うつ病で休職していて、復職が怖いと感じてしまうケースは少なくありません。復職に不安や恐怖を覚える場合には、そのまま放置せずに、恐怖を覚える理由を把握し、理由に応じて適切に対処することがおすすめです。以下では、復職が怖いと感じる理由とその対処法について、詳しく解説します。
さらに、リワークや就労移行支援などといった、復職を支援するサービスも紹介します。復職への不安を払しょくし、スムーズに復帰するためにも、ぜひ最後まで目を通してみて下さい。
うつ病の休職から復職するのが怖い理由
うつ病で休職していたものの、いざ復職の時期が近づくにつれ「本当に大丈夫だろうか」と不安になる人は多いでしょう。復職に対する不安というのは、病気を抱えていてもいなくても、長く仕事から離れていると、誰でも抱えてしまうものです。そのため、復職への不安をネガティブに捉えなくてよいといえます。
復職への不安を解消するためには、なぜ復職するのが怖いのか、その理由を具体的に挙げて整理することがおすすめです。自分の感情を客観的に把握することで、解決に向けての対処法を検討しやすくなります。以下では、うつ病の休職から復職するのが怖い理由について、解説します。
休職前のように業務ができないかもしれない
復職するのが怖い理由の一つとして、まず挙げられるのは、「休職前のように業務ができないかもしれない」といったものです。
休職して仕事から長く離れていると、仕事の感覚を忘れてしまっていたり、体力的な自信を失っていたりして、仕事をスムーズにこなせないのではと不安に陥る人は少なくありません。
特に責任感が強いと、復職後すぐに休職前のようにテキパキと働かなければならないと考えて、かえって「できるだろうか」と心配になってしまうことも多いでしょう。
しかし、うつ病の休職から復職する場合に大切なのは、「復職後すぐに業務をテキパキとこなさなければならない」と自分を追い込まないことです。復職後は、誰でも、いきなり以前通りに働けるわけではありません。徐々に職場や仕事に慣れていく期間が必要といえます。焦って心身の不調がぶり返してしまっては、元も子もありません。
復職後は、「休職前のように業務がスムーズにできない場合もある」と捉えて、決して焦らないことが大切です。
陰口を言われるかもしれない
職場の同僚などから「陰口を言われるかもしれない」といったことも、復職に不安を覚える理由の一つといえるでしょう。
しばらく仕事を休んでいたことに対して、また、以前のように業務をスムーズにこなせないことに対して、陰口を言われそうで復職が怖いという人は少なくありません。特にパワハラや人間関係などが原因でうつ病になった場合などは、職場の人からの心ない発言に警戒心や恐怖心を抱いてしまうでしょう。
陰口を言われるかもしれないと考えてつらい時には、不安を増大させないためにも、一人で抱え込まずに、身近な人や医師など誰かに相談することが大切です。
また心身の調子が悪化するかもしれない
「再び心身の調子が悪化するかもしれない」といったことも、復職に不安を覚える大きな理由といえます。
休職中は、ゆっくりと過ごすことで心身の回復を図れたものの、復職すると仕事や人間関係などからさまざまなストレスを受けることとなります。ストレスを受けて、また調子が悪くなるのではないかと、心配してしまうのも無理はありません。
悪化を心配してしまうのは仕方がないものの、そもそもうつ病というのは、回復に時間がかかり、その回復には波があるものです。実際のところ、うつ病の場合、一度改善しても6割ほどは再発するといわれています(※)。うつ病のこうした回復の特性を考えると、再発を恐れるよりも、再発は起こりうるものと捉えて、再発を避けるために極力ストレスを避けるよう努める方がよいといえます。
もし、心身の体調に不安がある場合には、十分に体調を整えてから復職するなど、無理をしないようにしましょう。
※参考:厚生労働省「うつ対応マニュアル-保健医療従事者のために- コラム・活動事例・資料編」
うつ病での休職からの復職が怖い時にできる対処法
うつ病での休職からの復職が怖いといった状態を放置していると、復職の日が近づくにつれ、ますます不安が増し、つらい思いをすることになってしまいます。スムーズに復職へとつなげていくためにも、復職が怖い時に自分でできる対処法について紹介します。
なぜ怖いと感じているのか自己分析してみる
復職が怖いと感じるときは、まず、なぜ怖いと感じているのか理由を挙げ、自己分析をしてみるとよいでしょう。
例えば、体力的に業務をこなしていけるかどうか不安があるといった場合には、体力をつけるために1日最低10分は散歩をする、というように対処法を考えて実行することがおすすめです。あるいは、業務量が多くて、こなしていけるかどうか不安に思っている場合は、業務の量自体を調整してもらうよう、会社にあらかじめ相談するといった対処法も考えられます。
復職が怖いと感じる理由は一つとは限りません。複数ある場合は、それぞれの理由を書き出していき、理由に応じた解消方法を検討してみましょう。
まだ復職の時期ではないと焦らず休職を続ける
