Vineland-II適応行動尺度とは
Vineland-II適応行動尺度は、検査対象者の生活への適応水準を把握し、支援計画を作成するために役立ちます。「知的発達」だけでなく「適応行動」という観点で、日常生活上の困りごとや支援が必要な部分を把握することができます。この検査だけで医学的な診断に結び付くわけではなく、支援方針を検討するための材料として実施されることが多いでしょう。
対象年齢は0歳~92歳11か月までと幅広く、検査者が検査対象者をよく知る回答者(保護者や介護者、配偶者など)に半構造化面接を用いて聞き取りを進めていくことに特徴があります。半構造化面接では、ある程度決められた質問項目をもとに、対象者の回答によって質問の順番を変えたり、より詳しい内容を聞き取るための追加の質問をしたりしながら情報を集めていきます。検査対象者や回答者の状況に応じて、検査実施の標準時間(20分~60分)を超えて聞き取りが実施されることもあります。
回答者は検査対象者本人ではなく、ご本人をよく知る方(保護者や介護者、配偶者など)が設定されています。たとえば、お子さんの日常生活の状況について保護者の方が答える、といった使われ方が比較的多いと考えられます。あるいは、施設などを利用されている成人の方について、施設職員など日頃の検査対象者の状況をよく知る方が回答するといったケースも考えられます。
Vineland-IIで評定される「適応行動」には、コミュニケーション、日常生活スキル、社会性、運動スキルがあります。またそのほかに、不適応行動を評価する指標もあります。「適応行動」は、それぞれの年齢で重要視されるものも異なりますし、検査対象者ご本人がかかわる環境の期待や基準によっても変化します。また、ご本人が受ける支援の効果によっても変容します。適応行動の評価では、行動そのものを評価し、個人の可能性(今後このように変化しそう)といった点は評価しません。
Vineland-II適応行動尺度に含まれる項目
Vineland-II適応行動尺度は、4つの適応行動領域と、1つの不適応行動から構成されています。それぞれの尺度は、2,3の下位尺度にわかれています。
具体的には以下の項目があります。
- コミュニケーション:受容言語・表出言語・読み書き
- 日常生活スキル:身辺自立・家事・地域生活
- 社会性:対人関係・遊びと余暇・コーピングスキル
- 運動スキル:粗大運動・微細運動
- 不適応行動:不適応行動指標・不適応行動重要事項
適応行動の4つの領域では平均を100とした標準得点(領域標準得点と適応行動総合点)から相対的に検査対象者の適応行動の発達水準がわかります。
また4つの適応行動領域を構成する2~3の下位領域(例えば、コミュニケーションの領域では受容言語・表出言語・読み書き)では「v評価点」が算出され、領域内での発達の凸凹がわかります。下位尺度の粗点からは、点数に相当する年齢を参照することができ、検査対象者の得点がどの年齢集団の平均水準と一致するか知ることもできます。
検査結果では各項目の凸凹がグラフで示され、検査対象者にとってどのような点が強みで、どのような点が弱み(支援が必要)なのかを視覚的に確認することができます。
Vineland-II適応行動尺度の結果をどのように活用する?
前述のように、Vineland-II適応行動尺度では検査対象が日常生活でどの程度パフォーマンスを発揮しているかを確認することができます。
たとえば、発達障害*のある方で、身辺自立や家事、時間やお金の管理に困りごとを抱える方は一定数いらっしゃいます。検査項目の日常生活スキルの中では、身辺自立(食事や身の回りの衛生管理など)、家事、地域生活(時間やお金、電話などのスキル)の日常生活スキルの程度がわかります。また、自閉スペクトラム症の方の場合は、コミュニケーションや社会性の領域で障害特性に伴う困難さが示されることがあります。
検査を通してご本人の得意・苦手なことを整理し、苦手にどのように対応していくのか具体的な方針を立てることになります。Vineland-II適応行動尺度では苦手な部分だけでなく、ご本人の中で得意なこと、強みを確認することもできます。苦手への対応として、得意なことを活かして対応するという方向性を考えることもできます。知的発達は標準程度あっても、Vineland-II適応行動尺度で検討される日常的なコミュニケーションや生活スキルに困難さを持つ場合も珍しくありません。
この検査は、日常生活におけるご本人の困り感を軽減し、より適応的に生活をするためのヒントとして役立てることができます。
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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます