような状況で、就職は嫌だからと進学を選んだことをとても後悔しました。それで私は研究職は避けてSEになりました。
Bさん) 大学院や研究所には研究がやりたくてしかたがない、という人が多いと思いますが、ご自身もそういうタイプですか?
Aさん) 勉強することは嫌いではなかったので、そのレールに乗った感じです。テーマや枠があればそれなりに結果が出せるのですが、ゼロから何かを作ったり、発想したりが難しい…。
無から有を生む仕事には向き不向きがある
Bさん) 定型がない、研究はゼロから、と言われますが、青色発光ダイオードにしでも、IPS細胞にしても、膨大な可能性を一個一個しらみつぶしに試して発見につなげていますよね。研究者の日々の作業は、結構定型的で地道なことではないでしょうか?
Dさん) でもその地道な作業も、目的意識というか展望があるからこそできるのではないかと思いますが。
Cさん) 600度でも発火しないリチウム電池を作るための研究を30年もやっていて、もう少しでできそうだ、という番組をテレビで観ました。そういう社運がかかるような研究を2年目の人にやらせはしないでしょうが、それでも仕事としての研究は利益を生まなくてはいけないし、責任もついてくるだろうし、きつい立場なのかな、と想像します。
Aさん) 若いのである程度の筋道は決めてもらっていますが、それを後で短期的な目標や実際の作業に落とす力が自分には欠けている気がします。言われたことがすべて漠然と感じられてしまうんです。一番最初につまずいたのは研修でこういうディスカッションをした時です。何か発言をしようとするのですが、周りの話が読み取れなくて、何を考えるべきかがわからなかった。思考するところまでいかなかったんです。
Cさん) いきなりは難しいです。打ち合わせなどでもいきなりだとなかなか意見は言えないですよね。
Dさん) まだ社会人2年目ですから準備・下積み期間なのでは、という気もします。3~5年くらい経って、多少自分が求められる事や周りが見えてくれば、もっと言えるようになるのでは?
Eさん) 私は文系ですが研究・企画部門に配属されました。脳の特性上テーマを与えてもらわないと動けないし、森を見せて木を作れ、とか森そのものを探せ、というのは向いていないようで、結局配置転換を申し出ました。無から有を生む職種には向き不向きがあるので、学生時代から適性をよく考えておいた方がいいですね。
自分から動いたり、続けるうちに興味がでることも。今見切りをつけたり自分を追い詰める必要はない
Bさん) 今やっている仕事の中で、具体的にこれは好きだということと、これは嫌いだということをざっくり分けられますか?
Aさん) いえ、そこを自分の中で見つけていきたいんです。
Cさん) 仕事は続けるうちに興味が出る、と思っています。そういう希望はありますか?
Aさん) なかなかそうなりそうにありません。
Dさん) まだ2年目であれば、知識が点のようにある状態だと思うのですが、点がつながる前に転職してしまうのはちょっと早い気がします。本当に嫌なら仕方ないですが。
スタッフ) たぶんそれは上司が見極めるのではないでしょうか。不向きと判断されれば配置転換があって進む方向も変わっていくでしょう。だから今、そこまで自分で思い詰める必要はないと思います。
Eさん) プレッシャーをかける訳ではありませんが、やはりいち社会人、会社員、組織の人間ということを考えれば、年が経つにつれて結果を求められる、というのは事実だと思います。
Bさん) 無理やり興味を出してしまう、というのはどうでしょう?例えば私は仕事柄プロレスの記事をチェックしなければなりません。プロレスなんてつまらないと思っていましたが、あえて自腹で試合を観に行ったりすると、どういう選手がいてどういう技を使うか、といった興味が少しはわくものです。
Dさん) 僕も全くの自然科学系でコンピューターに興味はありませんでしたが、仕事で多少使えるようになると変わってきました。
Cさん) 私の職場は航空系の会社で、最初は飛行機に全く興味はありませんでしたが、色々調べるうちに知識が広がって様々なことが理解ができるようになると、仕事がなんだか面白くなってきたんです。ご自分の仕事に関することを本やネットで調べたりして、少し自分から動いてみる、というのは確かにありだと思います。
Aさん) 皆さん色々なアドバイスを有難うございました。
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監修者コメント
「つまらない演劇はない。脚本、演出、俳優、音楽、照明…。全体としては駄作でも、1つは良いところがある」みたいなことを聞いたことがあります。仕事も同じで、全体としてはつまらないし、興味が持てないかもしれないけれど、どこかいいところを探してあげると、なんとか続けられるんじゃないかな、と思います。
自分たちも凸凹があるように、会社や仕事にも凸凹はあります。互いにいいところを見つけられると、いいですよね。診察のときもそんな話をすることが多いです。
監修 : 益田 裕介 (医師)
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニック 院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医 精神分析学会所属
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