就労支援施設とは?種類ごとの特徴と違いを解説

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障害者の就労支援を受けられる施設にはどのようなものがあるか疑問に思っている方も少なくないでしょう。そこで、この記事では、障害者福祉制度における就労支援施設とは何か、また、就労支援の種類と特徴について紹介します。

就労支援のうち、特に混同されやすい就労移行支援と就労継続支援について、違いを明確に解説します。就労支援に興味のある方はぜひ最後まで目を通してみて下さい。

就労支援施設とは?

就労支援施設とは、障害者総合支援法に基づき、就労を希望する障害者の支援を行う施設のことです。身体障害、精神障害、知的障害、難病などの方を対象とし、障害者手帳の有無にかかわらず医師や自治体の判断で就労が困難であると認められた場合に利用できます。

就労支援施設では、一般企業への就職や社会参加に向け、知識やスキルをアップさせるような訓練や講座を受講でき、就職活動や就職後のサポートなどを受けられます。また、一般企業での就労が難しい場合には、働く場所として就労支援施設を利用するといったこともできます。

就労支援の種類と特徴

障害者総合支援法に基づく就労支援には、次の3つがあります。

  • 就労移行支援
  • 就労継続支援
  • 就労定着支援

それぞれについて狙いや特徴が異なるため、以下で詳しく解説します。

就労移行支援

就労移行支援とは、一般企業などへの就労を希望し、かつ、就労可能と見込まれる65歳未満の障害者に対して、作業実習や訓練、職場探し、就職後の定着支援などを行うことです。

就労移行支援の支援対象者と支援内容は下記の通りです。

【支援対象者】

  • 企業などへの就労を希望する者
  • 技術を習得し在宅で就労・起業を希望する者
  • 原則18歳以上65歳未満

【支援内容】

  • 生産活動や職場体験などの活動の機会を提供
  • 就労に必要な知識・能力の向上のために必要な訓練の提供
  • 求職活動に関する相談や支援
  • 適性に応じた職場探し
  • 就職後の職場定着に向けてのサポート

就労移行支援の標準利用期間は24ヶ月です。ただし、市区町村に延長の必要性が認められれば、最長12ヶ月間の延長ができます。

就労継続支援

就労継続支援とは、一般企業などでの就労が困難と判断される障害者に、就労の場を提供する支援サービスです。就労継続支援サービスには、就労継続支援A型と就労継続支援B型とがあります。以下でそれぞれ詳しく解説します。

就労継続支援A型

就労継続支援A型とは、一般企業への就労が困難であるものの、一定の支援のある環境下で働ける65歳以下の障害者に対し、働く場を提供する支援サービスです。障害のある利用者と事業所とが雇用契約を結び、継続的な就労・生産活動の機会を得ることができます。

【支援対象者】

  • 就労移行支援事業を利用したものの企業の雇用に結びつかなかった者
  • 特別支援学校などを卒業して就職活動を行ったが、企業の雇用に結びつかなかった者
  • 離職したなど就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者

【支援内容】

  • 雇用契約に基づく就労を提供
  • 通所による就労の機会を提供
  • 一般就労に必要な知識、能力が高まった者について支援

就労継続支援A型では、雇用契約が結ばれるため、労働基準法に定められた時間以上の労働を強いられることもなく、また最低賃金法により最低賃金を下回ることもありません。社会保険にも加入できます。

就労継続支援A型の利用期間に制限は特にありません。

就労継続支援B型

就労継続支援B型とは、一般企業への就労が困難であり、さらに雇用契約を結ぶような就労も困難である障害者を対象にした支援サービスです。障害のある利用者と事務所との間で雇用契約は結ばず、作業負担の少ない短時間の就労機会を得ることができます。

【支援対象者】

  • 就労経験がある者で、年齢や体力の問題で一般企業での就労が困難な者
  • 就労移行支援事業を利用した結果、本事業の利用が適当と判断された者
  • 上記の2要件に該当しない者で50歳に達している者、または障害基礎年金1級受給者

【支援内容】

  • 雇用契約の締結はせずに、事業所内における就労や生産活動の機会を提供
  • 工賃の支払いを伴う就労や生産活動の機会の提供
  • 一般就労に向けた支援

就労継続支援B型の利用期間に制限は特にありません。

就労定着支援

就労定着支援とは、就労移行支援などを利用して一般企業に就職した障害者が、その後も継続して就労できるように、相談や助言などを行う支援サービスのことです。

一般就労した障害者に、就労に伴って生活リズムや体調の管理、給与の管理ができないなどの問題が生じていれば、課題解決に向けて支援を行ないます。

【支援対象者】

  • 生活介護や自立訓練、就労移行支援、就労継続支援を利用して一般就労に移行した障害者で、就労に伴う環境変化により生活面の課題が生じている者

【支援内容】

  • 企業・自宅などへの訪問、あるいは障害者の来所を通じて、就労の継続を図るために必要な助言・指導を行う
  • 障害者の就労の継続を図るために、事業所の事業主や医療機関その他関係者との連絡調整

就労定着支援の利用期間は最長3年間です。1年ごとに支援期間を更新するかどうか検討されます。

就労移行支援と就労継続支援の違いとは?

就労支援の中でも、就労移行支援と就労継続支援については混同されやすく、違いがよくわからないといわれることも少なくありません。以下では就労移行支援と就労継続支援の違いについて、解説していきます。

対象者

対象者については、就労移行支援の方が「一般企業などへの就労を希望していて、かつ、企業への就労が見込める者」であるのに対し、就労継続支援は「一般企業への就労が困難な人」を対象としている点で異なります。

また年齢についても、就労移行支援は65歳未満という制限があるのに対して、就労継続支援は雇用契約を締結する支援を行うA型では65歳未満という制限があるものの、雇用契約を締結しないB型には年齢制限はありません。

利用の目的

就労移行支援は、一般企業への就労を目的とした支援であるのに対して、就労継続支援は、就労や生産活動の機会を提供することを目的とした支援である点で異なります。

就労移行支援での就労体験や知識やスキルの向上のための訓練は、あくまで一般企業に就職することを前提とした支援です。就労継続支援は、働く場所そのものを提供します。

利用期間

利用期間については、就労移行支援には利用期間に制限があるのに対し、就労継続支援には制限がない点で異なります。

就労移行支援の利用期間は原則として最長24ヶ月です。24ヶ月を超えて利用したい場合は、市区町村に申請する必要があります。申請した上で延長の必要性が認められた場合にのみ、さらに最長12ヶ月間の利用が可能です。

工賃の有無

就労移行支援では基本的に工賃や給与の支払いはありません。一方の就労継続支援には工賃の支払いがあります。

就労継続支援にはA型とB型とがあり、雇用契約を締結して行う就労継続支援A型では、労働の対価として給与が支払われます。就労継続支援B型では、雇用契約を締結しないものの、労働時間などに応じて相応の工賃が支払われます。

就労支援について興味のある方はKaienにご相談ください

就労支援施設について紹介しました。就労支援には、就労移行支援と就労継続支援、就労定着支援があります。一般企業などへの就労を希望する場合は就労移行支援、一般企業への就労が困難なものの就労を希望する人は就労継続支援を利用することとなります。

就労支援について興味のある方、あるいは復職や再就職に悩んでいるといった場合には、Kaienにご相談ください。

Kaienでは、就労移行支援、自立訓練(生活訓練)、人材紹介サービスなどを行っています。発達障害や精神障害に理解ある企業200社以上と連携し、他社にないKaien独自の求人の紹介をしています。

就労移行支援について豊富な経験と実績に基づいたサポートが可能で、就職後も就労定着支援(3年半)や定着支援SNSなどで、安定就労をしっかりと支援いたします。

ご相談やご見学は、オンラインでも事務所でも、ご家族だけでもご参加いただけますので、お気軽にお問合せください。


監修者コメント

就労支援サービスは様々あり、利用する方からすれば選択肢が複数あるわけですが、それぞれが法律を根拠に設立されています。そしてとりわけ発達障害支援という観点からは、障害者総合支援法に基づく就労移行支援、就労継続支援A型、B型、そして就労定着支援は、まさに支援の中核と言える存在になっていると言えるのではないでしょうか。社会で独立した存在として生活を営むためには、やはり就労をどうするか、は欠かせない課題であり、就労支援サービスは活用したい社会資源ですね。外来で診療にあたる医師の立場からは、当事者の生活の支えとして、医療が直接役立てる部分というのは案外少ないものです。就労支援サービス、特に就労移行支援につなげることをまずは目標とすることも少なくありません。就労移行支援事業所も、都市部には本当に増えてますね。Kaienさんを始めとして、特徴ある事業所がありますので、これから利用したいという方は、幾つか見学をした上で、自分に合った事業所を選択されると良いと思います。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。