自分の長所を見つけられずにいたYさん。訓練の成果が自信に

HOME大人の発達障害Q&A利用者体験談自分の長所を見つけられずにいたYさん。訓練の成果が自信に
▪年齢:30代前半
▪診断名:ADHD、双極性障害
▪仕事における苦手なこと:マルチタスク、聴覚情報の処理、空気を読むこと、片付け、金銭管理
▪就職した職種:事務職(障害者枠)


マルチタスクや聴覚情報の処理が特に苦手

―――幼い頃はどんなお子さんでしたか?

好きなことに熱中する性格で、特に読書が好きでした。小学生の頃は、ほとんど毎日図書室に通っていたほどです。

一方で同級生とはあまり馴染めず、孤立しがちでした。自分なりに気を遣って発言しているつもりでも、友人から「空気が読めない」と言われてしまうこともありました。

―――診断名と苦手なことを教えてください。

社会人になって少し経った頃、ADHDと双極性障害の診断を受けました。

特にマルチタスクや耳で聞いた情報の処理が苦手で、仕事でも苦労しました。コールセンターに勤務していたときは、電話で話を聞きながら同時に端末操作をしなければならなかったため、苦手な作業が重なってスムーズに仕事をするのが困難でした。

日常生活では、片付けや金銭管理も苦手です。双極性障害の躁状態のときにはお金を使いすぎてしまい、スマートフォンのゲームに高額の課金をしてしまうこともありました。

―――Kaienにつながる前はどんなことをしていましたか?

コールセンターを退職した後は、倉庫のデータ入力の仕事に就きました。入社した当初はマニュアルがしっかり整備されていてマルチタスクもなく働きやすかったのですが、途中から業務の内容が変わり、自分の裁量での判断やスピーディな並行作業などの苦手な業務が増えました。

仕事が思うようにこなせないストレスから双極性障害の症状が悪化してしまい、退職に至りました。

訓練の成果が自信につながり、自分の強みを発見

―――Kaienで訓練を始めようと思ったきっかけがあれば教えてください。

就職しても短期で離職してしまうことが多かったため、自分の特性をきちんと理解して適切な支援を受けたいと思い、Kaienの相談会に参加しました。

最初は就労移行支援を受けるつもりだったのですが、当時は金銭管理といった生活面の課題も抱えていました。そこでKaienから「まずは生活訓練を受けて日常生活を整えてから就活するのはどうか」と提案を受け、生活訓練を始めることにしました。

―――訓練では主にどんなことをしましたか?

生活訓練では、施設の方と相談して金銭管理ができるようアプリを使用するなどの工夫を始めました。そのおかげで以前よりもずっと金銭管理がしやすくなり、ゲームへの過剰な課金も抑えられるようになりました。

就労移行支援では実際の企業の事務を模した訓練や、データ入力などのコツコツ行う作業に重点的に取り組む訓練をしました。

特にやりがいを感じたのは、事業所のホームページに載せる地図の原案をつくる作業や、配送伝票を作成して実際に荷物を送付する作業など、実際の成果が残る訓練です。地図の原案はグループごとに作成したのですが、私のグループのものが実際のホームページに採用されたときに「自分の仕事が形になって役立っている」と、とても嬉しく思いました。

―――訓練を通して学んだことはありますか?

質問の仕方や報告・連絡・相談などの基本的なビジネススキルを改めて学び、身につけることができました。

朝と帰宅前に毎日計画を報告し、少しでも疑問があったら質問しに行くように心がけた結果、現在の職場で「報連相がしっかりしている」と評価をいただいています。以前の職場では報告や質問の仕方で失敗することも多かったため、訓練を通して克服できたポイントだと感じています。

―――訓練開始前に比べてご自身が変わったと思うことはありますか?

訓練を受ける前は自分の強みがわからず、この先社会人として生活できるか不安でした。

しかし訓練では講師の方々に長所を見つけていただき、自信をつけることができました。特性についても理解が深まり、どう仕事に活かしていくかまで相談できたため、前向きな考え方ができるようになったと思います。

Kaienのサポートを原動力に内定を得る

(バラ園にてYさん撮影。写真撮影が趣味だそう)

―――訓練開始からどのくらいで就活を始めましたか?

就労移行支援での訓練を開始してから、半年ほどで実習や説明会に参加し始めました。途中で体調を崩して1ヶ月ほど就活をお休みした時期もありましたが、合計で3ヶ月ほどで今の職場から内定をいただけました。

―――就活の軸は何でしたか?

一般事務の仕事を中心にエントリーしました。Kaienでの訓練を通して、マニュアルが整備された仕事が自分に合っていると感じていたため、事務の中でもデータ入力などの定型的な仕事を重点的に探していました。

―――就活の際にしておいて良かった対策を教えてください。

履歴書や自己PRシートに記載する、発達障害*や精神的な病気といった特性の書き方の対策です。特性についてわかりやすく説明し、かつ企業に安心していただけるような書き方をする必要があるため、きちんと対策しました。

一般枠の就活にはない項目なので、職歴のある人や過去に就活したことのある人もしっかり練り込んでおいたほうがよいと思います。

―――就活で苦労したことはありますか?

過去に職歴はありましたが障害枠での就職は初めてだったため、今までと違う就活に対する不安がありました。

しかし、Kaienの講師の方に書類の書き方を親身に指導していただいたり、面接の結果を受けて改善点をアドバイスいただいたりと、親身にサポートしてもらえました。良かった点のフィードバックも自信につながり、それが原動力となって就活を続けられたのだと思います。

先輩のように人の成長を助けられる人になりたい

―――現在の職場での仕事内容を教えてください。

現在は人材紹介会社で事務職として働いています。予約確認の電話をかける業務もありますが、マニュアルがしっかり整備されているため落ち着いて話すことができ、聞き取りも問題なくできています。

ほかにも、転職スカウトサービスの文面作成・送信、データの抽出・入力、求職者と企業とのマッチングなど、さまざまな仕事を任せていただいています。

―――今後の目標や挑戦したいことはありますか?

今は自分の作業が中心ですが、いずれは業務を教えたり指示を出したりする立場になりたいと思います。

現在の職場で実習を始めた頃に先輩にとても優しく指導していただき、社会人として成長できました。その先輩のように今度は自分が後輩をサポートし、成長を促せるような人材になることが目標です。

付録  ~Yさんのこと~

北海道旅行にて。「大好きな馬に囲まれて幸せでした」とYさん

写真撮影が趣味で、休日には一眼レフカメラを持って出かけます。野球や競馬も好きで、選手や馬の写真をたくさん撮っています。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます