100社以上受けたTさんが考えた、内定に必要な6つのポイントと、企業研究の確認点4つ

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Kaienで実施しているプログラムの一つである『ようこそ先輩』は、Kaienの就労移行支援を修了し、実際に働かれている先輩方の生のお話を聴ける会です。本記事は、そのインタビュー動画の内容を編集し、記事にまとめています。

今回ご紹介するのは、ピアノやマラソン・将棋を趣味にしているTさん。ASD(自閉スペクトラム症)と軽度の難聴、トゥレット症候群(音声チックや運動チックなどが1年以上持続する疾患)の音声チックを持ちながら、就職と転職、職場の定着を実現しているコツを詳しく伺いました。

インタビュー実施日:2024年10月5日

可愛がられて幸せだった幼少期と、よく喧嘩をしていた思春期

生まれてすぐに知的障害と軽度の難聴を宣告されました。のちにASD(自閉スペクトラム症)と診断され、トゥレット症候群の音声チックもあります。

話せたのも歩けたのも2歳を過ぎてからでした。最初は地域の障害児施設に通っていましたが、その施設に紹介された幼稚園に年中から入園しました。とても可愛がられたので、いい思い出です。

小学校では支援級と普通級の両方に通っていました。障害に理解がない先生がいたり、いじめてくる子もいたりしましたが、味方になってくれる同級生もいたため、嫌なことばかりではありませんでした。

高校は通信制に通いましたが、あまりいい思い出がありません。元不登校の生徒が多い学校で、不登校でなかった私とは合わなかったように思います。私はよく喧嘩をしていたので、どちらかというと問題を起こす方でした。

Kaienで就活支援を受けるまでの経緯

(ピアノが趣味のTさん。今練習しているのは「ラ・カンパネラ」)

大学3年生のとき、Kaienの発達障害*・グレーゾーンの学生向け支援サービス「ガクプロ」に通い始めました。ガクプロには就職支援もあったのですが、大学3年生が終わるまでインターンなどの就職活動を行いませんでした。

大学4年生の4月に親が慌てて大学の就活支援センターに連絡したことから、ガクプロと連携して就活を始めました。しかし、行きたかった企業から何度も連絡をいただいたのに無視してしまい、就職先が決まらないまま卒業しました。

卒業後はKaien東神奈川に入会して、就職に向けた訓練を開始しました。当時は考えが甘いところがあり「新卒で受かるかも」「Kaien入会後にすぐに決まる」などと考えていました。

手厚い環境で就職できたが、契約期限があるため転職

就労移行の契約期限は2年間ですが、あと5ヶ月で契約が終わる頃、ようやく準公務員として中高一貫校に就職が決まりました。主な仕事内容は印刷、生徒資料の整備やデータ入力、力仕事などです。多い時には1日中印刷し続けることもありました。

1日6時間の就労ですが、通勤に往復4時間と毎日大変でしたが、無遅刻で3年半頑張りました。支援員1人に対して従業員が2人と手厚い環境でしたが、面倒見の良い方に毎日怒られていたと思います。

しかし、準公務員だったため満期5年の契約でした。また、Kaienの就労定着サービスが3年で終わるため、早めに転職活動を行うことにしました。

支援員がいない環境での工夫とは?

転職活動ののち、無事に現職の医療機関に就職できました。現職では、当直医師が夜に寝る当直室のベッドメイキングなどを午前中に行い、午後はアンケート集計や分析、書類の処理などをしています。

中高一貫校の前職と、医療機関の現職の大きな違いは、支援員の有無です。前職は支援員がいましたが、現職は支援員がいません。

支援員がいると、ミスをしたり疲れたりしたときに、ミスを指摘する・休ませるなどの管理や支援をしてくれます。しかし、支援員がいない現職では、すべて自己管理しなければなりません。また、他の職員との関係性も重要ですが、あまり相手にしてもらえないこともあって、寂しいこともあります。

「これやっといて」など、初めての業務でも指示があいまいな場合が多々あります。技術的なことはスマートフォンで調べていますが、どうしても分からない場合は依頼主に聞きに行かなければなりません。しかし、依頼主が忙しくて不在にしていることがよくあり、その場合はすぐに手をつけずに周囲の人に相談するようにしています。

