診断書は、障害者手帳など福祉制度や会社の休職制度を利用する際に必要な書類です。診断書は医療機関にて医師の診断をもって発行されますが、費用は医療機関や診断書の種類によって異なります。
本記事では、診断書の費用や求められるタイミング、診断書を発行してもらう流れや注意点などについて解説します。診断書に保険が適用されるかなど、作成を依頼する際に気になる点に説明しますので、診断書の発行を検討している場合にはぜひご覧ください。
診断書とは?
診断書とは、医師が患者の病名や症状を記載した書類のことです。
診断書は、医療機関にて医師が診断を行ったあとに発行します。会社への病気や症状の証明以外にも、保険金の請求や裁判の証拠書類として使われる場合もあり、用途によって記載する項目や内容が変わります。
診断書が必要なタイミング
診断書を求められる主なタイミングは、以下の通りです。
- 障害や病気などを理由に休職・復職するとき
- 障害や病気などを理由に業務の調整(合理的配慮)を行うとき
- 福祉制度や年金制度を利用するとき
会社の休職・復職に関する手続きでは、診断書に記載されている休養期間を参考に、会社と相談して期間を決定します。また、障害や病気の症状によって現在の職場環境に何らかの困難がある場合、正しく状況を把握して働きやすい状況を作るために「合理的配慮」を行う際にも、診断書が必要です。
さらに、以下のような福祉制度や年金制度を利用する際にも、診断書の提出が求められます。
- 自立支援医療
- 障害者手帳
- 障害年金
診断書の費用は医療機関によって異なる
診断書の発行には費用がかかります。診断書の費用は、一律で決められているわけではなく、医療機関が独自に決定するため、医療機関によって金額は異なります。また、診断書の利用目的により記載する項目や内容が違うため、用途に合わせて金額が変わる場合もあります。
さらに、同じ地域の医療機関を参考に費用を決めるケースが多く、地域により金額に差が見られる可能性があります。実際にいくらかかるのか、具体的な金額については事前に医療機関へ問い合わせておくと安心でしょう。
診断書の費用相場
診断書の費用は、医療機関や診断書の種類によって異なります。大抵の場合、複雑な記載内容のものほど費用が高くなり、4,000円~15,000円程度かかると考えてよいでしょう。
10年以上前のデータになりますが、実態調査結果は以下をご覧ください。
産労総合研究所「2012年医療文書作成業務・文書料金実態調査」
実際の金額については、医療機関や医師に直接確認しましょう。
診断書の費用に関する注意点
診断書を発行する費用について、注意すべき点があるのでここで把握しておきましょう。
健康保険が適用されない
診断書の発行には医療保険が適用されないため、全額自己負担です。健康保険は、加入者の病気や怪我の治療負担を軽減することを目的としており、診断書の作成は治療に直接関係ないとみなされます。
また、厚生労働省でも「証明書代は公的保険給付と関係ない文書発行費用」であると公表しており、診断書は保険の適用外です。
医療費控除の対象外となる
診断書を発行する費用は、医療費控除の対象とならない点にも注意が必要です。医療費控除では、1年間に支払った医療費が一定金額以上の場合、所得金額から差し引かれることで、納税額を抑えられます。
医療費控除の対象となるのは、医療機関での診療や治療、病気の治療を目的とする医薬品の代金などの医療費です。病気の治療とは直接関係のない診断書の発行は医療費とみなされず、医療費控除の対象外とされています。
診断書の記載内容と作成期間
診断書を初めて依頼する際には、どのような内容が書かれるのか気になる人もいるでしょう。ここでは、診断書に記載される項目や内容、作成にかかる期間の目安について解説します。
記載内容
診断書の記載内容は、利用目的によって異なりますが、一般的な記載項目は以下の通りです。
- 患者情報(氏名・住所・生年月日・年齢など)
- 病名
- 発症日・時期
- 受診日
- 治療内容
- 治療・療養が必要な期間
- 症状の経過
- 検査結果
- 医師の氏名
- 医療機関名
医療機関によって様式が異なる場合があり、利用目的に応じて簡易的な様式または複雑な様式が用いられます。また、必要がないと判断された場合には、上記項目の一部が省略される場合もあります。
作成期間
診断書の種類や医療機関によって作成にかかる時間は異なりますが、基本的には2週間前後で発行されます。場合によっては、診断の当日に発行してもらえますが、医師の都合などにより2週間以上かかる可能性もあります。
また、診断書が作成された頃に受け取りに行くのが一般的です。ただ、郵送が可能な場合もあるので、医療機関での受け取りが難しい場合などは事前に確認しておきましょう。なお、郵送の場合は送料は原則として自己負担です。
診断書をもらうまでの流れ
診断書の作成を依頼する前に、発行までの流れを把握しておくとスムーズです。診断書を受け取るまでのおおまかな手順は、以下の通りです。
- 医療機関にて医師の診察を受ける
- 医師により診断が出て、診断書の発行を依頼する
- 診断書を受け取る(医療機関の窓口または郵送)
医療機関の診察では、症状について詳しく質問されます。症状が出始めた時期や相談内容などを、具体的に答えられるように準備しておきましょう。
医療機関によっては専用の窓口にて診断書の作成を申請します。利用目的によって様式や記載項目が変わるため、あらかじめ伝えておくとスムーズです。また、診断書の発行までに日数を要する場合がありますが、使う時期が決まっている場合は依頼時に伝えておきましょう。
