うつ病で仕事ができない!働けない人が受けられる経済的支援や就労支援制度を紹介

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無気力で憂うつな状態が続いてしまう気分障害の1つであるうつ病。症状が重くなると1日中気分が落ち込み、仕事や生活に支障が出てしまう方もいるでしょう。しかし、うつ病で仕事ができなくなった場合、金銭面を含め将来的な不安を抱えてしまうかもしれません。

本記事では、うつ病により就労が困難になってしまった方向けに、受けられる経済的支援や就労に関する支援について解説します。うつ病で仕事ができなくなっても、利用できる支援はたくさんあるので、ぜひ参考にしてください。

うつ病とはどんな状態?

うつ病は気分障害に分類され、気分の落ち込みが1日中、そしてそれが長期間続く状態を指します。無気力や集中力の低下、倦怠感などが主な症状であるため、場合によっては怠けているように見られることもありますが、本人の気の持ちようでなんとかなる問題ではありません。

日本人の約15人に1人はうつ病になると言われるほど、うつ病は誰にでもなる可能性のある病気です。「気分がすぐれないだけで病気じゃないから」と仕事を休まず働き続けると、症状が悪化する可能性があります。

症状が悪化して不眠や食欲不振などの身体的症状も現れると、日常生活に支障をきたして出勤できなくなる恐れもあるため、休養など早めに適切な対処をとることが大切です。素人判断では難しい部分もあるので、心身に不調が現れたら医療機関を受診することをおすすめします

うつ病の受診の目安

自分がうつ病かもしれないと思っても判断が難しく、いつ病院を受診するべきか迷う方もいるでしょう。以下に受診の目安となる症状をまとめました。自分に当てはまるものがないかチェックしてみましょう。

  • 何をやっても楽しくなく、気力の低下を感じる
  • 集中力が続かずミスが増える
  • 自己肯定感が低下する
  • 将来を悲観する
  • これまで好きだったことに興味がわかなくなる
  • 不眠や食欲不振
  • 口数が極端に減る
  • 残業が100時間を超えている
  • 希死念慮がある

これらの症状にいくつか当てはまる場合は、うつ病を発症している可能性があります。症状が悪化する前に医療機関を受診しましょう。また、十分な休養をとることも心がけてください。

うつ病と発達障害の関連性

うつ病と診断を受けて投薬などの治療をしてもなかなか改善されない、再発をくり返すといった場合、そのうつ病は発達障害*の二次障害である可能性があります。二次障害は生まれつきの発達障害などの特性がベースにあり、それが元で引き起こされる後天的な二次障害を指します。

中にはうつ病だと思ってクリニックを受診したら、特性が当てはまって発達障害が発覚したという方も珍しくありません。後天的なうつ病などの二次障害は、原因となる出来事や環境から離れて適切な治療を行えば完治が見込まれます。対して発達障害は先天性のものであるため、対策はできますが特性とはずっと付き合っていかなければなりません。

一般的なうつ病と二次障害のうつ病とでは、困りごとは共通する部分もありますが、対処法などは異なる部分もあります。二次障害の可能性も視野に入れ、適切な治療や支援を受けることが大切です。

うつ病が仕事に与える影響

うつ病の症状や、二次障害の場合は特性の影響により、仕事での困りごとや悩みを抱える方は少なくありません。症状や状態により異なりますが、一般的に多く見られる困りごとを知り、対策を講じることが大切です。具体例としては、以下が挙げられます。

  • 欠勤や遅刻が増える
  • 仕事の能率が低下する
  • 整理整頓ができなくなる
  • 生活習慣が乱れる
  • 同僚や上司とのコミュニケーションがとれなくなる

うつ病の影響で不眠などの身体的な症状が出ると、生活習慣が乱れて欠勤や遅刻が増えるようになります。また、抑うつ状態や発達障害の特性により、仕事でのうっかりミスや人間関係の悪化などを招く恐れもあるでしょう。これらが常態化すると仕事の能率が下がったり、社内の評価が下がったりと仕事に影響が生じます。

無理をして働き続けると症状が悪化してさらに仕事に悪影響を及ぼすという悪循環に陥るため、まずは休養を心がけましょう。

うつ病で仕事ができない場合はどうする?

