病気や障害などを理由に休職をしたい場合に、会社に提出する必要がある診断書。診断書は医師が発行する公的書類で、現在の健康状態や休職が必要な理由が記載されています。
この記事では、診断書の取得方法や休職までの流れ、会社に休職を伝える際の注意点を解説します。復職を考えている方向けに、復職までのステップも具体的に紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
診断書は休職に必要?
多くの企業では、休職をする際に診断書が必要です。診断書は医師の診断により発行される公的な書類であり、診断書があることで労働者が健康上の理由で仕事を休む必要があることが証明されます。
診断書は決められた書式がなく、必要な情報が明記されていればどんな項目や書き方でも問題ありません。ただし、何に診断書を使用するかによって記載すべき項目や内容が異なるため、事前に記載が必要な項目を確認しておきましょう。
診断書は医療機関で発行
診断書は医師法に基づき、診察を行なった医師だけが発行できるものです。例えば精神疾患で休職をしたい場合は、精神科や心療内科を受診して、医師が必要と判断したら診断書が発行されます。
ここでは、一般的な診断書の記載項目の例と、診断書にかかる費用の目安などを見ていきましょう。
診断書に記載される項目内容
休職の際に必要となる診断書には、主に以下の項目が記載されます。
- 患者の基本情報(氏名、年齢、生年月日、性別、住所など)
- 病名(診断名や症状名)
- 発症日
- 受診日
- 具体的な治療内容
- 治療の見込み期間(医師が必要と判断した休職期間)
- 問診内容
- 診察時の所見
- 各種検査結果
- 症状の経過
- 医療機関名と医師の名前
なお、項目や様式に決まりはないため、内容は医療機関により異なります。症状や必要な用途に応じて上記項目が簡略化や省略される場合もあるため、その点を留意しましょう。
診断書の費用相場
診断書を発行してもらうには、費用がかかります。診断書の費用は、健康保険の適用外となるため全額自己負担です。
一律料金が定められているわけではないので、診断書の費用は医療機関や発行する診断書の種類などによって異なりますが、一般的には4,000円から1万5,000円程度が目安となります。
特定のフォーマットへの記載や、診断書の内容などによっても費用が変動するため、事前にいくらくらいかかるか費用を確認しておくと安心です。
また、診断書を複数枚必要とする場合や、内容の修正、追記が必要な場合は、追加費用がかかることがあります。特に、就業規則で特定の形式の診断書が必要な場合は、あらかじめその旨を医師に伝えておきましょう。企業が診断書の費用を負担するケースも稀にありますが、多くの場合は全額自己負担です。
会社を休職するまでの流れ
会社を休職する際には、診断書を取得するだけでなく、制度の確認や上司への相談など段階を踏まなければなりません。
ここでは会社を休職するまでの流れを4つのステップに分けて、やるべきことを具体的に解説します。
会社の休職制度を確認する
休職制度は会社が独自に設けている制度であり、義務づけられてはいません。そのため、そもそも休職制度がない場合や、あっても会社により休職期間や給与の有無などが異なります。
まずは会社の就業規則や労働契約書を確認し、休職に関する制度内容を把握しておきましょう。特に無給期間が発生する場合や、診断書の提出期限などは確認が必要です。
また、休職期間中も社会保険料は支払わなくてはなりません。休職期間中に給与が支払われない場合は、給与天引きされていた社会保険料を自分で納める必要があるため、社会保険料の支払い方法についても会社に確認しておきましょう。
医療機関を受診し診断書をもらう
会社に休職制度がある場合、休職の必要性を証明するためにも医師の診断書が必要です。診断書は提出が遅れると手続きが滞る可能性があるほか、受診してもすぐに受け取れない場合があるため、早めに準備しておくよう心がけましょう。
診断書のもらい方の詳細については、後述しています。
上司に相談し休職の意志を伝える
診断書が準備できたら上司に相談し、休職の意志を伝えます。休職を申し出るタイミングは、体調が悪化する前に早めに行うことが望ましいでしょう。診断書に基づいて、休職が必要な理由を上司に説明し、理解を得ることが重要です。
また、上司には休職の期間や復職の見込み時期についても、わかる範囲で伝えておきましょう。業務の確認など、万が一のときに備えて休職中の連絡手段も決めておくと安心です。
休職のための手続きを行う
