適応障害で会社に行くのが怖いときの対処法や選択肢とは?利用できる支援も解説

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仕事が原因で適応障害になると、会社に行くのが怖くなるのは当たり前です。本当は休職・退職したいと思っていても決断できず、今も怖い気持ちをぐっとこらえて会社に行っている人もいるでしょう。休職や退職は、簡単に決断できるものではありません。だからといって、無理をしていると体調は悪化する一方です。

この記事では、適応障害で会社に行くのが怖いときの対処法や選択肢、利用できる支援制度を解説します。適応障害で会社に行くのがしんどい人は、参考にしてみてください。

適応障害で会社に行くのが怖いと感じる理由

適応障害になると、メンタルの不調だけでなく身体的な不調も出やすくなります。なかには「会社に行ったらさらに体調を崩してしまいそうだ」と感じている人もいるでしょう。

適応障害の原因が仕事・会社にある場合、「職場に行くのが怖い」と感じるのは無理もありません。

適応障害で会社に行くのが怖いと感じる理由には次のようなものがあります。詳しく解説します。

  • 職場での過度なプレッシャー
  • 人間関係のトラブル
  • 業務内容のミスマッチ
  • 長時間労働や不規則な勤務

職場での過度なプレッシャー

仕事に行くのが怖いと感じる人のなかには、周囲に期待されるのが大きな負担になっている人もいます。業務で良い成果を出すことを強く求められたり、能力を買われて難しい仕事を割り振られたりすると、誰しもプレッシャーを感じるものです。

プレッシャーを跳ねのけられる人や、プレッシャーをかけられるとかえってやる気になる人は良いですが、多くの人は受け止められないほどのプレッシャーをかけられると心身の調子を崩してしまいます。

プレッシャーを感じやすいのは、その人の性格もありますが、環境の影響も無視できません。

適応障害になりやすい職場には次のような特徴があります。

  • 仕事について相談できる人がいない
  • 過剰に成果を出すことを求める
  • 重い責任をともなう業務をひとりで担当しなければならない
  • 仕事量が多すぎる
  • 常に緊張を強いられる
  • ミスをするとひどく責められる

仕事に適度な緊張感は欠かせないものですが、ミスをしないように常に気を張っているのは非常に疲れます。さらに担当する業務が自分のキャパシティを大幅に超えていたり、困りごとを誰にも相談できなかったりすれば、どんどん心がすり減ってしまうのは無理もありません。

人間関係のトラブル

適応障害は、ストレスによって引き起こされます。さまざまなストレスが適応障害の原因になり得ますが、人間関係のストレスも例外ではありません。

新卒の人や、中途で入社した人は「なんとなく組織に溶け込めない」「上司や同僚とうまくコミュニケーションが取れない」と感じてるかもしれません。その場合、思うように人と関われないのがストレスになって適応障害を発症してしまうケースがあります。

組織で働く場合、どのような職場にも1人は自分と合わない人がいるものです。互いに付かず離れずの距離を保って大人の付き合いができればよいですが、なかにはわざわざ距離を詰めてきて、嫌がらせをする人もいます。

人間関係のトラブルで最も厄介なのは、業務上どうしても密に付き合わなければならない上司や同僚との不仲です。自分と反りの合わない相手からパワハラやモラハラ(モラルハラスメント)を受ければ、職場に行くのが怖いと感じるのは当たり前です。

業務内容のミスマッチ

業務内容が自身のスキルや希望と合わないことが原因で、職場に行くのが怖くなる人もいます。周囲の人と自分の作業スピードを比べて「こんなに遅いなんて、周りに迷惑をかけているのではないか」と自分を責めてしまう人や、「がんばっているのにミスが減らず、怒られてばかりいる」という人は、自分のスキルと業務内容のミスマッチが起きている可能性が高いでしょう。

自分に合わない仕事は作業スピードが落ちるだけでなく、どうしてミスをしやすくなります。ミスするたびに強く叱責されていれば、誰でも「仕事をするのが怖い」と感じてしまうでしょう。

長時間労働や不規則な勤務

自分のキャパシティを超えた仕事を任されたり、長時間労働・残業が多かったりするのも心身に大きなストレスを与えます。

自分の手に負えない量の仕事を振られれば、「本当に自分にできるのだろうか」と不安になるだけでなく「どこから手を付ければ良いのだろう」と軽いパニックを起こす人もいるでしょう。いつごろまでに片付くか見通しが立つ場合や、一時的な業務量の増加なら耐えられますが、見通しが立たない・終わりが見えない状態で仕事に追われるのは心も体もひどく疲弊します。

長時間労働や残業が多かったり、不規則なシフトで勤務するのも、大きなストレスです。

職場に長時間拘束されて自由がなければストレスは溜まる一方ですし、不規則な勤務は体に大きな負担をかけます。

これらの出来事が積み重なると、徐々に「仕事に行くのが怖い」と感じるようになります。

適応障害の方が会社に行くのが怖いときの対処法

適応障害で会社に行くのが怖いと感じるときは、自分ひとりで解決しようとがんばり過ぎないようにしましょう。

会社に行くのが怖いと感じるときは、次の方法で対処してみてください。

  • 周囲の人に相談する
  • 気持ちを整理する
  • 環境を見直す

周囲の人に相談する

仕事に行くのが怖いと感じるときは、まず周囲の人に相談してみましょう。家族や友人、職場の上司などに相談してみると、恐怖感を解消するヒントが得られるかもしれません。

ただし、職場の人に相談する場合は、信頼できる人に相談することが大切です。誰に相談するか気をつける必要があります。良い関係が築けていない人に相談すると、相談内容を言いふらされたり、叱責されたりするケースがあるからです。相談した結果、かえって職場に居づらくなったり、しんどさが増したりする可能性があるので、相談する人は慎重に選びましょう。

もし職場に相談できそうな人がいない場合は、産業医やキャリアカウンセラーなどに相談してみるのも良い方法です。職場に相談窓口があるなら、利用を検討してみましょう。

厚生労働省では、無料で相談できる電話相談窓口も解説しています。誰に相談すれば良いか迷ったときは、公的機関の電話相談を利用するのもおすすめです。

相談窓口案内|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

気持ちを整理する

自分の気持ちを整理するのも大切なことです。「職場に行くのが怖い」と感じたら、なぜ怖いと感じるのかを深く考えてみましょう。なぜ怖いのか考えてみると「叱責されたくないから」「手に負えない量の仕事が待っているから」などの理由が見えてくるはずです。

原因が見えてくると、どうすれば解決できるかもわかってきます。

叱責されたくないならどうすれば叱責されなくなるか考えられますし、仕事量が多すぎるなら調整してもらうなどの対応が取りやすくなるでしょう。

気持ちを整理するときは、自分のなかにある感情を素直に紙に書き出してみるのがおすすめです。思いついたことを、箇条書きで構わないのでどんどん書き出してください。

頭の中だけで考えていると考えが煮詰まってしまいますが、アウトプットしながら考えると冷静に自分を見つめられるだけでなく、自分の考えや感じ方を整理しやすくなります。

環境を見直す

生活習慣や職場環境など、あらゆる面で環境を見直すのも良い対処法です。

生活習慣が乱れているなら、できそうなところから生活習慣を整えてみてください。次のようなことは、心と体の調子を整えるのに役立つとされています。

  • 3食決まった時間に食事する
  • 早寝早起きを心がける
  • 適度に体を動かす
  • 十分な休養をとる
  • 栄養バランスの良い食事を心がける
  • 定期的にストレスを発散する

職場環境を整えるのも、仕事への恐怖を和らげるのに効果的な方法です。たとえば、どうしても良い関係が築けない人がいるなら、部署を移動できないか相談してみたり、勤務時間やシフトを調整してもらえないか相談してみてください。

適応障害で会社の行くのが怖いとき休職か退職を検討するポイント

適応障害で会社に行くのが怖い状態が続くのは、とてもつらいものです。休職や退職を検討する人もいるでしょう。

休職する場合、次のようなメリット・デメリットがあります。

~メリット~

  • 回復したら職場に復帰できる
  • 療養に専念できる

~デメリット~

  • 社会保険料の支払いが発生する
  • 人事評価に影響する可能性がある
  • 休職中は収入がなくなる
  • 復職しづらいと感じるケースがある

退職する場合のメリット・デメリットは次のとおりです。

~メリット~

  • 期間を気にせず療養に専念できる

~デメリット~

  • 経済的な不安が生じる
  • 経歴に空白期間ができる
  • 就職活動をしなければならない

それぞれのメリット・デメリットを踏まえて休職または退職を検討しましょう。

ただし、自分ひとりで決断するのはおすすめしません。適応障害で心と体の調子を崩しているときにひとりで冷静な判断をするのは避けたほうが良いからです。

休職か退職を検討するときは、次のステップを踏んで決断するようにしましょう。

家族や専門家に相談する

休職や退職を決断する前に、必ず身近な人に相談しましょう。家族や友人、通院している病院の医師やカウンセラーなどから、客観的な意見をもらって休職・退職するかどうか検討してください。

自分では「復職できない」と思っていても、周りから見れば少しずつ回復してきているケースもあります。

自分の考えだけで決断しないことが大切です。

自分の心身の回復に必要な時間を考える

適応障害は、ストレスとなる事柄から離れれば、6ヶ月以内に回復するとされています。しかし、個人差があるのであくまでも目安です。そのうえで、心身の回復にどれくらいの時間が必要か考えて、休職か退職かを判断すると良いでしょう。

回復までにかかる時間の見通しが立っているようなら、復職時期の見通しも立ちます。一方、回復までどの程度かかるか見通しが立たない場合や、長期間かかるような場合は一度退職してしっかり心と体を休ませる方が良いケースもあります。

回復に必要な時間の目安は、適応障害の診断を下した医師に尋ねてみてください。

会社に行くのが怖いと感じる原因が解決できるか

会社に行くのが怖いと感じるのには、理由があるはずです。その原因となる事柄を解決できるかどうかも、休職か退職かを判断する大きな決め手になります。

部署の異動やシフトの調整が可能なら、一度休職して、復職の際に職場の人と話し合えば解決できるケースがあります。

しかし、部署の異動やシフトの調整が認められない場合は、同じ部署・働き方で復職することになるため、適応障害が再発しやすくなります。

休職か退職かを考える際は、原因となった事柄を解決できるかも考えてみましょう。

収入面の影響を考慮する

休職や退職をすると、収入が大幅に減少するのは避けられません。休職・退職を考える際は、経済的な影響も検討するようにしましょう。

ただし、心身の調子を崩している状態で無理に働き続けるのは良くありません。無理を続ければ症状が悪化したり、回復にかかる時間が長くなったりします。

その際は、傷病手当金や雇用給付金や失業手当などの給付金制度を利用しながら休職・退職するのもひとつの方法です。

経済的な悩みなど療養中の困り事は「生活困窮者自立支援制度」を利用して専門家に相談できるので、積極的に利用しましょう。

適応障害で休職や退職をした後に利用できる制度やサービス

最後に、適応障害で休職・退職した後に利用できる制度やサービスをご紹介します。

利用できる制度やサービスには次のようなものがあるので、ぜひ利用してみましょう。

  • 労働局の職業訓練
  • リワーク支援
  • 自立訓練(生活訓練)
  • 就労移行支援

労働局の職業訓練

全国の労働局では、離職者・休職者の方を対象にした原則無料(テキスト代は自己負担)の労働訓練(ハロートレーニング)を提供しています。労働訓練は、回復後に就きたい職業がある人や、スキルアップを目指す人におすすめです。

