精神科デイケアとは?メリットやプログラム内容、就労移行支援との併用についても解説

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精神科デイケアは、精神障害を抱える人の社会復帰をサポートするサービスです。「主治医に精神科デイケアを勧められた」「精神科デイケアに興味があるけど具体的に何をするのか知らない」という人は、プログラム内容や利用期間、対象者など気になるポイントがたくさん出てくるでしょう。

この記事では、精神科デイケアについて利用目的や対象者、実施施設やプログラム内容、利用開始までの流れなどを詳しく解説します。就労を希望する人に向けて、精神科デイケアと就労移行支援の併用についても解説しているので、ぜひチェックしてみてください。

精神科デイケアとは?

精神科デイケアとは、精神障害のある人を対象とした通所型リハビリテーションのことです。精神科クリニックや総合病院などの施設に通い、精神疾患の再発防止や社会復帰のための取り組みなど、それぞれの目的に応じたリハビリテーションを行います。

精神科デイケアは目的に応じたさまざまなプログラムが実施されていて、「午前と午後で計6時間」や「16時以降で4時間」など利用する時間帯も異なります。そのため、目的や利用したい時間帯に合うものを選びましょう。

このような特定の障害を持つ人を対象としたリハビリテーションはほかにもあり、例えば発達障害*を持つ人を対象としたショートケアなどもあります。精神科デイケアと同様に、社会生活に必要な力を育むため、発達障害の特性に合わせたプログラムを受けることが可能です。

精神科デイケアの利用目的とは?

精神科デイケアの利用目的は、人によってさまざまです。厚生労働省が公開した「精神科デイ・ケア等について」には、精神科デイケアの利用目的についての調査結果が記載されてます。その結果、以下のような目的で精神科デイケアを利用している人が多いことがわかりました。

  • 生活リズムの維持
  • 再入院・再発予防
  • 集団に慣れる
  • 家族の負担減
  • 服薬・金銭管理
  • 就学・就労支援
  • 心理教育等のプログラム参加
  • 福祉的ステップへの移行 など

精神科デイケアを利用する際、日常生活の安定や社会復帰などに向け、それぞれの状況に合わせた目標を設定します。「まずは生活リズムを整えたい」という人も入れば、「対人関係を円滑にするためのスキルを身につけたい」という人もいます。

精神科デイケアの対象者はどんな人?

精神科デイケアの対象は、医師から精神障害と診断されていて、日常生活において困りごとを抱えている人です。また、施設に通ってリハビリテーションを受けることになるため、入院していないことや施設へ通える範囲に住んでいることなどが利用条件とされているケースも多いです。

そのほか、主治医に精神科デイケアの利用が必要だと認められていることや、安定して通院や服薬ができていることなどが条件となっている精神科デイケアもあります。また、就学や就労の支援は年齢制限が設けられている場合があります。

このように、細かい条件は施設やプログラムによって異なるため、詳細は精神科デイケアごとに個別確認が必要です。

精神科デイケアはどこで利用できる?

精神科デイケアは、以下のような施設で実施されています。

  • 病院(単科病院・総合病院)
  • 精神科クリニック
  • 心療内科クリニック
  • 保健所
  • 精神保健福祉センター など

病院で実施している精神科デイケアは、病院の規模が大きくなるほど対象とする障害やプログラムの種類が豊富になる傾向があります。一方、精神科や心療内科のクリニックの場合は、病院と比べて規模は小さい分アットホームな雰囲気なのが特徴です。

保健所や精神保健福祉センターなど、自治体が運営する施設でも精神科デイケアを実施しているところがあります。ただし、すべての施設で実施しているわけではないので、事前に実施しているかどうかの確認や問い合わせが必要です。

精神科デイケアの利用期間と利用料金とは?

精神科デイケアの利用を検討している人は、利用期間と利用料金も気になるポイントですよね。以下で、精神科デイケアの利用期間と利用料金についてそれぞれ解説するので、チェックしておきましょう。

利用期間

精神科デイケアには、決まった利用期間は定められていません。多くの場合、本人の意思や状態によって利用終了のタイミングを判断することになります。

ただし、施設やプログラムによっては1〜2年の利用期間を定めている場合があるため、詳細については利用したいと考えている精神科デイケアごとに確認が必要です。

利用料金

精神科デイケアは外来治療という位置づけで、健康保険が適用されるため3割の自己負担で利用できます。また、自立支援医療制度の対象にもなっているので、受給申請が完了していれば自己負担は1割になります。

精神科デイケアの利用料金は利用する施設やプログラムによって異なるため、実際にどの程度の利用料を支払うことになるのかは、個別に確認が必要です。利用を検討している精神科デイケアのホームページや問い合わせ窓口などで確認してみましょう。

精神科デイケアのスタッフはどんな人?

精神科デイケアには、以下のようなスタッフが在籍しています。

  • 精神科医師
  • 作業療法士
  • 精神保健福祉士
  • 看護師 など

施設の規模やプログラムの内容などによって在籍しているスタッフは異なりますが、専門的な知識を持ったスタッフのサポートを受けられるので、困ったことや不安な点について安心して相談できます。

利用時間ごとの精神科デイケアの種類

精神科デイケアは、利用時間に応じて以下のような種類に分けられます。

  • 精神科デイケア
  • 精神科ナイトケア
  • 精神科デイ・ナイトケア
  • 精神科ショートケア

それぞれの精神科デイケアの利用時間と特徴について、以下で詳しく見ていきましょう。

精神科デイケア

精神科デイケアは、午前と午後に分けて1日につきトータル6時間が利用時間となっています。多くの場合は9〜10時頃にスタートし、昼食を挟んで15〜16時頃に終了します。実施するプログラムの内容に関わらず、利用者1人あたり1日6時間が標準です。

精神科ナイトケア

精神科ナイトケアは1日あたりの利用時間が4時間、かつ16時以降にスタートするのが特徴です。多くの場合、16時から20時の時間帯に実施します。会話を楽しんだりスポーツをしたりする、1日の終わりに疲れを癒やしたい人や安心してくつろぎたい人などを対象とした精神科デイケアです。

精神科デイ・ナイトケア

精神科デイ・ナイトケアは、午前・午後を通して1日につきトータル10時間が利用時間です。施設によって、8〜18時や9〜19時など時間帯が決まっています。精神科デイ・ナイトケアの実施内容は施設によってさまざまですが、料理やスポーツ、キャンプなどのグループ活動が主体です。また、お花見やクリスマス会など季節の行事を行っている施設もあります。

精神科ショートケア

精神科ショートケアは、1日あたり3時間と利用時間が比較的短いのが特徴です。9〜12時、13〜16時など、午前もしくは午後に実施されます。短時間ではありますが、料理や自己学習、映画鑑賞やヨガなど、施設によってさまざまなプログラムが用意されています。

ショートケアには発達障害を持つ人を対象としたものもあり、コミュニケーション力の向上や時間管理スキルの習得などを目指すプログラムが受けられます。

精神科デイケアのメリット

精神科デイケアを利用すると、以下のようなメリットがあります。

  • 生活リズムの改善や安定につながる
  • コミュニケーション能力や対人スキルの向上につながる
  • 居場所を見つけられる
  • 就労スキルの向上につながる
  • ご家族の負担の軽減につながる
  • 病気への理解や再発防止につながる

それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。

生活リズムの改善や安定につながる

精神科デイケアは、プログラムごとに開始時間と終了時間が決まっています。あらかじめ決められた利用時間に合わせて通所するため、生活リズムが整いやすくなるのがメリットです。

精神障害を抱える人は生活リズムが不規則になりがちで、生活リズムの乱れは精神状態をさらに悪化させる要因となります。通所が必要な精神科デイケアは外に出るきっかけになり、起床時間や就寝時間のリズムが安定しやすくなるでしょう。

また、軽い運動がプログラムに含まれていれば、活動量が増えて体力づくりにも効果的です。

コミュニケーション能力や対人スキルの向上につながる

精神科デイケアを利用すると、プログラムを通してほかの利用者やスタッフと交流する機会を作れます。そのため、コミュニケーション能力や対人スキルの向上につながるのも大きなメリットです。料理やスポーツなどのグループ活動をプログラムに取り入れている施設が多く、自然と人や集団に慣れていくことができます。

