効果的に定着支援を行うために 課題や特性でタイプ分け

Kaienの就労定着支援 データで読み解く
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就労定着支援(就職してから約3年半後まで職場定着を支援する)制度が2018年4月から始まり1年半が経ちます。当社では、より良い支援を行えるようサービスをブラッシュアップしていくため、これまで就労定着支援をご利用になった方々からアンケートに回答していただきました。この記事では当該アンケートの質問項目のうち課題や特性でタイプ分けした集計結果を中心に、そこから見えたことについてお話します。

Kaienの就労定着支援では、ご利用者様の課題感に応じてタイプ分けしています

実は当社の就労定着支援では、各ご利用者様について職場での課題や今後のキャリアプラン等のアセスメント(評価)を行っています。アセスメント結果から下記の5タイプに分けています。

タイプ 大まかな説明 割合
A 就業経験が浅くトラブルが多めなタイプ 20%
B 業務面での満足度が高くないタイプ 6%
C 人間関係面での満足度が高くないタイプ 26%
D 業務や人間関係面で大きな課題はないタイプ 36%
E 業務面での課題はあるが、人間関係面での課題が少ないタイプ 12%

これは固定的なものではなくあくまでそのときそのときの現状ですので、面談のたびに適宜見直しています。今回のアンケートでは上記の各タイプ毎の集計も行っています。そこで、タイプごとに違いがあるか調べたのですが……最もはっきりと違いが出ているものはなんと、昇給があったかどうかでした。

全体では約半数の方が昇給しています。ただし、Bタイプの方の75%が昇給していることに対し、Aタイプでは14%に留まっています。その2グループに比べますと他のグループの昇給率は全体平均に近い数字となっています。グループの違いで昇給率に大きく差が出ていることから、当社のアセスメント基準が実際に企業で活躍できるかどうかに沿っていることが一つ確認できたと考えています。

昇給した方は多いが、現状に満足していないBタイプ

昇給した方が高かったBタイプは、業務スキルは一定以上ある方々です。会社が求めているレベル以上の業務をこなせているものと考えられます。

しかし、実はご本人様からの現在の職場への満足度は高くありません。(逆にいうと、もしかしたら職場のレベルが低く見えてしまうことが職場への満足度が低い原因の一つなのかもしれません……)現状に満足していない一方で、「業務上の目標がある」とか「今後取り組みたいことがある」と答えた方もそこまで多くないのもこのBタイプの方々です。またBタイプの方からは、就労定着支援の定期面談で特別な相談をしたいという要望も多いです。

以上から、高いスキルを持ちキャリアアップを目指しているもの、必ずしもそのために具体的な行動を起こせているともいえず、相談相手を求めているBタイプの方々の姿が見えます。実は当社の就労定着支援は、そういう方々にこそおすすめのサービスなのです。

将来的には転職したい方にもおすすめのKaien就労定着支援

「定着支援」という制度名ではありますが、(少なくとも当社では)ご利用者様がより活躍できる場を探すための転職は否定していません。現在の職場に留まったほうが良いのか、それとも転職したほうがより充実した生活が送れそうか、ご利用者様のご希望やご状況を考慮しながら支援していきます。

むしろ、当社の定着支援には転職を視野に入れている方にこそおすすめできる面もあります。働きながらマルチタスクで転職活動を進めていくというのは多くの発達障害の方が苦手としているところです。転職はまだ先だとしても、将来職務経歴書を書くとき等に備えて定期的に職場での経験を振り返っていくことも必要です。

将来的には転職したい・あるいはするかもしれないけど、何から始めて良いか分からない……という方にはぜひ当社の定着支援をご利用していただきたいと思います。残念ながら福祉では3年間しかご利用いただけないのですが……その後やそもそも就労定着支援を利用できない在職者の方にも民間事業としてサービスを提供できないか検討中です。

まだ社会人としての自覚が薄く、成長を支えていく必要のあるAタイプ

さて、昇給率の低かったAタイプについてですが……この方々はまだ企業組織の一員として働くという意識が薄く、成長途上の方々です。(というと「私もあてはまるのでは」と思ってしまうまじめな方もいるかもしれませんが、最初の表にもある通りAタイプの方は当社の定着支援ご利用者様全体の20%程度です。多くの方はそれまでの経験や就労移行支援での訓練で職業人としての心得を身につけていっています)

能力があれば人格面はどうでも良いのでは……と考える方もいるかもしれませんが、人格面がまったくダメでもカバーできるほど尖った仕事のできる方ばかりではないのが実情です。また障害者雇用という制度の限界上、そもそも給料分だけ働けるだけの業務を切り出せない事業所もまま見られ、誤解を恐れずにいうと「人柄採用」の比重が大きい会社も少なくないのです。このため、上司や同僚への「接客」も仕事の一つとして割り切っていくほうがリターンは良いかもしれません。

Aタイプのような成長途上の方はできれば就労移行訓練等で働くための心構えを十分に身に着けてから送り出したいものですが、様々な事情で難しいこともあります。それでも企業の方が「ぜひうちで働いて欲しい」と採用した方々ですので、眠っている力を発揮できるよう就職後も支援していきます。