診断書の費用はどれくらい?相場や発行手順、会社へ提出する流れと注意点を解説

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診断書は、障害者手帳など福祉制度や会社の休職制度を利用する際に必要な書類です。診断書は医療機関にて医師の診断をもって発行されますが、費用は医療機関や診断書の種類によって異なります。仕事を休職する際には、診断書の一般的な相場や金額を決める要素などを把握しておくと安心です。
そこでこの記事では、診断書の費用相場や診断書の取得方法と注意点などについて解説します。休職の際、診断書を職場に提出するまでの流れも説明しますので、診断書の発行を検討している場合にはぜひ参考にしてください。

診断書とは?

診断書とは、医師が患者の病名や症状を記載した書類のことです。

診断書は、医療機関にて医師が診断を行ったあとに発行します。会社への病気や症状の証明以外にも、保険金の請求や裁判の証拠書類として使われる場合もあり、用途によって記載する項目や内容が変わります。

診断書の費用相場はどれくらい?

診断書の費用相場は一般的に4,000円~1万5,000円程度で、記載内容が複雑になるほど費用が高くなります。

診断書の費用に幅があるのは、診断書の費用は一律で決められておらず、医療機関が独自に設定できるためです。そのほかにも、診断書の種類や利用目的などの違いも費用に影響します。

また、診断書の費用相場には地域差が見られることもあります。これは、医療機関が診断書の費用を決める際に、同じ地域の医療機関を参考にする場合があるからです。

10年以上前のデータになりますが、参考に産労総合研究所による「2012年医療文書作成業務・文書料金実態調査」を見てみると「自院様式の診断書(複雑なもの)」の場合、平均3,665円、最高額1万500円、最低額1,000円という結果となっています。「自院様式の診断書(簡単なもの)」の場合、関東が2,962円に対し、九州は1,961円と平均額に地域差が見られることも分かりました。

実際の金額については、医療機関や医師に直接確認しましょう。

診断書は保険適用ではない

診断書の発行には医療保険が適用されないため、全額自己負担です。健康保険は、加入者の病気や怪我の治療負担を軽減することを目的としており、診断書の作成は治療に直接関係ないとみなされます。

また、厚生労働省でも「証明書代は公的保険給付と関係ない文書発行費用」であると公表しており、診断書は保険の適用外です。

診断書は医療費控除の対象ではない

診断書を発行する費用は、医療費控除の対象とならない点にも注意が必要です。医療費控除では、1年間に支払った医療費が一定金額以上の場合、所得金額から差し引かれることで、納税額を抑えられます。

医療費控除の対象となるのは、医療機関での診療や治療、病気の治療を目的とする医薬品の代金などの医療費です。病気の治療とは直接関係のない診断書の発行は医療費とみなされず、医療費控除の対象外とされています。

診断書が必要なタイミング

診断書を求められる主なタイミングは、以下の通りです。

  • 障害や病気などを理由に休職・復職するとき
  • 障害や病気などを理由に業務の調整(合理的配慮)を行うとき
  • 福祉制度や年金制度を利用するとき

会社の休職・復職に関する手続きでは、診断書に記載されている休養期間を参考に、会社と相談して期間を決定します。また、障害や病気の症状によって現在の職場環境に何らかの困難がある場合、正しく状況を把握して働きやすい状況を作るために「合理的配慮」を行う際にも、診断書が必要です。

さらに、以下のような福祉制度や年金制度を利用する際にも、診断書の提出が求められます。

  • 自立支援医療
  • 障害者手帳
  • 障害年金

診断書をもらうまでの手順

診断書の作成を依頼する前に、発行までの流れを把握しておくとスムーズです。診断書を受け取るまでの大まかな手順は、以下の通りです。

  1. 医療機関にて医師の診察を受ける
  2. 医師により診断が出て、診断書の発行を依頼する
  3. 診断書を受け取る(医療機関の窓口または郵送)

医療機関の診察では、症状について詳しく質問されます。症状が出始めた時期や相談内容などを、具体的に答えられるように準備しておきましょう。

医療機関によっては専用の窓口にて診断書の作成を申請します。利用目的によって様式や記載項目が変わるため、あらかじめ伝えておくとスムーズです。また、診断書の発行までに日数を要する場合がありますが、使う時期が決まっている場合は依頼時に伝えておきましょう。

診断書の記載内容と作成期間

診断書を初めて依頼する際には、どのような内容が書かれるのか気になる人もいるでしょう。ここでは、診断書に記載される項目や内容、作成にかかる期間の目安について解説します。

記載内容

診断書の記載内容は、利用目的によって異なりますが、一般的な記載項目は以下の通りです。

  • 患者情報(氏名・住所・生年月日・年齢など)
  • 病名
  • 発症日・時期
  • 受診日
  • 治療内容
  • 治療・療養が必要な期間
  • 症状の経過
  • 検査結果
  • 医師の氏名
  • 医療機関名

医療機関によって様式が異なる場合があり、利用目的に応じて簡易的な様式または複雑な様式が用いられます。また、必要がないと判断された場合には、上記項目の一部が省略される場合もあります。

作成期間

診断書の種類、複雑さや、医療機関により作成にかかる時間が異なります。内容に応じて、当日から4週間前後まで様々です。

また、診断書が作成された頃に受け取りに行くのが一般的です。ただ、郵送が可能な場合もあるので、医療機関での受け取りが難しい場合などは事前に確認しておきましょう。なお、郵送の場合は送料は原則として自己負担です。

診断書の発行に関する注意点

診断書は、医師の診断が出て、患者が作成を依頼すれば発行されます。ただし、診断書が発行されないケースもあるため注意が必要です。

また、記載内容が希望とは異なる場合もあります。さらに、診断書には有効期限が付いているため、期限が切れる前に正しく使用できるよう準備しておくことも大切です。ここでは、診断書の発行に関する注意点について解説します。

診断書がもらえない場合もある

診断書は、医療機関で依頼すれば必ず作成してもらえるわけではありません。診断書の発行について、医師法では患者から要望があった場合、正当な理由がないと拒否できないことが定められています。

ただし、最終的に診断書の必要性を判断するのは医師であり、診断によっては発行してもらえないケースも考えられます。例えば、担当医師の専門外の症状であり、適切な診断ができない場合や、診察の際に症状が確認できない場合などです。

また、診断書はさまざまな利用目的で用いられる公的書類であり、発行する医師には社会的な責任が伴います。そのため、犯罪利用の可能性などリスクが高いと判断された場合には、発行が拒否されることがあります。

診断書には有効期限がある

診断書には有効期限が付いており、一般的には発行から3ヶ月とされています。有効期限を過ぎてしまうと証明書としての効力がなくなってしまい、会社の休職申請などに使うことはできません。

発行から時間が経過すると病状が変化する可能性があり、公的書類としての診断書の信頼性が失われてしまうからです。期限が切れた場合、再度発行を依頼する必要があるため、期限内に使用するようにしましょう。

発行のタイミングは医療機関によって異なる

診断書が発行されるタイミングは、医療機関や診断書の種類によって異なります。一般的な日数としては、2週間前後が目安です。ただ、すぐにでも休職する必要があると判断されるケースなど、緊急性が高い場合には初診で受け取れる可能性があります。

一方で、発行までに数週間要する場合もあります。例えば、精神疾患の病名が初診で確定せず、しばらく様子を見てから診断書が発行されるケースなどです。

診断書が必要となるタイミングが決まっている場合は、事情を伝えて相談してみると良いでしょう。また、症状に合わせて診療科を選ぶことで、専門的な判断からスムーズな診断書の作成につながる場合があります。

記載内容は希望に添えない場合もある

診断書の内容は、必ずしも希望通りに記載されるとは限らない点にも注意しましょう。診断書を依頼する際に、記載してほしいことや記載してほしくないことなどについて、医師に希望を伝えることは可能です。

ただし、医師は医学的根拠に基づいて最終的な判断を行います。休職期間や配慮してほしい内容などは、病状や相談内容に応じて決定されるため、希望が必ず反映されるわけではないことは覚えておきましょう。

診断書を会社に提出するまでの流れ

ここからは、実際に診断書が必要になってから、会社に提出するまでの流れを紹介します。診断書を用意する前に、休職制度や関連する制度についてなど、会社に確認しておくべき事項をチェックしておきましょう。

