就労継続支援とは?A型とB型の対象者、仕事内容や給与の違いを解説

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就労継続支援とは、障害や難病などで一般企業での就労が難しい方を対象に、働く場の提供などをする福祉サービスです。就労継続支援はA型とB型の2種類の形態に分かれており、それぞれ支援内容に違いがあります。また2024年の3月以降、A型事業所の閉鎖が相次いでおり、今後はB型事業所が増加していくともいわれています。

この記事では就労継続支援のA型とB型をそれぞれ説明すると共に、就労継続支援を取り巻く現況についても解説します。これから就労継続支援を利用しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

就労継続支援とは

就労継続支援とは発達障害*などの障害や難病などにより一般就労が困難な方に対して、働く機会の提供や就労に必要な知識、スキルの向上をサポートする福祉サービスです。就労継続支援にはA型とB型の2種類の形態がありますが、どちらも一般企業での就労が難しい方に働く場所を提供している点は共通しています。両者の大きな違いは、「雇用契約の有無」と「対象者」、「給与」にあります。

就労継続支援A型は支援事業所と雇用契約を結び、最低賃金を保障された上で働きます。また、対象年齢は原則18歳から65歳です。

就労継続支援B型は雇用契約を結ばず、最低賃金の保障もありません。しかしA型とは異なり年齢制限がなく、何歳の方でも利用できます。

就労継続支援A型のサービス内容

就労継続支援A型とB型には雇用契約の有無や対象者、給与面といった大きな違いのほかに、サービス内容や主な仕事内容などの違いもあります。就労継続支援A型のサービス内容を詳しく見ていきましょう。

対象者

就労継続支援A型の対象となるのは、「一般就労は難しいものの、雇用契約のもと働ける方」かつ「原則18歳以上65歳未満の方」です。ただし、65歳以上でも一定の条件を満たしていれば利用することができます。雇用契約を結んで働ける方の具体例として、以下が挙げられます。

  • 過去に就労移行支援事業所などを利用したが、一般就労に結びつかなかった方
  • 一般企業での就労経験があり、離職を経て現在は無職の方
  • 特別支援学校を卒業後に就職活動をしたが、企業雇用に結びつかなかった方

給与はいくらもらえる?

就労継続支援A型は、雇用契約にもとづいて働くため最低賃金が保障されています。2022年度の就労継続支援A型の平均給与は月額8万3,551円で、時間給に換算すると947円でした。ただし、働く日数や時間、雇用契約を結ぶ事業所によって月給や時間給が若干異なる点に留意しましょう。

就労継続支援A型は後述するB型と比較すると、安定した日数・時間で働くことが求められる分、給与も高くなる傾向にあります。

出典:厚生労働省 障害者の就労支援対策の状況

利用期間の目安

就労継続支援A型には原則、利用期間の制限はありません。しかし、A型は事業所と雇用契約を結ぶため雇用契約の期限があり、契約更新されなかった場合は利用がその期間内に限られます。就労継続支援A型を継続して利用したい場合は、雇用契約をよく確認し、契約更新が可能かどうか聞いておきましょう。

主な仕事内容

就労継続支援A型での仕事内容はそれぞれの事業所によって異なりますが、おおむね一般企業の仕事内容と大きな違いはありません。職種も幅広く、例として以下のような仕事が挙げられます。

  • レストランやカフェの調理・ホールスタッフ
  • ホテルや商業施設などの清掃業務
  • データ入力などのオフィスワーク
  • WEBデザインや制作
  • 車の部品などの加工業務

仕事内容は一般企業と大体同じですが、1日の勤務時間は一般企業よりも比較的短いケースが多く見られます。

就労継続支援B型のサービス内容

就労継続支援B型は、A型と異なり雇用契約を結ばずに働きます。給与や主な仕事内容、利用期間の目安などを詳しく見ていきましょう。

対象者

就労継続支援B型の対象者は、障害や難病のため雇用契約にもとづく就労が難しい方です。A型と同様に、対象年齢は定められていません。就労継続支援B型の対象者の具体例として、以下が挙げられます。

  • 就労経験があるもの、年齢や体力の面で一般就労が難しい方
  • 50歳に達している方、もしくは障害基礎年金1級を受給している方
  • (上記2つに該当しない場合)就労移行支援事業者などのアセスメントにより、就労面に課題があると判断された方

就労継続支援B型は雇用契約を結んでいない分、体調や障害の程度に合わせて自分のペースで働くことができます。

給与ではなく工賃が支払われる

就労継続支援B型では、就労の対価は給与ではなく工賃として支払われます。労働契約を結ばないB型の工賃は最低賃金の保障がされていないため、工賃が最低賃金を下回ることが多い傾向にあります。

2022年度の就労継続支援B型の平均工賃は月額1万7,031円で、時間額に換算すると243円でした。就労継続支援B型では、労働時間や日数を体調に合わせて調整できる分、実働時間は短くなる傾向にあります。

出典:厚生労働省 障害者の就労支援対策の状況

利用期間の目安

就労継続支援B型は、A型と同じく利用期間の制限はありません。また就労時間や日数は事業所によって些細な違いはあるものの、週1日や1日1時間の就労が可能など、利用者のペースや体調に合わせて柔軟に働けるようになっています。

主な仕事内容

就労継続支援B型の仕事内容は事業所によってさまざまですが、主に軽作業が中心となります。A型で行う仕事よりも細分化された作業を担うことが多く、具体的には以下のような仕事があります。

  • 部品の加工
  • 農作業
  • クッキーやパンなどの製造
  • 衣類のクリーニング
  • 工場でのピッキングやパッキング

B型事業所は就労の場だけでなく、日中安心して過ごせる福祉施設としての役割も担っています。

就労継続支援A型、B型の現況

政府は2024年4月に、採算がとれない就労継続支援事業所の報酬引き下げを実施しました。これによりA型事業所が相次いで閉鎖し、その影響でA型事業所で働いていた5000人近くの利用者が解雇または退職となりました。閉所したA型事業所のうち、4割強がB型事業所へ移行したといわれています。

こうした現況も相まって、就労継続支援B型の事業所数が急増しています。先述のように、B型事業所には労働の場だけでなく福祉サポートを提供する場としての役割もあります。多数の選択肢の中から自分に合うB型事業所を選ぶには、発達障害者支援センターなど地域の支援機関で情報収集を行うことが大切です。

またeスポーツやデザイン、動物愛護・保護、野球など、興味関心を引く内容で勧誘をするものの、実際は勧誘内容に対する支援がほとんどない、工賃が事前に伝えられていた金額と異なるといったトラブルも少なくないため、見学や利用者の声なども参考に無理なく通えるかどうか検討しましょう。

2025年から導入される就労選択支援とは

2025年10月を目途に、「就労選択支援」という福祉サービスが新たに導入される予定です。就労選択支援とは、障害のある方を対象に意欲や能力、適性などをアセスメントして本人に合った適切な就労支援サービスを選べるようサポートするものです。

利用者が就労選択支援を経由して就労福祉サービスを選ぶことで、本人の意欲や適性、能力とのミスマッチが起こるのを防ぐという目的があります。2025年10月以降、就労継続支援B型(A型は2027年4月以降)の利用には就労選択支援の利用が原則必須となります。

就労選択支援は、就労継続支援など既存の就労支援機関が連携して利用者の就労アセスメントを作成し、本人の適正に応じた選択肢を提供します。あくまでも最終的に選ぶのは利用者自身なので、必ず利用者と相談し合意形成をしながら各プロセスを進めていきます。

就労継続支援の利用料と手続き方法

就労継続支援A型・B型では、利用者は働きながら給与(工賃)を受け取りますが、同時に障害福祉サービスを受けることになるため利用料がかかります。利用料の自己負担額の上限は世帯収入に応じて分かれており、生活保護世帯や低所得世帯(市町村民税非課税世帯)は無料です。一方で世帯収入が約670万円以下の方は月額9,300円、それ以外の方は月額3万7,200円が上限となります。

就労継続支援の利用手続き方法は以下の通りです。

【就労継続支援A型の場合】

  1. 就労継続支援A型の事業所が出す求人に応募する
  2. 自治体の障害者福祉窓口で就労継続支援A型の利用申請をする
  3. 生活や障害の状況などの訪問調査を通し認定を受ける
  4. サービス等利用計画書を作成、提出する
  5. 受給者証(障害福祉サービス受給者証)が交付される
  6. 事業所と契約し、利用開始する

【就労継続支援B型の場合】

  1. 主治医にB型利用の許可をもらう
  2. 利用したいB型事業所を探す
  3. 自治体の障害者福祉窓口で就労継続支援B型の利用申請をする
  4. 担当者から簡単な聞き取り調査を受ける
  5. サービス等利用計画書を作成、提出する
  6. 受給者証(障害福祉サービス受給者証)が交付される
  7. 利用を開始する

利用申請に際してわからないことがあったら、自治体の障害福祉窓口や相談支援センターに確認しましょう。

就労継続支援と就労移行支援の違い

就労継続支援と混同しやすいのが、就労移行支援です。就労継続支援が「働く場を提供する」のに対し、就労移行支援は「一般就労に向けた支援」を行います。

利用者の一般就労を目指して支援を提供する就労移行支援では、就労継続支援のように利用者が事業所で働くことはありません。そのため就労継続支援では給与(工賃)が発生しますが、就労移行支援では給与は発生しません。また、就労継続支援は原則として利用期間の制限はありませんが、就労移行支援の利用期間は最長2年間となっています。

働く場を提供するのが主な目的である就労継続支援と異なり、就労移行支援は一般企業への就職を目的としたサービスです。ですので、事業所から一般就労への移行率は就労移行支援の方が高くなります。

Kaienの就労移行支援

Kaienは職業訓練や就活支援、定着支援を通して、利用者の方の特性や希望に合った仕事を見つけられるようサポートします。

Kaienの職業訓練では、常時100種類以上の実践的な職業体験が可能です。職種はオフィスワークから伝統工芸まで幅広く、自分に合う仕事をじっくりと探していただけます。またライフスキル講座、スキルアップ講座、就活講座など50種類以上の講座がいつでも自由に受講でき、自身の特性の理解や苦手への対処法の習得に役立ちます。

就活サポートでは、精神疾患に理解のある200社以上の企業と連携し、他の事業所にはない独自求人を中心に、カウンセラーと二人三脚であなたに合った仕事を探していきます。就職後もスタッフが定着サポートを行い、業務や日常生活の悩みの解消をお手伝いします。

Kaienでは無料で見学会や体験利用を随時実施しているので、気になる方はぜひお気軽にご連絡ください。

就労継続支援は信頼できる事業所選びを

就労継続支援にはA型とB型があり、「働く場を提供する」という役割は共通するものの、雇用契約の有無や対象者、給与(工賃)の額などさまざまな点が異なります。2024年4月から実施された報酬改定や、それに伴うA型事業所の大量閉鎖、就労選択支援の導入など、就労福祉サービスは過渡期にあるともいえるでしょう。

状況が変化する中で、信頼できる就労継続支援事業所を選ぶには、発達障害者支援センターなど地域の支援機関で情報を集めることが大切です。無理なく通えるよう、自分に合った就労継続支援所を見つけましょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます