A型作業所(就労継続支援A型)の給料はどれくらい?手取りや経済的な支援制度も紹介

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A型作業所(就労継続支援A型)の利用を検討している場合、「給料は一体どれくらいもらえるの?」と疑問に思うこともあるでしょう。そこでこの記事では、A型作業所で働く場合の平均給与や、手取りベースでいくらもらえるのかといった点について詳しく解説します。

A型作業所の給料だけでは不安だという場合に使える経済的な支援制度についても紹介しますので、A型作業所の利用を検討している人は、ご参考ください。

A型作業所(就労継続支援A型)とは?

A型作業所(就労継続支援A型)とは、一般企業での就労は難しいものの、一定の支援がある環境下で働ける障害者に対し、働く場を提供する就労支援サービスのことです。

仕事内容は事業所によって異なり、パソコンを使った入力作業や、パンやお菓子の製造、飲食店での調理や接客、清掃などさまざまです。1日の就労時間は一般就労よりも比較的短い傾向で、利用者の適性やスキルに合わせた働き方ができます。

利用対象者は、下記の条件に該当する人です。

  • 就労支援を利用したものの企業の雇用に結びつかなかった人
  • 特別支援学校などを卒業して就職活動をしたが、企業の雇用に結びつかなかった人
  • 就労経験はあるが、現在は離職している人

なお、利用年齢については、原則18歳以上65歳未満とされているものの、一定の条件を満たせば65歳以上も可能です。

A型作業所の報酬については、働くにあたって雇用契約が結ばれるため、法律で定められている最低賃金以上の金額が保障されるという特徴があります。

A型作業所について詳しく知りたい方は「就労継続支援A型とは?対象者や仕事内容、利用の流れや事業所選びのポイントを解説」の記事も参考にして下さい。

A型作業所(就労継続支援A型)の平均給料

厚生労働省の調査によると、2022年度のA型作業所(就労継続支援A型)の平均給料は、月額83,551円です。

このA型作業所の平均給料は、全国のA型作業所約4,000施設が支払った実際の給料の平均値です。このA型作業所の平均給料は、2022年現在で8年連続増加と近年増加傾向にあります。

A型作業所の平均給料は、一般企業と比べると少ない傾向にありますが、これはA型作業所の場合、労働時間も一般企業と比べて少ないためでもあります。A型作業所の場合、1日4~6時間勤務といったケースが多く見られます。

A型作業所の給料を合計でなく時間単位で見ると、2022年度の平均時給は947円です。A型作業所では、最低賃金が保証されているため、一定の水準が確保されているといえるでしょう。

参考:厚生労働省「令和4年度工賃(賃金)の実績について

A型作業所(就労継続支援A型)の手取りはどれくらい?利用料や保険料は必要?

A型作業所(就労継続支援A型)の給料が、手取りでどれくらいになるかを把握するには、給料から利用料と雇用保険料・交通費を引く必要があります。以下で、手取り分を計算するための利用料・雇用保険料について解説します。

利用料

A型作業所では、利用者は給与をもらいつつ働くものの、作業所の利用自体は障害福祉サービスの一環となるため、利用料がかかります。そのため、A型作業所の手取り給与を計算するには、A型作業所の利用料を差し引く必要があります。

A型作業所の利用料は通所日数や事業所によって変わり、その利用料は、9割が国の負担で、1割が自己負担です。なお、この自己負担額については、世帯収入に応じて上限があります。

自己負担額の上限は下記の通りです。生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯の場合は、利用料は無料となっています。

【障害福祉サービスの自己負担の上限(月額)】

世帯の収入状況負担上限月額
生活保護生活保護受給世帯0円
低所得市町村民税非課税世帯0円
一般1市町村民税課税世帯(所得割16万円未満※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます。9,300円
一般2上記以外37,200円