特に休職制度そのものや給与・手当回りのことは生活資金に関係してくるので、事前に把握しておくと安心です。

会社の休職制度を確認

休職を考えたときに最初に行うべきことは、会社に休職制度があるか確認することです。休職制度は企業に設ける義務がないため、会社によって制度の有無や対応が異なります。

休職制度があることが確認できたら、休職できる期間や休職中の給与の有無、制度によって受けられる保障の内容、休職中の社会保険の支払い方法などを確認しておきましょう。

それと同時に診断書の準備も進めておきます。診断書の発行には時間を要するため、同時進行で進められるとよりスムーズです。

上司や人事部などに相談

休職制度が使えることが確認できたら、次に休職したい旨を上司や人事部などに相談しましょう。この際、相談する順番に決まりはありませんが、可能であれば上司を経て人事部に相談するのがスムーズでしょう。

相談の際には、まず休職の理由や状況を説明し、休職期間の見通しについて伝えます。すでに診断書があれば、診断書を根拠に休職期間の相談もしやすくなるでしょう。

これらのすり合わせが終わったら、仕事の引き継ぎや緊急時の連絡方法などを決めていきます。なお、復帰時期は休職期間が短ければ相談してもよいですが、長くなりそうな場合は、ある程度様子を見てから改めて相談するのが無難です。

休職中に利用できる制度を活用

休職中に利用できる可能性がある支援制度には、以下のようなものがあります。

  • 傷病手当金:仕事とは関係ない病気や怪我で仕事を、連続3日間を含む4日間以上休んだ場合に支給される。支給金額は1日につき、直近12ヶ月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する額。
  • 自立支援医療:医療費の一部を公費で負担してもらえる制度。何らかの精神疾患により治療が必要な方が対象で、通常3割負担の保険料が1割に軽減される。
  • 障害年金:保険料の納付要件を満たしていて、病気や怪我の症状により生活や仕事に制限が生じた場合に受け取れる年金。障害基礎年金と障害厚生年金がある。

なお、社会保険料は休職中でも支払いが必要です。療養に専念するためにも利用できる制度を知り、継続的に受け取れるお金を確保しておきましょう。

転職や再就職を検討している場合は

転職や再就職を検討している場合、福祉サービスなどの支援を受けることをおすすめします。障害がある方が受けられる支援機関として、就労移行支援と自立訓練(生活訓練)があります。これらは就職や生活能力の向上を目指すためのサービスで、障害がある方なら多くの場合、自己負担額なしで利用できます。

Kaienでも上記のサービスを実施しています。Kaienの就労移行支援は、過去10年間で約2,000人を就職に導いてきた実績があります。3人に1人が月給20万円以上、離職率は就職から1年後で9%と定着率も良く、就職に向けた実践的なカリキュラムでスキルアップを図りながら就職活動をすることもできます。

Kaienの就労移行支援

自立訓練(生活訓練)では就職活動は行わずに、自立した生活を送れるようになるための訓練を行います。就職の前に将来を見直したい、生活リズムを整えたいという方はこちらのサービスから始めるのがおすすめです。

Kaienの自立訓練(生活訓練)

診断書の費用は医療機関に確認しよう

診断書の取得費用の相場は1部あたり4,000円~1万5,000円程度と、決して安くはありません。休職するためには診断書が必要となるため、取得前に費用はもちろん、休職制度の有無や傷病手当金などの利用できる制度を確認しておきましょう。

十分に休養をとり、転職や再就職を考えている場合は、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)の利用も検討してみてください。Kaienでは、新たな一歩を踏み出そうとするあなたを全力でサポートします。

監修者コメント

本文にある通り、診断書は様々な理由、場面で求められます。基本的に診断書はそれぞれの患者さんがそれによって必要な措置や処遇を得られるように書くので、内容に関しては医師とよく相談してから書いてもらってください。診察医師が客観的に判定できない内容は書けません。専門外は求められても基本的には無理です。また、例えば、ある症状がこれこれが原因でなりました、という因果関係を求められると、医学的蓋然性が明らかでないと難しいでしょう。うつやトラウマの原因など、医師からはその因果関係を書くことが困難なことが多いのです。書けるのは「今どのような症状を持っているか」という観察によって判断できる内容であることがほとんどでしょう。

さて、自立支援医療、障害者手帳、障害年金を求める診断書は精神科では特に頻度が多いものです。これらの診断書は少し書くのに時間がかかります。特に障害年金は、初診日やこれまでの生活歴、現在の勤務や収入面など書くことが多く、時間がかかります。ですので、医師に依頼する際には、期限間近などではなく、余裕を持って依頼してくださいね。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。