発達障害の学生に手厚い大学の特徴とは?支援内容や選び方のポイントを解説

HOME大人の発達障害Q&A学生発達障害の学生に手厚い大学の特徴とは?支援内容や選び方のポイントを解説

発達障害*がある中での大学進学に、不安を抱える方は少なくありません。大学は、高校とは学ぶ内容も学び方も大きく変わります。安心して学生生活を送るには、発達障害の学生への支援が手厚い大学を選ぶことが大切です。

今回は、発達障害の学生への支援が手厚い大学の特徴や選び方、大学生活で抱えがちな困りごとやその対処法を解説します。大学進学を検討している発達障害の方はぜひ参考にしてみてください。

発達障害の方への支援が手厚い大学の特徴

発達障害の方への支援が手厚い大学には、以下のような特徴があります。

  • 障害学生修学支援の相談窓口がある
  • 入学後の受け入れ体制が整っている
  • 入試時に配慮が受けられる

どういったことか、詳しく見てみましょう。

障害学生修学支援の相談窓口がある

独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)は、障害のある学生が大学などの高等教育機関で安心して学べる環境を整えるため「障害学生修学支援ネットワーク」を運営しています。

障害学生修学支援ネットワークは9つの拠点校と3つの協力機関を中心にネットワークを構築し、学びの場のバリアフリー化を目指しています。この取り組みは、主に大学等の障害学生支援担当者へ拠点校が障害学生支援の相談や助言などを行うものです。

障害学生修学支援の相談窓口のある拠点校であれば、障害のある学生の受け入れ体制が整っており、経験や実績も豊富なため発達障害の学生の支援にも精通している可能性があります。

入学後の受け入れ体制が整っている

入学後の受け入れ体制がどうなっているのかも、事前に確認しておきたい部分です。

2024年4月から国公立や私立を問わず、すべての大学で障害のある方への合理的配慮の提供が義務化されました。どういった合理的配慮を行っているかは、大学のホームページで確認できます。

大学が実施する合理的配慮の例は、以下の通りです。

  • レポート等の提出物の期限延長
  • スケジュール管理の指導
  • 定期的なカウンセリングや面談の実施
  • 授業の録音許可や板書のサポート
  • 定期試験の時間延長・別室試験措置

在学中や就職活動など、段階に分けて細やかな配慮を行う大学もあります。志望校を検討する際は、こうした大学側の受け入れ体制もチェックしておきましょう。

入試時に配慮が受けられる

合理的配慮の義務化にもとづき、すべての大学が入試時に障害のある方への配慮を行っています。大学入試における合理的配慮とは評価基準や合格点を変更することではなく、障害のある方の能力や適正を適切に判定できるよう、受験環境を整えることを指します。

例として、以下のような合理的配慮があります。

  • 特定試験場での受験許可
  • 試験時間の延長
  • 介助者の配置
  • 拡大文字や拡大解答用紙による出題
  • 文書での注意事項伝達

どういった配慮を実施しているかは大学ごとに異なります。また入試時に配慮を受けるには、事前相談や診断書の提出といった手続きが必要です。余裕をもって確認しておきましょう。

発達障害の方に多い大学生活の困りごと

発達障害の方は授業のスタイルや規模など、高校と大学の違いに戸惑い、大学生活において困難を抱えやすい傾向にあります。発達障害の方に多い大学生活の困りごとを、次で見ていきましょう。

履修科目の選択や時間割が組めない

大学では履修科目を自分で選び、自分の裁量で時間割を組まなければなりません。また、やみくもに選択すれば良いわけではなく、必修科目や自由科目など、卒業に必要な単位を考慮しながら履修内容を選ぶ必要があります。

発達障害の方は、特性によりスケジュールを立てたり物事を取捨選択したりするのが苦手な傾向にあり、こうした履修科目の登録や時間割の設定が困難なケースが少なくありません。履修登録の際は、親や周囲からのサポートを受けるようにしましょう。

ゼミやグループになじめない

発達障害の方は、他者とのコミュニケーションや会話を苦手とする場合が見られます。大学にはゼミや実習、実験など、グループ単位で行う授業があり、こうした授業では周囲とコミュニケーションを取りながら学習を進めていかなければいけません。

しかし、会話のスピードについていけない、実験の手順ややり方がわからないなどの困りごとが生じると、ゼミやグループになじめなくなり授業を欠席してしまう方もいます。そういった場合は早めに学生窓口に相談し、教員や支援員、友人らのサポートを受けるようにしましょう。

授業に出席できない

発達障害の方は、さまざまな理由から授業に出席できなくなる場合があります。

例えば、発達障害の方は睡眠障害を併存しやすい傾向にあるため、朝起きられず午前中の授業に出席できなくなるケースが見られます。また授業ごとに変わる人間関係や環境になじめず疲弊し、徐々に大学から足が遠のいてしまうことも少なくありません。他にも自宅から大学までが遠いと、授業に間に合うように支度をすることができず、遅刻や欠席が重なってしまう場合もあります。

対処法として、1限や2限など早い時間帯の授業を取らない、出席を重視する授業は避けるなどが挙げられます。またある程度自立して生活できる方なら、大学の近くで一人暮らしすることを考えても良いでしょう。

期日にレポートを提出できない

大学では、レポート作成が課題として出される授業が多くあります。しかし発達障害の方の中には、特性からレポートの提出が困難な方も少なくありません。要因として、以下が挙げられます。

  • スケジュール管理ができず期日に間に合わない
  • 集中力に欠けレポート作成に時間がかかってしまう
  • うっかり提出期限を失念してしまう
  • 長い文章の執筆や要約などが困難

スケジュール管理が難しい、提出期限を失念してしまうといった場合は、周囲の友人や学生支援の職員にリマインドやスケジュール管理をサポートしてもらえるか頼んでみましょう。長文の執筆など課題内容に困難がある場合は、教授に口頭試験など課題内容の変更ができないか相談してみましょう。

板書が難しい

人によって程度は異なりますが、発達障害には文字の読み書きに通常よりも時間や手間がかかってしまう特性があります。

大学の授業は必ずしもテキストやレジュメ通りに進むわけではありません。板書した内容をベースに授業が展開されるケースもあるでしょう。また、レジュメも板書もなく、教授が口頭で説明した内容をメモにとらなければいけない場合もあります。こうした環境に戸惑い、板書がうまくできない発達障害の方も珍しくありません。

板書が困難な場合には、ICレコーダーによる録音や板書の写真撮影で代用しても良いか、担当教授に相談してみましょう。

発達障害の方が支援の手厚い大学を選ぶポイント

発達障害の方への支援が手厚い大学を選ぶには、各大学の支援内容や学生生活の相談先を確認するなど、押さえておきたいポイントがあります。

それぞれ見ていきましょう。

大学が実施する支援内容を確認する

自分が求める配慮を大学が実施しているか、学校ごとの支援内容をまず確認しましょう。多くの場合、大学のホームページで確認できます。例として、一橋大学では「障害学生支援室」のページ内に「障害別の支援・配慮依頼例」として、発達障害の学生に向けた以下のような支援内容を掲載しています。

  • 口頭や板書、プリントの配布など教示方法の調整
  • 座席指定の配慮
  • 課題期限・試験時間の延長(評価方法の調整)
  • 暗黙のルールの理解が難しい方に向けた、受講ルールの明確化

発達障害のある方は、合否に響くのを恐れて事前の支援内容の確認を避けるケースがあります。しかし、安心した学生生活を送るためにも、早めに確認や問い合わせをすることをおすすめします。また、合理的配慮の有無や支援体制の確認を高校生が一人で行うのは荷が重い場合も多いため、親が主導するのが一般的です。

