障害者とは?定義や考え方から利用できる制度やサービスまで紹介

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障害者とは、身体機能や知的機能に障害がある方や、精神疾患や難病を抱える方のことをいいます。また、障害者基本法では心身の障害によって日常生活・社会生活に制限がある人を障害者と定義しており、この制限を取り除くために法律に基づくさまざまな障害福祉サービスを提供しています。

この記事では障害者の定義を紹介したうえで、障害者の方が利用できる制度やサービスについて詳しく見ていきましょう。障害のある方が就労について相談できる施設も紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

障害者とは?

はじめに、障害者の定義について見ていきましょう。障害者基本法では、障害者を次のように定義しています。

“身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。”

引用元:内閣府「障害者基本法(昭和四十五年五月二十一日法律第八十四号)」

ここでは、障害者の定義に含まれている身体障害・知的障害・精神障害(発達障害*含む)と、障害者総合支援法の対象となっている難病について解説します。

身体障害

身体障害とは、身体の機能になんらかの不自由や制限がある状態をいいます。身体障害の例として、次のような障害が挙げられます。

  • 肢体不自由
  • 視覚障害
  • 聴覚障害
  • 内部障害

肢体不自由には、手足や体幹の障害や運動機能の障害などが該当します。視覚障害や聴覚障害は、まったく見えない・聞こえない状態だけでなく、「特定の色が識別しにくい」「聞こえにくい」といった状態も当てはまります。

内部障害とは、外見からはわかりにくい部分の障害のことです。心臓や呼吸器、腎臓などの障害が該当します。

知的障害

知的障害とは、心身の発達期(おおむね18歳まで)にあらわれた知的機能の障害によって、日常生活になんらかの支障があるために特別な援助を必要とする状態のことです。知的障害を持つ人は、次のような困りごとを抱えているケースがあります。

  • コミュニケーションが上手にとれない
  • 状況に応じた行動ができない
  • 相手の言葉を理解したり自分の気持ちを表現したりするのが苦手
  • お金の計算が苦手
  • 学習に時間がかかる など

知的障害の程度は人それぞれで、少しの会話ややりとりだけでは障害があることを感じさせない人もいます。

精神障害

精神障害とは、次のような精神疾患がある状態のことです。

  • 統合失調症
  • うつ病
  • 双極性障害
  • アルコール・薬物依存症
  • 不安障害
  • てんかん
  • 発達障害 など

精神障害の原因となる精神疾患は種類が多く、症状の種類や程度は人によって大きく異なります。

難病

2013年に施行された障害者総合支援法によって、障害児・者の対象として「難病等」が加わりました。この法律では、難病を次のように定義しています。

『治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者』

障害者総合支援法では、以下のような疾病を含む130の疾患を対象としています。

  • 潰瘍性大腸炎
  • 全身性エリテマトーデス
  • パーキンソン病
  • 原発性免疫不全症候群 など

障害の考え方は医学モデルから社会モデルへ

障害の考え方については、従来の「医学モデル」から「社会モデル」へと変化してきています。

医学モデルとは、心身の機能に障害があるかどうかだけで判断する考え方です。障害への対処としては、一般医療による治癒やリハビリテーションなどの行動変容が目標でした。

一方社会モデルは、個人の機能障害に加えて社会の制度や環境によって生活に支障が出ている状態を「障害」と考えます。社会モデルの考え方は、1980年代から広まり始めました。

2001年には、世界保健機関で医学モデルと社会モデルを統合した考え方である「国際生活機能分類(ICF)」が採択されました。ICFは、心身機能・社会活動への参加状況・生活環境などあらゆる視点を踏まえて支援につなげるための新しい考え方です。

障害のある方を支援する法律は多数存在する

日本には障害のある方を支援するための法律が多くあります。例えば、次のような法律です。

  • 障害者総合支援法:さまざまな障害福祉サービスの提供について定めた法律
  • 障害者差別解消法:障害を理由に不当な扱いをすることを禁止する法律
  • 障害者雇用促進法:企業や自治体に障害のある方の雇用を義務付ける法律
  • 発達障害者支援法:発達障害の定義を明確にし、支援を促進するための法律

これらの法律に基づいて、障害のある方の生活や就労を支援する制度が数多く提供されています。例えば障害者総合支援法では、それぞれの障害の種類や程度に応じた介護サービスや、就職や自立した生活を目指すための訓練・サポートが受けられる多くの制度について定めています。

障害者の方が利用できる代表的な制度

先ほど紹介したとおり、日本には障害者の方が利用できる多くの制度があります。ここからは、具体的にどのような制度があるのか、代表的なものを見ていきましょう。

障害者手帳

障害者手帳は障害のある方が取得できる手帳の総称で、申請すると各自治体から交付されます。障害者手帳は、障害の種類によって「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つに分かれます。

障害者手帳を取得すると、公共交通機関の運賃や施設・サービスの利用料の割引、税金の控除などを受けられるのがメリットです。

障害者手帳については以下の記事で詳しく解説しているので、取得を検討している方はこちらの記事もぜひ参考にしてください。

障害者手帳とは?取得のメリットや申請方法、よくある質問を解説

障害年金

障害年金は、日常生活や就労に支障が出るほどの病気や怪我を負った方に支給される年金のことです。「年金」と聞くと高齢者が対象だと感じる人もいるかもしれませんが、障害年金は20歳から65歳までの人が対象で、若い人でも要件を満たせば利用が可能です。

傷病に対する初診を受けたときに加入していた年金の種類によって、障害基礎年金もしくは障害厚生年金のいずれかを受給できます。受け取れる金額は、障害の程度や家族構成によって決まります。

障害年金については以下の記事でも解説しているので、併せてチェックしてみてください。

【2025年改正】障害年金は今後どうなっていく?概要を詳しく解説

障害者控除

障害者控除は、障害のある方や障害のある方を扶養している方の税負担を軽減する制度です。以下の区分に基づいて所得控除が受けられ、支払う所得税の額を下げることができます。

区分控除額
障害者27万円
特別障害者40万円
同居特別障害者75万円

上記の区分は、障害者手帳の等級によって決まります。そのため、障害者控除を受けるには基本的に障害者手帳の取得が必要です。ただし、自治体で障害者認定を受けているなど、障害者手帳がなくても障害者控除を受けられるケースもあります。

自立支援医療

自立支援医療は、心身の障害を除去・軽減するためにかかる医療費の負担を軽減する制度です。次の3つのいずれかに該当する場合、医療費の一部を公費で負担してもらえます。

  • 精神通院医療:精神疾患(発達障害を含む)によって通院が必要な人
  • 更生医療:身体障害者手帳を取得していて、手術や治療によってその障害の除去・軽減が確実に期待できる人(18歳以上)
  • 育成医療:身体障害があって、手術や治療によってその障害の除去・軽減が確実に期待できる人(18歳未満)

障害者雇用

障害者雇用は、障害のある方を対象とする雇用枠を設ける制度です。障害者雇用促進法では、一定規模以上の企業や自治体は法律で定める割合以上の障害者を雇用することを義務付けています。

障害者雇用の求人に応募できるのは、原則としていずれかの障害者手帳を取得している方です。障害のある方の雇用を前提としているため、障害者雇用枠で就職すると合理的配慮や職場での理解を得やすいというメリットがあります。

障害者雇用については以下の記事で詳しく紹介しているので、就労を希望する方はぜひこちらの記事もチェックしてみてください。

障害者雇用とは?対象者や一般雇用との違い、メリットと注意点を解説

障害者の方の就労についての相談先

障害者の方の就労について困ったことや分からないことがある場合、専門の施設に相談できます。

ここでは障害者の方の就労についての相談先を紹介するので、ぜひ活用してくださいね。

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は仕事を探している人や人材を求めている事業者に対して、さまざまなサービスを提供する機関です。国が運営する公的機関のため、求人の紹介や就職に関する相談などのサービスが無料で利用できます。

全国のハローワークには、障害のある方のための専用窓口が設置されています。専門知識のあるスタッフが在籍していて、応募書類の作成支援や面接指導などのサポートが受けられるので、就労を希望する方は活用してみましょう。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害のある方が職業リハビリテーションを受けられる施設です。職業リハビリテーションとは、障害のある方が就労の機会を得て継続的に働けるように、指導や訓練、職業紹介などを実施することです。

地域障害者職業センターは障害者雇用促進法に基づいて設置されている施設で、各都道府県に最低でも1箇所は設置されています。職業リハビリテーションを利用したい方は、最寄りの地域障害者職業センターの場所をチェックしてみましょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方が自立した職業生活を送れるように、就業面と生活面の両方を一体的に支援する施設です。利用者には就業支援担当と生活支援担当のそれぞれが付き、就業面では就職に向けた準備支援や就職活動のサポート、生活面では日常生活や地域生活に関する助言などを行います。

就職に関する相談だけでなく、生活習慣など日常生活についての相談もしたい場合は、障害者就業・生活支援センターの利用がおすすめです。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す障害者を支援する就労移行支援というサービスを実施している施設です。就労移行支援を利用している人は、就労移行支援事業所に通って就職に必要なスキルを身につけたり、面接対策など就職活動の支援を受けたりできます。

就職活動を始める前に日常生活や生活リズムを安定させたいという場合は、自立訓練(生活訓練)という福祉サービスの活用がおすすめです。自立訓練(生活訓練)では、生活の基礎を作ったり地域生活を充実させたりするための訓練を行います。

障害のある児童についての相談先としては、放課後等デイサービスがあります。放課後等デイサービスは障害のある6歳から18歳のお子さんを対象とした通所支援サービスで、自立支援や創作活動、地域との交流などが主な支援内容です。

このように、相談したい内容によってさまざまな相談先や支援サービスが用意されているので、困ったことや心配なことがあれば積極的に活用してみましょう。

自分にあった制度やサービスの利用を検討してみよう

障害者基本法では、心身の機能の障害によって継続的に日常生活や社会生活に障壁がある人を障害者と定義しています。この「社会生活への障壁」を取り除くために、日本でも障害のある方を支援するための法律が多く整備されています。

障害年金や障害者控除といった経済面での支援から、障害者雇用や就労移行支援など就労を目指す人のための支援まで、サービスの種類は多種多様です。ハローワークや就労移行支援事業所など、障害者の方の就労について相談できる施設は複数あるため、現状のお悩みや今後の希望にあった制度やサービスの利用を検討してみてください。

一般企業への就職を目指している方は、就労移行支援の利用がおすすめです。Kaienが実施する就労移行支援は専門家が推奨する充実したプログラムを用意していて、高い就職率が特徴です。見学・個別相談会を実施しているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

監修者コメント

障害者は法律によって定義されていることは、本コラムでご紹介のあった通りです。障害者も健常者のように普通に暮らせるようにする取り組みをノーマライゼーションと言います。日本で精神障害者が福祉の対象になったのは、1993年の障害者基本法が成立した年で、歴史的には30年ほどと浅いものです。

それに対し世界で初めて知的障害者の福祉法を成立させたのは、今から60年以上前のデンマークで1959年でした。同国ではバンク-ミケルセンという人が、隣国スウェーデンではニィリエという人が、それぞれ障害者のノーマライゼーションを充実させていきました(https://sw.self-sufficiency.jp/「社会福祉士国試3カ月で合格できる覚え方」)。

なぜ北欧で先進的な福祉の取り組みができているか気になりますよね?理由として人口が少ないこと(各国500万人程度)、地方自治による福祉の決定権が強く、素早い福祉政策の実行が可能なことなどがあげられそうです。しかしながら、福祉が国家に依存しすぎると、個人情報が国家に集約されるような「警察国家」になってしまう側面が、早くも18世紀のドイツで議論されていました(ウィキペディア、「福祉国家」)。

このようにみると、福祉をくまなく行き渡らせるためには、人口サイズと国家の個人情報の収集が大きな要素になっていることが分かるでしょう。それでは、日本のように人口の多い西ヨーロッパやアメリカなどではどのような福祉政策が取られているのでしょうか?これは別の機会に論じたいと思います。

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。


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