この記事のPoint
- 現職に就く前は一般枠で働いていた宮本さんは、自分の特性を徹底的に理解したうえで、特性をオープンにして働いた方が成果が出せると考えた
- 化学の知識とExcelマクロの高い技術を持つ宮本さん。開発した業務効率化プログラムが三井化学グループ内表彰を受賞するほどに評価されている
- 周囲も宮本さんの特性を理解し、強みに着目することで活躍の場が広がっている
取材:Kaien 編集部
三井化学グループ内表彰で銀賞 発達障害*を持つ宮本さんが開発したプロジェクト
Excelマクロを用いた業務改善プロジェクトが、三井化学グループの「研究開発部門表彰制度」で銀賞を受賞した。このプロジェクトを担当し表彰を受けたのは、三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社で発達障害*をオープンにして働いている、入社僅か1年の若手社員宮本さん(仮名)だ。
このプロジェクトで宮本さんは、これまで各担当者がWeb検索し手入力で集約していた競合製品に関する情報を、Excelマクロを用いて自動で収集しデータベース化する仕組みを開発。これにより開発部門の作業時間が1/10以下に短縮されたという。
宮本さんは、障害者雇用として働くのは三井化学クロップ&ライフソリューションが初めて。これまでは一般枠就労で屠畜検査、食品衛生、家畜衛生などの業務を経験している。大学では獣医学を専攻していた。高度な専門知識を持っていた宮本さんだが、障害をオープンにして働く場合は知識を活かせるポジションが少ないかもしれないと考え、Excelマクロの技術や英語などのスキルも自己研鑽していたという。受賞プログラム開発のバックグラウンドには、宮本さんのこれまでのキャリアを大きく変える勇気と、たゆまぬ自己研鑽があったのだ。
受賞プログラム以外にも宮本さんは、メールでやり取りしているPDFの情報を自動的にリスト化したり、フォルダに自動格納できるシステムなどを作成している。これにより農薬サンプルの送付管理が効率的にできるようになるという。
「今後の目標としては、得意なプログラミングスキルをさらに伸ばしていくことで、より複雑な案件・大きな案件でも対応できるようになり、”この人にお願いしたら大体解決してくれる”という人材になることです。」と宮本さんは語る。
特性を理解してもらえる環境で働くことで、より成果が出せると考えた
仕事のやりがいをイキイキと語ってくれる宮本さん。上司や同僚ともうまくいっているように見える。なぜ、障害をオープンにして働こうと考えたのか。それには現職までの苦い経験がある。
「自分の特性の一つはマルチタスク(切り替え)の苦手さです。”アプリの切り替えに時間がかかるパソコン”のような感じで、業務の切り替えに際して時間がかかります。もう一つは意思疎通におけるすれ違いで、物事を遠回しに言われると意図をつかむことが難しいです。どちらも徹底的に対策・努力すれば、自己対処はできるんです。ただ、そのために多大なエネルギーを使います。これまで一般枠で働いていた時は自己対処していましたが、体力的に常にギリギリの状況で、少しでも業務量が増えると回らなくなってしまう状況でした。
こうした特性を理解してもらえる環境で働いた方が、自分は成果が出せると考えました。また、自己対処するエネルギーを保つために、勤務時間が長くなりすぎないよう配慮いただける職場を探していました。」
今の職場では週1回の進捗管理ミーティングで優先順位付けを確認させてもらい、フレックスや残業についての配慮を受け、安定的に働くことができているそうだ。
宮本さんの特性を理解し、強みに着目する職場
宮本さんの上長や先輩社員の皆さんにもお話を伺った。直属の上長を含め、部署の皆さんはこれまで発達障害*の方と一緒に働いた経験の無い方がほとんどだ。
「結構気を使わないといけないのかなと不安に思っていましたが、全然そんなことはありませんでした。特性として集中しすぎてしまうことがあると聞いているので、そこについては声がけするようにしています。」
「宮本さん配属の前にKaienから部署のメンバーに、発達障害*とはどういうものか、どのような点に気を付けて接すると良いかといったレクチャーをして頂きました。最初は部署のメンバーも構えすぎたところがありましたが、宮本さんとのコミュニケーションが増え、彼の性格が見えてくる中で解消されていきました。のびのびとスキルを活かしてもらえるような場を今後も作っていきたいです。」
「宮本さんを見ていて、時間の使い方がうまくできれば能力が出せると感じています。折しもコロナによるテレワークなどもあって、時間管理がしやすい環境になったようです。テレワークやフレックスもうまく活用して、力を発揮していって欲しいです。」
職場の皆さんからは、障害者とラベリングするのではなく宮本さん個人をしっかり見て、特性を理解しコミュニケーションをとりながら、得意なことを任せていく雰囲気が感じられる。宮本さんが自己理解と対策を徹底し、それを周囲に開示しているからこそ、周囲も宮本さんを理解しようという気持ちになるのだろう。
特性をオープンにすることで見つけた新たな職場。稀有な経験と知識を持つ宮本さん”だからこそ”の活躍が、今後もさらに拡がっていく可能性を感じた。
取材協力
三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社
三井化学グループの農業化学分野の製品とサービスを展開する研究開発型企業。日本だけでなく世界の食糧生産に貢献する農薬事業と、QOL(Quality of Life)の改善に貢献する生活環境事業を展開。
現在は、本社で複数名の発達障害*者が活躍中。今後は研究所での障害者の活躍促進にも力を入れていきたいと考えている。
研究開発本部 開発部の皆様
研究開発本部 開発部 宮本さん(仮名)
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
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