Kaien社長の鈴木です。
2020年代 障害者雇用の主戦場は中小企業だ
障害者雇用は実は大企業は概ね達成しています。伸び悩んでいるのは実は中小企業です。そのため、改正障害者雇用促進法において、2020年度から障害者雇用への取り組みに熱心な企業を表彰したり、その事例を他の企業へ広めるための認定制度ができます。認定制度の創設にあたっては、当社でも今年行政の方からのヒアリングに協力させていただきました。障害者雇用に取り組みたい、あるいは障害のある・なしに関係なく任せたいお仕事がある……と思っていたもの、どう取り組んでよいか分からないでいた中小企業の方が、これから障害者雇用に取り組んでいくケースが増えていくのかもしれません。
より一般雇用に近い職種や働き方、あるいは一般枠でありながら障害オープンも可能に
大企業と比較すると中小企業は、障害者の方が職場に定着した理由について「現場の従業員の理解がある」が相対的に低く「(障害者の方に)作業を遂行する能力がある」が相対的に高い(障害者職業総合センター『中小企業における障害者雇用促進の方策に関する研究』2013年、pp.24-25)という統計もあります。つまり、それほど障害特性への理解がない中で、割合に高度な仕事をスピードを持って働く必要が、障害者雇用でもあったということになります。
しかし、調査自体すでに7~8年前のもの。昨今の働き方改革の前ですし、人手不足によって企業は働く人への配慮や理解を極端に高めています。特に人が足りず倒産しかねない中小企業にとっては、喉から手が出るほど欲しいのが新しい人材です。【参考】「人手不足倒産」が4割増で過去最高に、企業努力ではもう止められない
逆にいうと、中小企業は、発達障害*の人たちにとって成長の機会が多いセクターとも言えるかもしれません。仕事は多くの種類があるし、色々任せてくれる。給与も上る可能性がある。また理解もしてもらえる可能性が増えているからです。このためこれまで一般企業で働いた”グレーゾーン”の方の中には、もしかしたら一般枠に近い職場のほうが違和感なく職場に入れる方もいらっしゃるかもしれません。 その場合は、そもそも障害者雇用ですらなく、一般雇用だけれどもオープンにするという働き方かもしれません。【参考】 「大企業」 「中小企業」 「障害者雇用(大企業)」 「その他」のメリットデメリットを考える
2025・30年 中小企業で戦力になる発達障害の人が増える!
このブログはたまたま当社の子ども向けサービスTEENS(発達障害児向けの学習支援・お仕事体験)のオフィスで書いています。ちょうど夕方の個別セッションの最中です。通っている子どもたちは10~15歳の子どもたちがメインなので、この子達が働き始めるのは2025年や2030年ということになります。
親御さんに働くイメージを聞くと、高校から大学などを経由して、就労移行支援を経て、大企業の障害者枠に、というような「保守的な良くあるルート」をお話し頂く場合が多いのが現状。しかし5年後や10年後は雇用環境が激変しているでしょう。発達障害の人が様々な働き方で中小企業の戦力になっているケースは多くなるのでは、あるいはそうなっていないと会社の存続が怪しくなるでしょう。当社も上手に発達障害の特性を理解しながら企業に雇ってもらうために、求人開拓や啓発活動を行っていきたいと思っています。
文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS、大学生向けの就活サークル ガクプロ、就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴</
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます