
発達障害*に気付いたのは、大学1年生の時です。心理学の講義を受講している時に、初めて「発達障害」というものを知りました。部分的に自分に当てはまると思うことがあって、自宅でも調べてみたんです。そうしたら、やっばり自分の特性がそれに近いなと思うようになって――。
そう話すのは、京都大学大学院に進学し、研究職を目指されていたというSさん。今回は、「発達障害×高学歴」というテーマでSさんにお話を伺いました。
発達障害から来る困り感と、発達障害が発揮するプラス要素の二面性について、これまでの経験を通して語っていただいています。
研究者は困難な道だった
幼い頃は、自然科学が好きな子どもでした。特に天文の分野が好きで、頻繁に天体望遠鏡を担いでいろいろな所に行っていました。外に出て身体を動かすのも好きですし、家で自然化学系の本を読むことも好きでした。家にある本はほとんど読んでいたと思います。歴史、文学、何でも好きです。
その頃から、周囲と自分は少し違うなと思っていました。幼稚園に通っていた時は、周りの子どもたちと上手く馴染めないこともありましたね。でも、はっきりと自覚を持ったのは、自分が「発達障害」ということを知った時です。
発達障害の特性としてあるのは、ざわざわとした環境だと周りの声が聞こえなくなることと、文章を組み立てるのに時間がかかることです。特に文章は、小学生の頃から苦手で、入学式の感想を求められた時に全然書けなくてとても困ったのを覚えています。
研究者を諦めたのもそれが理由のひとつです。研究計画書や発表資料、論文など、研究者は文章をたくさん書き続けなければいけませんが、それらの作業に人よりも時間をかけすぎてしまうところがありました。
また、その後の就活も苦戦しました。もともと研究者の道しか頭になかったので、民間での就職をどうすればよいか、どこに相談をすればよいか全く分かりませんでした。中でも、特に面接が難しかったですね。面接にどう対策をすればよいかで悩んでいたところ、就労移行支援事業所Kaienにつながりました。
好きなことをとことん追求した学生時代
実を言うと、高校時代はあまり勉強していなかったんです。当時は演劇部に所属していて、かなりそちらに熱中していました。そのため、受験勉強を本格的に始めたのは人よりもかなり遅く、おそらく12月頃だったと思います。
でも、一般的に見ると学業の成績は、平均より少し上くらいだったと思います。クラスで勉強会を開くときは、私が中心になることが多かったので。部活を辞めてからは、基本的に起きている間はずっと勉強していました。
大学院を目指す時は、もっと長い間勉強していました。私の研究対象は「超弦理論」というものだったのですが、大学3年次の時点では、進学をしてもっとその内容を突き詰めて学びたいという思いがすでにありました。
そもそも私が物理学に関心を持ったのは、『物理現象を数式によって予言できる』ということにとても感動したことがきっかけであって、そこから物理学の道に進もうと思うようになったんです。幼い頃から天文が好きで、その中でも一番の関心はブラックホールでした。「ブラックホールについて、理論的に説明できるようになる」そんな研究がしたいと思い、研究者を目指しました。
努力する時間はいくらあっても足りない
ASDの特徴である「ひとつのことを追求する」ところは、自分にも部分的に当てはまると思います。私は基本的に、何かひとつ目標を決めたら、それに向かってひたすらこだわって追求します。ただ、目標に到達した時に一旦立ち止まって俯瞰する瞬間があり、そこで次の方向性について決める時があります。
普段は論理的に思考する性格ですが、その瞬間に関しては直感で動いていると思います。アンテナを広く取り、興味を持ちそうなものを探して、「これだ」と思ったものに真っすぐ突き進んでいくイメージです。
ひとつのことに集中している時は、時間が気にならないくらい同じことを追求し続けることができます。その時は疲れを感じません。
また、努力することも得意だと思います。例えば、大学や大学院に入学するために勉強をしていましたが、きついと感じる瞬間はなく、時間はむしろもっとあってもいい、むしろ欲しいと思っていました。
学び続けること。それは自分の本質
Kaienに来るまで「発達障害」というのは、自分にとって「ただそこにあるもの」として認識していて、特にどうこうしていこうとは思いませんでした。しかし、Kaienに通うようになって、自分がどういう人間なのかを知りたいと思うようになりました。今後は自分が得意なことを大切にし、それをきちんと理解していきたいです。
今はIT系の就職を目指していて、IT系の中にどんな分野があるのか調査している段階です。直近の目標としては、まずは自分の適性を活かして就職すること。そして、就職した後は、その職場で安定的に働いていくことを目指したいです。
おそらく、今後も新しいことを学ぶこと、努力することはずっと続けていくと思っています。自分はそういうものなので。その中で、興味があるものをどんどん勉強して、そこで得たものをアウトプットしていくと思います。

近所の山の山頂からの1枚。身体を動かすことが好きで、学生時代から散歩やハイキングが趣味であるとのこと。こちらの山は散歩コースのひとつであるそうです。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
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