100社以上受けて考えた、内定に必要なこと6つ

私はこれまでに100社以上を受けてきましたが、ほとんど受かりませんでした。この経験から、私が内定に必要だと思うことを6つ紹介します。ぜひ今後の就職活動の参考にしてください。

1つ目は企業研究です。特に重要だと感じているので、次の章で詳しく紹介します。

2番目が履歴書です。現在と、大学卒業時の履歴書の質はまったく違います。履歴書の質はとても重要だと思います。

3番目が態度や見た目です。スキルがあっても態度や身だしなみが良くないと、内定をいただくのは難しくなります。

4番目が志望意欲です。私は行きたい業界を絞れなかったため、志望意欲が高まりませんでした。

5番目は専門的な知識や技術です。障害者枠はあまり関係ないかもしれませんが、知識や技術がある方が、気に入ってもらえると思います。

6つ目は自分の障害特性を理解することです。障害特性に応じた配慮事項を、確実に企業に伝えなければなりません。これができないと、企業も配慮できないためです。

なお、スキルを重視する企業、意欲を重視する企業など企業によって方針がさまざまにあると思うので、参考程度にしてもらえると幸いです。

企業研究の確認ポイント4つ

ここでは、私なりの企業研究の方法と要点を紹介します。

1つ目が雇用実績です。障害者の雇用実績の有無が最も重要だと思います。障害者を採用しない方針の会社に採用してもらえる可能性はほぼありません。

2つ目は昇給・賞与があるかどうかと、保険にちゃんと加入しているかどうかです。ここまでの2つで、候補の会社を絞ります。

3つ目に環境・社風です。可能であれば、会社説明会への参加をおすすめします。もし会社説明会に行ったら感想をまとめましょう。志望動機を書く際に参考になります。

4つ目に自分が働き続けられそうな職種・業務内容があるかを見ましょう。できないことに応募しても、働き続けるのは難しいと思っています。

職場で評価してもらうには? 4つの注意点や工夫を解説

職場で評価してもらうには、1つ目に対人スキルを磨くことが重要だと考えています。対人スキルが上がれば、皆から信頼を得られるようになると思います。

2つ目が専門知識を身に付けることです。現在は医療連携室という部署にいます。主に紹介先・紹介元病院とのやり取りを行う部署ですが、そういった業務はまだ任されません。今は事務的な作業がほとんどで、新しい作業を任せてもらうには、医療知識を身につけないと厳しそうです。

3つ目が身だしなみを整えることです。私は細身のせいか、よくズボンからシャツが出てしまいます。歩き方もとぼとぼしているようで、堂々としなさいとよく言われます。障害の特性かもしれませんが、そこを改善したいです。

4つ目が業務の正確さを高めることです。ゆっくりでもいいから、間違わずに行うことが重要です。慣れてきたら、効率も考えながらスピードを意識して行います。急ぎ過ぎたり集中し過ぎたりすると、ミスにつながる場合が多いので、一旦休憩を取ります。

長く働くにはモチベーションの維持が重要

長く働き続けるには、モチベーションの維持が必要です。現職では半年の試用期間が終ったところですが、同じ作業ばかりで正直ちょっとダルいと思ってしまうこともあります。しかし、仕事がつまらない、対人関係がよくないと思ってしまうと、退職につながってしまうでしょう。

目の前のことに集中するのが苦手なのですが、集中すればするほど新しい発見があります。この新しい発見が、モチベーションの一つです。

また、企業から「ベッドメイキングは完璧」と言われていますが、アンケート集計やデータ入力はミスしてしまうことがあります。アンケート集計やデータ入力も完璧にできるようになって、新しい仕事を任せてもらえるように頑張っています。

諦めなければ何かがある!

(休日には将棋を指すのを楽しみにしているそうです)

先述したとおり、100社以上受けてもほとんど内定をもらえませんでした。諦め半分で就活していたこともありましたが、挑戦し続けることで内定をもらえたと思います。

「諦めなければ何かがある」と思って、頑張ってください!

所属拠点:Kaien東神奈川


※インタビュー内容については、表現を一部改変しています。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われています。