障害福祉サービスとは?種類や対象者、利用の流れを解説

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身体障害や知的障害、発達障害*などを持つ人は、日常生活や社会生活で困難を感じることも多くあるでしょう。そんなときに利用できるのが、障害福祉サービスです。障害福祉サービスにはさまざまな種類があり、現在の困りごとに合わせて適切な支援が受けられます。

この記事では、障害福祉サービスの種類ごとに支援内容や対象者などを紹介します。利用までの流れも解説しているので、障害福祉サービスの利用を検討している人はぜひ参考にしてください。

障害福祉サービスとは

障害福祉サービスとは、障害者総合支援法に基づいた総合的な支援サービスのことです。障害者総合支援法では、障害を持つ人が日常生活や社会生活を営むための支援を行うことを定めています。

障害福祉サービスは、「介護給付」と「訓練等給付」の2つが中心となっています。介護給付は日常生活で求められる介護に関する支援、訓練等給付は生活の自立や就職といった社会生活に関する支援のことです。

障害福祉サービスの窓口は各自治体で、利用したい場合は自治体の障害福祉窓口での手続きが必要になります。

障害福祉サービスの対象者とは?

障害福祉サービスを利用できるのは、以下のいずれかに該当する人です。

  • 18歳以上で身体障害・知的障害・精神障害のいずれかを持つ人
  • 18歳未満で身体障害・知的障害・精神障害のいずれかを持つ児童
  • 障害者総合支援法で定められた難病患者

上記の精神障害には、発達障害も含まれます。難病患者については、症状によって日常生活や社会生活に支障があると認められる場合に障害福祉サービスを利用できます。

障害福祉サービスの利用には障害手帳が必要?

障害福祉サービスの利用に障害者手帳が必要だと思っている人もいるかもしれませんが、障害者手帳を持っていなくても利用できます。障害福祉サービスの利用に必要となるのは、障害者手帳ではなく「障害福祉サービス受給者証」です。

障害福祉サービス受給者証は自治体が障害福祉サービスの利用が必要であると判断した人に対して交付するもので、障害者手帳のように障害の種類や等級などは記載されていません。

障害福祉サービス受給者証は、利用者が自治体に申請して取得します。交付時に支給期間が定められていて、この期間を超えてサービスを受けたい場合には更新手続きが必要です。

障害福祉サービスの利用料はどれくらい?

障害福祉サービスの利用には、利用料がかかります。利用料は原則1割負担で、世帯所得に応じた負担上限月額が設定されているので、上限以上の利用料を請求されることはありません。

所得を計算するときの範囲や負担上限月額は、障害者と障害児で異なります。世帯の範囲については、それぞれ以下の通りです。

  • 18歳以上の障害者(施設に入所する18、19歳を除く):本人とその配偶者
  • 障害児(施設に入所する18、19歳を含む):保護者の属する住民基本台帳での世帯

負担上限月額は、障害者・障害児ともに生活保護受給世帯と市町村民税非課税世帯は0円です。つまり、障害福祉サービスの利用料は無料になります。

市町村民税課税世帯は、それぞれ以下の金額が負担上限月額です。

障害者

世帯所得負担上限月額
収入がおおむね670万円以下9,300円
上記以上37,200円

障害児

世帯所得負担上限月額
収入がおおむね920万円以下通所施設、ホームヘルプ利用:4,600円入所施設利用:9,300円
上記以上37,200円

障害福祉サービスの種類

ここからは、障害福祉サービスの細かい種類について詳しく見ていきましょう。障害福祉サービスは介護給付と訓練等給付の2種類があり、それぞれさまざまなサービスを実施しています。以下で、サービスの種類と概要を紹介します。

介護給付

介護給付は、日常生活のなかで必要となる介護に関連する支援です。まずは、介護給付に分類される9つのサービスを紹介します。

居宅介護

ホームヘルパーが利用者の自宅に訪問し、日常生活全般をサポートします。具体的には、入浴・排泄・食事等の介護、調理や洗濯、掃除といった家事、生活に関する相談や助言などです。対象者は、歩行や移動、排便などに部分的もしくは全面的な支援を必要とする人です。

重度訪問介護

重度の肢体不自由もしくは重度の知的障害、精神障害によって生活が困難な人の自宅にホームヘルパーが訪問し、介護や家事などの支援を行います。自宅での支援だけでなく、外出時の移動や入院中の支援なども含まれます。

同行援護

視覚障害によって、移動が著しく困難な人を支援するサービスです。外出時に同行し、移動に必要な情報の提供や移動中の援護、必要に応じて代筆や代読も行います。買い物や通院、休日を外で過ごしたいときなど、日常生活で外出する際に利用できます。

行動援護

知的障害または精神障害によって行動が著しく困難な人を対象とするサービスで、行動する際の危険を回避するために必要な支援や援護を行います。自己判断能力が制限されている人、感情のコントロールが難しい人が外出する際などに利用できます。

重度障害者等包括支援

常時介護を必要とするなど、重度の障害を持つ人を包括的に支援するサービスです。居住介護・重度訪問介護・同行援護など、ここまで紹介してきた各支援サービスを必要に応じて切れ目なく提供します。また、重度障害者等包括支援には、後ほど紹介する訓練等給付に該当する支援も含まれます。

短期入所(ショートステイ)

自宅で介護を担っている人が何らかの事情で介護ができないとき、介護を受ける人は一時的に障害者支援施設や児童福祉施設などへの入所が必要となります。その短期入所中の入浴や食事、その他必要な介護を行うサービスです。障害を持つ人だけでなく、日常的に介護を担っている人の負担も軽減できます。

療養介護

長期の入院など医療的ケアに加えて、日常的に介護を必要とする人を対象としたサービスです。主に日中の時間帯で、病院での機能訓練や医療を必要とする介護、食事や排泄といった日常生活上のサポートなどを行います。

生活介護

常に介護を必要とする人に対して、日中時間帯の入浴や排泄といった介護を行うサービスです。生活介護では通常の介護に加えて、創作活動や生産活動の機会を提供します。例えば、パンの製造など、社会生活への参加機会の提供や生活能力の向上につながる支援を行います。

施設入所支援

施設に入所している人を対象とするサービスで、夜間や休日の入浴・排泄・食事などの介護を行います。施設に入所しながら自立訓練や就労移行支援を利用している人も対象です。

訓練等給付

訓練等給付は、自立や就職など社会生活を支援するサービスです。以下で、訓練等給付に該当する9つのサービスを紹介します。

自立生活援助

単身で生活している人の自宅を訪問し、必要な支援を行うサービスです。自立した日常生活を送れるように、情報提供や助言、関係機関との連携などを行います。すでに一人暮らしをしている人や施設から一人暮らしに移行した人、家族と同居しているものの何らかの事情で家族からの支援が見込めない人などが対象です。

共同生活援助

グループホームなどで共同生活を行う人に対して、相談に乗ったり日常生活の援助をしたりするサービスです。介護が必要な場合は、入浴・食事・排泄などの介護サービスも提供します。

自立訓練(機能訓練)

自立訓練には、機能訓練と生活訓練の2種類があります。機能訓練は身体機能や生活能力の向上を目的に、理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションや相談、助言などのサービスを提供します。主に身体障害を持つ人を対象にした、身体機能の維持や回復を目指すサービスです。

自立訓練(生活訓練)

生活訓練では、利用者の自宅を訪問して自立した日常生活を送るための支援を行います。主に精神障害や知的障害を持つ人を対象に、社会生活に必要な能力を向上させるための訓練を提供します。施設や病院を退所・退院した人や特別支援学校を卒業した人など、地域生活への移行時に役立つサービスです。

宿泊型自立訓練

宿泊型自立訓練は自立訓練(生活訓練)の対象者のうち、日中時間帯に一般就労や障害福祉サービスを利用していて帰宅後の生活に支援が必要な人が利用できるサービスです。自宅の設備を利用してもらいながら、家事など日常生活に必要な能力を身につけるための支援、生活に関する相談や助言などを行います。

就労移行支援

就労移行支援は、障害を持つ人が一般企業への就職を希望するときに利用できるサービスです。就労移行支援事業所に通い、職業訓練や職場体験など就労に必要な知識や能力を身につけるための支援が受けられます。また、就職後の職場への定着支援や相談・助言にも対応しています。

就労継続支援(A型)

就労継続支援は、一般企業への就職が困難な人のためのサービスです。A型は雇用型ともいい、利用者と事業所が雇用契約を結んで働く場を提供します。飲食店のホールスタッフやパソコンを使ったデータ入力など仕事内容はさまざまで、自治体の最低賃金以上の賃金が支払われます。

働く場としての役割だけでなく、就労しながら一般企業への就職を目指すための支援も受けられるのが特徴です。

就労継続支援(B型)

就労継続支援(B型)は非雇用型ともいわれ、雇用契約を結ばずに働く場所を提供するサービスです。飲食店での調理や農作業など、軽作業を中心に取り組みます。

作業に対して工賃が支払われますが、雇用契約を結ばないため最低賃金を下回るケースが多いです。B型を利用しながら、A型や就労移行支援、一般企業への就職に向けた訓練も行います。

就労定着支援

自立訓練や就労移行支援、就労継続支援A型・B型などを利用し、一般企業へ就職した人を対象とするサービスです。日常生活や職場について相談に乗りながら、現在の職場で長く働き続けるためのサポートを行います。利用者への支援だけでなく、企業や医療機関などとの連絡調整も行います。

障害者福祉サービスを受けるには?利用の流れと手続き

障害福祉サービスを利用するには、お住まいの自治体の障害福祉窓口で手続きをする必要があります。ここでは、障害福祉サービスを受ける際の利用の流れと手続きについて見ていきましょう。

以下で、介護給付と訓練等給付についてそれぞれの申請方法を解説します。

介護給付の場合

介護給付のサービスを利用する場合、手続きの流れは以下の通りです。

  1. お住まいの自治体の障害福祉窓口で介護給付の申請をする
  2. 障害支援区分の認定を受ける
  3. 「指定特定相談支援事業者」が作成する「サービス等利用計画案」を自治体に提出する
  4. 申請書類やサービス等利用計画案を踏まえ、自治体がサービス量などを決める
  5. 支給決定

指定特定相談支援事業者とは、自治体が指定する相談支援事業所のことです。利用者やその家族にとって最適なサービスや支援内容を一緒に考えてくれます。

訓練等給付の場合

訓練等給付のサービスを利用する場合、手続きは以下の流れで進みます。

  1. お住まいの自治体の障害福祉窓口で訓練等給付の申請をする
  2. 「指定特定相談支援事業者」が作成する「サービス等利用計画案」を自治体に提出する
  3. 自治体の担当者が利用者や保護者に聞き取り調査などを行う
  4. 調査結果とサービス等利用計画案などを踏まえ、暫定支給決定が行われる
  5. サービスを一定期間利用すると、正式に支給が決定される

訓練等給付は「申請すればすぐに利用できる」というものではなく、自治体の担当者からの聞き取り調査や審査を経てから利用開始となります。

障害福祉サービスの探し方

本記事で紹介した通り、介護給付も訓練等給付もサービスの種類が多く、「自分にはどのサービスが合っているかわからない」と悩んでしまう人もいるでしょう。

利用する障害福祉サービスに迷ったら、まずは国が運営する「障害福祉サービス等情報検索」を使ってみてください。障害福祉サービスを提供する事業所は自治体への報告が義務付けられているので、お住まいの地域にあるすべての事業所について調べられます。

就労移行支援事業所などの情報をまとめている民間のサービスもあるため、検索エンジンで地域名と利用したい障害福祉サービス名などで検索してみるのもおすすめです。

一人で不安な場合は相談支援事業者に相談してみよう

「障害福祉サービスの利用も含めて、障害について困ったことを相談したい」「障害福祉サービスの手続きが複雑で、自分一人で進めるのは不安」といった場合は、相談支援事業者に相談してみましょう。

相談支援事業者は障害を持つ人の相談に乗ってくれる事業者で、障害福祉サービスの利用や日常的な困りごとについて相談できます。指定一般相談支援事業者と指定特定相談支援事業者の2種類がありますが、「どのサービスを利用したらいいか相談したい」といった場合は、幅広い相談を受け付けている指定一般相談支援事業者の利用がおすすめです。

自分にあったサービスを探してみよう

障害福祉サービスは、障害を持つ人の日常生活や社会生活の支援を行うサービスです。日常生活で介護を必要とする場合は介護給付、就労や自立など社会生活についての支援を受けたい場合は訓練等給付を利用します。

障害福祉サービスは種類がたくさんあり、自治体の窓口で複雑な手続きが必要なため、利用するハードルが高いと感じてしまう人もいるかもしれません。利用するサービスに迷ったり、一人で手続きをすることに不安を感じたりする人は、相談支援事業者に相談してみましょう。

就労移行支援のサービスを利用したいと考えている人は、ぜひKaienにご相談ください。Kaienでは発達障害の強み・特性を活かした就労移行支援を実施していて、専門家が推奨する充実したプログラムをご用意しています。ご利用説明会・見学会も開催しておりますので、気になった人はぜひお問い合わせください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修者コメント

アメリカのファウンテンハウスという施設をご存知ですか?1940年代にニューヨーク州立病院を退院した患者の有志たちが、自助グループを作って生活や就労を助け合いながら、自分たち精神障害者も社会の一員として意義のある人生を送りたいと活動を展開しました。まさに草の根的に患者さん同士が助け合いながら生活する術を身につけていくパワーは、いかにも開拓精神に溢れたアメリカ文化ならではと言えるかもしれません。

ファウンテンハウスの他にも、精神科病院を全廃に導いたイタリア人精神科医フランコ・バザーリアの成功例によって、社会が変わることで障害者の人生がより豊かになるというコンセプトが主流になりました。本コラムに紹介された数々の精神障害福祉サービスは、このような歴史の流れに沿って創設されたものなのです。

こうして現在の私たちは豊富な福祉サービスを受けられるようになったのですが、実はサービスを受けることよりも大切なことがあると私は思います。それは、ファウンテンハウスで見たように、患者さん一人ひとりが自分の人生をどうかたち作っていくか、そしてどう社会に関与するかという主体性なのです。そのために使えるサービスについて、主治医やスタッフとよく話し合ってくださいね。


監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。