Kaien秋葉原の鈴木です。
当社の就労移行支援利用者の就職実績と、発達障害*のある人の就職トレンドを毎月お伝えしている「Kaienマンスリーレポート」。今回は2月のデータを基にお話ししていきます。
2月の就職者数は8名、3月には多数就職の見通し
2月の就職者数は6拠点合わせて8名でした。昨年2月実績の10名より減少していますが、3月にはすでに20名以上の就職が決まっており、今年は入社時期のピークが3月に集中したためこのような数字になったようです。全体としては就職者数は増加傾向を維持しています。1月に引き続き、障害者就職面接会を含めハローワーク求人での就職者が目立ちました。
前回のマンスリーレポートでお伝えしたように、ハローワークには大企業から中小企業まで様々な求人が集まっています。応募企業をうまく絞り込んでマッチングできれば、ご本人にとっての「優良企業」が見つかる可能性が高くなります。当社もハローワークの職員の方と連携しながらご本人にフィットするハローワーク求人の情報をお伝えできるように努めています。ハローワークには発達障害者就職支援ナビゲーターや精神障害者トータルサポーターといった、障害特性を理解している職員の方に就活相談ができるところもあります。どうやって応募企業を探したらよいか相談したいという方は専門援助第二部門という障害をお持ちの方向け窓口に是非行ってみてください。
法定雇用率を満たさないと納付金を徴収されるのは従業員100人超の事業所から
ハローワーク求人には中小企業の求人も集まっているというお話をしました。障害者雇用率制度では従業員50人以上の民間企業では2.0%以上の割合で障害のある人を雇用する必要があります。雇用していなかった場合に障害者雇用納付金(1名不足するごとに4~5万円/月)が徴収されるのは従業員100人超の事業所からです。障害者雇用に高いモチベーションを持っているのは、従業員を多く抱えていて法定雇用率が不足した場合の納付金の額が大きくなる大企業の割合が高くなります。一方で、もちろん従業員100人程度の企業も数名の障害者の雇用をしたいと考えています。他の大企業のように頻繁に募集をかけることはなく、欠員が出たタイミングで若干名の募集をする形が多いはずです。あまり頻繁に障害者雇用の募集をしない企業だと、民間の人材紹介会社を利用するというよりはハローワークで求人を出すケースが多い印象がありますので、ハローワークに中小企業の障害者枠求人が集まりやすいのではと推測しています。
大企業は障害者雇用のノウハウが蓄積しやすい
当社でも大企業から求人をいただいて訓練生にご紹介しています。大企業の場合は常に数十人の障害者の方を雇用しているため、障害者雇用のノウハウが蓄積していることが多く、専属の管理スタッフがいたりと障害のある人のマネジメント経験を積まれた方が多い印象です。社内にある業務の中で障害のある方が取り組みやすい業務を切り出してきて、ご本人たちが作業しやすい形に作業手順を整理してお任せしている職場もあります。またオフィスに休憩スペースが整備されている企業もあったりと、福利厚生面でも恵まれている傾向にあります。
一方で、一部の企業ではボーナスがあったりと給与面で恵まれているところもありますが、大企業だからといって給与水準が高いとは言い切れません。さらに言うと、障害者枠だからといって一律に給与が低いという訳ではなく、お任せする業務の質や量に給与水準は連動している印象です。企業によって障害のある人にお任せしている業務は様々ですので、実際の求人票の給与水準を確認する必要があります。また有名企業の特例子会社など人気の企業では応募倍率が高く、なかなか選考が通過しづらい面は否めません。
中小企業では上司や同僚の理解が得られるかどうかが鍵
当社でも中小企業からの求人は以前よりも増えています。中小企業の場合は障害のある人を雇用するのは数人のことが多いため、社内業務を切り出して障害者雇用のチームで業務を行うというよりは、一般雇用の職場の中に1人で混じって働くというパターンが多くなる印象です。他の社員の方と同じ空間で仕事をするので職場で違和感のないようなオフィスマナーが求められますし、一般枠で求められるような業務スキルが求める人材像として提示されることも少なくありません。
その代わり給与水準も一般枠と遜色ないケースもあり、中小企業だからといって給与が低いとは一概には言えません。また特にシステムとして確立していなくても、人事担当者や上司・同僚などに個別に発達障害について理解をしていただければ、特性をオープンにして配慮も受けながら安心して働ける可能性も大きいです。
企業の規模は一つの目安、「自分に合った働き方ができるか」で選ぶ
一般論としては、手厚い配慮が必要な場合は大企業の方が様々な配慮を得られることが多く、自分である程度業務を進めることができる場合は中小企業も選択肢に入ると思います。これは一つの目安であり、企業によって業務の進め方や社風は様々なため、できれば職場の様子を知っている支援者に話を聞いたり、職場体験実習を受け入れていている企業であれば実習に参加して、自分に合った働き方ができそうかという基準で応募するかどうか決めると良いでしょう。
関連ページ
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます