シリーズ「発達障害と間違えられやすい症状」 第5回 統合失調症


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先日の精神科医の学会で、以前は発達障害*の過小診断が危惧されていたが、次第に過大診断につながりつつあるという認識が示されていた。それほどまでに発達障害を診断する医者が増えてきたことは純粋に素晴らしいこと。一方で何が発達障害なのか、専門家ですらいつまでも議論が続いている証拠でもあると思う。

医者ではない僕は医者の診断を否定することはもちろんできないけれども、医者によって発達障害の定義はたしかに大きく大きく違う。そこで、その医者の間のずれをヒントに、「発達障害と間違えられやすい症状」をシリーズでまとめていこうと思う。

第5回は統合失調症について。

統合失調症は実は僕は語る資格がないかもしれない。というのも、あまりお会いしないのである。だが、世の中的には、発達障害と統合失調症を間違えやすいかもしれず、統合失調症と医師によって診断された後、発達障害という診断にたどり着き、薬などが合わない状態が長い間続いたという例を少なからず聞くので、医療でも見分けがつき肉ことがあるのだと思う。

またまたWikipediaから。DSM-V(アメリカの精神医学会の最新診断基準)によると、診断基準は以下の通り。なお、陰性症状については少し難しい表現なので、詳しくはWikipediaの解説などを参考にしてほしい。

統合失調症は以下の2つ以上が各1か月以上(治療が成功した場合は短い)いつも存在する状態である。

    1. 妄想
    2. 幻覚
    3. 解体した会話
    4. ひどく解体した行動(例:不適切な服装、頻繁に泣く)、又は、緊張病性の行動
    5. 陰性症状

統合失調症で一番目立つ症状は被害妄想と幻聴。しかし必ずしも上記の症状が現れるという訳ではない。

統合失調症は罹患率が1%ぐらい。かなり多い。厚労省の「みんなのメンタルヘルス」によると、わが国でうつ病に次いで2番目に多い診断である。

実は次回書こうと思っているが、うつと発達障害はかなり重なっている人が多い。一方で、繰り返しになるが、僕がお会いする人の中で、統合失調の診断があり、かつ、発達障害の診断がある人は少ないように思う。これだけ統合失調症の罹患率が高い中で、ほとんど重なりがないのは珍しいような気がしている。でも、これも前述の通り、医師による誤診で苦しんでいる人には複数あったことがある。一体どういうことなのだろうか?

(1)幼少期の聞き取りがされている?いない?

統合失調症は10代後半から見られる病気。生まれた時から先天的にあり、生きている間、見えづらくなることはあっても特徴が続く発達障害とは異なる。つまり幼少期のことを聞けば違いが判るはずで、医療でもこういったあたりまえなことがしっかりされるようになったのだろうか。。。

(2)フラッシュバックと、幻聴・幻覚が混同されやすい?

発達障害の人も、幻聴・幻覚といった統合失調症っぽいことが起こるようである。非常に明確なのがフラッシュバックで、過去の状況やその時感じたことがまるで今起きているかのように思い浮かんだりするという、非常に強い記憶力の副産物といえる。これが幻聴・幻覚とされていたのであろうか?ただし、統合失調症の幻覚・幻聴は、なにかのきっかけがあるわけではなく、自然発生的に起こるらしいのだが、発達障害のフラッシュバックは何らかの似た状況によってもたらされる(例: キモイと言われていたときの体験が、気持ち悪いとまったく別の人によって20年後に言われたとしてもふっと20年の時をこえて当時の追体験をしてしまう感じらしい)。この辺りが混同されやすかったのだろうか?

(3)被害妄想と、いじめや認知のずれが混同されやすい?

統合失調症の症状で被害妄想というのがある。監視されているのではないか、というのがよくある具体例だ。発達障害の人も、周囲の目が気になる、というような訴えは本当に多いのだが、何らかの経験がきっかけになってそこへの悪い意味でのこだわり・不安が根っこの理由になっていることが多いように思う。統合失調症はそういった「キュー」がどうやらなく、自然発生的に被害妄想になっているかのように思われる。この辺りが間違えられやすいのかもしれない。

統合失調症は古い診断名で、かなり脳神経科学の世界でも研究がおこなわれているそうである。だが、発達障害は後発ながら、脳神経研究ははるかに統合失調症の先をいっていると聞く。(遺伝の影響もあると呼んだことがあるが)後天的に発症する統合失調症と、先天的でロジカルにとらえやすい発達障害。統合失調症はそういう意味でも、僕にとってはつかみどころがなく、わかりにくい。

なお、統合失調症は薬が効くと本当に症状が見えなくなり、実際そういう方にお会いすると、発達障害の違いを感じざるにはいられない。発達障害は薬で急激に状態が良くなることは考えにくいからである。効果があっても徐々に、うっすらと、という感じが、特に大人の場合は多いように思う。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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