また、人と交流することで社会参加への意欲が増したり、自信が付いたりするのもメリットです。社会生活では、多かれ少なかれ人との関わりは避けて通れません。精神科デイケアなら、社会生活に必要なコミュニケーション能力や対人スキルを少しずつ身につけていけます。

居場所を見つけられる

精神科デイケアには、同じ悩みを持つ利用者や専門的な知識やスキルを持ったスタッフがいます。そのため、居場所を見つけられるというメリットもあります。

精神障害を抱える人はさまざまな理由で学校や会社に通えないケースも多く、孤独感や疎外感を感じやすい点に注意しなければなりません。孤独感や疎外感は精神状態が不安定になる原因になります。

精神科デイケアを利用すると、同じく精神障害に悩みながら治療に励む人と出会えるきっかけになります。一緒にがんばる仲間がいるのは、大きな支えになるでしょう。精神障害について理解があり知識を持っているスタッフも近くにいるので、困ったときや悩んだときにはすぐに相談できます。

就労スキルの向上につながる

社会復帰を目指す人にとっては、就労につながるスキルを身につけられるのも大きなメリットです。精神科デイケアを利用すると、集中力や段取りをつけて作業する能力など、社会復帰を目指す際に必要となるスキルを向上させられます。また、先ほど紹介したコミュニケーション能力や対人スキルも、就労には必要なスキルです。

精神科デイケアは、就労移行支援など就労に関する福祉サービスと両立できます。就労を目指す人にとっては、こちらも大きなメリットでしょう。精神科デイケアを利用することで、無理のない範囲で精神障害の回復と就職活動を並行して進められます。

ご家族の負担の軽減につながる

精神障害は治療に長期間を要することもあり、本人はもちろんご家族にも負担がかかっているケースも少なくありません。精神科デイケアは医師や看護師など専門家の支援が受けられるため、ケアをされるご家族の負担を軽減できる点もメリットとして挙げられます。

専門家による治療やケアを受けて早期回復が目指せるだけでなく、ご家族が精神障害への理解を深めたり接し方を知ったりするきっかけになります。そのため、ご家族が負担や戸惑いを感じている場合も、精神科デイケアの利用を検討してみるのがおすすめです。

病気への理解や再発防止につながる

精神科デイケアを利用すると自分自身で病気について理解し、病気との付き合い方を知ることができます。これにより自己管理ができるようになり、再発防止が目指せる点もメリットです。

精神障害は一度回復したとしても、また症状が再発してしまうケースも珍しくありません。再発の要因はさまざまですが、病気との付き合い方を知っておくと防げることもあります。このように、精神科デイケアは再発防止の役割も担っています。

精神科デイケアのプログラムと1日のスケジュール例

精神科デイケアの利用を検討していると、「実際にどのようなことをするのか」「1日の流れはどうなっているのか」といった点も気になる人も多いでしょう。

ここでは精神科デイケアのプログラム例と1日のスケジュール例を紹介するので、参考にしてください。

プログラムの例

精神科デイケアでは、以下のようなプログラムが用意されています。

  • 料理
  • 園芸
  • 音楽鑑賞
  • 映画鑑賞
  • 手工芸
  • ヨガ
  • バレーボール
  • 卓球
  • 散歩
  • 認知行動療法
  • 心理教育
  • ソーシャルスキルトレーニング
  • 就労支援 など

グループ活動として、料理や手工芸といった文化系レクリエーションや、ヨガやバレーボールといった運動系レクリエーションを実施している施設が多いです。お花見など、季節ごとのイベントを実施している施設も見られます。

レクリエーション以外には、認知行動療法などの心理療法や、精神障害への理解を深めて病気との付き合い方を知るための心理教育などがあります。また、就労支援としてパソコン演習や応募書類の作成支援などを実施している施設もあり、プログラムの内容は施設によってさまざまです。