復職が怖いと感じる場合は、まだ復職に適した時期ではない可能性もあります。
復職が怖いという気持ちのまま、無理に復職すると、復職自体が大きなストレスとなり、再び症状が悪化したり、完全な復職までかえって時間がかかったりすることも少なくありません。
復職後に心身の不調を招かないためにも、復職への不安を感じないほどに、十分に休養を取ってから復職するのがよいといえます。後述しますが、復職においては、医師とも十分に話し合い、無理なく復帰できる時期を見定めていくことが大切です。場合によっては、復職を焦らず、休職を続けるといった選択をすることも必要といえるでしょう。
うつ病の休職からの復職が怖い方に必要な準備
うつ病で休職している場合、実際に復職する際には、さまざまな準備が必要です。特に、復職に恐怖心や不安を抱いているといった場合には、その不安を解消するための準備も必要といえるでしょう。以下では、復職が怖いと感じている方に必要な準備について紹介します。
不安や恐怖について主治医へ相談する
復職が怖い場合には、不安や恐怖について主治医に相談するようにしましょう。復職のタイミングは、会社が医師の診断や産業医の意見などを踏まえて決めますが、復職への不安や恐怖を強く覚える場合は、復職のタイミングとしてはまだ早い可能性もあります。
復職のタイミングが早いにもかかわらず無理に復職をすると、再び心身の不調を引き起こすなど、回復が長引く恐れもあります。
復職の適切なタイミングを見極めるためにも、復職が怖いことについて、きちんと医師に相談し、診断を仰ぐことが大切です。うつ病は再発する可能性も高いため、復職を急ぐなどの無理は避けましょう。必要に応じて復職タイミングを見直すといったことも必要となるでしょう。
復職時期に向けて生活リズムを改善する
復職時期に向けて、休職中に乱れてしまった生活のリズムを改善していくことも大切です。
うつ病で休職している間に、朝は起きられない、夜は眠れない、昼寝をしてしまうというように生活リズムが崩れてしまうことはよくあります。生活リズムが崩れたまま、いきなり復職すると、朝起きることが大きな苦痛やストレスとなるほか、眠いまま働くことになり思うように働けなかったり、体調が悪くなったりすることも少なくありません。
スムーズに復職に移行するためにも、1日の過ごし方を見直すようにしましょう。復職後の生活リズムをイメージして、例えば、朝決まった時間に起き、起きたら外に出て歩いてみるといったことが考えられます。また、朝起きるのが難しい場合は、決まった時間に通う場所を決め、通い続けてみるといったことから、身体をならしていくのもよいでしょう。
無理な行動スケジュールを立てると、できなかったときに落ち込んでしまうこともあるため、できることから徐々に取り組むことが大切です。
仕事をするために必要な体力や気力を取り戻す
復職に向けて、仕事をするための体力や気力を取り戻していくことも必要です。
復職となると、通勤や仕事で体力を使います。休職で療養している間に、以前より体力や気力、集中力などが落ちている可能性があるため、少しずつ回復させていく必要があるでしょう。例えば、家の周辺を散歩してみる、電車に乗って会社の付近まで行ってみるなど、少しずつ体を動かしてみることがおすすめです。また、ストレッチやサイクリングなど楽しいと感じる運動に取り組むのもよいでしょう。
無理のない範囲で、徐々にトレーニング回数や歩く距離などを増やしていくなどして、体力を高めていくことがおすすめです。体力と気力が回復してくると、働き出すことへの恐怖も和らいでくるでしょう。
試し出勤や勤務形態の変更も検討してみる
復職に不安がある場合には、試し出勤や勤務形態の変更を検討してみることも大切です。
試し出勤とは、本格的な復職の前に一定期間、短時間だけ出勤して、職場で働いてみることです。本格的に復職移行して大丈夫かどうか様子を見るための制度です。
生活リズムを整えることや体力や気力を取り戻すことに自信がない場合は、こうした試し出勤を活用してみることがおすすめです。徐々に職場に慣れることで、復職への不安を解消することに役立ちます。
会社に、試し出勤の制度がない場合は、一時的にパートタイムでの勤務が可能かどうかなど勤務形態の変更を会社に聞いてみるのもよいでしょう。
試し出勤や勤務形態の変更を活用することで、出勤に徐々に慣れ、復職への自信にもつなげやすいため、利用を検討してみましょう。
うつ病による休職から復職するのが怖い時に利用できる支援制度やサービス
うつ病による休職から復職するのが怖い場合に利用できる支援制度があります。就労上や生活上の不安の解消に役立つサポートが受けられるため、復職が怖い場合には、利用を検討してみましょう。
リワーク
リワークとは、うつ病や適応障害などの精神的な不調によって休職している人の社会復帰を支援するプログラムです。
リワークは、医療機関や障害者職業センターなどに通って受けることができ、復職に必要となるスキルや能力を高めるプログラムを受けることができます。プログラムを受けることで復職に向けた必要なスキルを高め、自信をつけたり不安を払しょくしたりできるでしょう。
また、復職に関する相談もできるため、不安について率直に相談し、アドバイスをもらうこともできます。
リワークは下記の4種類の実施主体があり、実施主体により受けられるリワークの内容が多少異なります。
- 医療機関
- 就労移行支援や自立訓練(生活訓練)
- 障害者職業センター
- 職場
病状の安定や回復、再休職の予防などを目的とした医学的なリハビリが受けたい場合は医療機関がよいでしょう。
就労移行支援や自立訓練(生活訓練)でのリワークは、後で詳しく解説しますが、職場で使える実践的なスキルや生活に必要な基礎力の習得が可能です。
障害者職業センターのリワークは、職リハリワークとも呼ばれ、休職中の本人と雇用主、主治医の共同体制で職場復帰プランが進められます。職場でのリワークは、休職中の本人が所属する企業が実施するリワークです。
リワークプログラムの詳細については下記の記事も参考にし、自分に合ったリワークを選ぶことがおすすめです。
関連記事:リワークプログラムとは?内容や費用、メリットや効果などを解説
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の就業と日常生活とを一体的に支援するための専門機関です。全国にあるセンター窓口、あるいは家庭訪問や職場訪問などで、就労や生活に関する相談ができます。
うつ病の休職から復職に不安がある場合でも、仕事や生活上の不安について相談ができるため、不安解消に役立つでしょう。相談に対してアドバイスや支援を受けたり、職場定着までフォローをしてもらったりすることができます。必要に応じて雇用や保健、福祉などの関係機関と連携して支援してもらえます。
お近くのセンターは厚生労働省ホームページの障害者就業・生活支援センター一覧などで確認してみて下さい。
就労移行支援
就労移行支援とは、一般企業などに就職したい障害のある方を対象に、就労に必要な知識・スキル向上のための支援を行う障害福祉サービスです。休職している人が復職を目指す場合も利用可能です。
復職に関する相談ができるほか、就労に向けた生活上の相談もできます。また、復職後のスキルや体力に不安がある場合は、職場で使える実践的なスキルや体力の向上のためのプログラムを受けることができるため、不安解消に役立つでしょう。
例えば、Kaienにおける就労移行支援では、下記のような復職に役立つカリキュラムを設けています。不安のあるスキルの向上に役立てることができます。
- 障害学・ソーシャルスキル:コミュニケーションや心と体の管理の他、障害についても深く学べるプログラムです。感情のコントロールやストレス対応方法などが習得できます。
- 実践型!職業訓練:実作業を通して実践的なスキルの向上を図るプログラムです。オフィス事務のロールプレイができたり、IT・デザインなどの専門的なスキルを学べたりします。
就労移行支援の内容などについては下記の記事も参考にして下さい。
関連記事:就労移行支援カリキュラム
自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が自立した生活を送るために、生活上必要なさまざまなスキルの維持・向上のための訓練を行う障害福祉サービスです。
就労移行支援と同じ障害福祉サービスですが、就労移行支援が「就職・復職」を目指すのに対し、自立訓練(生活訓練)は生活上の「自立」を目指す点で異なります。自立訓練(生活訓練)は、家族など周囲の人の手助けを得ずに健やかに毎日が送れることを目的とします。
自立訓練(生活訓練)は、復職の前に、ゆっくりと生活の基礎力を高めていきたいといった場合に役立ちます。基礎力にはコミュニケーション力やストレス耐性なども含みます。復職において、こうした生活上の基礎力に不安がある場合には、自立訓練(生活訓練)で基礎力を鍛えることで、不安が解消できるでしょう。
自立訓練(生活訓練)については、下記の記事もぜひご参照下さい。
関連記事:自立訓練(生活訓練)とは?就労移行支援との違いや併用についても解説
うつ病で休職中に復職が怖いと感じている方はKaienにご相談を
うつ病で休職中に復職が怖いと感じる場合には、不安をそのままにしないで、誰かに相談したり、不安の理由を把握し、理由に応じた対処法を取ったりすることが大切です。
自分で対処するのが難しい、誰かに相談したいといった場合には、リワークや就労移行支援などの復職を支援するサービスを利用することもおすすめです。
リワーク・就労支援について興味がある、復職や再就職に不安があるといった場合には、Kaienにご相談ください。
Kaienでは、発達障害*や精神障害に理解ある企業200社以上と連携しており、就労移行支援、自立訓練(生活訓練)について豊富な経験と実績に基づいたサポートが可能です。
ご相談やご見学は、オンラインでも、ご家族だけでもご参加いただけますので、お気軽にお問合せください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。