見極めのカギは「職場実習」!自分に合った会社で安定して働く

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Kaienで実施しているプログラムの一つである『ようこそ先輩』は、Kaienの就労移行支援を修了し、実際に働かれている先輩方の生のお話を聴ける会です。本記事は、そのインタビュー動画の内容を編集し、記事にまとめています。

今回取り上げるのは、自分に合った働き方ができる職場と出会えたことにより、心身共に軽くなったと語るA先輩。乗り鉄・撮り鉄・収集鉄の3拍子が揃う、無類の鉄道好き。他には、自衛隊のファンでもあるそうです。

インタビュー実施日:2024年4月20日


幼い頃から、うすうすは感じていました

両親から聞いた話ですが、子どもの頃の私は、食べることがあまり好きではなかったそうです。小食、偏食は今も続いていて、味や触感の他にも、見た目が嫌という理由で食べないこともありました。あとは、勉強が得意ではなくて。自分では真面目にやっているつもりなんですけど、学校と塾の先生からはでたらめに書いちゃだめと言われて、よく泣かされていました。

発達障害と分かったのは、社会人1年目の時です。仕事で困ることが多かったり、精神的に辛くなってしまったりして。その時に、通院してみたら診断が下りました。

発達障害については、もともと中高生の頃から知っていて、ネットにあるチェックリストをやってみたら当てはまるものがあるなと感じていました。例えば、感覚過敏とか不注意、多動性とか。

苦手なことは避け、自分の強みを活かして働く

仕事は、現職を含めて2社経験しています。前はクリーニング工場で働いていて、そこは新卒で入社した会社でした。当時はまだ診断を受けていなかったので、一般枠・クローズです。

前職で大変だったのは、機械音ですね。もともと大きい音が苦手で、そういった環境だと落ち着かず不安になってしまうことや、周囲の音によって上司の話が聞き取れないということがありました。また、残業も多い職場だったので、いろいろ考えて退職することになりました。

そのあとは、職業訓練校に通うか、転職活動をするかで悩みました。けど、その時点ではすでに「配慮がある環境で働きたい」ということと、自分の強みを知ったうえで働きたいという気持ちがあったので、就労移行に通うことに決めました。

Kaienにしたのは、発達障害のある方に特化していることと、実際に特性を強みに変えて働いている人がいることを知り、それらに惹かれたからです。

訓練で印象に残っているのは、「オンライン店舗(訓練生が実際に運営側の役割を担い、仕入れから販売までを体験できるプログラム)」という業務です。ネットにアップする時に商品の紹介文を考えたり、載せる写真の明るさの調整をしたりするのが難しかったです。

けど、一つひとつ丁寧に確認することや、上司・同僚に報連相をすることの大切さを知ったので、学びもたくさんありました。

会社を決める前に「職場実習」に行くべし

―――当時の「就活の軸」は何ですか?

私が就活をする時は、以下のことを軸にしていました。

  • 大きな音が聞こえない仕事
  • 臨機応変/スピード/マルチタスクを求められない
  • 曖昧な表現が苦手なので、具体的に分かりやすく説明してもらえること

―――就活でやっておいてよかったことはありますか?

ダントツで実習です。私は一週間やっていたのですが、そこで基本的なビジネスマナーなどをイチから学ぶことができたのでそれがすごく良かったなと思います。

ちなみに実習は、『ボクの彼女は発達障害2―一緒に暮らして毎日ドタバタしてます!』という本の中に、実習を受けてオファーが来たという話があって、それで実習の存在を知ったんですよね。前職は面接だけで入社しましたし、高校の時も所属する科によってはインターンシップを受けられるところがあったのですが、私は普通科だったのでそういうのを受けられなかったんです。そういったこともあって、実習はすごく興味がありました。

―――実習をしてよかったことはありますか?

自分の希望している条件で働けるかを確認できたことです。あとは、どんな人と働くことになるのかを、実際に自分の目で確かめることができたのはよかったです。

初めての実習は誰でも不安に感じると思いますが、現場の上司や先輩にどんどん頼って問題ありません。また、実習の中では会社が自分のことを評価する一面は確かにありますが、自分も会社のことを評価するくらいの気持ちで臨んでよいと思います。

―――現職に決めた理由を教えてください

自分に合った働き方ができると考えたからです。他に考えていた企業もあったのですが、その企業は業務に正確性が高く求められる可能性があると聞いて、辞退しました。

苦労はあるが、続けられているのは今の会社だから

今の会社は、入社してから2年くらい経ちます。業界は製造業で、雇用形態はアルバイトです。今担当している業務は、段ボールの糊付けと貼り付け。段ボールは切った時に細かなごみが出てくるので、それを取ることもしています。あとは検品作業や段ボールの結束、梱包作業などもしていますね。

―――会社から配慮してもらっていることはありますか?

3つあります。1つ目は「指示・説明は具体的にしてもらうこと」。2つ目は、眩しいのが苦手なので「サングラスを装着する許可をもらっていること」。3つ目は、大きい音が苦手なので「耳栓を貸してもらっていること」です。特に今の環境は、もともと大きい音が出る所なので、他の先輩方も耳栓をしている人が多いです。

―――転職してから変化したことはありますか?

一番は、心身共に軽くなったことですね。前の職場では、人間関係につまずいてしまっていて、ひどい時は人間が怖い、信用できないというような状態になっていました。

―――転職してから苦労していることはありますか?

相談にためらってしまうところがあることです。前の職場では、勇気を出して相談したら「最初は誰だってそうだ」と言われてしまうことがあったので、それが原因で相談するのが苦手になりました。

あとは、仕事の環境が変わることが苦手です。実は最近、自分が所属している部署のリーダーが代わり、精神的にダウンしてしまっていました。先月は自分の知っている人がやめてしまったり、異動によって周りの人が変わってしまったり、そういったことが起こると自分がどうなっているのか分からなくなってしまいます。

決めるのは上司じゃない。最終的に決めるのは自分

―――今後の目標を教えてください。

まずは現職で安定して働き続けたいですね。あと、一人暮らしをしたいです。親が居なくなってしまった後のことを考えると、自分でしっかりやらなければなと思います。

―――最後に皆さんへのメッセージはありますか?

今働いている人の中には、上司から「そんなんじゃどこに行っても通用しない」などと言われている人がいるかもしれません。けど、今は転職するのが当たり前の時代だから、理解してくれない上司がいても、気にしなくて大丈夫です。

あとは、私の好きな本『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)」からの引用なのですが、皆さんに伝えたい言葉があります。

人には個体差。個人差があり、向き・不向き・合う・合わないがある自分の人生や自分の選択は、上司・先輩が決めることではなく、自分で決めること

生きていると、周りからアドバイスはたくさん言われると思いますが、最終的に自分の進路を決めるのは自分です。けど、もし自分で決めるのが難しい時は、上司や先輩からアドバイスを聞いて、方向を決めるのもありですね。

【A先輩おすすめの書籍】

ボクの彼女は発達障害2―一緒に暮らして毎日ドタバタしてます!

「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)

仕事がしんどくてヤバいと思ったら



所属拠点:Kaien横浜

利用期間:11ヶ月間(2021年6月から)

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われています

付録

下記はA先輩から実際に提供いただいたお写真。初めの紹介文で、鉄道と自衛隊のファンであるとご紹介させていただきましたが、そのことが分かる2枚です。