出典:厚生労働省「障害者の利用者負担

雇用保険料

A型作業所で雇用契約を結び、週20時間以上勤務する場合、雇用保険に加入できます。雇用保険の保険料は事業主と労働者の双方が負担します。

雇用保険料率は毎年見直され、例えば、令和6年度の労働者の雇用保険料率は0.6%(6/1000)です。このため、労働者は給料に0.6%をかけた金額を雇用保険料として支払わなければなりません。例えば月額8万円の給料の場合、8万円に0.6%をかけた金額の480円を雇用保険料率として支払うこととなります。

手取り給与を考える場合は、先述の利用料に加え、この雇用保険料も差し引く必要があります。また、これ以外でも、通所によってかかる費用があれば手取りは減ります。例えば、通所に交通費がかかる場合には、交通費についても考慮する必要があるでしょう。

参考:厚生労働省「令和6年度の雇用保険料について

A型作業所(就労継続支援A型)とB型作業所(就労継続支援B型)の給料の違い

B型作業所とは、年齢や体力などさまざまな事情で企業などでの一般就労が難しい方を対象とした作業所のことです。B型作業所では、A型作業所のように事業所と雇用契約を締結することはないものの、労働時間などに応じた相応の工賃が支払われます。

A型作業所とB型作業所との給料の大きな違いは、A型作業所は雇用契約に基づく給料が支払われ、B型作業所は労働に応じた工賃が支払われる点といえるでしょう。A型作業所は雇用契約により最低賃金が保障されますが、B型作業所は最低賃金の保障は特にありません。

A型作業所とB型作業所の給料などの違いは以下の通りです。

【A型作業所とB型作業所の違い】

A型作業所(就労継続支援A型)B型作業所(就労継続支援B型)
対象者就労支援を利用したものの企業雇用に結びつかなかった人特別支援学校を卒業して就職活動をしたものの企業雇用に結びつかなかった人 就労経験はあるが、現に雇用状態にない人就労経験はあるが年齢や体力の面で企業雇用が困難となった人50歳に達した人または障害基礎年金1級受給者上記に該当しない人で、就労移行支援事業者などによるアセスメントにより、就労面の課題が把握されている人
給料(工賃)最低賃金の保証がある給料が支払われる2022年度平均給料(月額)は83,551 円労働時間や作業量に応じた工賃が支払われる2022年度の平均工賃(月額)は17,031 円
雇用契約ありなし
利用期間制限なし制限なし

参考:

厚生労働省「障害者の就労支援について

厚生労働省「令和4年度工賃(賃金)の実績について

B型作業所について詳しくは、「就労継続支援B型とは?働き方や利用の流れについて解説」の記事も参照してください。

就労継続支援A型の給料だけで生活は厳しい?活用できる支援制度

「就労継続支援A型の給料だけでは生活は厳しい」といった状況から改善するために活用できる支援制度について紹介します。活用できる制度は下記の3つです。

  • 障害年金
  • 自立支援医療制度
  • 生活保護

以下で詳しく紹介します。

障害年金

障害年金とは、病気や障害によって生活や仕事に制限を受けた場合に受給できる年金です。障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。

国民年金に加入していれば障害基礎年金を、会社員や公務員などで厚生年金保険に加入していれば障害基礎年金を、受給できる可能性があります。ただし、受給には、障害等級1~2級(障害厚生年金の場合は1~3級)の状態であるなどといった所定の要件を満たす必要があります。

受給できる金額は年金の種類や障害の等級などによって異なり、例えば2024年4月現在の障害基礎年金の支給額は、1級が年額約100万円、2級が年額約81万円です。

障害年金の利用については、全国の年金事務所や年金相談センターで相談できます。また、障害年金について詳しく知りたい人は「【2025年改正】障害年金は今後どうなっていく?概要を詳しく解説」の記事も参考にしてください。

参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額

自立支援医療制度

自立支援医療制度とは、障害の治療にかかる医療費の自己負担額の一部を公費で負担してもらうことで、医療費負担を軽減できる制度です。

例えば下記のような医療を受ける人が利用対象となります。

  • 精神通院医療:うつ病や統合失調症などの精神疾患のある人で、精神医療が継続的に必要な人
  • 更生医療:18歳以上の身体障害者手帳の交付を受けた人で、その障害を軽減する手術などの治療により確実な改善が見込まれる人

自立支援医療制度を利用すると、通院などの医療費が原則1割負担となります。また、世帯所得などによって、月ごとの負担上限額が決まっており、負担上限額を超えた分の金額は公費でまかなわれます。

自立支援医療を利用したい場合は、市区町村の障害福祉課や保健福祉課などで申請・相談が可能です。

参考:厚生労働省「自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み

生活保護

生活保護とは、世帯の収入だけでは国が定める保護基準(最低生活費)に満たない場合に、国から保護費が支給される制度です。保護費としては、国の定める最低生活費と収入との差額が支払われます。収入が最低生活費を上回ると保護費は支給されません。

最低生活費は、住む地域や年齢、家族構成によって変わります。例えば東京23区に住む20代単身世帯の場合は、月額約13万円です。物価が高い地域ほど、また家族が多いほど最低生活費も多くなります。

A型作業所で働きながら生活保護を受ける場合は、この最低生活費から給与収入などを差し引いた金額が支給されます。生活保護の利用については、市区町村の福祉事務所や保健福祉課で相談・申請が可能です。

参考:

厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)

厚生労働省「級地区分

練馬区「生活保護

就労移行支援の利用も選択肢の一つ

給与面の不安などからやはり一般企業で就労したいと思う場合には、就労移行支援の利用も選択肢の一つです。

A型作業所やB型作業所は、一般企業などでの就労が困難と判断される場合に、就労の場を提供する就労継続支援サービスです。一方の就労移行支援サービスは、作業実習や訓練、職場探しなどの支援を受けながら、一般企業への就職を目指すことができます。

【就労移行支援の内容】

  • 就業体験などの機会を提供
  • 就労に必要な知識・能力の向上のための訓練を提供
  • 求職活動に関する相談や支援
  • 適性に応じた職場探し
  • 就職後の職場定着に向けてのサポート

原則18歳以上65歳未満で、企業などへの就労を希望する人、あるいは、技術を習得し在宅で就労・起業を希望する人であれば支援を受けられます。

就労移行支援について詳しくは「就労移行支援とは?受けられる支援や利用方法をわかりやすく解説」の記事も参考にしてください。

就労移行支援の利用も検討してみよう

A型作業所の給料は、月額83,551円(2022年度)です。A型作業所で働きつつ収入の水準を上げるためには、障害年金や自立支援医療、生活保護なども活用しましょう。

収入に不安があり、やはり一般企業での就労を希望する場合には、就労移行支援の利用を検討してみることがおすすめです。就労支援について興味がある、復職や再就職に不安があるといった場合には、Kaienにご相談ください。

Kaienでは、就労移行支援、自立訓練(生活訓練)、人材紹介などを行っています。発達障害*や精神障害に理解ある企業200社以上と連携し、Kaien独自の求人紹介をしています。就労移行支援について豊富な経験と実績に基づいたサポートが可能です。

ご相談やご見学は、オンラインでも事務所でも、ご家族だけでも参加いただけます。どうぞお気軽にお問合せください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

監修者コメント

A型作業所はしばらく仕事から遠ざかっていた方の社会復帰に有用な施設です。利用の条件として対象者が決まっており、利用料が必要なこと(場合により免除されることがある)などを押さえておくと良いでしょう。

本コラムにあるように、A型作業所のみで生計を立てることは困難でしょう。このため、障害者年金の受給、障害者手帳による所得税控除の利用など、いくつかの制度を組み合わせる必要があります。また、通院費用が原則1割になる自立支援制度や、所得によっては結核・精神通院医療給付金(公費93)なども有用です。詳しくはスタッフや主治医にお尋ねください。

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。


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