障害者の失業保険受給の要件とは?受給の流れや発達障害のケースも解説

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離職した時に、次の仕事を見つけるまでの生活費を一定額保障してくれるのが失業保険(失業給付)です。正式には「雇用保険で基本手当を受給する」という言い方をします。この記事では雇用保険制度のあらましと、発達障害*のある人が失業給付を受ける際に得られるメリットについてお話しします。

 知的もしくは精神の手帳を持っていれば就職困難者に該当しメリットが活用できます。また医師の意見書で障害状況が確認できれば手帳がなくても同じように扱う場合もあるようです。また基本的に離職時に上記に当てはまる人が就職困難者として受給日数を延長できますが、後から正式な診断を受けたり手帳の取得をした場合追加で申請すると期間が延長されることもあります。さらには自己都合の退職であっても初月から失業保険(給付)を受けられます。ぜひ失業保険の給付日数が増える制度を理解・活用し、落ちついて転職活動をするためにお役立てください。

また、本記事の後半では、障害のある方の再就職に向けた相談先も紹介しています。一人で再就職を目指すことに不安を感じる人は、ぜひこちらもチェックしてみてください。

失業保険とは?

失業保険とは、失業した人が再就職するまでに安定した生活を維持できるように給付されるものです。雇用保険に加入している人(被保険者)のうち、一定の条件を満たしている人が離職した時に受給できます。

雇用保険は、フルタイム勤務で働く人に加えて、パートタイム勤務で31日以上の雇用契約を結び、週20時間以上働く人は加入が必須となっています。加入手続きは企業が行い、雇用保険被保険者証が交付されて本人が受け取ることになっていますので、ご自身の手元にあるかどうか確認してください。被保険者証が手元になく自分が雇用保険に加入していたかどうかわからない場合はハローワークで照会することもできます。

失業保険を受けるための要件

雇用保険の被保険者が失業給付を受けるには以下の3つの要件を満たしている必要があります。

① 雇用保険に加入していること

② 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること

③ 離職後ハローワークで求職の申し込みを行っているが「失業の状態」にあること

 

 ①ですが、フルタイム勤務の人は全て、パートタイム勤務の人も週20時間以上働く人は加入することになっています。加入している人には雇用保険被保険者証が発行されますので、ご自身の手元にあるかどうか確認してください。自分が雇用保険に加入しているかどうかわからない場合はハローワークで照会することもできます。

 ②は離職前の2年の間に、11日以上勤務した月が12か月以上ある必要があります。会社都合の解雇などで離職した人(特定受給資格者)や体調不良・妊娠出産育児・介護などの理由で離職した人(特定理由離職者)は、離職前の1年間に11日以上勤務した月が6か月以上ある場合も認められます。

 ③の「失業の状態」とは、働きたいという意思があり働ける状態にはあるが就職できていないという意味です。つまり病気やけが・妊娠出産育児などですぐに働けない状態の場合は失業給付を受給できません。

 発達障害の人に関係するのは、②では障害が理由で離職した人は特定理由離職者として認められ受給に有利になる可能性があることと、③では障害が理由で離職した場合も現在では回復して働ける状態であるとハローワークで伝える必要があるという点です。ハローワークには指定の医師の意見書の様式があるので、主治医に週何時間程度働くことができる状態なのか証明してもらう必要があります。

 

就職困難者の要件と一般受給者との違い

失業保険は、「就職困難者」と「一般受給者」で条件が異なります。失業保険を受給したい場合は、まず自分がどちらに該当するのかチェックしておきましょう。

一般受給者とは、自己都合で退職した人などを指します。一方、就職困難者とは、以下のいずれかに該当する人のことです。

  • 障害のある人
  • 社会的な事情で就職が難しい人
  • 保護観察期間にある人

障害のある人とは、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかを取得している人が該当します。就職困難者の要件を満たしている場合、一般受給者とは次のような違いがあります。

  • 基本手当を受給できる日数が多い
  • 受給のための求職活動実績が1回でよい
  • 障害年金と同時に受け取れる可能性がある など

障害者の方が失業保険を受けるための要件

障害者の方が「就職困難者」として失業保険を受給するためには、まず障害者手帳を取得している必要があります。ただし、障害者手帳を取得していなくても、てんかんや統合失調症などの診断書でも認められるケースがあるため、最寄りのハローワークに問い合わせてみてください。

また、失業保険は雇用保険に加入している人が対象です。就職困難者の場合は、離職前の2年間で通算12か月以上雇用保険に加入している必要があります。また、パートタイム勤務の場合は、給与支払の基礎日数が11日以上の月を1か月としてカウントします。

失業保険の支給額

受給できる1日当たりの額は、働いていた時の給与のおよそ4~8割になります(下限・上限あり)。給与が低い人ほど割合は多く設定されています。この日額を決められた給付日数分受給することができます。支給は4週間ごとですので、1回に5~21万円ほど受け取ることができます。(2016年8月現在)

基本手当日額
= 賃金日額 × (一定の割合)
= {離職した日の直前の6か月に支払われた賃金(賞与等は除く)の合計} ÷ 180 × (一定の割合)
離職時の年齢 下限 上限
29歳以下 1,832 円 6,370 円
30~44歳 7,075 円
45~59歳 7,775 円
60~64歳 6,687 円

 

失業保険の受給期間

 失業保険の給付日数は①障害のある人(就職困難者)②会社都合・家庭の都合などで離職した人(特定受給資格者・特定理由離職者)③その他自己都合で離職した人(一般離職者)で異なります。身体・知的・精神の障害のある就職困難者はその他の人より長い期間(150~360日)受給できます。以下の表で太字の部分です。

  被保険者期間 1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
就職困難者 45歳未満 150日 300日 (同左) (同左) (同左)
45歳以上
65歳未満
150日 360日 (同左) (同左) (同左)
特定受給資格者
特定理由離職者
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上
35歳未満
90日 120日 180日 210日 240日
35歳以上
45歳未満
90日 150日 180日 240日 270日
45歳以上
60歳未満
90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上
65歳未満
90日 150日 180日 210日 240日
自己都合の
一般離職者
90日 (同左) 120日 150日

 

就職困難者の定義のうち、発達障害の人に関係する部分について確認しました。障害者手帳を持っていれば確実に「就職困難者」として認められますし、手帳を申請中でも認められたケースもあります。一方でハローワークによっては手帳を取得していなくても、主治医の意見書で障害の状況が確認できれば同じように扱うというところもあるようです。また基本的に失業保険の申請時に「就職困難者」として認められる必要がありますが、こちらもハローワークによっては後から手帳を取得した場合も給付期間の延長を考慮してもらえることもあるようです。

 

  • 知的障害者:療育手帳を持っている、もしくは公的機関で知的障害があると判定されている
  • 精神障害者:精神障害者保健福祉手帳を持っている、もしくは統合失調症・躁うつ病・てんかんにかかっている(発達障害があるという医師の意見書でも認められる場合あり)

 

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失業保険の申請に必要な書類

失業保険の申請には、次の書類が必要です。

  • 雇用保険被保険者離職票
  • 個人番号確認書類
  • 身分証明書
  • 写真(正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm)2枚
  • 印鑑
  • 本人名義の預金通帳もしくはキャッシュカード

雇用保険被保険者離職票は、退職した職場から発行されます。職場まで取りに行くか、郵送を依頼しましょう。もし何らかの事情で離職票がもらえないという場合は、最寄りのハローワークに相談してください。

個人番号確認書類は、マイナンバーカード・マイナンバー通知カード・マイナンバーが記載されている住民票のいずれかで対応できます。

身分証明書は、運転免許証など官公署が発行した顔写真付きの身分証明書なら1種類、保険証など顔写真がないものは2種類必要です。

顔写真は、規定のサイズで最近撮影したものを用意してください。

 

失業保険の受給の流れ

 離職から失業給付の受け取りまでの流れは以下のようになります。障害のある人は自己都合退職でも給付制限の期間がなく求職申込からおよそ1か月後には給付金を受け取ることができます。

障害のある人(就職困難者)

会社都合で離職した人(特定受給資格者・特定理由離職者)

① 離職票受け取り

② 求職申し込み(受給資格決定)

③ 待機期間(7日間)

④ 受給説明会

⑤ 失業認定(初回)

⑥ 振込

(以下⑤、⑥を繰り返し)

※②~⑥までおよそ1か月

 

  • ①は在職中に離職証明書に記入・捺印すると、離職後に企業から本人に離職票が送付されます。
  • ②はお住まいの地域のハローワークで手続きします。求職申込書に記入して持参した離職票とともに提出します。
  • ③の待機期間は全ての方にあり、②の求職申込日から7日間は雇用保険の支給はありません。
  • ④の説明会では雇用保険受給の流れについて説明があり、受給資格者証が発行されます。
  • ⑤の第1回の失業認定日までに、最低1回求職活動をすることが求められます(2回目以降は2回以上)。
  • 自己都合退職の人は失業保険が支払われない期間が③の7日間が終了後さらに3か月間追加されます。
  • ⑥は失業認定日から1週間ほどで本人の口座に振り込まれます。

 

障害者の方の再就職に向けた相談先

失業保険は、再就職に向けた活動をしている人を対象とした制度です。障害者の方が再就職を目指す際は、次のような支援機関の活用も検討してみてください。

ハローワーク

全国のハローワークには、障害者の方のための専門窓口を設置しています。障害に対する知識や理解のある相談員が在籍していて、職場探しや応募書類の作成支援、面接指導などきめ細やかなサポートが受けられます。

失業保険の受給手続きはハローワークで行うため、その際に次の職場探しについても相談してみるのがおすすめです。

 

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、ハローワークなどの就労支援機関と連携しながら障害のある方に専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。職業リハビリテーションとは、職業能力の評価や就労に必要な訓練などのことで、自分に合った職場探しや就職に必要なスキルの習得が目指せます。

地域障害者職業センターでは、障害のある方と事業主の双方に対する助言や支援を行うジョブコーチの派遣も実施しています。次の職場で長く働くための支援を受けられるのも、大きなメリットです。

 

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の就業面と生活面を一体的にサポートする福祉施設です。利用者には就業支援担当と生活支援担当がそれぞれ付き、就労に関する相談や日常生活に関する助言を行います。

障害者就業・生活支援センターでは、就職活動だけでなく日常生活もサポートしてもらえるのが特徴です。再就職に際して生活習慣や健康管理、金銭管理などの相談や助言が必要な方は、障害者就業・生活支援センターに相談してみましょう。

 

就労移行支援

就労移行支援は、就労系障害福祉サービスのひとつである就労移行支援を提供する施設です。一般企業への就職を目指す障害者の方を対象とするサービスで、事業所に通いながら職業能力の向上や再就職を目指します。

就労移行支援では、最初に個別支援計画を作成します。それぞれの特性や状況を考慮しながら就職活動を進められるため、「すぐに再就職したい」「必要なスキルを習得してから職探しをしたい」など、希望に合わせた取り組みが可能です。

就労移行支援は、事業所によってプログラム内容が異なります。プログラミングやWebデザインに特化した事業所もあるため、希望の職種が決まっている人は、そのためのスキルを習得できるところを選ぶのがおすすめです。

 

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が自立した日常生活を送れるよう支援する障害福祉サービスです。自立訓練(生活訓練)は安定した生活の確立を目的としているため、「再就職の前に生活リズムや食生活を整えたい」という方に適しています。

自立訓練(生活訓練)から就労移行支援への移行もできるため、「自立訓練(生活訓練)で生活基盤を整えてから、就労移行支援を利用して再就職を目指す」といった使い方も可能です。いきなり就労移行支援を利用するのは不安だという人は、まず自立訓練(生活訓練)から始めてみてはいかがでしょうか。

 

失業保険をうまく活用しよう

障害のある方が失業保険を受給する場合、「就職困難者」に該当します。就職困難者は一般受給者よりも失業保険の受給要件が緩和されるため、うまく活用しながら再就職を目指しましょう。

障害のある方の再就職をサポートする機関や制度は多くあります。再就職に向けた取り組みで不安に感じることがあれば、本記事で紹介した相談先に相談してみましょう。

就労移行支援や自立訓練(生活訓練)の利用を検討している方は、ぜひKaienにご相談ください。Kaienでは、発達障害の強みを活かした就労移行支援・自立訓練(生活訓練)を実施しており、高い就職率と定着率が特徴です。見学・個別相談会も開催しているので、再就職について不安なことやお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

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