リワークを利用して復職を目指すには?リワークの利用条件や復職条件を解説

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休職中の方が復職を目指すなら、徐々に環境に慣れることができスキルアップにもつながるリワークを利用するのがおすすめです。リワークの利用条件や復職の条件は施設の種類や利用者の状況によってさまざまですが、一般的な基準も存在します。

本記事ではリワークで復職を目指す流れや施設の種類ごとの利用条件、復職の基準を解説します。

リワーク支援で復職を目指す基本の流れ

リワーク支援では、主に心理的な病気によって休職した人に対し、精神的・身体的なリハビリを通じて復職を支援します。支援の流れは大きく準備段階、プログラム実施、復職準備の3つに分かれます。

ここでは、以下のステップに分けて復職を目指す流れを解説します。

  • リワーク開始に向けた準備
  • リワークプログラムに取り組む
  • 医師の診察やスタッフとの面談を経て復職

リワーク開始に向けた準備

リワーク支援を始める前に、必要な準備を整えましょう。

まず主治医にリワークを受けたい旨を相談し、診察を受けましょう。症状が安定していてリワーク支援が受けられる状態か、また利用者が復職する上での課題は何か、主治医と支援機関が連携して確認する必要があります。また、職場の同意も必要です。

主治医から許可が出たら、利用するリワーク施設を検討しましょう。医療機関に併設されている場合や、主治医が推薦してくれる場合もあります。役所の福祉相談窓口で紹介してもらったり、インターネットを利用して自分で調べてみるのもよいでしょう。

施設ごとに特色が異なり、特に民間のリワーク施設は独自の設備や取り組みを打ち出している場合も珍しくありません。また、プログラムの内容や利用料金の確認も必要です。見学会や個別相談に申し込み、実際に自分の目で施設を見てから施設を決定しましょう。多くの施設では、公式ホームページや電話で見学会や個別相談の申込みを受け付けています。

リワークプログラムに取り組む

リワーク施設では、利用者それぞれの健康状態や課題、希望などに合わせたプログラムが組まれます。代表的なプログラム内容の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 自己分析:自分について深く知り、ストレスを受けやすい状況や考え方の癖を分析します。
  • 心理療法:認知行動療法などを通して、ストレスをコントロールして症状の安定化・改善を図ります。
  • 対人スキル向上トレーニング:利用者同士で共同作業やディスカッションを行い、コミュニケーション能力を向上させます。
  • 復職に備えたスキルアップ:PC作業や軽作業など、実際の仕事で役立つスキルを向上させます。
  • グループワーク・レクリエーション:グループで行う作業やスポーツ、ゲームを行い、対人スキルや体力の向上を図ります。
  • キャリアデザイン:支援スタッフと相談しながら、これまでのキャリアと今後のキャリアについてプランを立てます。

こうしたプログラムを通して、利用者は職場復帰に向けて無理なく着実に準備を進められます。

医師の診察やスタッフとの面談を経て復職

リワーク支援の最終段階では、担当医の診察や支援スタッフとの面談を通じて復職の可否を判断します。利用者の復職意欲や健康状態、これまでのプログラムで得た成果を確認し、職場側も復職に問題がないと判断すれば、復職となります。

具体的には以下のような流れです。

  1. 利用者に復職意欲が十分あり、症状も安定している状態なら主治医から「復職可能」とする診断書が発行される
  2. 職場側(産業医)は診断書を確認し、生活リズムが安定しているか、注意力・集中力が持続するか、業務に支障がないレベルまで能力が回復しているか、の3点を総合して復職の可否を判断する

また、スタッフとの面談では復職後のサポートや環境調整について具体的に話し合います。リワークの目的には復職そのものだけでなく、復職後に安定した健康状態で働き続けられることも含まれます。リワーク施設を選ぶ際は、復職後のサポートの手厚さも考慮するとよいでしょう。

リワーク支援を利用するための条件

リワーク支援を利用するためには、施設の種類ごとに定められた条件を満たす必要があります。ここでは、以下の実施主体に分けて利用条件を解説します。

  • 医療機関でのリワーク
  • 就労移行支援や自立訓練(生活訓練)でのリワーク
  • 障害者職業センターでのリワーク
  • 障害者職業センターでのリワーク
  • 職場でのリワーク

医療機関でのリワークの利用条件

医療機関でのリワークは、うつ病などの精神的な病気により休職している人が対象です。医療リワークを利用する場合、以下の条件を満たす必要があります。

  • 病気の症状が、日常生活を送る上で大きな支障がない程度に回復している
  • 利用者本人および職場双方に復職の意欲がある
  • プログラムに継続的に参加できる体力・精神力がある

医療機関でのリワーク支援は、うつ病の方の復職を想定してプログラムが組まれています。そのため、双極性障害や不安障害などうつ病以外の精神疾患で休職している人や、発達障害などの特性のある人には適さない場合もあります。

負荷の大きいプログラムを受けると、むしろ症状が悪化・再燃してしまうこともあります。どのリワーク支援を受けたらよいかも含め、主治医とよく相談しましょう。

就労移行支援や自立訓練(生活訓練)でのリワークの利用条件

就労移行支援と自立訓練(生活訓練)は、精神疾患の方だけでなく発達障害や身体障害といった特性のある人も対象です。また、休職中の方だけでなく離職している人も利用可能です。

障害者手帳や診断書は必須ではないため、発達障害グレーゾーンなど診断名のつかない方でも利用できる可能性があります。具体的には、以下のような条件を満たせば利用できます。

  • お住まいの自治体から障害福祉サービス受給者証を取得している
  • (就労移行支援の場合)利用者本人が就労・復職を希望している、またはその準備段階にある
  • (就労移行支援の場合)利用時点で日常生活が安定しており、毎日施設への通所が可能である

就労移行支援は主に就労・復職を目指す支援ですが、自立訓練(生活訓練)は規則正しい生活リズムや金銭管理など、自立した生活を送るための訓練です。よって、毎日通所できる自信のない方や就労の前に生活能力をつけたい方は、まず自立訓練(生活訓練)を検討してみるのもよいでしょう。

障害者職業センターでのリワークの利用条件

障害者職業センターは、障害のある方や難病の方に対する専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。利用するには、原則として以下の条件を満たす必要があります。

  • 身体障害、精神障害、発達障害などの障害や難病により、就労や復職に支援を必要としている
  • 主治医によって支援を受けることが適切であると判断されている

障害者手帳を取得していなくても利用可能ですが、就職の際に各種援護制度を利用するには、多くの場合障害者手帳が必要となります。また、障害者職業センターでは直接就職先の紹介は行いませんが、ハローワークと連携して就職を支援してもらえます。ハローワークを通さずに申し込むこともできますが、職業紹介を受けたい場合はハローワークから申し込みましょう。

なお、各自治体によって利用条件が異なる場合があるため、最寄りの障害者職業センターに確認しましょう。公式ホームページを閲覧するか、電話で相談会の申込みを受け付けている施設もあります。

職場でのリワークの利用条件

職場でのリワーク支援は、企業が主体となって休職中の従業員に対し復職を前提としたリハビリを進める仕組みです。利用するには以下の条件を満たす必要があります。

  • 雇用されている企業の休職期間中であり、復職の意向がある
  • 職場がリワーク制度を導入している、または個別に支援プランを作成している
  • 医師の診断により、段階的な復職が可能と判断されている

職場でのリワーク支援は従業員と職場が協力して進めるため、復職後の職場環境にスムーズに適応しやすい点が特徴です。ただし、症状の安定化を目指す心理療法や訓練内容を踏まえた治療方針の調整など、病気の改善を目指すプログラムは含まれない場合もあります。

リワークで復職条件は定められている?

心の不調の原因には複雑な要素が絡み合っているため、国として一律の復職条件を定めることは難しいとされています。復職可否の判断基準は個々の状況に応じてさまざまで、職場や職種、体調の回復具合に合わせて総合的に判断する必要があります。

よって、復職条件はあくまで事例や指針として提示されることが一般的です。例えば、以下のような条件が復職の目安とされています。

  • 労働者が職場復帰に対して十分な意欲を示している
  • 通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる程度の体力・精神力が回復している
  • 一定の時間、業務に集中して取り組むことができる
  • 職場の同僚や上司との適切なコミュニケーションが可能である

リワーク支援プログラムでは、こうした復職条件を満たせるよう主治医とも連携して利用者それぞれのプログラムが組まれます。

リワーク支援を利用して復職を目指すメリット

リワーク支援を活用すると、自分ひとりだけで復職を目指すよりもスムーズに準備を進められます。ここではリワーク支援を利用して復職を目指すメリットを解説します。

復職だけではなく再休職を防ぐ効果も期待できる

休職から復職しても、その後再び体調を崩して休職に至ってしまうことも珍しくありません。リワーク支援では復職を目指すだけでなく、再び休職しにくくなる効果も期待できます。

例えば認知行動療法では、ストレスへの対処法を学び自身の思考の癖を見直します。ストレスを感じやすい状況を認識して考え方を修正することで、復職後もストレスやプレッシャーをコントロールして病気の再発や体調の悪化を防ぎやすくなります。

また、職場でのコミュニケーション方法や時間管理のトレーニングを通じ、業務での問題発生を事前に回避する力を身につけることもできます。

さらに、復職後の環境変化に対応する練習として、模擬業務やロールプレイが行われることもあります。徐々に環境に慣れていけるため自信を付けた状態で職場に復帰でき、再休職のリスクを軽減できます。

業務に必要な注意力と集中力の回復が目指せる

精神疾患の症状として注意力や集中力の低下が現れることがあり、これらの力が十分に回復しているかどうかは、復職基準の重要な要素の一つです。また、発達障害などの特性により、特定の物事に注意を向けることや集中することが苦手な場合もあるでしょう。

リワーク支援では、注意力・集中力を回復・向上させるための訓練を受けられます。たとえば、軽作業や模擬オフィスワークなどの個人ワークでは、実際の業務を想定した環境で注意力や注意力を鍛えます。

また、グループ活動やディスカッションも効果的です。他者の意見に注意を向け、その場で意図を理解する訓練を通して、複数人で仕事をする環境に慣れていきます。こうしたトレーニングを積むことで、無理なく仕事への適応力を高められます。

専門分野のスタッフからアドバイスがもらえる

リワーク支援には、さまざまな専門分野のスタッフが携わっています。臨床心理士や医療スタッフだけでなく、キャリアカウンセラーなど就労やキャリアに関する専門家もいるため、利用者の悩みに合わせて幅広い視点からアドバイスを受けることができます。

例えば、自分が何に対して強くストレスを感じているのか、自分自身ではなかなか気づけない場合もあるでしょう。専門的な知識・経験を持ったスタッフからアドバイスを受ければ自分を客観視でき、ストレスの原因やストレスをコントロールする方法を探りやすくなります。

復職や就職におけるキャリアプランについても、専門のスタッフと相談しながら立てていけます。利用者それぞれの得意・不得意や、訓練の成果・課題を踏まえてアドバイスしてくれるため、自分に合ったキャリアを築きやすくなるでしょう。

リワーク以外に復職や再就職を目指すのに利用できる支援やサービス

医療機関や障害者職業センターのリワーク支援が自分に合っていないと感じる場合は、ほかの支援サービスを検討してみましょう。

ここでは、復職や再就職を目指す際に利用できる支援やサービスとして、以下3つを紹介します。

  • 労働局の職業訓練
  • 自立訓練(生活訓練)
  • 就労移行支援

自身の特性や課題、就労状況に応じて、適した支援を選ぶことが重要です。

労働局の職業訓練

労働局が実施する職業訓練は、再就職に向けて必要なスキルを身につけるための公的支援です。短期間で技術や知識を習得できる講座が用意されており、失業保険を受給しながら無料で利用できる場合もあります。ITスキル、介護、製造業など、幅広い分野に対応したコースが提供されています。

労働局の職業訓練は、主に離職中の方や学校卒業後に就労経験のない方を対象として、特定の職業スキルを強化するために活用されています。職業訓練を修了することで、就職活動に役立つ資格が取得できるプログラムも多くあります。

職業訓練についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

職業訓練とは?種類やコース、受講のメリットから申し込みの流れまで解説

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害者総合支援法に基づき障害を抱える方が自立した生活を送れるよう支援を行う障害福祉サービスの1つです。自立訓練には身体機能の向上を主目的とする機能訓練と、社会生活に必要な能力を身につける生活訓練があります。

具体的には、自立訓練(生活訓練)では正しい生活リズムや金銭管理、人間関係の構築方法、自分の権利などを学び身につけます。休職中、離職中の方の中でも、復職・就職の前に自立した生活を送る力を向上させたい方に適しています。

Kaienでは、自立訓練(生活訓練)を提供しています。自身の特性を適切に理解し、一人でも暮らしていけるようサポートし、将来のために今取れる選択肢を考えて選択できるよう支援します。

障害福祉サービスや自立訓練(生活訓練)について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

障害福祉サービスとは?種類や対象者、利用の流れを解説

就労移行支援

就労移行支援は、復職や新たな職場での就職を希望している障害のある方を対象に、職業スキルや社会参加の準備を支援する制度です。主な対象者は離職中の方ですが、休職中でも利用できます。

自立訓練(生活訓練)との大きな違いは、就労を目的とした具体的な支援を重視している点です。PCスキルや軽作業などの実践的な訓練のほか、企業内実習や履歴書作成サポート、面接対策といった就労準備プログラムが用意されています。

Kaienでは、個々の特性に合わせた就労支援を提供しています。得意・不得意を踏まえた適職を診断でき、プログラミングやデザインなど専門領域を極めたい方向け専門のコースもあります。特性に理解のある職場の求人も紹介していますので、希望に合わせてより自分に合った職場を選べる見つけやすい環境です。

就労移行支援についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

就労移行支援とは?受けられる支援や利用方法をわかりやすく解説

リワークで復職条件が満たせないと悩む方は他のサービスの利用もおすすめ

休職中の方がスムーズに無理なく復職するためにも、リワークなどの支援サービスの利用がおすすめです。医療リワークや障害者職業センターでのリワークが適していないと感じる場合は、自立訓練(生活訓練)や就労移行支援などのサービスも検討してみましょう。

Kaienでは、自分自身の特性や得意・不得意の理解を深め、自分に合った対策を前向きに見つけられるような自立訓練(生活訓練)や就労移行支援を提供しています。復職・就労を目指しているならぜひ一度見学会・個別相談にお越しください。