スケジュールの例

以下は、精神科デイケアの1日の流れの一例です。

9:00〜9:30 開所・健康チェック
9:30〜10:00 朝の会・体操
10:00〜12:00 午前プログラム
12:00〜13:00 昼食
13:00〜14:30 午後プログラム
14:30〜15:00 終わりの会
15:00 閉所

上記は精神科デイケアのスケジュール例で、利用時間が異なるナイトケアやデイ・ナイトケア、ショートケアはまた違ったスケジュールとなります。プログラム内容や細かいスケジュールの流れも施設によって異なるため、上記はあくまで一例だと考えてください。

精神科デイケア利用までの流れ

精神科デイケアを利用したい場合、以下の流れで手続きを進めます。

  1. 精神科デイケアの利用について主治医に相談する
  2. 利用したい精神科デイケアの施設へ見学の申し込みをする
  3. 見学と施設スタッフとの面談を行う
  4. 精神科デイケアに在籍する担当医師の診察を受ける
  5. 問題がなければ利用開始

はじめに、現在の主治医に精神科デイケアを利用したいという相談が必要です。精神科デイケアの利用が問題ないと判断されたら、通所したい施設を選んで見学を申し込みます。現在通院中の医療機関で精神科デイケアを実施しているなら、スムーズに手続きが進むでしょう。

通院している施設では精神科デイケアを実施していない場合、主治医に相談すると適した施設を紹介してもらえることがあります。必要に応じて、利用する施設やプログラムについて相談してみましょう。

希望の施設が見つかったら、正式に利用する前に見学とスタッフとの面談を行います。施設によっては、面談後に体験を実施するケースもあります。面談や体験の後に精神科デイケアの利用が問題ないか施設の担当医師の診察を受け、問題がなければ必要な手続きをして正式な利用開始となります。

精神科デイケアと就労移行支援は併用可能

将来的に就労を希望する場合、精神科デイケアと就労移行支援を併用するという選択肢もあります。就労移行支援とは障害を持つ人の就職をサポートする障害福祉サービスで、就労に必要なスキルを習得しながら、模擬面接や応募書類の作成支援など就職活動のサポートが受けられます。また、就職した職場への定着支援も、就労移行支援の対応範囲です。

一方、精神科デイケアは精神障害を持つ人の自立をサポートする医療サービスです。先ほど紹介したようにプログラムの1つとして就労支援を実施している施設もありますが、それがメインではありません。

精神科デイケアも就労移行支援も、担当者と相談して利用頻度や支援内容を決められます。就労を希望する人は、この2つのサービスの併用についても相談してみるとよいでしょう。現状を考慮して、適切な利用割合やプログラム内容を提案してもらえる可能性があります。

精神科デイケアは社会復帰の第一歩として活用できる

精神科デイケアは、精神障害を持つ人の社会復帰を手助けする通所型のサービスです。開始時間と終了時間が決まっていて、ほかの利用者とのグループ活動に取り組むため、生活リズムを整えたり集団に慣れたりする効果が期待できます。

医師や看護師、作業療法士などのスタッフが在籍しているので、専門的な支援を受けて本人だけでなくご家族の負担を減らせるなど、多くのメリットがあるサービスです。就労支援を実施している施設もあるため、将来的に就職を目指したい人も利用を検討してみましょう。

就労に向けて活動を始めたいという人は、就労移行支援の利用もおすすめです。就労移行支援の利用を検討中の方は、ぜひKaienにご相談ください。専門家推奨の充実したプログラムを実施していて、就職率86%と高い実績があります。ご利用説明会・見学会も開催しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修者コメント

精神科デイケアには本コラムでご覧いただいたように、就労支援との併用も可能で、病院・自治体・クリニックなど様々な場所に設置されています。

日本で本格的に精神科デイケアが導入されたのは1980年代からと歴史は浅いのですが、もともとは1930年代に(何と)旧ソ連で始まったプログラムを、イギリスとカナダで発展させたものが今日のデイケアの基礎となっています(吉益、清原、2003)。

デイケアのプログラムには軽作業、運動、カラオケ、映画鑑賞などいろいろありますので、まずはスタッフにご相談の上、ご自分に合いそうな場所を選ぶと良いでしょう。

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。