発達障害の診断なし・ただ困り感はあり。自信が持てない自分から脱却するには?

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▪年齢:30代前半
▪診断名:なし
▪仕事における苦手なこと:優先順位付け、スケジュール管理、マルチタスク
▪就職先:IT企業(一般枠)

昔から困ることがよくありました

―――幼い頃はどんなお子さんでしたか?

マイペースな人間だと昔から言われていました。小学生の頃は、給食を食べるのが遅くて、みんなが食べ終わって掃除の時間が始まっているのに、一人だけ食べているような子どもでした。今考えると、迷惑をかけていたなと思います。

あと、ある程度の年齢になるまで、バスや電車に一人で乗ることが出来ませんでした。覚えるのがとにかく苦手で、すぐに忘れてしまうんです。何度か行っている友達の家も、駅からの道のりを忘れてしまい、友達に電話して迎えに来てもらったことがあるほどです。

―――診断名と苦手なことを教えてください。

実は特定の病名はなくて、主治医の先生からは「発達障害はない」と言われました。精神の方は、大学時代に気持ちがかなり落ちてしまい、うつに近い症状がありました。今も完治はしていません。

苦手なことは、段取りを立てることや、見通しを立てて行動をすることです。普段から行き当たりばったりで行動をしてしまっているのですが、そもそも先を想像しようと思っても全くイメージが付かないんです。だから、スケジュール立てというのも苦手です。

―――Kaienにつながる前はどんなことをされていましたか?

前職はコールセンターのオペレーターのアルバイトをしていたのですが、丁度コロナが流行っていた時期で、その影響もあり会社の方針で辞めさせられてしまいました。

その後は、引きこもりのような状態になっていました。もともと自分に自信が持てない性格で、どうせ社会に出てもお荷物扱いされるだけだろうというような卑屈な気持ちがありました。就活の他にも、専門学校や職業訓練校に行く選択肢はあり、行動しようとは思ってはいたのですが、とにかく働くことへの意欲が持てなくて。何をやってもうまくいかない、結果が伴わないという状態が続いていました。

「人に頼る」のは悪いことではない

―――Kaienで訓練を始めようと思ったきっかけがあれば教えてください。

両親に勧められたのがきっかけです。現状を変えたいとはずっと思っていましたが、間違いなく自分一人の力だけでは無理だと感じていました。Kaienをきっかけに、何か手に職をつけられればと思いました。

―――訓練では主にどんなことをされていましたか?

進みたい方向がITの道だったので、主にプログラミングに関する学習に取り組んでいました。バックアップはもちろんしていただきましたが、最終的に自分の力で書籍に関するアプリケーションを完成させることができて、それがすごく自信になりました。

―――訓練を通して学んだことはありますか?

一番は人に頼ること、相談することです。今まで自分は、何でもかんでも自分一人で成し遂げようとしてしまうところがあり、なかなか人に頼れないところがありました。

けど、悩んでいるだけで作業が何も進まないことも多くあって、それではやっぱり就職しても周りに迷惑をかけてしまう。だから、意固地になるのは良くないと感じました。

周りに聞けば早く解決できるし、それだけ生産性も高まる。自分の中ではそれが一番大きく心に残っています。

―――訓練開始前に比べてご自身が変わったと思うことはありますか?

Kaienに通うまでは、何をするにも自信がなくて、かなり卑屈になっていました。何をやっても自分はどうせだめだと思っていました。

けど、訓練の中でいろいろなことを経験して身に付けたことで、意外と自分でも社会の役に立てることがあるんじゃないかと思えてきて、前向きな気持ちになることが出来ました。

自信がなければまずは経験値を増やす。足踏みしてはいけない

―――就活をしていた時は、どういった業界を目指されていましたか?

目指していたのはIT業界です。プログラミングはパズルを組み立てていくような楽しさがあって、それが自分の思い通りに動いた時に達成感がすごくあったんです。それが決め手になりました。

―――就活で苦労したことがあれば教えてください。

先ほど、自信がついてきたと話しましたが、それは昔と比較してということであって、自分の中で確固たる自信というのは未だにないんです。だから、面接でもその自信のなさというのが表れてしまい、企業側に良い印象をあまり与えられませんでした。

その対策としては、とにかく面接練習をやり込みました。私は特にイレギュラーな質問への回答が苦手だったので、講師の方にお願いして想定問答集にない質問も挟みながら対応していただきました。

―――落選通知が続く中でも、諦めずに果敢に面接を受け続けていた印象です。なぜできたのか知りたいです。

楽観的に考えていたことが大きいですね。どうせ落ちてもまだ選択肢があるのだから、後ろ向きに考えていても仕方がないと思っていたんです。おそらく全部で15社くらい受けたと思います。もちろん落ちた時は若干へこみましたけど、そこで足踏みしないということは結構意識していました。

―――今後の目標を教えてください。

これまでもお話しましたが、僕は今まで自信が持てず、自分のことを仕事ができないダメな奴と思っていました。けど、今後はそういう考えを払拭できるような仕事ぶりを発揮していきたいし、周りからも信頼されるような人間になりたいと思っています。

けど、やはり苦手なところはどうしてもあるので、周りの人に頼れる部分は頼って、効率よく働いていきたいです。

付録 ~Sさんのこと~

(上記はSさん撮影の「シオヤアブ」)

僕は昆虫が好きです。理由は分かりません。子どもの頃は昆虫図鑑を愛読書にするくらいでした。僕が特にかわいいと思うのは「蛾」です。正直、模様とかはあんまり興味はなくて、蛾ってズームにして見てみると顔がとてもかわいいんです。マニアの中でも、蛾のオスの顔は「うさみみ」と言われています。機会があれば皆さんにも調べてみて欲しいですね。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われています。