苦手だった「人の気持ちを想像する」方法を模索して大きく成長を実感。訓練開始から4ヶ月で就職したSさん

HOME大人の発達障害Q&A利用者体験談苦手だった「人の気持ちを想像する」方法を模索して大きく成長を実感。訓練開始から4ヶ月で就職したSさん
▪年齢:20代半ば
▪診断名:統合失調症
▪特性/苦手:相手の気持ちや背景を想像するのが苦手、タスクの抜け漏れが多い
▪就職:軽作業(障害枠)


人の気持ちや言葉の裏の意図を察するのが苦手

―――診断名と苦手なことを教えてください。

病名は統合失調症で、高校3年生のときに診断を受けました。

注意力が散漫になる傾向があり、一つの物事に集中すると他の作業でミスが増えてしまいます。また、人の気持ちや発言の意図を察することも苦手です。全く想像できないわけではないのですが、第一印象に引っ張られてしまったり、しばらく経ってから本当は何が言いたかったのか気づいたりすることが多くあります。

―――子どもの頃に苦労したことはありましたか?

突拍子のない発言で浮いてしまうなど、統合失調症の診断を受ける前から周りの人たちとの違いを感じていました。

また、現在は完治していますが子どもの頃は心臓の病気がありました。運動したくてもできないのがもどかしく、身の丈以上に背伸びをした発言をしてしまうことも多かったです。

―――Kaienにつながる前はどんなことをしていましたか?

高校卒業後は通信制の大学に進みました。馴染むのに時間はかかりましたが、治療の成果もあって単位は次第に取れるようになっていきました。

大学時代にはスーパーで清掃のアルバイトをしていたのですが、お客さんの視線が気になって統合失調症の症状が悪化してしまい、アルバイトを辞めました。大学は卒業できたものの就職活動には失敗し、新卒での就職は諦めました。

訓練を通して人の意図を想像する方法を試行錯誤

―――Kaienで訓練を始めようと思ったきっかけがあれば教えてください。

もともと地元の地域活動支援センターに通っており、担当の職員さんを通してKaienにつながりました。就活で失敗していたため、就職する前に支援を受けて対策したい気持ちもあり、就労移行支援を受けることにしました。

―――訓練では主にどんなことをしましたか?

最初は実際のオフィスを想定した事務作業の訓練や、中古の本を仕入れて販売する軽作業の訓練を受けていました。中には苦手な作業もありましたが、訓練のおかげで、ただ「苦手だ」と思うだけでなく、どのように克服したら良いか考える習慣も身につきました。

訓練を通して軽作業が自分に合っていると感じ、今の仕事にもつながっています。講師の方にはとてもよくしていただき、期待に応えたい気持ちが原動力にもなりました。

―――苦手なことに対して、どのような対策を見つけましたか?

実際の職場と似た環境でのシミュレーションを通して、徐々に相手の気持ちや発言の背景を想像するコツを掴んでいきました。

例えば、いきなり人に話しかけたり大きな声を出したりしたら周りの人がどう思うかなど、自分なりに想像してコミュニケーション方法を試行錯誤しました。

課題を正しく認識して意識を変えるだけで改善できた場合もあり、成功体験の積み重ねが自信につながりました。何かがうまくできるようになるたびに、講師の方からフィードバックをいただけたのも嬉しかったです。

―――訓練開始前に比べてご自身が変わったと思うことはありますか?

訓練開始前よりも、自分自身のことをよく考えられるようになりました。学生の頃は考えるより先に行動してしまうことも多くありましたが、訓練を通して視野が広がり、人間的にも成長できたと思います。

焦る気持ちもあったが、訓練を受けてから就職してよかった

(野球のプレーと観戦が趣味のSさん)

―――訓練開始からどのくらいで就活を始めましたか?

訓練開始から3ヶ月後に、企業の見学を始めました。その中で、職種が希望に合っており長く働けそうな現在の職場に魅力を感じてエントリーしました。幸い内定をいただけたため、受けたのは1社のみです。

訓練を開始した当初から早期の就職をめざし、課題を克服するべくプログラムに取り組んでいたことがスムーズな就職につながったのだと思います。

―――就活の際にしておいて良かった対策を教えてください。

面接対策として、相手の意図を考えることが重要だと思います。

新卒で就活をしたときは敬語が不自然になったり、面接官と会話のキャッチボールができず一方通行の話になってしまったりと、適切なコミュニケーションが行えていませんでした。

訓練を通して相手が求めていることを想像して答える習慣がつき、就活にプラスに働いたと感じています。

―――就活で苦労したことはありますか?

幸いスムーズに就職先を見つけられたものの、就活中は将来に対する不安がありました。浪人していたため周りと比べて大学を卒業するタイミングが遅く、就活に失敗した経験もあって、当時は気持ちが焦っていたのだと思います。

しかし、Kaienでの訓練で学んだことは現在の職場でも役に立っています。結果的には卒業後すぐではなく、就労移行支援を受けてから就職してよかったと思います。

自分に合った今の仕事を長く続けたい

―――現在の職場での仕事内容を教えてください。

子ども食堂に野菜を送る仕事をしています。僕が担当しているのは野菜選びと出荷作業で、子どもたちが喜ぶ野菜をみんなで考えたり、時には子どもたちから手紙をもらえたりと、とてもやりがいがあります。

―――今後の目標や挑戦したいことはありますか?

今の仕事が自分に合っていると感じているため、できるだけ長く働いてしっかり仕事をこなしたいと考えています。

職場の後輩もでき、自分の経験を活かして何かアドバイスができないか模索している最中です。

付録  ~Sさんのこと~

(Sさんが初めて観戦した高校野球の一幕)

最近草野球チームをつくり、子どもの頃にできなかったスポーツに打ち込んでいます。野球を観戦するのも好きで、高校野球の関東大会での応援団に感動して以来、よく観に行っています。