うつ病で仕事ができなくなってしまったら、生活に対する不安が大きくなるかもしれません。金銭的な不安や、また働けるかという就労に関する心配事などはあって当然です。

しかし現在は、うつ病などの障害のある方を対象とした経済支援や就労支援などの制度が充実しています。社会復帰を焦らずに、まずは生活習慣を整えてしっかりと休養をとり、心と体の健康を取り戻すことを優先してください。

うつ病の方向けの経済的支援

うつ病で働けない方が受けられる経済的な支援制度はたくさんあります。お金の心配をしていると、不安な気持ちがメンタルに影響して、うつ病の改善を妨げてしまうかもしれません。障害がある方向けの経済的支援の概要を知り、金銭面の不安を払しょくしましょう

傷病手当金

傷病手当金とは、うつ病などの障害で休職中の方の生活を支援するために設けられた制度です。事業主から十分な報酬を受け取れない方が支給対象で、決められた条件をすべて満たす必要があります。

  • 3日間以上連続して仕事を休んでいる
  • 労災認定されておらず、業務外の病気や怪我で療養中
  • 就労が困難で給与の支払いがない

上記に当てはまる人は欠勤4日目以降から、休んだ日にち分だけ傷病手当金が支給されます。ただし支給期間は1年6ヶ月で、支給金額は給与の約3分の2程度である点には注意が必要です。

自立支援医療制度

自立支援医療制度は、うつ病などで通院が必要な場合に、医療費の自己負担額を軽減できる制度です。通常の自己負担額は3割ですが、適用されれば1割負担にまで軽減できます。

うつ病などの精神疾患を有し、継続的な通院が必要な方が支給対象です。ただし、世帯の総所得によっては1ヶ月あたりの自己負担の上限が定められる場合や、対象外の治療などもあるため、市区町村の窓口や病院で事前に確認しておくとよいでしょう。

失業手当

失業中の方を対象に再就職までの生活を守る制度が失業手当(失業給付)です。対象は失業中の方のため、障害の有無は問われません。失業手当の給付を受けるためには以下の条件を満たしている必要があります。

  • 雇用保険の被保険者
  • 離職前の2年間に1年以上の被保険者期間がある
  • ハローワークで求職活動を行っている

なお、うつ病などですぐには働けない場合には、働ける状受給期間の延長も可能です。

障害年金

障害年金とは、うつ病などにより生活や就労が困難になった方に対し、国から支給される公的年金のことです。うつ病で初めて診療を受けた際に国民年金に加入されていた方は障害基礎年金、厚生年金に加入されていた方は障害厚生年金が支給されます。

障害年金の受給対象となる方は「初診日要件」「保険料の納付要件」「障害状態該当要件」などの条件を満たしていなければなりません。

うつ病の場合は1〜3等の等級があり、等級や家族構成によりそれぞれで支給額が異なる点にも留意しましょう。

生活困窮者自立支援制度

生活困窮者自立支援制度とは、働きたくても働けない方などを対象に、生活全般にわたる困りごとを国が支援する制度です。

生活面の自立や就労準備に関する支援など、窓口での相談内容により個別に支援プランを作成してもらえます。専門の支援員がいる安心感や、他の専門機関と連携をとって支援してくれる点も、生活困窮者自立支援制度ならではの特徴です。

うつ病の方の就労に関する支援

うつ病で休職や離職をした場合、次に働くのが怖い、再発が不安と思う方も多いでしょう。そんなときは、就労に関する支援を頼るのも1つの手です。障害者手帳の取得により障害者雇用や、就労移行支援によるトータルサポートなど、利用できる制度や支援を知ることで選択の幅も広がります。適切な治療や休養を経て就労への意欲がわいてきたら、これらの利用を検討してみましょう。

障害者手帳

障害者手帳とは、障害がある方に対し交付される手帳を指します。障害者手帳は3種類ありますが、うつ病の場合は「精神障害者保健福祉手帳」、発達障害の場合は精神障害者保健福祉手帳と「療育手帳」の取得が可能です。

障害者手帳を取得すると、公共機関の割引サービスが受けられるほか、税金の減免や医療費の助成が受けやすくなるなどのメリットがあります。就労に関しては障害者雇用にも応募できるようになるため、就職先の選択肢が広がるでしょう。

就労移行支援

就労移行支援とは、障害のある方が一般企業への就職を目指す際に利用できる福祉サービスです。自分に合った職業を見つけるための訓練や就活サポート、就職後の定着支援など、就労に関する一貫した支援が受けられます。

就労移行支援は通所型で、利用期間は原則2年間です。これまでの就労経験や障害の特性などを踏まえて個別支援計画を作成し、一人ひとりに合わせたサポートで職場復帰を目指します。

Kaienの就労移行支援

Kaienでも就労移行支援を行っており、主に発達障害の方に特化しているのが特徴です。さまざまな分野の専門的な知識と経験があるスタッフが、症状や特性に合わせて二人三脚で手厚い支援を実施しています。

Kaienはカリキュラムの豊富さが強みで、ビジネススキルや自己理解講座など、うつ病や発達障害の症状や特性による困りごとに対する、あらゆるスキルを習得できます。また、職業訓練で体験できる職種は経理や人事、軽作業、プログラミング等の専門職など100種類以上もあるため、あなたにぴったりの適職が見つかるはずです。

就活支援においては、うつ病などの障害に理解のある企業200社以上と提携し、他社にはない独自求人を含む幅広い求人を紹介できる体制が整っています。もちろん、就職後も相談や職場訪問などを通して、安心して働き続けられるよう定着支援も行っています。

就労移行支援の事業所選びは、自分に合っているかどうかが重要です。Kaienでは無料で見学会や体験会を行っていますので、サービス内容や雰囲気などをぜひ体験してみてください。

うつ病で仕事ができないときは支援制度の活用を

うつ病を発症すると、日常生活に支障をきたして働けなくなる可能性があります。うつ病で仕事ができなくなってしまった場合、金銭面や就労面が不安になるかもしれません。

まずは医療機関の受診や適切な休養が大切ですが、うつ病のときに頼れる金銭的支援や就労サポートは充実しています。利用できる制度を知り、心身ともに意欲が湧いてきたら就労移行支援の利用を視野に検討してみましょう。

Kaienでも、障害に対して豊富な経験と知識を持つ専門のスタッフが、特性や困りごとをサポートしながら、あなたに合った仕事を探すお手伝いをいたします。うつ病で仕事ができないとお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。


監修者コメント

精神分析の創始者フロイトの書「喪とメランコリー」では、大切なものを失った時の正常反応と病的反応(うつ病)の違いについて書かれています。こころのエネルギー(リビドー)が、正常反応では失ったものから他の対象に徐々に向かうのに対して、うつ病では自分に向かってしまい、結果自分を激しく責めたり、強い葛藤を抱え続けるのです。

失うものが何であるかは人それぞれでしょう。正常反応である喪では、愛する人や家族を失った時に起こることがほとんどですが、うつ病(メランコリー)では会社で上司に叱責され続けた時に起こるかもしれません。

先ほど述べたこころのエネルギー(リビドー)は、実は病的な状態でも自分が生き延びようとする力強いものですから、患者さんに対して援助者はさまざまなサポートをする必要があります。本コラムに紹介されたさまざまな経済的援助はその一例です。ぜひ、スタッフや主治医に相談なさって、再び活き活きと生活できる力を取り戻してください。


監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。