▪年齢:20代半ば ▪診断名:ASD、ADHD ▪特性/苦手なこと:口頭指示、マルチタスク、計画を立てる、論理的に考えること ▪就職した職種:事務職(障害者枠) |
自動車教習所での苦労が診断のきっかけに
ー幼い頃はどんなお子さんでしたか?
幼い頃は植物や鉄道が好きな子どもでした。図鑑を見るのが好きで、植物や動物の図鑑をよく読んでいました。子ども向けの鉄道紹介番組を楽しんで見たり、母親と一緒に鉄道を見に行ったりしていたことを覚えています。
ーご自身の性格を一言で表すなら?
「受け身で流されやすい」と感じています。大学や就活で何かを決める場面でも、あまり自分で決めることがなく、人の意見に影響されることが多かったです。
例えば、アルバイトも友人の紹介で始めたり、中学や高校、大学の選択も親に勧められて決めたりしました。また、友達と遊ぶ際も自分から誘うより、誘われて参加することがほとんどでした。
ー周囲と自分は何か違うと感じたことはありますか?
周りの人たちが自分で決めて行動しているのに対し、私は人に決めてもらうことが多い点が違うと感じています。何かを選ぶ場面で自分から行動することが少なく、選択を任せてしまうことが他の人と違う部分かなと思っています。
ー診断を受けたきっかけは?診断を受けたとき、どのように感じましたか?
大学生の頃、自動車教習所に通い始めたものの、マルチタスクが苦手で、標識を見ながら車の操作をすることや交通ルールを覚えることが大変でした。また、教官の態度が厳しく、精神的に負担を感じていました。その時期、卒論や就活も重なり、ストレスが増したことで、精神科を受診することになりました。
診断を受けた当初は、自分が発達障害だとは考えもしなかったので困惑しましたが、これまでの出来事を振り返ると思い当たる点が多く、比較的早く納得したかと思います。診断後、自分なりに発達障害について調べるうちに「自分のことだ」と感じることも多かったからです。
ー苦手なことや特性は?具体的なエピソードも教えてください。
長期的な計画を立てるのが苦手です。
大学4年生の就活では、複数の会社の面接日程が重ならないよう調整したり、他の予定と組み合わせたりするのが難しく、苦労しました。特に、数カ月先の予定を考えて行動することが負担でした。
Kaienで学んだスモールステップとビジネススキル
ーKaien前の職歴は?
大学在学中、小売店でアルバイトをしていました。主にレジ打ちや品出し、開店から閉店までの作業を担当し、人手が足りないときには発注も任されることがありました。覚えるまでは大変でしたが、パートの方々と楽しく仕事ができていたと思います。
ーKaienで訓練を始めようと思ったきっかけは何ですか?
Kaienでの訓練を始めたのは母親からの紹介がきっかけです。母がいくつかの施設を調べてくれた中で、手厚いサポートがある点に魅力を感じ、説明会に参加しました。幅広い連携企業や生活リズム改善、ビジネススキル講座などの内容に興味を持ち、訓練を始めることに決めました。
ー訓練の中で実現したかったことは?達成できましたか?
大学生の頃、就活で苦労した経験があったため、Kaienでのサポートを受けながら就活を成功させることが目標で、無事達成できました。求人の紹介や面接対策をスタッフの方に支援していただき、大変助かりました。
ー苦手なことや特性について、何か対策を見つけられましたか?
長期的な計画を立てる際、第三者からのサポートを受けながら、スモールステップで進める方法を取り入れました。一つひとつ小さな目標をクリアしながら進めることで、負担を軽減できるようになりました。
また、苦手だった報連相も、訓練で毎日行うことで習慣化され、苦手意識が薄れたと感じています。
ー訓練の中で、特に印象に残っているエピソードは?
就労移行支援で営業ゲームのリーダーを務めたことです。
事業所ごとに会社を模したチームで商品のやり取りを体験し、ビジネスメールや見積書、納品書の作成を学びました。リーダーとしてチームメンバーに指示を出し、業務を進める経験は会社での就労のイメージを具体的に持つ良い機会になりました。
ー訓練を通して学んだことや変わったことは?
報連相が習慣化されたことで苦手意識が薄れました。また、訓練を通じて就労に対して前向きに考えられるようになり、働くことへのイメージがつきました。企業研究や求人選びなども経験でき、自分自身の成長を実感しました。
働きやすく自分に合った職場探しをした就活
ー就職活動を始めた時期を教えてください。
生活訓練が4月〜12月で、就労支援は翌年の1月〜7月。就活を本格的に始めたのは、就労移行支援に入って4月くらいからです。
ー会社は何社受けましたか?
1社のみに集中し、実習を経て内定をいただきました。
ー就活の軸は?
自分が働きやすいと思う職場を探しました。具体的には、土日祝日が休みで基本的に残業がないこと、PCスキルが基本的なもので済む環境などです。
ー就活で苦労したことは?また、それをどう乗り越えたのかも教えてください。
履歴書や自己PR、面接の想定問答を考えるのが大変でした。また、実習も5日間フルタイムであったので、辛くはありませんでしたが大変だったと思います。
ー就活を振り返って、やっておいて良かったこと、あるいはもう少し対策しておけば良かったことはありますか?
今回の就活は、ほとんど担当スタッフの方にサポートしてもらった形でした。そのおかげで無事に内定をいただくことができ、とても感謝しています。ただ、もし今後転職などを考えることがあったら、自分の力で転職活動を進められるのかが少し不安です。
自分だけで計画を立てたり、求人を探したりした経験が少ないため、もっと自分の力で準備を進められるようなスキルを身につける必要があるかなと思っています。
正社員登用を目指して働き続ける今の思い
ー実際に働いてみて、どのように感じましたか。
プラス面として、収入が得られたことや土日祝が休みで趣味と両立できている点があります。業務を覚えるのが少し大変な時期もありましたが、一つひとつの業務に対して充分に時間を設けていただいているので、余裕を持って取り組めています。
ー今後挑戦したいことや目標は?
今後は正社員登用を目指したいと思っています。そのために、勤怠や職務態度をしっかりして、業務も今よりさらに覚えていくことが目標です。正社員になれたら、もっと会社に貢献していけるようになりたいです。
正社員になることで、今後、同じ障害者枠で新しく入ってきた方に教える立場になったり、任される業務の範囲が広がったりするのかなと考えています。それが少し楽しみでもあります。
また、今は障害者枠で残業がないのですが、正社員になれば残業が発生することもあると思います。そういった変化にも対応しながら、どんどん会社の役に立てるようになりたいです。
付録 〜Fさんのこと〜
ー趣味や休日の過ごし方は?
休日は友達と遊ぶほか、ラーメンの食べ歩き、ウィンドウショッピングなどを楽しんでいます。特に、ひとりカラオケはストレス発散になるので好きです。
ー最近楽しかったこと、嬉しかったことは?
2週間前に大学時代の友達とディズニーランドに行きました。大学生以来なので4〜5年ぶりですね。久しぶりの訪問で、クリスマスイベントも楽しむことができ、とても充実して楽しかったです!
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われています。