一般就労に困りごとがあり、就労支援の利用を考えている方にとって、就労継続支援A型とはどのようなサービスなのか、自分に適しているのか迷うこともあるでしょう。
本記事では、就労継続支援A型の対象者や仕事内容、給料などを詳しく解説します。就労継続支援B型との違いや、A型事業所を利用するうえでの注意点、就労継続支援以外の就労支援も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
就労継続支援A型とは
就労継続支援A型とは、一般企業での就労が困難な方に、働く機会の提供や、就労に必要な知識・能力の向上のための訓練等を行う福祉支援サービスです。事業所と雇用契約を結び、サポートを受けながら一般就労と大きく変わらない内容の仕事を行います。
雇用契約に基づいて就労するため給与は最低賃金が保障され、決まった勤務日時のもとで安定して働くことが可能です。就労継続支援A型を利用した後に、一般企業へ就職する方もいます。
就労継続支援A型を利用できるのはどんな人?
就労継続支援A型の対象者は、何らかの障害や病気などにより一般就労が困難なものの、適切な支援を受けられる環境があれば雇用契約を結び働ける方です。障害者総合支援法では、対象者を以下のように定めています。
- 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった方
- 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった方
- 就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない方
就労継続支援A型の対象年齢は原則18歳以上65歳未満ですが、2018年からは一定の要件を満たすことで65歳以上の利用も可能になりました。
就労継続支援A型の主な仕事内容
就労継続支援A型で取り組む仕事は、事務作業、接客・調理、清掃、部品加工など、一般就労の仕事内容と大きく変わりません。例として、以下のような仕事内容が挙げられます。
- パソコンを使用したデータ入力
- Webサイトのデザイン制作
- 飲食店での調理・ホールスタッフ
- ホテルなどの清掃
- 車部品などの加工 など
なお、就労継続支援A型で行う仕事内容は事業所によって異なります。自身が不得意な仕事を行う事業所を選ぶと雇用の継続が困難になる可能性が高いため、事前に事業所の仕事内容や求められる能力などを確認しておきましょう。
就労継続支援A型の平均給与
就労継続支援A型は最低賃金が保障され、決まった勤務日時で就労するため比較的安定した収入を得ることができます。厚生労働省「令和5年度工賃(賃金)の実績について」によると、就労継続支援A型の平均給与は、月額8万6,752円です。2022年度の平均給与は月額8万3,551円だったため、前年と比較すると平均給与は103.8%増加しています。
年ごとの推移で見ても、就労継続支援A型の平均給与は2014年度の月額6万6,412円から年々右肩上がりの増加傾向が見られます。
就労継続支援A型の利用方法と流れ
就労継続支援A型を利用するには、事業所選びや利用申請などの流れに沿って進めていく必要があります。以下に、利用までの基本的な流れをまとめました。
- 事業所探し・見学・面談
- 事業所による選考
- 市区町村の障害福祉窓口で利用申請
- サービス等利用計画案の提出
- 障害福祉サービス受給者証の受け取り
- 雇用契約の締結・就労開始
なお、事業所を探す際は、働くことが可能かどうかを主治医と相談してから決めましょう。事業所が決まり、受給者証を受け取った後に雇用契約を結び就労開始となります。受給者証の受け取りには、窓口での申請から2ヶ月程度の時間を要する場合が多いようです。事業所の選考を受ける前に申請を済ませることも可能なため、スムーズに利用開始できるよう事業所と相談しながら進めると良いでしょう。
就労継続支援A型の利用期間
就労継続支援A型の利用期間について特に制限は設けられていません。ただし、就労継続支援A型は事業所と雇用契約を結ぶため、雇用契約に期限があり、その後の契約更新がない場合は利用期間がその期限内に限られることがあります。
就労継続支援A型の利用料金
就労継続支援A型は障害福祉サービスを利用して働くため、利用料は自己負担となります。ただし、生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯はほとんどが無料で利用可能です。それ以外の世帯においては、前年の世帯収入に応じて月額9,300円、あるいは3万7,200円の自己負担額の上限で利用できます。
就労継続支援B型との違い
就労継続支援B型は、一般企業での就労が困難な方を対象に、働く機会の提供や、就労に必要な知識の向上などを目指し訓練を行う福祉支援サービスです。A型と大きく異なる点は、雇用契約を結んで働くことが困難な方を対象としていることが挙げられます。その他の違いも含め、以下の表にまとめました。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
対象者 | 就労移行支援を利用したものの企業雇用に結びつかなかった人特別支援学校を卒業して就職活動をしたものの企業雇用に結びつかなかった人 就労経験はあるが、現に雇用状態にない人 | 就労経験はあるが年齢や体力の面で企業雇用が困難な人50歳に達した人または障害基礎年金1級受給者上記に該当しない人で、就労移行支援事業者などによるアセスメントにより、就労面の課題が把握されている人 |
利用者数(2023年12月時点) | 約8.9万人 | 約34.8万人 |
雇用契約 | あり | なし |
仕事内容 | パソコンによるデータ入力など事務作業飲食店の調理・ホールスタッフ車部品などの加工WEBデザイン・制作ホテルの清掃 | 部品加工製品刺繍など手工芸農作業パンやクッキーなどの製菓作業衣類のクリーニング |
賃金・工賃(2023年度の月額平均) | 8万6,752円(最低賃金の保障あり) | 2万3,053円(最低賃金の保障なし) |
利用期間 | 制限なし(※ただし雇用期間に期限がある場合あり) | 制限なし |
利用料 | 生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯は無料、他は月額上限9,300円あるいは3万7,200円 | |
一般就労への移行率(2022年度実績) | 26.2% | 10.7% |
なお、今後は就労継続支援サービスの利用にあたり、利用者の適性や希望に合ったサービスを選択できるよう支援を行う「就労選択支援」が導入されます。就労継続支援B型は2025年10月から、A型は2027年4月から原則利用が必須となりますので留意しましょう。
就労継続支援A型の利用にデメリットはある?
就労継続支援A型は、雇用契約に基づいて就労でき、最低賃金が保障され安定して働けるなどのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 報酬改定により事業所閉所や解雇の可能性がある
- 利用者の多様化や地域性による影響
- 一定の体力や能力が必要
それぞれ詳しく見ていきましょう。
報酬改定により事業所閉所や解雇の可能性
就労継続支援など障害福祉の事業所は3年に1度報酬(給付金)の改定が行われますが、2024年4月の報酬改定では条件を満たしていない就労継続支援A型事業所の報酬を大幅に引き下げました。その影響により事業所閉所が相次いでおり、就労継続支援A型を利用したくても近くの事業所が閉じてしまったり、雇用契約を結んで就労しても解雇となったりする可能性が高まっています。
就労継続支援A型の大幅な報酬改定が起きた背景には、国からの給付金による利益を重視するA型事業所の増加が問題視されてきたことがあります。報酬改定により、収益を上げられないA型事業所は給付金が大幅に引き下げられることとなったため、A型事業所の閉所が続く場合は利用が困難になる可能性があるでしょう。
利用者の多様化や地域性による影響
就労継続支援A型の利用者は多様化しており、利用者の傾向や立地条件なども地域によって異なっています。例えば、さまざまな障害のある方が利用している、障害の重度が異なったり、重複していたりする利用者がいる、利用者の高齢化など、さまざまなニーズへの対応が求められ、働く場の提供が必要となるのです。
そのため、組織としての方向性が曖昧なA型事業所を利用することになる可能性があり、適切な支援を受けながらの就労が難しい場合があります。
一定の体力や能力が必要
就労継続支援A型は雇用契約を結び、決まった勤務日時で働きます。自身の体調や体力などに合わせ、無理のない範囲で短時間勤務となる場合が多いですが、継続して事業所に通い、決められた時間・期間を就労する一定の体力や、仕事内容に応じた能力が必要です。決まった勤務日時で継続的に通うことが困難な方や、仕事に応じた能力を満たしていない場合は利用が難しいでしょう。
就労継続支援A型の給与だけでは生活できないと感じたら
就労継続支援A型は給与が得られるものの、それだけで生活するのは難しい方も多いでしょう。事業所での収入のみでは経済的に不安がある場合は、対処方法として経済支援制度を頼る他、就労スキルを身につけ就労の選択肢を増やす方法もあります。
以下で詳しく見ていきましょう。
経済支援制度を頼る
就労継続支援A型での給与のみでは生活が難しい場合は、国が行っている経済支援制度を頼ることを検討しましょう。障害のある方が利用できる経済支援制度には、以下のような種類があります。
- 特別障害者手当
- 障害年金
- 生活保護制度
- 障害年金生活者支援給付金
- 特別障害給付金制度
各支援制度の詳細や利用方法については以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
特別障害者手当とは?対象者と支給額、申請方法から受給までの流れを解説
就労スキルを身につける
就労に必要なスキルを身につけ、就労継続支援から一般企業への就労を目指すのも一つの選択肢です。就労継続支援を利用した後、一般就労を目指す場合には、就労移行支援を利用すると良いでしょう。
職業訓練をはじめ、就労スキル向上を目指すカリキュラムの受講ができ、適切な支援を受けながら一般就労に向け準備することができます。生活習慣や身の回りの生活基盤を整えたい場合には、自立訓練(生活訓練)を利用する方法もあります。
Kaienの就労移行支援
Kaienでは、発達障害*などの障害がある方を対象に就労移行支援を行っています。利用者一人ひとりに担当者がつき、就活支援から定着支援まで全力でサポート。適職診断や実践型プログラムなど、就労スキルを高め資格取得を目指す講座なども用意しています。
医師と連携したカウンセリングを受けつつ、モチベーションや生活リズムを管理しながら進めることが可能です。職場探しでは、Kaien独自の求人も紹介でき、面接練習や書類作成、面接の同行も行っています。
一般就労を検討したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
Kaienの自立訓練(生活訓練)
働きたいけれど、生活リズムや自己管理、コミュニケーションなどに不安がある方、自分に合った進路が見つからない方などは、自立訓練(生活訓練)も一つの選択肢です。Kaienの自立訓練(生活訓練)では、日常生活や働き方などさまざまな不安を抱える方に向け、さまざまな角度から自立のサポートを行っています。100以上のプログラムが体験でき、感情や睡眠のコントロール、コミュニケーションスキルの習得、自分に合った進路探し、お金やスケジュール、物の管理などを学ぶことが可能です。
就労継続支援A型を含む就労の選択肢を知ろう
就労継続支援A型は、事業所と雇用契約を結んで就労の機会を得ることができます。最低賃金が保障されるため安定して働くことができ、工賃が支払われる就労継続支援B型よりも高い賃金を得られます。ただし、就労継続支援A型は、現時点で一般就労が難しい場合の選択肢の一つのため、企業への就職を目指したい場合には、就労移行支援を利用する方法がおすすめです。就労継続支援A型・B型、就労移行支援など、受けられる支援の選択肢を知り、自身に合った就労支援を選びましょう。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。