上司や人事部と相談した後、会社の手順に従って休職手続きを進めます。多くの場合、診断書の提出が必要となりますが、それ以外にも休職届や、福利厚生の手続きなどが求められることがあります。併せて傷病手当金の申請方法なども確認しておくと良いでしょう。
手続きが完了したら、医師の指示に従いしっかり治療と休養に専念します。会社との連絡は必要に応じて適宜取りつつも、無理をせずに体調を最優先に考えることが大切です。
診断書のもらい方
診断書のもらい方を知っておくと、スムーズに休職準備が進められます。一般的な診断書のもらい方の手順は、以下の通りです。
1. 診察を受ける
まず、病院やクリニックで診察を受けます。症状に合わせて適切な診療科を受診しましょう。症状や相談内容は的確に話せるよう、あらかじめまとめておくとスムーズです。医師が診断結果に基づいて、休職が必要だと判断した場合に診断書が発行されます。
2. 希望する内容を相談
診断書に希望する内容がある場合は、事前に医師に相談しておきましょう。例えば、診断書の様式や記載項目等は事前に伝えておき、休職期間などについても医師に確認しておくと安心です。
3. 診断書を受け取る
診断が出たら、診断書の発行を依頼します。診断書はすぐに受け取れる場合もあれば、後日に医療機関の窓口や郵送での受け取りになる場合もあります。受け取りのタイミングや診断書の費用についても、医療機関に確認が必要です。
会社を休職する際の注意点
会社を休職する際に必要な診断書の作成には、いくつかの注意点があります。事前に把握しておかないと、期限や内容の不備などにより思うように休職ができない可能性があるため注意が必要です。
ここからは、診断書を会社に渡す前に気をつけたい注意事項を5つチェックしていきましょう。
診断書がもらえないケース
診断書は医師の診断に基づき発行されるものなので、依頼をすれば必ずもらえるものではありません。原則、医師法では患者から依頼があった場合に、不当な理由がなければ作成を拒否できないことが定められていますが、診断書の内容を判断するのはあくまでも医師です。
症状が軽度で仕事をするのに影響がないと判断された場合は、休職は不要と医師が判断することもあります。そうした場合には、無理に診断書を依頼せず、まずは医師の指示に従って治療を進めることが大切です。それでもどうしても症状などにより仕事に支障が出る場合には、セカンドオピニオンを検討しても良いでしょう。
診断書の作成期限
診断書は即日発行してもらえる場合もありますが、発行に時間がかかるケースもあります。例えば内容が詳細であったり、診断までに複数回の診察が必要だったりする場合は、発行までに数週間かかることもあるでしょう。
会社に診断書を提出する期日が決まっている場合は特に、クリニックの予約の混雑状況や医師の診察スケジュールなども考慮し、余裕を持って診断書の発行を依頼することが大切です。
診断書の有効期限
一般的に診断書には有効期限が設定されており、多くの場合、発行から3ヶ月が目安とされています。有効期限が設けられているのは、診断時から時間が経過すると症状などにも変化が見られ、診断書の信頼性が損なわれてしまう恐れがあるためです。
有効期限を過ぎた診断書は休職の証明書として使えなくなるため、期限が切れてしまった場合は再度医療機関を受診し、新たに診断書を発行してもらう必要があります。会社へ休職を伝える際は、診断書の有効期限に気をつけて申請するようにしましょう。
診断書は自己負担
前述の通り、診断書は健康保険の適応外となるため、作成する際は全額自己負担です。 3割負担の心づもりで受診すると、思った以上に費用がかかりますので注意しましょう。特定のフォーマットで記載する場合や、追加で診断書が必要な場合は、さらに費用がかかることがあります。診断書が必要になったら、あらかじめ医療機関に費用を確認し、準備しておくと安心です。
記載内容は希望に沿えない場合がある
診断書の内容は医師の診断に基づきます。そのため、必ずしも自分が希望する内容が反映されるとは限りません。例えば、長期間の休職を希望していても、医師がそれを必要と判断しない場合は、自分が思っているよりも短い休職期間が記載されることもあります。診断書の内容に関しては医師としっかり話し合い、適切に診断してもらうためにも症状などの必要な情報は、抜け漏れなく伝えることが重要です。
休職から復職までのステップ
休職を経て復職を果たすまでには、いくつかの重要なステップがあります。復職を焦ったり、何も準備をしないまま復職をしたりすると、症状の悪化や再発のリスクが高まるので要注意です。
復職に向けて適切な準備を進めるためにも、休職から復職までの流れやポイントを押さえておきましょう。以下で、復職までのステップを詳しく解説します。
しっかり休養する
休職中は無理をせず、しっかりと体を休めることが最優先です。体調を整えるために、十分な睡眠と栄養をとり、生活リズムを安定させましょう。ストレスを減らすためにも極力仕事のことは考えず、医師の指示に従い治療や服薬等を継続することが大切です。
また、体調が良くなってきたからと復職を焦ってはいけません。無理して仕事をしようとしたり、自己判断で治療をやめたりすると症状の再発や悪化につながります。復職については、医師と相談しながら焦らずに自分のペースで進めていくようにしましょう。
傷病手当金を受け取る
会社によっては休職中に給与が出ないケースも珍しくありません。休職中の収入減に備えて、生活費の確保が必要です。健康保険に加入している場合、要件に当てはまれば傷病手当金が受け取れます。傷病手当金とは、健康保険に加入している労働者が業務外の病気や怪我で休職した場合に、給与の3分の2程度の給付金が受け取れる制度です。
会社が加入している健康保険組合に申請することで支給されるので、自分が要件を満たしているかどうか確認し、該当している場合は早めに申請しましょう。
詳しい制度の概要や申請方法については、以下を参照ください。
働き方や雇用形態を見直す
休職中は自身の働き方を見直す良い機会です。例えば、フルタイムの勤務が難しい場合、短時間勤務やリモートワークなどに切り替えられないか、会社に相談してみるのもよいでしょう。
診断を受け、障害者手帳を取得できる場合には、障害者雇用として働くことができます。障害者雇用は会社側が障害のある方の採用を前提としているため、障害に対する理解があり、一般雇用より配慮も求めやすい環境です。
今の会社で働き続けるのが難しい場合には、障害者雇用も視野に転職を検討するのも1つの選択肢でしょう。
リワークの利用
リワークとは、心の病気により休職した方の職場復帰を支援するプログラムです。主に医療機関や就労移行支援事業所などの支援機関で実施しており、通院・通所により支援が受けられます。
具体的な支援内容としては、自己分析やソーシャルスキルトレーニングをはじめとする認知行動療法、グループワークなどです。復職後の環境と似た状況で作業訓練を行ったり、通勤にならしたりと、復職に向けた実践的な取り組みを通したさまざまなサポートが受けられます。リワークの期間は3~7ヶ月程度が目安で、リワークの種類によってかかる費用も異なります。
リワークの詳細については、以下の記事も併せてご覧ください。
リワークプログラムとは?内容や費用、メリットや効果などを解説
支援機関に相談
復職に不安を感じている方や転職を考えている場合には、支援機関に相談するのも有効です。以下の支援機関では、障害がある方を対象に復職や転職に向けた相談やアドバイス、就活支援などを行っています。
- 就労移行支援事業所
- ハローワーク
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 地域若者サポートステーション
多くの場合は無料で、障害者手帳を取得していなくても利用できるため、まずは相談してみるなど有効活用しましょう。
復職や再就職、転職は支援機関を活用
障害のある方で転職や再就職を考えている場合は、就労移行支援の利用がおすすめです。
Kaienでも発達障害に特化した就労移行支援を行っており、就活準備から職場定着までトータル的にサポートしています。
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まだ復職や就職など働くことに自信が持てない、生活習慣が乱れて日常生活がままならないという方には、Kaienの自立訓練(生活訓練)が適しています。障害理解やソーシャルスキルの習得、将来設計など仕事を始めるための土台作りからあなたをアシストします。
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休職するときは早めに診断書の準備を
休職する際には多くの場合、会社へ診断書の提出が必要です。体調が悪化する前にスムーズに休職手続きを済ませるためにも、診断書のもらい方や休職申請の進め方を覚えておきましょう。診断書に関する注意事項も、事前に知っておくと安心です。
十分に休養をして復職や転職を考えられるようになったら、一人で悩まずに支援機関を利用することをおすすめします。プロの支援を受けながら、無理のないよう復帰へのステップを踏んでいってください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。