障害者が国からもらえるお金とは?障害年金など利用できる制度を紹介

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障害がある場合、国からいったいどのようなお金や支援が受け取れるか、気になっている人も少なくないでしょう。この記事では、障害年金をはじめとした国からもらえるお金の種類について詳しく紹介します。

障害年金や給付金などのお金以外の経済的支援についても解説しますので、ぜひ最後まで目を通して利用を検討してみてください。

国からもらえるお金の種類①障害年金

国からもらえるお金としてまず挙げられるのは障害年金です。障害年金とは、病気や怪我によって生活や仕事が制限される場合に受給できる年金です。

障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。また、障害厚生年金の受給対象よりも軽い障害である場合でも「障害手当金」を受け取ることが可能です。

なお、国からもらえるお金はさまざまにあるものの、利用者が圧倒的に多いのは、この障害年金といえるでしょう。多くの人が活用しているため、まずはこの障害年金の受給を検討してみることがおすすめです。

障害基礎年金

障害基礎年金とは、国民年金に加入していた期間中に、障害となった病気や怪我の「初診日」(※1)があり、障害の程度が1級・2級(※2)の状態にある人が受けられる年金です。生まれつき障害があるなどで初診日が20歳前(国民年金加入前)である場合や、日本に住む60歳以上65歳未満の年金制度に加入していない人でも受け取れます。

初診日が20歳前である場合を除き、受給するためには、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないなど一定の保険料の納付要件を満たす必要があります。

受給できる金額は障害の等級などによって異なり、2024年4月現在では1級が約100万円/年、2級が約81万円/年です(※3)。

※1 初診日:障害の原因である病気や怪我について医師の診療を初めて受けた日

※2 障害の程度1級・2級は、法令で定められている「障害等級表」の第1級・2級のこと

参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額

障害厚生年金

障害厚生年金とは、会社員や公務員の加入する厚生年金への加入期間中に、障害となった病気や怪我の「初診日」があり、障害の程度が1級・2級・3級である人が受けられる年金です。

障害厚生年金は、障害基礎年金に上乗せして受け取ることが可能です。また、障害程度3級の場合、障害基礎年金は受給できませんが、障害厚生年金は受給できます。

障害厚生年金を受け取る場合にも、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないなどといった保険料の納付要件を満たす必要があります。

受給できる金額は、障害の等級のほか、年金の加入期間や加入中の給与水準などによって大きく異なるため、一概にいくらとはいえません。なお、障害3級の場合は、最低保証額が設定されており、最低保証額は約61万円/年となっています。

参考:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額

障害手当金

障害手当金とは、障害厚生年金の受給対象より軽い障害で、障害厚生年金が受給できない場合に支給される一時金のことです。

受給要件は、初診日が厚生年金の加入期間であることや、初診日から5年以内に治っていること、障害の程度が4級以下であることなどです。また、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないなどの保険料の納付要件を満たす必要もあります。

受給できる金額は、障害3級の障害厚生年金の2年分です。障害手当金には最低保証額が設けられており、最低保障額は約122万円です。

参考:日本年金機構「障害年金ガイド 令和6年度版

国からもらえるお金の種類②障害年金生活者給付金

障害年金生活者支援給付金とは、障害基礎年金を受給している人のうち、年間所得が一定金額より低い人に対して、生活支援を目的として支給される給付金です。障害年金生活者給付金は、障害基礎年金に上乗せして受給することができます。

障害年金生活者給付金は、具体的には下記の要件を満たす人が受け取れます。

  • 障害基礎年金の受給者である
  • 前年の所得が4,721,000円(※扶養親族の数に応じて増額あり)以下である

なお、上記の前年の所得には、障害年金などの非課税の収入は含みません。

給付額は、2024年現在、障害1級の場合は月額6,638円、障害2級の場合は月額5,310円となっています。給付額は、毎年度、物価の変動によって改定されます。

参考:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について

国からもらえるお金の種類③特別障害者手当

特別障害者手当とは、精神または身体に著しく重度の障害がある人の精神的・物質的な負担を軽減するために支給される手当です。

特別障害者手当の支給対象となるのは、精神または身体に重度の障害があり、日常生活において常に特別な介護を必要とする在宅の20歳以上の者です。

支給額は、2024年4月以降の適用額は、月額28,840円です。支給されるタイミングは毎年2月、5月、8月、11月の4回で、それぞれの月に前月分までの手当が支給されます。

なお、特別障害者手当には所得制限があります。障害のある受給資格者本人、あるいはその配偶者または扶養義務者(同居する父母など)の前年の所得が一定の額(所得限度額)以上であるときは手当は支給されません。

所得制限の所得限度額は、例えば下記の通りです。詳細は厚生労働省の「特別障害者手当について」のページで確認できます。

【特別障害者手当の所得制限表】(単位:円、2021年8月以降適用)

受給資格者本人受給資格者の配偶者および扶養義務者
扶養親族所得額収入額の目安所得額収入額の目安
0人3,604,0005,180,0006,287,0008,319,000
1人3,984,0005,656,0006,536,0008,586,000
2人4,364,0006,132,0006,749,0008,799,000

出典:厚生労働省「特別障害者手当について

※所得額は、地方税法の都道府県民税についての非課税所得以外の所得等から、医療費控除、障害者控除及び寡婦控除等の額を差し引いた額。収入額は、給与所得者を例に給与所得控除額を加えて表示した額。

国からもらえるお金の種類④特別障害給付金制度

特別障害給付金制度とは、障害となった病気や怪我の「初診日」の時点で国民年金に加入していなかったため障害基礎年金などを受給できない人に対して、救済する制度です。

特別障害給付金を受給できるのは、下記の要件に当てはまる人で、障害基礎年金や障害厚生年金、障害共済年金などが受給できない人です。

【特別障害給付金の受給対象者】

  • 2021年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生
  • 1986年3月以前に国民年金任意加入対象であった被用者などの配偶者であって、当時、任意加入していなかった期間内に初診日があり、現在、障害基礎年金の1級、2級相当の障害の状態にある者。(ただし、65歳に達する日の前日までに当該障害状態に該当し請求された者に限る)

出典:厚生労働省「特別障害給付金制度について

なお、給付金を受けるためには、厚生労働大臣の認定が必要になります。

支給額(2024年度適用額)は、障害1級の場合は月額55,350円、障害2級の場合は月額44,280円です。特別障害給付金の月額は、前年の消費者物価指数の変動に合わせて毎年度見直されます。

参考:日本年金機構「特別障害給付金制度

障害者利用できるその他の経済的な支援

上記で解説した障害年金や給付金、手当以外にも、障害者が利用できる経済的な支援制度があります。具体的には「障害者手帳」「自立支援医療」「障害者医療費助成制度」の3つについて、以下で詳しく解説します。

障害者手帳

障害者手帳とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3つの手帳の総称です。それぞれの手帳について、交付される対象は下記のように異なります。

  • 身体障害者手帳:身体機能に一定以上の障害があると認定された人に交付される手帳
  • 療育手帳:知的障害があると判定された人に交付される手帳
  • 精神障害者保健福祉手帳:一定程度の精神障害の状態にあると認定された人に交付される手帳

障害者手帳の交付を受けることで下記のような、経済的支援を受けることができます。

  • 障害者雇用枠で就職できる
  • 所得税や住民税などの納税において障害者控除を受けられる
  • 公共交通機関や公共施設の利用料金の割引を受けられる
  • 自立支援医療費制度などの医療費の助成を受けられる

上記以外でも、各自治体や民間事業者が障害者手帳を持つ人に向けて独自に提供するさまざまな支援サービスを受けることが可能です。

それぞれの障害者手帳の申請手続きについては、お住まいの市区町村の担当窓口に問い合わせましょう。

自立支援医療

自立支援医療とは、心身の障害を治療する際に必要な医療費の自己負担額を軽減するための公的な支援制度です。

自立支援医療には下記3種類があり、支援を受けられる対象者はそれぞれ下記の通りです。

  • 精神通院医療:統合失調症などの精神疾患のある者で、通院による継続的な精神医療が必要な者が対象
  • 更生医療:身体障害者手帳の交付を受けた者で、手術などの治療により確実に障害の除去・軽減が期待できる者が対象
  • 育成医療:身体に障害を有する18歳未満の児童で、手術などの治療により確実に障害の除去・軽減が期待できる者が対象

この自立支援医療制度により、医療費の自己負担額は軽くなりますが、どの程度軽くなるかは、医療保険の世帯ごとの所得水準によって異なります。

精神通院医療・更生医療では、一般的には医療費の自己負担が3割であるところ、1割に軽減されます。育成医療では、所得に応じて自己負担額が変わるものの月額0円~10,000円の自己負担ですみます。

医療費の自己負担軽減の具体的な内容は下記の通りです。

【自立支援医療制度による自己負担額】

精神通院医療・更生医療育成医療
生活保護世帯月額0円月額0円
市町村民税非課税などの低所得世帯月額2,500~5,000円月額2,500~5,000円
市町村民税235,000円未満(年収833万円未満)の中所得世帯総医療費の1割または高額療養費(医療保険)の自己負担限度額月額5,000~10,000円
市町村民税235,000円以上(年収約833万円以上)の世帯対象外対象外

出典:厚生労働省「自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み

障害者医療費助成制度

障害者医療費助成制度は、障害者の福祉向上を図るため、国や都道府県、市区町村などが医療費の自己負担額の一部または全額を助成する制度です。実施主体となる都道府県や市区町村によって障害者医療費助成制度の名称は異なります。

例えば、東京都の場合は、「心身障害者医療費助成制度(マル障)」が設けられています。マル障は、重度心身障害者の人が健康保険で受診した医療費の自己負担分(一部)を助成する制度です。

対象者は下記のような人です。

  • 身体障害者手帳1級・2級の人
  • 愛の手帳(療育手帳)1度・2度の人
  • 精神障害者保健福祉手帳1級の人

ただし、所得が一定の限度額を超える人や生活保護の対象者、65歳以上ではじめて障害者手帳を取得された人などは対象外となります。

医療保険の対象となる医療費、薬剤費などの自己負担が、住民税非課税者の場合はゼロ、住民税課税者の場合は1割の負担ですみます。

参考:東京都福祉局「心身障害者医療費助成制度(マル障)

国や自治体の支援も多い!状況に応じて利用を検討してみよう

障害を持つ人が国や自治体から受け取れるお金や支援について紹介しました。

中でも最も利用者が多いのは、「障害基礎年金」や「障害厚生年金」などの障害年金といえます。障害年金は障害手帳を持っていない方でも受給できるものです。受給できる金額も決して少なくないため、まずは障害年金を検討してみることがおすすめです。

また、障害年金と合わせて受け取れる障害年金生活者給付金や、障害年金が受け取れない場合に利用できる特別障害給付金制度も紹介しました。これ以外にも、障害手帳や自立支援医療など状況に応じて使える経済的支援もあります。

ぜひ、ご自身の状況に合わせて利用を検討してみてください。


監修者コメント

障害年金をはじめとした国からの給付制度はそれが必要な人への正しい権利ですので、必要な場合にはしっかりと検討して欲しいものです。ただ、障害年金では、特に初診日要件が大事です。これは精神科であれば、精神科の初診日にあたるときに年金未加入であると、障害年金の支給が受けられませんので、気をつけて欲しいのです。自分が障害年金受給の対象になりうるかは、年金事務所に尋ねるとわかりますので、問い合わせてみてください。その上で、いつの時点での障害年金診断書が必要になるか言われるはずですので、それを主治医にしっかり伝えてください。障害年金受給にあたっては、受給される本人も書かなければいけない内容が多く、頑張る必要があります。また、診断書希望を医師に伝えるときには、次の内容が伝わるとスムーズです。

①最初に精神科に罹った初診日、②これまでの通院先(どこにいつからいつの間)、③幼少期の発達の様子、④これまでの職歴、⑤通勤先があれば、一般雇用か否か、就業機期間、月給額、職務内容、配慮の有無、です。また、発達障害診断で申請を考える時には、幼少期エピソードを語れる保護者の名前が必要になることもあります。本人が十分に語れるのであれば大丈夫ですが。

障害年金の診断書は医師にとっても記載項目が多く、負担が強いので、是非早めに主治医に申し出てください。10年ほど前までは発達障害ではもらえないと言われた時期がありましたが、今では診断としては大丈夫ですので、主治医ともよく相談してくださいね。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。