自分の特性に合う大学を選ぶ

発達障害の特性には個人差があるため、無理なく通える大学を選ぶには、大学が自分の特性に合っているかどうか見極めることが大切です。

例えば、スケジュール管理が苦手な方にとって、臨機応変さと計画性を求められる卒業論文は大変です。その場合は、卒論のない学部や学科を選ぶという方法があります。また、他者とのコミュニケーションに疲弊してしまう方は、1人で黙々と受講できる講義の多い大学を選ぶと良いでしょう。

自分の得意・不得意や、こだわりたいポイントを冷静に見極めて、自分の特性に合った大学を選びましょう。

大学生活に関する相談先を知る

大学には、在学中に利用できる以下のような学内の相談先があります。

  • 学生支援センター・学生相談室
  • 保健管理センター
  • 障害学生支援室

「学生支援センター・学生相談室」では、専任のカウンセラーに学業や進路、就職から人間関係、アルバイトまで、生活全般に関する相談ができます。

「保健管理センター」は学生や教職員の心身の健康を守るための学内機関です。医師や保健師、看護師、カウンセラーなどの専門家が、病気・怪我の応急処置から生活上の悩みごとの相談まで幅広く対応します。

「障害学生支援室」は、障害のある学生が他の学生と平等に教育を受けられるよう、調整や支援を行っています。障害のある学生の意向を尊重しつつ、必要なサポート内容や方法を決定します。

通信制大学も検討する

発達障害のある学生の進路として、通学制の大学の他に通信制大学という選択肢もあります。

通信制大学は入試がないところが多く、入学しやすい点が1つのメリットです。学部や学科もさまざまで、ほとんど通学が必要ないところやスクーリングが多いところなど、幅広い受講スタイルがある点も魅力です。

基本的には通学制の大学のようなゼミやグループで行う学習は少ないので、他者とのコミュニケーションが苦手という方もストレス少なく学ぶことができます。

大学以外の支援先も頼ろう

大学の学内機関以外にも、発達障害の方が利用できる支援先として、以下が挙げられます。

  • 発達障害者支援センター
  • 精神保健福祉センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 当事者会

「発達障害者支援センター」は、発達障害の当事者とそのご家族の生活を、医療や福祉から教育、労働まで総合的にサポートする支援機関です。「精神保健福祉センター」では医師や精神保健福祉士、心理相談員などの専門家に、心の問題や病気の相談ができます。「障害者就業・生活支援センター」は各関係機関が連携し、障害のある方の就業と生活の両方の支援を行う機関です。

発達障害の方の「当事者会」は、発達障害当事者が抱える悩みや困りごとなどを共有し、情報交換を行う場です。全国に大小さまざまな当事者会があり、開催頻度や活動内容はそれぞれ異なります。

Kaienの大学生向けの支援

Kaienでは、発達障害のある学生向けの就活支援サービスとして「ガクプロ」があります。

ガクプロは、職業体験や就活・生活ノウハウを学べるセッションや同世代とやりとりできるグループワークなどを通して「仲間づくり&就活」をサポートします。就職活動に不安がある大学生は、個別で面接練習や書類作成支援、志望企業の選定支援を受けることも可能です。また、一般の就活サービスでは取り扱っていない障害者雇用での就職もアシストしています。これまで、ガクプロを利用して300人以上の学生が就職内定を得ているのもKaienの強みです。

ガクプロでは無料の説明会や個別相談会を随時開催しているので、興味のある方はお気軽にお問合せください。

発達障害の方の大学選びは手厚い支援を重視して

合理的配慮が義務化された現在は、すべての大学が発達障害のある方への支援を行っています。支援内容は大学によって異なるため、自分の求める支援に合致しているかどうか、なるべく早めに確認しましょう。また、大学のシステムや講義の傾向が自分の特性に合っているかどうかも、調べておきたいポイントです。適切な支援を利用しながら、有意義な大学生活を送ってくださいね。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます