休職するにはどうすれば良い?休職の流れや注意点、利用できるサービスも紹介

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「体調が良くなく、精神的にも不安定で仕事が続けられそうにない」といったときは、退職する前に休職して体調を立て直してみるのも選択肢の1つです。

「休職」と聞くとハードルが高いように感じるかもしれませんが、休職するまでの流れを知っておけば休職制度を活用しやすいでしょう。

この記事では、休職までの流れや休職する際の注意点のほか、休職中に利用できるサービスもご紹介します。心身の調子を崩して仕事に支障が出ている人は参考にしてみてください。

休職するにはどうすれば良い?基本の流れ

休職と聞くとハードルが高そうに感じる人もいるでしょう。そのため、心身の調子を崩すとすぐに退職を考えてしまいがちです。しかし、退職するとなると経済的な心配や再就職への不安なども出てくるので、すぐに決断を下すべきではありません。

退職を考える前に「休職」して仕事から距離を置き、心と体を回復させるのは良い方法です。

まず休職する際の基本的な流れを解説します。

精神科や心療内科を受診する

休職したいと思ったら、まずは精神科や心療内科を受診しましょう。医師に、メンタルの不調について相談してください。その際、休職の必要性についても医師に尋ねてみましょう。

休職する際は、医師の診断書が必要になります。医師が必要と認めなければ、休職はできません。

このとき大切なのは、医師に自分の状態を正直に伝えることです。いつから・どのような症状が・どれくらいの頻度で現れているかを伝えましょう。何から伝えれば良いのか迷ってしまうときは、自分の体調についてメモを作っていくとスムーズに伝えられます。

ストレスにより心身に不調が出ると、次のような症状が現れます。

  • 食欲が増す・なくなる
  • 眠れなくなる
  • わけもなく泣きたくなる
  • イライラしやすくなる
  • 強い不安に襲われる
  • 頭痛
  • 腹痛
  • めまい
  • 体重が急に増える・減る
  • 疲れやすくなる
  • 自分を責めてしまう・無価値だと思う
  • 気分が落ち込む
  • 趣味が楽しめなくなる
  • 集中力が落ちる

現れる症状は人によって異なるので一概に言えませんが、不調が2週間以上続くなら医師に相談することをおすすめします。

街のクリニックや病院が受診しづらい場合は、勤め先の産業医に相談するのも良いでしょう。従業員が50人以上の事業所には必ず産業医が配置されています。

職場の担当者や上司へ相談する

医師から休職の必要性を指摘されたら、職場の担当者や上司に相談しましょう。心身の不調が仕事に支障をきたしていることを伝え、医師に休職するよう勧められた旨を伝えてください。勤務先に相談するのが精神的に辛い場合は、無理に相談せずに先に家族に話をするのも良いでしょう。

まずは直属の上司に相談するのが望ましいですが、相談しづらい場合は人事部や総務部の担当部署に相談してください。メンタルヘルスについて相談できる部署がわからない場合は、メンタルの不調は誰に(どの部署に)相談すれば良いか問い合わせましょう。

上司や担当部署などに相談したら、必ず休職しなければならないわけではありません。部署移動や働き方の調整などで解決できる可能性もあります。

休職するにせよ、環境や働き方を調整するにせよ、一度は勤務先の担当者と話し合う必要があります。

必要な書類を用意し職場へ提出する

休職すると決まったら、診断書や休職届といった必要な書類を準備しましょう。基本的に、診断書と休職届を提出すれば休職できる事業所がほとんどですが、就業規則でその他の書類が必要なケースもあります。事前に必要な書類と提出先を就業規則で確認しておくとスムーズです。

診断書は、医師に依頼して書いてもらう書類です。診断書には、症状や休職が必要な理由、休職を勧める期間などが記載されています。医師に作成を依頼する際は「休職したいので診断書を書いてほしい」と伝えてください。

休職届は、事業所によっては「休職願」や「休職申請書」という場合もあります。決まった書式があるなら、それに従って作成しましょう。

休職届には、一般的に次の事柄を記載します。

  • 申請年月日
  • 提出先(部署名や役職名)
  • 休職者の所属部署
  • 休職者の氏名・印鑑欄
  • 休職理由
  • 休職希望期間
  • 医師の診断書などの添付書類の有無
  • 休職中の連絡先
  • 備考欄

このほか、傷病手当金の申請書類が必要になるケースもあります。その場合は加入している公的医療保険の窓口から申請書を取り寄せて記入し、提出してください。

休職に必要な書類の提出先は、直属の上司としている事業所が多いとされています。しかし、メンタルの調子を崩す原因になったのが直属の上司というケースもあるため、そのような場合は提出前に人事部や総務部に相談しましょう。

休職する前に確認しておきたい注意点4選

休職すると決まったら、休職前に次の4つのことを確認しておきましょう。ひとつずつ解説します。

  • 休職制度の有無
  • 休職中の連絡手段や頻度
  • 業務の引き継ぎ
  • 傷病手当金や休職手当の申請

休職制度の有無

勤務先に休職について相談する前に、就業規則で休職制度の有無を確認しておきましょう。

休職制度は、労働基準法や労働契約法といった法律で義務付けられていない制度です。休職制度は法律で義務付けられている制度ではないため、休職制度を設けていない事業所に対する罰則などはありません。そのため、事業所によっては休職制度がない場合もあります。

何らかの理由で長期間働けないのは労働契約の不履行に当たるため、解雇の理由になり得ます。しかし、いきなり解雇となるのは、事業所にとっても働く人にとっても失うものが大きいのは想像に難くありません。そこで、長期間働けなくなったときに一定の療養期間を与え、解雇を猶予する制度として休職制度があります。

休職するにあたっては、事前に勤め先に休職制度があるか確認しておきましょう。制度がない場合、休職を希望していても休職できないケースがあります。

職場との休職中の連絡手段や頻度

休職中、定期的な面談や体調の報告を義務付けている事業所もあります。その場合の連絡手段を確認しておきましょう。

電話やメール、オンライン会議システムなどどの手段で連絡を取るのか、担当者や上司と休職する前に話し合っておいてください。

このとき、連絡を取る頻度についても相談しておきましょう。

業務の引き継ぎ

休職する際は、突然休職するのではなく、前もって同じ部署の人などに休職期間を知らせ、業務の引継ぎを行いましょう。

休職する場合、病院を受診した次の日から休職するケースは稀です。多くの場合「来月から」や「今月〇日から」と日程を前もって決めてから開始するケースがほとんどです。

休職が決まったら、できる限り同僚や部下に仕事の引継ぎを行なっておきましょう。きちんと業務を引き継いでおけば、仕事の心配をせず療養に専念できるはずです。

傷病手当金や休職手当の申請

休職する前に、傷病手当金や休職手当など、休職中に利用できる給付金や支援制度について利用できるか相談しておきましょう。

休業中は給与が支払われないケースがほとんどです。そのため、経済的に困窮してしまう人もいます。経済的な不安があると療養に専念できないので、少しでも不安を軽減するために利用できる制度は積極的に利用しましょう。

休職中に利用できる制度には、次のようなものがあります。

  • 企業の給与補償制度
  • 所得補償保険
  • 傷病手当金

企業の給与補償制度とは、休職中の給与を補償する制度です。勤め先に給与補償制度がある場合に利用できます。制度が利用できる場合は就業規則に記載されているので、確認してみましょう。

所得補償保険は、病気やケガで従業員が長期間働けなくなったときに備えて事業所が加入する損保会社の保険です。補償額や期間、金額などは契約内容により異なるため、休職前に人事部や総務部の担当者に問い合わせておきましょう。

傷病手当金は、病気やケガで長期間働けなくなったときに受け取れる手当金です。勤め先の担当部署や加入する健康保険組合から申請書を取り寄せて申請します。

休職前に傷病手当金や休職手当の申請準備をしておくと、休職後スムーズに手当金が受け取れるでしょう。

このほかにも、精神科を受診した際の医療費負担を軽減する「自立支援医療制度」や、高額な医療費の負担を軽減する「高額療養費制度」、一時的な生活費を貸し付ける「生活福祉資金貸付制度」などもあります。

参考:国立 精神・神経医療研究センター「休職中に活用できる社会保障制度のリーフレット」

参考:自立支援医療制度の概要 |厚生労働省

参考:高額療養費制度を利用される皆さまへ |厚生労働省

参考:生活福祉資金貸付制度 |厚生労働省

休職した後に復職するには?復職の判断時期や復職までの流れ

休職する際には「復職できるだろうか」と復職について不安を感じている人もいるでしょう。休職中は、仕事のことは気にせず療養に専念するのが大切です。とはいっても、不安を感じるのも無理はありません。

ここからは、一般的な休職期間や、休職してから復職するまでの流れを解説します。

一般的な休職期間はどれくらい?

一般的な休職期間は、個人差があるため一概に「〇ヶ月」とは言えません。1ヶ月で体調が回復する人もいれば、3ヶ月かかる人もいます。

適応障害の場合、一般的には6ヶ月以内に体調が落ち着いてくるといわれていますが、人によって回復の過程は異なり、途中で症状が悪化して6ヶ月以上かかる人もいます。

復職について考え始めると焦る気持ちが強くなるものです。しかし焦りは回復を妨げてしまいます。ひとまず休職期間の長さや復職について考えるのはストップして、ゆっくり自分のペースで調子を取り戻していきましょう。

復職の判断時期は自己判断しない

復職のタイミングは自己判断してはいけません。主治医やカウンセラー、リワークなどの専門家や家族の意見を聞いて、時間をかけて判断しましょう。

体調が落ち着いてくると「このまま休職していてはいけない」「早く復職しなければ」と焦りが出始めます。しかし、心と体はまだ本調子ではないので、このタイミングで焦って復職すると、短期間で再び体調を崩してしまうケースが少なくありません。

自分ではもう復職できると思っていても、医師はもう少し休養が必要だと考えている場合もあります。

「もう大丈夫」と思っても、急いで復職を決めず、周りの人の客観的な意見を踏まえて判断しましょう。

休職してから復職するまでの流れ

しっかり療養した結果、体調が安定してきて医師から復職の許可も下りたら、次の流れで復職に向けて準備をしていきましょう。

  1. 医師に復職できるかどうか相談する
  2. 上司に復職したい旨を伝える
  3. 勤務先と共に復職に向けた計画を立てる
  4. 医師に復職を許可する旨を記した診断書を依頼する
  5. 復職願や生活記録表といった必要書類を準備する
  6. 必要書類を担当部署に提出する
  7. 復職

復職に必要な書類は事業所ごとに異なるため、面談のタイミングなどで確認しておきましょう。

メンタルの不調で休職した経験のある方が利用できる制度やサービス

最後に、メンタルの不調で休職した経験がある人が利用できる制度やサービスをご紹介します。

休職中から利用できるもの、休職してそのまま退職した後に利用できるものがありますので、自分に合った制度やサービスを利用してみましょう。

リワーク

リワークは、うつ病や適応障害などで体調を崩して休職した人が復職を目指す人が利用できる制度です。さまざまな講座や作業を通じて、自分が抱える課題の解決や再発防止の方法を身につけます。

リワークは、実施する場所によって4つのタイプに分けられます。

  • 医療リワーク(医療機関で実施する)
  • 職リハリワーク(地域障害者職業センターで実施する)
  • 職場リワーク(勤め先で実施する)
  • 民間系リワーク(民間企業または団体で実施する)

リワークは、リモートなどではなく施設に通所して受けるのが一般的なため、毎日通って参加することができれば通勤して働くための自信にもなるでしょう。

ほかにも生活リズムが整う、症状の再発や悪化を防ぐ手法が身に付くといったメリットがあります。

ハローワーク

休職して復職せずに退職した場合、ハローワークで障害がある人専用の窓口が利用できます。専用窓口には、メンタルヘルスの専門知識を持ったスタッフもいるため、一般の窓口よりも手厚いサポートを受けられるのが魅力です。

専用窓口で受けられる支援には次のようなものがあります。

  • 障害者専用求人の紹介
  • 応募書類の作成支援
  • 面接指導
  • 職場での実習や個別の求人開拓
  • 定着支援

ハローワークの専用窓口を利用するには、障害者手帳と医師の診断書が必要です。

ハローワークの専用窓口についてはこちらの記事でも詳しく紹介していますので、併せてごらんください。

ハローワークの障害者専用窓口とは?相談できる内容や利用の流れを解説

参考:障害者に関する窓口|厚生労働省

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害がある人が家族や周囲の人の手助けを必要とせずに、ひとりで健やかに暮らすためのスキルを身につけるための訓練です。障害者総合支援法に基づく福祉サービスのひとつに位置づけられています。

自立訓練(生活訓練)では、主に次のようなプログラムを行います。

  • 生活リズムを整える(規則正しい生活習慣を身につける)
  • 金銭管理の方法を学ぶ
  • 自分の障害や病気について理解を深める
  • 利用できる制度やサービスについて学ぶ

自立訓練(生活訓練)サービスのメリットは、自分の力で日常生活を送るための知識やスキルが身に付くことです。家族以外の人とのつながりも持てます。

自立訓練(生活訓練)については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、興味を持たれた方はぜひご覧ください。

自立訓練(生活訓練)とは?就労移行支援との違いや併用についても解説

就労移行支援

就労移行支援は、就職を目指す人のための福祉サービスです。自立訓練(生活訓練)が自分ひとりで暮らせるスキルを身につけるための支援であるのに対し、就労移行支援は就職するための支援を中心に実施します。

就労移行支援で実施されるカリキュラムには次のような内容があります。

  • ビジネススキルの習得
  • 障害・病気に関する知識の習得
  • 面接練習
  • 書類作成
  • キャリアプランニング
  • 実践型職業訓練

就労移行支援は、就職するまでだけでなく、就職してからも支援を受けられるのが特徴です。就職先で働き続けるために、専門のスタッフによる定着支援が受けられます。

Kaienでは、発達障害や精神障害に理解ある企業200社以上と連携して独自の求人を紹介するほか、これまでに培ったノウハウで一人ひとりに合ったサポートを実施しています。再就職を目指す方は一度ご相談ください。

休職するには職場への相談&病院の受診が必要

メンタルの調子を崩すと「退職したほうが良いのではないか」と思う人は多いでしょう。しかしメンタルの調子が悪く冷静な判断ができない状態で、退職といった大きな決断をするのはおすすめしません。体調が落ち着くまで一度休職して、心と体を休ませましょう。

休職する際は、事前に上司や勤め先の担当部署、医師に相談することが大切です。医師から休職して療養が必要と言われたら、必要な書類を準備して手続きを進めてください。

メンタルの不調で休職後に復職する際は、いきなり復職するのではなく、リワークや生活訓練の利用をお勧めします。

Kaienでは、自立した生活を送るための自立訓練(生活訓練)やリワークを提供しています。障害者手帳をお持ちでなくても利用可能です。

見学や個別相談会も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。