診断書の発行に関する注意点
診断書は、医師の診断が出て、患者が作成を依頼すれば発行されます。ただし、診断書が発行されないケースもあるため注意が必要です。
また、記載内容が希望とは異なる場合もあります。さらに、診断書には有効期限が付いているため、期限が切れる前に正しく使用できるよう準備しておくことも大切です。ここでは、診断書の発行に関する注意点について解説します。
診断書がもらえない場合もある
診断書は、医療機関で依頼すれば必ず作成してもらえるわけではありません。診断書の発行について、医師法では患者から要望があった場合、正当な理由がないと拒否できないことが定められています。
ただし、最終的に診断書の必要性を判断するのは医師であり、診断によっては発行してもらえないケースも考えられます。例えば、担当医師の専門外の症状であり、適切な診断ができない場合や、診察の際に症状が確認できない場合などです。
また、診断書はさまざまな利用目的で用いられる公的書類であり、発行する医師には社会的な責任が伴います。そのため、犯罪利用の可能性などリスクが高いと判断された場合には、発行が拒否されることがあります。
診断書には有効期限がある
診断書には有効期限が付いており、一般的には発行から3ヶ月とされています。有効期限を過ぎてしまうと証明書としての効力がなくなってしまい、会社の休職申請などに使うことはできません。
発行から時間が経過すると病状が変化する可能性があり、公的書類としての診断書の信頼性が失われてしまうからです。期限が切れた場合、再度発行を依頼する必要があるため、期限内に使用するようにしましょう。
発行のタイミングは医療機関によって異なる
診断書が発行されるタイミングは、医療機関や診断書の種類によって異なります。一般的な日数としては、2週間前後が目安です。ただ、すぐにでも休職する必要があると判断されるケースなど、緊急性が高い場合には初診で受け取れる可能性があります。
一方で、発行までに数週間要する場合もあります。例えば、精神疾患の病名が初診で確定せず、しばらく様子を見てから診断書が発行されるケースなどです。
診断書が必要となるタイミングが決まっている場合は、事情を伝えて相談してみると良いでしょう。また、症状に合わせて診療科を選ぶことで、専門的な判断からスムーズな診断書の作成につながる場合があります。
記載内容は希望に添えない場合もある
診断書の内容は、必ずしも希望通りに記載されるとは限らない点にも注意しましょう。診断書を依頼する際に、記載してほしいことや記載してほしくないことなどについて、医師に希望を伝えることは可能です。
ただし、医師は医学的根拠に基づいて最終的な判断を行います。休職期間や配慮してほしい内容などは、病状や相談内容に応じて決定されるため、希望が必ず反映されるわけではないことは覚えておきましょう。
診断書の費用は医療機関に確認しよう
診断書は、会社の休職・復職申請や障害者手帳などの福祉サービスの利用、保険の手続きといったさまざまなシーンで必要な書類です。診断書の発行費用は幅があり、医療機関、利用目的や記載内容によって金額が変わります。
診断書は医師が診断を行った後に発行でき、様式は医療機関によって異なります。診断書の内容について、作成を依頼する際に希望を伝えることはできますが、最終的には医師が判断するため必ずしも希望が通るとは限りません。また、診断書の発行までには一般的には2週間程度かかるため、制度への申請を検討している場合には早めに相談することをおすすめします。
医療機関によっては、診断書の発行費用や作成期間、依頼する際の注意点などについてホームページ上で公開していますので、チェックしておくと良いでしょう。
監修者コメント
「診断書」は医師法第19条2項により「患者から依頼があった場合には正当な事由がない限り診断書作成を拒否できない」と規定され、医師には発行義務があります。ただし、本記事にあるように、そこには様々な留保があります。発行する医師が内容に責任を持てる範囲でしか書くことができないことには注意が必要です。例えば、精神科医が胃がんを診断することはできないですよね?また、使用目的、特に裁判や何らかの法的目的を持つことを要請された場合には発行を躊躇することもあります。医学的に正しいと、発行医師が自信が無い限り出せないこともあります。何らかの疾患原因を記載ということについては、精神科医はかなり慎重になります。例えば、うつ病はその発症原因が医学的に考えると正確には不明ですので、「〜のためにうつ病を発症した」、というような記述は難しいでしょう。また、通常、診断書は何らかの医学的判断を端的に示すために非常にそっけない記載になりやすいです。「~と診断する」「~の期間休養を要する」といった具合です。発達障害診療の中では、配慮を就職先や学校に求める診断書を記載することも多いものです。私自身は、配慮内容も含めて書くようにしていますが、そのあたりは各医師の裁量によるものがあるでしょう。診断書は、医師が法的責任を持って書くものですが、責任を持って書くことができる内容であれば書ける、とも言えます。記載内容に何を含めるのかは、主治医とも相談しつつ記載を依頼してみてください。
監修 : 松澤 大輔 (医師)
2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。