労働訓練には、雇用保険を受給している人を対象にした「離職者訓練」と、雇用保険を受給していない人を対象にした「求職者支援訓練」があります。「求職者支援訓練」の場合は、一定の条件を満たすと職業訓練の受講を支援するために「職業訓練受講給付金」が受け取れます。

こちらの記事でも職業訓練について詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

職業訓練とは?種類やコース、受講のメリットから申し込みの流れまで解説

参考:ハロートレーニング|厚生労働省

参考:ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練||厚生労働省

リワーク支援

リワークとは、適応障害やうつ病などの病気で休職している人の復職をサポートする制度です。リワーク施設に通所して、仕事に近い内容の軽作業をしたり、復職後の再発を防ぐために病気について学んだりします。

リワーク支援は実施する施設によって4つのタイプに分かれますが、基本的な支援内容は変わりません。

リワーク支援を利用すると、休職中だけでなく復職後もサポートが受けられます。

リワークについては、こちらの記事でも解説しています。

リワークとは?受けられる場所や就労移行支援との違いも解説

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は障害福祉サービスのひとつで、復職に向けて生活習慣を整えたり、家族や周囲の人の手を借りずにひとりで暮らせる生活力を身につけたりするのに適しています。

障害福祉サービスについては、次の記事をご覧ください。

障害福祉サービスとは?種類や対象者、利用の流れを解説

自立訓練(生活訓練)では、主に次のようなプログラムを実施します。

  • 生活スキルの習得
  • 病気や障害に関する知識の習得
  • コミュニケーションスキルの習得
  • 訓練修了後の進路選択

Kaienでは「じぶんを再定義し、みらいを再設計する場」として自立訓練(生活訓練)サービスを提供しています。これまで行ってきた数千人への支援をもとに、必要となる知識やスキルを厳選した実践的なプログラムが特徴です。

お住まいの自治体の許可があれば在宅(オンライン)でも利用可能ですので、詳しくはお気軽にお問い合わせください。

就労移行支援

就労移行支援は、就職を目指す人のための障害福祉サービスです。自立訓練(生活訓練)がひとりで自立して暮らす力を身につけるのを目指すのに対し、就労移行支援は就職して働き続ける力を身につけるために実施します。

就労移行支援では、主に3つの支援を行います。

  • 職業訓練
  • 就活支援
  • 定着支援

職業訓練はパソコンスキルやビジネススキルといった、仕事に必要なスキルを身につけるための訓練です。

就活支援には、書類作成支援や面接練習などだけでなく、一人ひとりに合った就活プランの作成も含まれます。必要に応じて、スタッフが面接に同行するケースもあります。

就職が決まったら、その職場で働き続けられるようにフォローアップを行います。

Kaienの就労移行支援は、過去10年で約2,000人の就職者数を誇るサービスです。専門家推奨の充実したプログラムで、一人ひとりの適正に合った就労をサポートしています。

就労移行支援についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

就労移行支援とは?受けられる支援や利用方法をわかりやすく解説

適応障害で会社に行くのが怖い方は支援サービスを利用して休職・転職を検討してみて

適応障害になると、会社に行くのが怖くなるという人は多いものです。会社に行くのが怖いと感じたら、まずは周囲の人に相談したり、自分の気持ちを整理したりしてみましょう。

そのうえで、もし働き続けるのが難しいと感じたら、支援サービスを利用して休職・転職を検討してみるのをお勧めします。

休職中や退職後に利用できる支援制度やサービスには、次のようなものがあります。

  • 労働局の職業訓練
  • リワーク支援
  • 自立訓練(生活訓練)
  • 就労移行支援

Kaienでも自立訓練(生活訓練)や就労移行支援を実施しておりますので、興味を持たれた方はお気軽にお問い合わせください。見学や個別相談も随時実施しております。